伝道の書
6 風は南に向かって吹き,循環して北に向かう。
絶え間なく巡り,循環を続ける。
12 私は招集者,エルサレムでイスラエルを治める王+。 13 私は,この地上で行われた全ての事柄+,神が人に与えた哀れな務めについて研究し,知恵を働かせて調べようと心に決めた+。
15 曲がっているものは真っすぐにできない。
ないものは数えることができない。
16 私は心の中で言った。「私は,これまでにエルサレムにいた誰よりも優れた知恵を手に入れた+。私の心は非常に多くの知恵と知識を得た+」。 17 私は真剣に,知恵とはどんなものか,狂気*とは何か,愚かな行いとは何かを知ろうとした+。これもまた風を追うようなものだ。
2 私は心の中で言った。「さあ,楽しみとやらを経験してみよう。どんなに楽しいものなのか」。しかし,それもむなしいことだった。
2 私は笑いについて「狂っている!」,
楽しみについて「何の役に立つのか」と言った。
3 知恵を保ちながらもぶどう酒を存分に飲み,それが楽しいかどうかを試してみた+。また,愚かなこともして,人が地上での短い生涯で何を行うのが最善かを知ろうとした。 4 私は大きな仕事に取り掛かった+。自分のために家を建て+,ブドウ園を造った+。 5 自分のために庭園や公園を造り,その中にあらゆる種類の果樹を植えた。 6 自分のために池を造った。そうして木の茂る木立*に水を引くのだった。 7 私は男女の召し使いを得た+。私の家で生まれた召し使いもいた。また,これまでにエルサレムを治めた誰よりも多くの,牛や羊といった家畜を得た+。 8 私は銀や金を自分のために蓄え+,王たちや州が所有する宝をためた+。自分のために歌手の男女と,人を大いに喜ばせる存在つまり女性,それも大勢の女性*を集めた。 9 こうして私は偉大な者となり,これまでにエルサレムにいた誰よりも優れた者となった+。そして知恵はずっと私のものだった。
10 私は自分の願いを何でも満たそうとした+。どんな楽しみも心の赴くままに求めた。一生懸命に働き,心には喜びが生まれた。この喜びこそ私が一生懸命に働いて得た報酬だ+。 11 私は,自分の手で行った全てのこと,苦労して成し遂げたことを振り返ってみた+。すると,全てはむなしく,風を追うようなもので+,この地上に本当に価値のあるものは何もなかった+。
12 私は知恵と狂気と愚かな行いに注意を向けた+。(王の後に現れる人に何ができるだろう。すでに行われたことしかできない。) 13 そして私は,愚かな行いよりも知恵が優れているのを知った+。闇よりも光が優れているのと同じように。
14 賢い人は物事をはっきり見る*が+,愚かな人は闇の中を歩く+。それでも皆が迎える結末は1つであることに,私は気付いた+。 15 そして心の中で言った。「愚かな人に起きることが私にも起きるなら+,私はいったい何のために非常に賢くなったのだろう」。それで心の中で言った。「これもまたむなしい」。 16 賢い人も愚かな人も,人の記憶にいつまでも残ることはない+。月日がたつと誰もが忘れ去られる。賢い人はどのようにして死ぬのか。愚かな人と同じようにである+。
17 私は生きることを憎むようになった+。この地上で行われてきた全てが苦難に思えたからだ。全てはむなしく+,風を追うようなものだ+。 18 私は,この地上で一生懸命に働いて得た全てを憎むようになった+。それを私の後に現れる人のために残すことになるからだ+。 19 しかも,その人が賢い人か愚かな人か誰にも分からない+。いずれにしてもその人は,私がこの地上で知恵と努力を尽くして得た全てを手にする。これもまたむなしい。 20 それで私はこの地上で一生懸命に働いたことを振り返り,心に絶望を覚えた。 21 人は知恵や知識や技能を駆使して一生懸命に働いても,自分の報酬*を,働いていなかった人に渡さなければならなくなる+。これもまたむなしく,大きな悲劇*である。
22 人は,この地上で一生懸命に働き,志を持ってそうしたとして,いったいどんな良いものを得るのだろうか+。 23 生きている間ずっと,その人の務めは痛みといら立ちを生み+,夜になっても心が休まらない+。これもむなしい。
