聴衆を励まし，強める

神の僕たちは，どんな問題に直面していても，クリスチャン会衆の中で励みを得ることができるはずです。そのため，とりわけ長老たちは，自分のする話や与える助言が必ず励みのあるものとなるようにしなければなりません。長老は，「風からの隠れ場，雨あらしからの隠れ場所，水のない地方における水の流れ，やせた地における重い大岩の陰のよう」になるべきです。―イザ 32:2。

長老であれば，あなたの話はさわやかさや慰めを与えていますか。その話は，エホバに忠実に仕えようと努力している人たちを元気づけますか。一般の無関心な態度や反対にめげることなく，たゆまず神のご意志を行なうための力を与えますか。聴衆の中のある人々が憂うつな気持ちを抱えているなら，あるいは厳しい経済的圧力という重荷にあえぎ，治療法の知られていない重い病気と闘っているなら，どうでしょうか。あなたは『自分の口の言葉で兄弟たちを強める』ことができます。―ヨブ 16:5。

話し手として与えられた機会を活用して，エホバとエホバが設けておられる数々の備えから兄弟たちが希望と力を得られるように助けてください。―ロマ 15:13。エフェ 6:10。

エホバのしてくださった事柄を思い起こさせる。勇気を吹き込む一つの重要な方法は，エホバがかつてどのようにご自分の民を助けて数々の困難を切り抜けさせたかを示すことです。―ロマ 15:4。

イスラエルが約束の地に入るに先立って，エホバはモーセに，ヨシュアを『励まして強くする』ようお命じになりました。当時，約束の地は，敵となる諸国民が占拠していたからです。モーセはそれをどのように行なったでしょうか。イスラエル国民がエジプトを去った時エホバが同国民のために行なわれた事柄を，ヨシュアのいるところで，国民全体に思い起こさせたのです。（申 3:28; 7:18）また，エホバが与えてくださった，アモリ人に対する勝利についても詳しく語りました。そのあとで，モーセはヨシュアに，「勇気を出し，強くありなさい」と勧めました。（申 31:1-8）あなたも，兄弟たちを励まそうとする場合，エホバがすでにしてくださった事柄を思い出すことによって力を得るよう，助けますか。

時には，いろいろな問題に打ちひしがれて，自分は本当に王国の祝福を経験できるのだろうかと考える人もいます。そのような人には，エホバの約束が信頼できるものであることを思い起こさせてください。―ヨシュ 23:14。

ある国の兄弟たちは，良いたよりの伝道を禁じる，政府の布告の下に置かれています。そのような場合，愛ある長老たちは，イエス･キリストの使徒たちの経験から力を得るよう仲間の信者を助けることができます。（使徒 4:1–5:42）また，エステル記に記録されている出来事を神がどのように導かれたかを際立たせるなら，兄弟たちは勇気を抱くよう鼓舞されるに違いありません。

時には，会衆の集会に出席するだけでそれ以上進歩しない人も見られます。以前の生き方があまりにも悪かったので神から決して許してはいただけない，と考えているのかもしれません。そのような人には，エホバがマナセ王をどのように扱われたかについて話すこともできるでしょう。（代二 33:1-16）あるいは，古代コリントの人々が生き方を改めてクリスチャンとなり，神から義と宣せられたことについて話してもよいでしょう。―コリ一 6:9-11。

自分がこのような問題を経験しているのは，自分が神の恵みを失ったからではないか，と考える人がいるでしょうか。そのような人には，ヨブがどんなことを経験したか，またエホバに対する忠誠を堅く保ったためどのように豊かに祝福されたかを思い起こさせることもできるでしょう。（ヨブ 1:1-22; 10:1; 42:12，13。詩 34:19）ヨブの偽りの慰め手たちは，ヨブが何らかの罪を犯したに違いないという間違った主張をしました。（ヨブ 4:7，8; 8:5，6）それとは対照的に，パウロとバルナバは，弟子たちを強め，「信仰にとどまるように励まし（た）」時，「わたしたちは多くの患難を経て神の王国に入らなければならない」と言いました。（使徒 14:21，22）同様に今日でも，患難のもとでの忍耐は，すべてのクリスチャンに求められており，神の目に大いに価値がある，という点を指摘するなら，試練を受けている人たちを強めることができます。―箴 27:11。マタ 24:13。ロマ 5:3，4。テモ二 3:12。

