若い人々が大人のために模範を示す

最近の何か月かの間に，新聞はその記事や社説で大企業の腐敗を暴露してきました。そのような腐敗は贈収賄の形を取ることもあれば，従業員の態度に根ざすものもあります。例えば，ヤミの作業手当が請求されたり，ヤミの出張旅費が請求されたりする場合もあります。現在の大人の世界に見られる不正をすべて列挙するなら，余りにも多くの紙面が取られてしまうでしょう。

ですから，若い人々が大人の示す態度を見て，それを模倣したとしても驚くにはあたりません。子供は親の鏡であるとは確かに真実です。それで，若い人々の間に見られる事は，実際には今日の大人の社会で行なわれていることを反映しているのです。

大多数の人々が現状に付いてゆくことで満足しているときに，正しいことを行なおうとして大きな努力を払っている若者について聞くのは，何と心温まる励みとなることなのでしょう。

真知という名の少女のことを考えてみてください。この少女の母親が聖書の文書を求めた後，ある人が再び訪問した結果，少女は聖書に関心を持つようになりました。彼女の母親は関心がありませんでしたが，真知は聖書の勉強を始め，数年後にバプテスマを受けました。今では，この13歳の少女は自分が信じ，また学んでいる事柄について他の人々に告げ知らせています。少女は毎日放課後2時間を費やして，神の王国の「良いたより」を告げ知らせており，補助開拓者としてこれまで連続3か月間そのようにしてきました。これは毎月，少なくとも60時間を福音宣明の活動に当てて，聖書について他の人々に教えることを意味しています。

少女は家で夕方6時から9時まで家事を手伝い，それから真夜中まで3時間，学校の勉強をします。その後，30分ほど独りで聖書の勉強をします。それから少女は5時間ほど眠って，目を覚ますと再び聖書の勉強を続けたり，日々の聖句の準備をしたりし，最後に学校に行く用意を整えます。少女はこの日課を守ります。というのは，少女は生まれたとき未熟児で，体が正常の発育を遂げなかったため，対処しなければならない欠陥を抱えているからなのです。その一つとして，少女は眠り過ぎると，ふらふらするようになり，精神的な機敏さが低下するので，最小限の睡眠でやってゆけるのです。もう一つの問題は，両脚が均等に発達しなかったので，歩くのが不自由なことです。心臓も弱いので，少女は走ることができません。このような障害があるにもかかわらず，少女はクラスで10番以内の立派な成績を保っています。

この少女が正しいことをし，神を喜ばせようとして努力していることを知るのは励みとなります。この少女はかつては大変憂うつな人で，めったに家の外に出たこともありませんでした。しかし，聖書の真理は少女を，他の人を熱心に助ける，明るくて快活な人に変えました。今日の多くの人々の利己的な態度とは何と異なっているのでしょう。

多くの若いクリスチャンの少年たちも，武道の訓練に関して良心的に参加できない立場を示してきました。それら少年たちは（ホームルームや体育の）先生におくせずに話し，平和を説く聖書の教えを信ずる者として，人を傷つけたり，殺したりさえするのに用い得る武道の訓練を受けるわけにはゆかないことを説明しました。（イザヤ 2:4）ある場合には，先生が理解のある態度を示し，それらの生徒に授業時間中掃除その他の雑事をすることを許しました。中には，それらの生徒は授業時間中，晴雨の別なく屋外で座らされるというような残酷な仕打ちに耐えなければならない場合もありました。一，二の極端な場合には，ある生徒たちは何か月かの期間，放校されたこともありました。

重要な点はこれらの若い人たちが正しい事を行なう勇気を持っており，妥協をしないということです。これらの若者は自分のために何かを得ようとはしていません。さもなければ，単に一般の人たちと同じ事をして，問題を避けたでしょう。

これらの若い人たちは非常に高い道徳規準を反映しています。その道徳規準は聖書に基づいており，宇宙の創造者，エホバ神を喜ばせるものです。それは人間ではなく，むしろ神ご自身によって定められています。もし世の多くの大人にこのように優れた道義心があったなら，この社会は今日起きているような腐敗，堕落，衰退を目撃しなかったはずです。―マタイ 24:12。

これらの若い人々は，その『若い成年の日に偉大な創造者』を覚えて，いわば歩調の模範を示しているのです。―伝道の書 12:1。