24 食べ,飲み,一生懸命働く充実感,人にとってこれ以上の幸せはない+。私はこれもまた,真の神からのものだと気付いた+。 25 私より良い物を食べ,飲む者はいない+。
26 神はご自分を喜ばせる人に知恵と知識と喜びを与える+。一方,罪人には,財産を蓄える務めを与え,その財産は真の神を喜ばせる人のものとなる+。これもまたむなしく,風を追うようなものだ。
3 何事にも時がある。
この地上の全ての活動には時がある。
3 殺すのに時があり,癒やすのに時がある。
壊すのに時があり,建てるのに時がある。
4 泣くのに時があり,笑うのに時がある。
泣き叫ぶのに時があり,踊るのに時がある。
5 石を取り除くのに時があり,石を集めるのに時がある。
抱擁するのに時があり,抱擁を控えるのに時がある。
6 捜すのに時があり,失った物として諦めるのに時がある。
保存するのに時があり,捨てるのに時がある。
9 力を尽くして働いたとして,どんな良いものを得ることができるだろう+。 10 私は神が人に与えた務めを知った。 11 神は全てを適切な時に美しくした*+。神は人に,永遠を思う心さえ与えた。それでも人は,真の神の行いを決して知り尽くす*ことがない。
12 私はこう結論した。生涯の間,喜び,善を行う。人にとってこれ以上の幸せはない+。 13 人は皆,食べ,飲み,一生懸命働いて充実感を得るとよい。それは神からの贈り物なのだ+。
14 私は,真の神が定めた事柄は全て永続することを知るようになった。それに加えたりそれから取り去ったりすべきものは何もない。真の神がそのようにした。それで人々は神を畏れる+。
15 起きる事は,すでに起きた事であり,存在するようになるものは,すでに存在していた+。真の神は,追われている*ものを探す。
16 私はこの地上で,公正の場に悪があり,正義の場に悪があるのも知った+。 17 それで心の中で言った。「真の神は正しい人も悪い人も裁く+。全ての活動,全ての行いに時がある」。
18 私は人についても心の中で言った。「真の神は人を試し,人と動物が同じようであることを示す」。 19 人には終わりがあり,動物にも終わりがある。皆,同じ終わりを迎える+。動物は死に,人も死ぬ。皆,1つの命*を持っている+。だから人は動物より優れているわけではない。全てはむなしい。 20 皆,同じ場所へ行く+。皆,土から生じ+,土に戻る+。 21 人の命*は昇っていくのか,動物の命は地面に下っていくのか,いったい誰が知っているだろう+。 22 私は人にとって,働く充実感以上の幸せはないのを知った+。それが人の得る報酬だからだ。誰も自分の死後,起きていることを見ることはできない+。
4 さらに私はこの地上で行われている虐げの行為全てに注意を向けた。私は虐げられている人たちの涙を見た。彼らには慰めてくれる人がいなかった+。彼らを虐げる人たちには力があり,彼らには慰めてくれる人がいなかった。 2 私は,今生きている者よりも,すでに死んだ者の方に祝いの言葉を述べた+。 3 どちらの者よりも,まだ生まれていない者の方が幸せだ+。この地上における苦しみの伴う出来事を見ていないからだ+。
4 私は,人が対抗心を燃やして努力を重ね*,熟練した仕事をするのを知った+。これもまたむなしく,風を追うようなものだ。
6 両手いっぱいに仕事を持つのは風を追うようなことだ。それよりも,片手は休息で満たす方がよい+。
7 私は,この地上におけるむなしいことの別の例に注意を向けた。 8 ある孤独な人がいる。親しい人がおらず,息子も兄弟もいない。一生懸命働き続け,裕福になっても満足しない+。その人は自分にこう問い掛けるだろうか。「誰のために一生懸命働き,良いものを我慢しているのだろう+」。これもまたむなしく,哀れな務めである+。
9 1人よりも2人がよい+。2人で働くことで十分な報酬*が得られるからだ。 10 もし1人が倒れても,もう1人が起こしてあげられる。しかし,倒れた時に起こしてくれる者がいない人の場合は,どうなるのだろう。