聴き手に，これまでの生活でエホバがどのように約束を果たしてこられたかを考えさせてください。聴いている人たちは，少し促されるだけで，これまでエホバが約束どおりわたしたち一人一人にどう行動してくださったかを理解するでしょう。詩編 32編8節には，「わたしはあなたに洞察力を持たせ，その行くべき道を教え諭す。わたしはあなたに目を留めて忠告を与えよう」とあります。エホバがどのように導き，強めてくださったかを思い起こすよう助けるなら，聴き手は，エホバが顧みてくださり，現在直面するどんな試練をも本当に切り抜けさせてくださるという点を，自分自身のこととして理解できるようになります。―イザ 41:10，13。ペテ一 5:7。

神が今行なっておられる事柄に対する喜びを示す。兄弟たちを励まそうとするときは，エホバが今行なっておられる事柄に注意を引きましょう。自分にとってそれらの事柄が喜びとなっている，ということを示すようなかたちで話すなら，聴き手の心にも同じような感情がわき上がります。

生活面での重圧に対処するため自分がどのようにエホバに助けていただいているか，考えてみてください。神はわたしたちに最善の生き方を示しておられます。（イザ 30:21）犯罪，不正，貧困，病気，死などが存在している理由を説明し，ご自分がそのすべてをどのように終わらせるかを告げておられます。わたしたちを愛ある兄弟たちで囲んでくださっています。祈りという貴重な特権を与えてくださっています。神の証人となる特権も託してくださいました。わたしたちの目を開き，キリストがすでに天で即位し，古い体制の終わりの日が急速に尽きようとしていることを理解させてくださっています。―啓 12:1-12。

そうした祝福に加えて，会衆の集会や大会があります。それらの備えに対する純粋な認識を表わすような話し方をするなら，聴く人たちは，兄弟たちとの集いをおろそかにするまいとの決意を固くするでしょう。―ヘブ 10:23-25。

野外宣教における努力にエホバの祝福があることを物語る報告からも，力が得られます。西暦1世紀，パウロとバルナバは，エルサレムへ行く途中，諸国の人たちの転向のことを詳しく話して「すべての兄弟たちを大いに喜ばせ」ました。（使徒 15:3）あなたも，築き上げる経験を話して兄弟たちに喜びをもたらすことができます。

一人一人に対して，各自の行なっている事柄の価値を知るように助けるなら，さらに大きな励ましを与えることになります。クリスチャン宣教に参加していることを褒めてください。老齢や病気のために活動が大幅に制限されていても忠実に耐え忍んでいる人たちを褒めてください。エホバはそれらの人がみ名に示してきた愛をお忘れにならない，ということを思い出させてください。（ヘブ 6:10）試みのもとで価値を実証された信仰は，極めて貴重な所有物です。（ペテ一 1:6，7）兄弟たちは，そのことを銘記する必要があります。

前途の希望について気持ちをこめて話す。霊感のもとに記された，来たるべき事柄に関する約束は，神を愛するすべての人にとって大きな励みの源です。聴衆の大半はその約束について何度も聞いてきたかもしれません。しかし，それらの約束について話すあなたが認識を表わすなら，それらの約束を生き生きと思い起こさせ，その成就に対する確信を植え，心に感謝の念をあふれさせることができます。神権宣教学校で学んだ事柄を当てはめてゆけば，そのことができるようになります。

エホバは自らご自分の民に励みと力をお与えになる偉大な方です。あなたは，その方と協働して，そのような祝福を伝えることができます。会衆に話すとき，その機会を生かしてそれを行なってください。