勇気を持ちなさい,神は助けてくださる
若い人は,自分の心で感ずる事柄をはっきり話すのは難しいと考えています。自分の感じ方が,ほとんどだれもが行なっているようないわゆる“普通の方法”と違うときは特にそうです。
聖書を研究する若い人が,その“普通の方法”,あるいは“通常の方法”が神に是認されないということを学んだ時にもそのことが当てはまります。そのような場合には,自分の考えをはっきり話し,良心的に参加できないある活動からはずしてもらえるように頼まなければなりません。難しいように見えるかもしれませんが,そのようにすると,満足のゆく結果の得られる場合があります。
最近のこと,中学3年の一生徒が,学校でのある活動に関する自分の立場を先生に知らせて経験した事柄について語りました。
「僕が4歳の時に両親は聖書を学び始めました。両親の進歩は初めはゆっくりしたものだったので,父が僕に聖書を教え始めたのは,僕が小学校2年生の時でした。
「真理のうちを歩み始めると,克服しなければならない問題が生じます。僕の場合は,小学校でクリスマスのパーティーなどの行事がありました。そのような時は,父と話し合い,自分はエホバの証人なのでそのような行事には参加できないことを前もって先生に説明しました。先生も,それを大きな問題として取り上げることなく,『その日には遅れて来るように』との指示をしてくださいました。
「中学校では,体育祭や卒業式の予行演習を休まなければなりませんでした。その日に大会が予定されていたからです。でも僕は,それは大きな問題だとは思いませんでした。ところが,中学3年に進級した時,ある一つの問題に直面しなければなりませんでした。
「それは,担任の先生が中1,中2の時の先生と替わったことです。この先生は,厳しさの点では学校一と言われていた年配の女の先生でした。それで,3学期になって始まる剣道や,大会の時に学校を休むことについてどのように説明したらよいか考えました。もちろん,自分だけの力では行なえないことは分かっていました。しかし,後でごたごたが生じるよりも,前もって解決できたら,と思いました。すると,3年になってすぐ,二,三日たった時でしたが,道徳の時間に『3年生になって』という題の作文を書くようにとの指示がありました。僕はその機会を通して自分の立場を表明することにしました。『僕は聖書を学んでいるので,戦いは行なえません。ですから剣道に参加する気持ちはありません。それに,年に3回大会があるので,そのために学校を休むことが必要です』と書きました。特に,3年生になると夏に模擬試験[高校受験の準備]を受けなければなりません。そのテストが,地域大会と同じ日に予定されていることが分かったので,先生にそのことを知っていただけるよう,その大会の日付も書きました。
「その作文を出した後は学校に行きたくなくなりました。自分の書いた作文についていろいろ文句をつけられるのが怖かったからです。それから一,二週間後,臨時の学活の時間に先生が新聞の切り抜きを持って入って来られました。先生は,『人には三つの窓が必要です。一つ目は底窓(自分を見つめる窓),二つ目は横窓(他人と社会を見つめる窓),三つ目に天窓(人を超える神,仏との対話の窓)です。このうち,今の人々に欠けているのは天窓です』と説明されました。それから,『私は昔自転車に乗っている時,トラックにはねられて気を失いました。でも自分が生きていたので自分は救われたのだと感じ,その時から神を信じるようになりました。今はその命を教育のために使っていますが,そのようにして天窓を開くのは良いことです』と,自分の経験を話されました。そしてこう付け加えられました。『ちょうどこのクラスにも,その窓を開いている人がいます。その人は,聖書を学んでいるために,剣道に参加できないということです。私はそれはりっぱなことだと思いますし,そのような人を尊敬します。今度,是非とも話を聞いてみたいと思います』。
「それは本当に喜びでした。神の力によるものでしかないと確信しました。
「大会の休みをいただくため,大会の直前の時期に先生に会いに行きました。先生は,『学校で勉強ができないから,聖書の勉強を一生懸命にしてきなさい』と励ましてくださいました。
「作文を提出した時以来,先生は好意的ですし,友達も信頼して近づいてくれています。
「このことから,自分の立場を前もって説明すると,豊かな祝福があることを学びました。
「この事件を通して,僕はエホバを身近に感じることができました。父も,『兄弟になっても大丈夫だ』と言って励ましてくれたので,バプテスマを受ける決心をすることができました。これからは,できるだけ補助開拓奉仕にあずかるようにしたいと思います」。
この場合には,先生が理解と親切を示してくださいました。この経験は,自分の考えを前もって先生に知らせるのが賢明であることを示しています。