11 さらに,2人が一緒に横になれば温かい。1人では温かくしていられるだろうか。 12 1人なら誰かに打ち負かされるかもしれない。しかし2人なら立ち向かえる。三つよりの綱は素早く*断ち切ることができない。
13 年を取っているのに愚かで警告を受け入れない王よりも+,貧しくても賢い子供の方がよい+。 14 彼*は,その王の治世には貧しい者として生まれたが+,牢屋から出て王となった+。 15 私は,この地上を歩き回っている全ての人や,代わりに立つ若い王について考えた。 16 彼を支持する者はいつもいるが,後から現れる人たちは彼のことを喜ばない+。これもまたむなしく,風を追うようなものだ。
5 真の神の家に行く時は自分の歩みに注意を払いなさい+。そこでは,愚かな人のように犠牲を捧げるよりも+,耳を傾ける方がよい+。愚かな人は自分が悪を行っていることに気付いていない。
2 急いで口を開いてはならない。真の神の前で心の赴くままに性急に言葉を発してはならない+。真の神は天にいるが,あなたは地にいる。だから,あなたは言葉を選ばなければ*ならない+。 3 心配事があまりに多いと*,夢を見ることになる+。言葉があまりに多いと,愚かな人の話し方になる+。 4 神に誓約したなら,先延ばしせずに果たせ+。愚かな人は喜ばれないからだ+。誓約は果たせ+。 5 誓約して果たさないよりは,誓約しない方がよい+。 6 口を滑らせて罪を犯してはならない+。天使*の前で,間違いでしたと言ってはならない+。さもないと,真の神はあなたの言葉のことで憤り,あなたが手で築いたものを破壊してしまうだろう+。 7 心配事が多いと夢を見ることになり+,同じく,言葉が多いとむなしい結果に至る。真の神を畏れなさい+。
8 もし,貧しい人が虐げられ,辺りで公正や正義が侵されているのを見ても,そのことで当惑してはならない+。高官は,さらに位の高い者の監視下にあり,その位の高い者の上にはさらに位の高い者がいるからだ。
9 大地の恵みは皆で分け合うものだ。王でさえ畑に支えられている+。
10 お金*を愛する人は,いくらお金*を手にしても満足しない。財産を愛する人は収入に満足しない+。これもまたむなしい+。
11 良い物が増えると,それを当てにする*人たちも増える+。所有者には,得た物を自分の目で見て喜ぶほかに,どんな利益があるだろう+。
12 主人に仕える人は,食べる分が少ないか多いかに関わりなく,心地よく眠れる。しかし,多くのものを持つ裕福な人は眠れない。
13 私はこの地上で大きな悲劇*を見た。ため込んだ財産が,その所有者に害を及ぼした。 14 その財産は事業に失敗して失われた。彼に子が生まれる時,所有物は何も残っていない+。
15 人は,母から生まれた時と同じように,裸で去っていく。生まれた時と同じである+。一生懸命働いても,何一つ持っていけない+。
16 これも大きな悲劇*だ。人は,生まれた時と全く同じように去っていく。風を追うかのように一生懸命働くことに何の価値があるのだろう+。 17 毎日,暗闇の中で食べ,多くのいら立ち,病気,憤りを経験する+。
18 私は人にとって何が良いことかを知った。それは,真の神が与えてくださる,地上での短い生涯の間,食べ,飲み,一生懸命働いて充実感を得ることだ。それが人の報酬である+。 19 真の神が人に財産や所有物を与え+,しかもそれを人が楽しめるようにしてくださるので,人はその報酬を受け取り,一生懸命働いて喜びにあふれる。これは神からの贈り物である+。 20 人は自分の命の日々が過ぎていくことをあまり気に留めない*。真の神が人の心を喜びで満たしているからである+。
