かつての迫害者から神の奉仕者へ
「私は妻が聖書を学び始めたころからの反対者でした。妻がすべての集会に定期的に出席するようになると,その反対はいっそう強いものとなりました。聖書を学ぶことに反対した理由は,週中の3回は妻と共に行動できないという点にありました。それに私は無神論者でしたから聖書の内容を知ろうとは思いませんでしたし,この時代が間もなく終わるというようなことも全く信じられませんでしたので,妻のしていることに理解をもつことはできませんでした。
「日がたつにつれて,私の行動はいっそう妻の立場を苦しいものにしました。ある時は準備された食事をテーブルごとひっくりかえしたこともありました。また,集会のある日にかぎをかけて締め出したり,月々の給料を渡さないこともありました。しかし妻はいっこうに真理を捨てる気配はありませんでしたので,私は妻が憎くなり離婚を考えるようになりました。やがて私は妻を離婚へと追い詰め,法的手続きも完了してそれは現実のものとなりました。
「その後,一人だけの生活が数か月続きましたが,いつの間にか妻や二人の子供のこと,それに間もなく生まれる三人目の子供のことを,冷静な気持ちで考えるようになりました。やがて私の片意地な気持ちは少しずつほぐれてゆき,私が加えたさまざまな反対に静かに耐えてきた妻や子供たちともう一度いっしょに生活したい,と思うようになりました。それでそのことを話したところ,信仰を保つうえで未信者と再婚することはできないと言われました。ちょうどそのころ,これまでしても妻が信仰を捨てなかったことを不思議に感じていましたので,聖書を調べてみることにしました。それで私は当時の会衆の監督を尋ね,聖書を調べてみることに同意し,一奉仕者の援助のもとに勉強を始めるようになりました。
「やがて勉強は週二回行なわれるようになり,一生懸命に努力して聖書を調べてゆくうちに,神の存在や神の愛,そしてこの事物の体制の終わりについても確信をもつようになりました。そして一昨年の4月,私は刈谷の巡回大会でバプテスマを受けることができました。バプテスマを受けて翌月,私は妻と二人で一時開拓奉仕を楽しむことができましたが,その時の私の心は喜びと満足でいっぱいでした。
「こうして私は以前の妻と再び新しい人生の出発をすることができましたから,真理を学んで本当によかったと思っています。私はこのように導いてくださったエホバ神に心から感謝しています。それでこのエホバ神の過分の愛にこたえるためかつての迫害者から忠実な神の奉仕者になったパウロのように私も忠実なクリスチャンの道を歩んでゆきたいと思います。もしかつての私の妻と同じような立場にある方がおられるなら,エホバのご意志ならば,ご主人も救われることを確信して,是非忍耐していただきたいと思います」。―エホバの証人の巡回大会で語られた経験。