神権的な戦略を用いなさい
東ドイツの一人のヱホバの証者は家から家の伝道をしていました。そのとき強く反対する人に会いました。どういうことになるかを直ちに知つたその証者は,すぐ次の廊下のところで赤のブラウスを緑のブラウスに変えました。街路に出た途端,共産主義者は赤いブラウスを着た婦人を見なかつたか,とたずねました。彼女は見なかつたと答えて立ち去つたのです。それでは,その証者は嘘を言いましたか。嘘を言つたのではありません。彼女は嘘つきではありません。彼女は神権的な戦略を用いたのであり,宣教のために行為と言葉により真相をかくしたのです。―マタイ 10:16。
神権的な戦略を用いて真相をかくす,ということと嘘を語ることとの差別はどこにあるのでしようか。或る人々はそのことを疑問に思うことでしよう。先ず気をつけて頂きたいことは,真相を語ると宣誓するなら,真相を語らねばなりません。神の御意を行うために献身した各クリスチャンは,神の御意を行つて,忠実を保つという誓を立てました。クリスチャンはこの誓を絶対に守らねばなりません。同じように,クリスチャンが証言台に立つとき,もし語るとするなら真相を語らねばなりません。時には,兄弟たちのことや神の業のことを知らせるよりも,語るのを拒絶してその罰を受ける方を選ぶこともできます。もちろん,クリスチャン兄弟たちに対しては,戦略を用いる必要はありません。兄弟たちには真相を語るか,又は兄弟の知りたいと思うことは兄弟に関係するものでない,ということと巧みに告げます。
証者たちは,業の禁ぜられている国であつても大きな働きをしています。神の御国の良いたよりを伝道せよ,といういましめを成しとげる唯一の方法は,神権的な戦略を用いることによるのです。人目につかない方法によつて文書は国内に運び入れられて配布されています。せつかく文書をかくしておきながら,訊問を受けたときにその在り場所を知らせるなどということは理に合いますか。もちろん合いません。それですから,霊的な戦のときには真相をかくすことにより敵を欺いても良いのです。それは無私の気持でなされています。誰をも害しませんし,かえつて多くの善をなします。