6 私はこの地上で,人の間でよく起きる別の悲劇*を見た。 2 ある人は真の神から財産や所有物や栄誉を与えられ,望むものを何でも手にする。しかし真の神は本人にそれを楽しませない。よその者がそれを楽しむことはあっても。これはむなしいことであり,耐え難い苦痛である。 3 たとえある人が100人の子を持ち,長生きして老齢に達したとしても,墓に入る前に*,良いものを満喫していなかったなら,私は,彼よりは死産の子の方がましだと言わざるを得ない+。 4 死産の子はむなしく生まれ,闇のうちに去っていき,名前も闇に覆われる。 5 太陽を見ることも,何かを知ることもない。それでも,前述の者よりはましだ+。 6 1000年,さらに1000年生きたとしても,楽しみを経験しなかったなら,何の意味があるというのだろう。皆,同じ場所に行くのではないか+。
7 人が一生懸命働くのは腹を満たすためだが+,欲求は決して満たされない。 8 賢い人には愚かな人に勝るどんな利点があるだろう+。貧しい人が生き抜く方法を知っているからといって,何の得があるだろう。 9 目の前の物を楽しむ方が,自分の欲求を追い掛けるよりもよい。これもまたむなしく,風を追うようなものだ。
10 存在するようになったものは,すでに名が付けられていた。人がどういうものかは知られている。人は自分よりも強力な者と争う*ことはできない。 11 言葉*が多くなれば,むなしいことも多くなる。それによって,人にどんな良いことがあるというのか。 12 人は,短くてむなしい生涯を送り,それは影のように過ぎる+。そうした人生で何を行うのが最善か,誰が知っているだろう。誰も自分の死後,太陽の下で起きることを知らせてもらうことはできない。
7 良い名*は良い油よりも価値がある+。死ぬ日は生まれる日よりも価値がある。 2 宴会が開かれる家に行くよりも,死を悼む家に行く方がよい+。死は全ての人が迎える終わりであり,生きている人はそれを心に留めなければならない。 3 笑うよりも,苦悩する方がよい+。悲しい顔をすることで心が正されるからだ+。 4 賢い人の心は,死を悼む家にあるが,愚かな人の心は,楽しいことが行われる家にある+。
5 愚かな人の歌を聞くよりも,賢い人の叱責を聞く方がよい+。 6 愚かな人の笑いは,鍋の下でいばらが燃える音のようだ+。これもまたむなしい。 7 圧迫は賢い人に狂気じみた行動を取らせる。賄賂は心を堕落させる+。
8 事の終わりはその始めよりも優れている。辛抱強いことは傲慢であることよりも優れている+。 9 すぐに腹を立ててはならない+。腹立ちは愚かな人の胸にとどまる*+。
10 「昔の方が良かった」と言ってはならない。そのように言うのは知恵のあることではないからだ+。
11 知恵に加えて財産があるのは良いことであり,人*にとって役に立つ。 12 お金は身の守りであり+,知恵も身の守りである+。しかし知識や知恵の利点は,人の命を保たせることだ+。
13 真の神の行いについて考えなさい。神が曲げたものを誰が真っすぐにできるだろう+。 14 良い日には,善良さを示しなさい+。逆境*の日には,どんな日も神がつくったことを考えなさい+。神は,人が未来に何が起きるかを見通せないようにしたのだ+。
15 私はむなしい生涯の間に+全てを見た。正しい人が,正しいことを行っていても死んでいき+,悪人が,悪いことを行うにもかかわらず長生きする+。
16 正しさにあまりにこだわってはならない+。賢くなり過ぎてはならない+。どうして自分の身を滅ぼすのか+。 17 悪くなり過ぎてはならない。愚かになってはならない+。まだ時が来ていないのにどうして死んでよいだろう+。 18 一方の忠告を守りながら他方の忠告も守るのが一番だ+。神を畏れる人は両方を受け入れる。
19 知恵は,賢い者を都市の10人の強い者よりも強くする+。 20 常に善を行って罪を犯さない正しい人は,地上に一人もいない+。
21 また,人々が話す言葉一つ一つを心に留めてはならない+。さもないと,あなたは,召し使いがあなたに不幸が生じることを願うのを聞くだろう。 22 あなたは,自分が何度も,他の人たちに不幸が生じることを願ったのをよく知っている+。
23 私は,こうした全てを知恵を働かせて試し,「私は賢くなる」と言った。しかし知恵に達することはできなかった。 24 存在するようになったものは,あまりに遠く,非常に深い。誰がそれを理解できるだろう+。 25 私は,知恵と物事の理由とを知ろうとし,調べようとし,探ろうとした。また,愚かさがいかに悪く,狂気がいかに愚かであるかを理解しようとした+。 26 そして私は知った。猟師の網のような女は死よりもひどい。その女の心は引き網のようであり,手は拘束する鎖のようだ。真の神に喜ばれている人はその女から逃げることができるが+,罪人はその女に捕まる+。
27 招集者+は言った。「私が知ったことをここに述べよう。私は,結論を引き出そうと物事を一つ一つ調べた。 28 しかし絶えず探していたものは見つからなかった。1000人の中から1人の男*を見つけたが,1人の女を見つけることはできなかった。 29 私が知ったのは次のことだけだ。真の神は人間を正直な者として造ったが+,人間がいろいろなことを考え出すようになったのだ+」。
8 誰が賢い人のようだろうか。誰が問題の解決策*を知っているだろうか。人は知恵によって顔が輝き,険しい表情が和らぐ。
2 私は言う。「王の命令を守りなさい+。あなたは神に誓いを立てた+。 3 王の前から不意に立ち去ろうとしてはならない+。悪に関わってはならない+。王は自分の望み通りに物事を行う。 4 王の言葉は絶対である+。誰が王に向かって『何をしているのだ』と言えるだろう」。
5 おきてを守る人は災いを経験しない+。賢い心は適切な時や物事の扱い方*を知ることになる+。 6 人が直面する困難は非常に多く,何事も適切な時に正しく扱わなければ*ならない+。 7 未来に何が起きるかを誰も知らない。それで,事がどう運ぶかを誰が人に告げることができるだろう。
8 生命力*を意のままに操ったり保ったりできる人は一人もいない。同じように,死ぬ日を意のままに操ることができる人はいない+。戦いの間,持ち場から離れることは誰にもできない。同じように,悪を行う人たちは悪にはまり,その結果を免れる*ことはない。
9 私はこの全てを見た。地上で行われた全てについて真剣に考えた。これまでずっと,人は人を支配し,人に害を及ぼして*きた+。 10 私は悪人が葬られるのを見た。以前,聖なる場所に出入りしていた人たちである。しかし彼らは,自分たちが悪を行った都市ですぐに忘れ去られた+。これもまたむなしい。
11 悪い行いに対する刑罰が速やかに下されていない+。それで人は平気で悪を行うようになっている+。 12 100回悪を行った罪人が,長生きすることがある。しかし私は,真の神を畏れる人たちが良い結果を得るのを知っている。神を畏れているのでそうなるのだ+。 13 悪人が良い結果を得ることはない+。悪人が生きる日々は影のようで,長く続かない+。神を畏れていないからだ。
14 地上でむなしい*ことが起きている。正しい人が,悪を行ったかのように扱われ+,悪人が,正しいことを行ったかのように扱われている+。私は,これもまたむなしいと言う。
15 喜ぶのは良いことだと私は言った+。食べ,飲み,喜ぶこと,この地上で人にとってこれ以上の幸せはないからだ。真の神が与えてくださる,地上での生涯の間,一生懸命働いて喜びにあふれよう+。
16 私は真剣に知恵を得ようとし,地上で行われている全ての活動を観察した+。昼も夜も寝ないでそのようにした*。 17 そして,真の神の全ての行いについて考え,地上で起きる事柄を人間は理解できないことに気付いた+。人がどれだけ理解しようとしても,理解することはできない。たとえ,自分は賢いから分かると主張するとしても,決して理解できないのだ+。
9 私はこの全てを心に留め,こう結論した。正しい人も賢い人も,それに彼らの行いも,真の神の手の中にある+。人は,過去の人々の愛も憎しみも知らない。 2 皆,全く同じ結末に至る+。正しい人も悪人も+,善人も清い人も清くない人も,犠牲を捧げる人も捧げない人も,結末は同じだ。善人も罪人と同じであり,誓いを立てる人も誓うことに慎重な人と同じである。 3 この地上で悲惨なことが起きている。皆,同じ結末を迎えるので+,生涯の間,人の心には悪が満ち,狂気があり,そして死んでいくのだ!
4 生きているなら希望が持てる。生きている犬は死んだライオンよりはましだからだ+。 5 生きている人は自分が死ぬことを知って*いる+。しかし,死んだ人は何も知らない+。何か*を得ることもない。思い出されず,忘れ去られる+。 6 また,彼らには愛も憎しみも嫉妬もすでになく,太陽の下で行われることに何の関わりも持たない+。
7 さあ,喜びながら食物を食べ,上機嫌でぶどう酒を飲みなさい+。真の神はあなたの行いをすでに喜んでくださった+。 8 白い服をいつも着て*,頭には油を付けておかなければならない+。 9 神があなたに与えてくださった,地上での短い*生涯の間,愛する妻と一緒に人生を楽しみなさい+。それが,地上で一生懸命に働くあなたに対する分け前だからである+。 10 あなたにできることは何でも,力を尽くして行いなさい。あなたの行く場所,つまり墓*では,働くことも考えることも学ぶことも理解することもできないからだ+。
11 私はこの地上で次のことも知るようになった。足の速い人がいつも競走に勝つわけでも,強い人が戦いに勝つわけでもない+。また,賢い人がいつも食事にありつけるとは限らない。知的な人が裕福になるとも+,知識がある人が成功するとも限らない+。なぜなら,思いも寄らないことがいつ誰にでも起きるからだ。 12 人は自分にいつ不幸が生じるかを知らない+。まるで,残酷な網に掛かる魚や,わなに掛かる鳥のように,人も,突然起きる災難の時にわなに掛かる。
13 私は地上で知恵に関する別の出来事も見た。それは心に残った。 14 ある小さい町があり,そこに住んでいる人は少なかった。そこへ,強力な王がやって来て,包囲し,その町を攻めるための大きな土塁を築いた。 15 その町には,貧しいとはいえ賢い人がいた。そしてその人は知恵を働かせて町を救った。しかし,誰もその貧しい人のことを記憶にとどめなかった+。 16 それで私はこう思った。「知恵は強さよりも価値がある+。だが,貧しい人の知恵は軽視され,誰もその人の言葉に注意を払わない+」。
17 愚かな人を支配する者の叫び声を聞くよりも,賢い人が静かに述べる言葉に注意を払う方がよい。
18 知恵は武器よりも価値がある。たった1人の罪人が多くの良いものを台無しにする+。
10 死んだハエは,上質の香油を臭くし,台無しにする。同じように,少しの愚かさが,賢くて尊敬されている人の評判を損なう+。
2 賢い人の心は当人を正しい方向に導き*,愚かな人の心は当人を間違った方向に導く*+。 3 愚かな人はどんな道を進んでも,良い判断ができず+,愚かさをさらけ出す+。
4 支配者の怒りがあなたに向かって燃えても,自分の持ち場を離れてはならない+。穏やかさは重大な罪を防ぐ+。
5 私は地上で悲惨な出来事,権力者が犯した間違いを見た+。 6 多くの愚かな人が高い地位に就き,有能な*人が低い立場にいる。
7 私は,権力者が召し使いのように歩いているのに,召し使いが馬に乗っているのを見た+。
8 穴を掘る人はその中に落ちる危険がある+。石の壁を壊す人は蛇にかまれるかもしれない。
9 石を切り出す人は石で傷を負いかねない。丸太を割る人は丸太で危険な目に遭うかもしれない*。
10 鉄の道具の切れ味が悪くなっているのに,その刃を研がないなら,余分な力を費やすことになる。一方,知恵がある人は成功できる。
11 まじないを掛ける前に蛇にかまれるなら,その蛇使いは役に立たない。
12 賢い人の口から出る言葉は喜びをもたらす+。一方,愚かな人の唇は当人を破滅させる+。 13 その人が口を開くと愚かさがあふれ+,話し終える頃にはひどく狂気じみた言葉になる。 14 それでも愚かな人は話し続ける+。
人は,将来何が起きるかを知らない。誰も自分の死後,生じていることを知らせてもらうことはできない+。
15 愚かな人は一生懸命働いて力尽きる。町への行き方さえ知らないからだ。
16 王がまだ子供で,高官が朝から宴会を始めるなら,その国は何と悲惨なのだろう+。 17 一方,王が高貴な生まれで,高官が,酔うためではなく,力を付けるために,決まった時間に食べるなら,その国は何と幸福なのだろう+。
18 甚だしく怠けるなら屋根の梁がゆがみ,手を動かさないなら家に雨漏りが生じる+。
19 パン*は人を笑顔にし,ぶどう酒は人生を楽しいものにする+。一方,お金は何をするにも役に立つ+。
20 たとえ頭の中*であっても,王に不幸が生じることを願って*はならない+。寝室でも,裕福な人に不幸が生じることを願ってはならない。鳥があなたの声*を伝えるかもしれず,翼のある生き物があなたの言葉を繰り返すかもしれないからだ。
11 あなたのパンを水の上に投げ*なさい+。月日がたてば,あなたはそれを再び得ることになる+。 2 持ち物を7人に,いや,8人にでも分けてあげなさい+。あなたは,地上でどんな災難が起きるかを知らないからだ。
3 雲は水分で満ちると,雨を地上に降らせる。木が南に,あるいは北に倒れるとしても,木があるのはその倒れた方向である。
4 風を見守っている者は種をまかない。雲を眺めている者は刈り取らない+。
5 あなたは,妊婦の腹の中で胎児の骨に生命力*がどのように働くのかを知らない+。同じように,あなたは真の神の行いを知らない。神は何でも行うことができる+。
6 朝に種をまき,夕方になるまで手を休めてはならない+。あなたは,どの種が育つか,これかそれか,あるいは両方なのかを知らないからだ。
7 光は心地よい。日の光を見るのは目にとって良いことだ。 8 もし長生きできるのであれば,それらの年月を楽しみなさい+。しかし,闇の日々が多くなることを忘れてはならない。やって来るその日々は全てむなしい+。
9 若い人たち,若いうちに喜びなさい。若い間にあなたの心が喜びで満ちていてほしい。心が促す道を進み,目が導く場所に行きなさい。しかし,全てのことに関して,真の神があなたに責任を問う*ことを覚えておきなさい+。 10 悩みのもとを心の中から除き去り,有害な事柄を体から払いのけなさい。若さも青春もむなしいものである+。
12 それで,若いうちにあなたの偉大な創造者を覚え*なさい+。やがて,苦難の日々を迎え+,「何も楽しくない」とあなたが言う年月が来るからだ。 2 その日々には,太陽も光も月も星も暗くなる+。大雨の後に*雲が戻ってくる。 3 その時には,家の見張りは震え,強い男はかがみ込み,女性は人数が減ったので粉をひくのをやめ,婦人は窓を眺めて辺りが暗いことに気付く+。 4 通りに面する扉は閉ざされ,ひき臼の音は低くなる。鳥の声で目が覚めるようになり,娘たちの歌声がほとんど聞こえなくなる+。 5 さらに,高い所を怖がり,通りを恐れる。アーモンドの木は花を咲かせ+,バッタは身を引きずって歩き,ケーパーの実ははじける。なぜなら,人は,自分がずっと住む家へと歩いており+,嘆く者たちが通りを歩き回るからだ+。 6 また,銀の綱は取り除かれ,金の鉢は砕かれ,泉のそばのかめも,水ための滑車も壊される。 7 こうして,人は土に戻る+。元々,土でできているからだ。生命力も真の神のもとに戻る。神が与えたものだからだ+。
8 招集者+は言う。「何とむなしいことか! 全てはむなしい+」。
9 招集者は賢くなっただけでなく,知っていることをいつも人々に教えた+。また,多くの格言をまとめる*ために,思い巡らし,徹底的に調査した+。 10 招集者は,喜ばれる言葉を探し+,真実を正確に記録しようと努めた。
11 賢い人の言葉は,牛追い棒のようだ+。集められた格言は,しっかりと打ち込まれたくぎのようだ。それらの言葉はひとりの牧者が下さったものである。 12 わが子よ,こうしたもの以外に関しては,次の忠告を聞きなさい。多くの書物を作ることには終わりがなく,専念し過ぎると体が疲れる+。
13 全てを聞いた今,結論はこうだ。真の神を畏れ+,その方のおきてを守りなさい+。人の務めはそれに尽きる+。 14 真の神は,人からは見えない事も含め,あらゆる行いについて,その善悪を裁くからだ+。
または,「この地上」。
または,「輝きを放ち」。
または,「息を切らして」。
または,「冬に流れる川」。
または,「ひどい愚かさ」。
または,「森林」。
または,「つまり貴婦人,貴婦人たち」。
直訳,「目が頭の中にある」。
または,「全て」。
または,「災難」。
または,「生む」。
または,「に組織した」,「に整えた」,「に配置した」。
または,「を始まりから終わりまで決して知る」。
もしかすると,「過ぎ去った」。
または,「息」。
または,「息」。
または,「一生懸命に働き」。
直訳,「自分の肉体を食べている」。
または,「より多くの利益」。
または,「簡単に」。
賢い子供のことかもしれない。
直訳,「少なくしなければ」。
または,「何かで頭がいっぱいだと」。
または,「使者」。
直訳,「銀」。
直訳,「銀」。
直訳,「食べる」。
または,「災難」。
または,「災難」。
または,「思い返さない」。
または,「災難」。
または,「墓さえも自分のものにしておらず」。
または,「に自分の言い分を述べる」。
もしかすると,「物事」。
または,「良い評判」。直訳,「名」。
もしかすると,「愚かな人の特徴だ」。
直訳,「太陽を見る者たち」。
または,「災難」。
または,「正直な男」。
または,「物事の意味」。
または,「判断」。
または,「判断しなければ」。
または,「息」,「風」。
もしかすると,「悪人が悪によって助け出される」。
または,「人を傷つけて」,「人の損失となって」。
または,「腹立たしい」。
もしかすると,「昼も夜も寝ない人がいる」。
または,「意識して」。
または,「報酬」。
喪服ではなく明るい色の服を着ることは楽しい気持ちを表す。
または,「むなしい」。
ヘブライ語,シェオル。用語集参照。
直訳,「右手にあり」。
直訳,「左手にある」。
直訳,「裕福な」。
もしかすると,「丸太に注意していなければならない」。
または,「食物」。
もしかすると,「ベッドの上」。
または,「王のことを悪く言って」。
または,「考え」。
または,「水面に流し」。
神の聖なる力のことも指すのかもしれない。
または,「を裁く」。
または,「意識し」。
もしかすると,「を伴って」。
または,「順序よく並べる」。