聖霊に満たされて大胆に神の言を語る
― 1964年度エホバの証者の年鑑から
タイ国
最高伝道者数: 357
人口: 28,000,000
比率: 78,431人に1人
東南アジア全域に緊張感がただよっています。しかし,だからといって,エホバの証者が情勢を懸念し,御国の福音の宣教をゆるめるわけではありません。むしろ,情勢が不穏だからこそ,一層励んで,接し得るかぎりの人々に,神の国のたよりを伝えねばなりません。それゆえ,この地のエホバの証者は,勤勉に働いています。次にタイ国,カンボジア,ラオス,ベトナムからの報告をのせましょう。
小さな村に住む仏教の一婦人は,チェンマイ市の知り合いを訪ねたおり,屑紙の中に,「御国のこの良いたより」の小冊子を見つけました。それに目を通した彼女は,自分がそれまで時おり疑問に思っていた死と霊について,適切な説明があるのを知りました。繰り返し読んだのち許しを得て,その小冊子を自分の村に持ち帰りました。
村に帰ってしばらくのち,近くの家で開かれる講演会のことを聞きました。その場に行ってみましたが,会場にあてられた家の階段を上るのをためらい,外で話を聞きました。その講演の内容が,自分の読んだ小冊子と同じであるのに気付きました。婦人は研究を始め,良いたよりを他の人々に伝える仕事に参加し,エホバ神のみ心を行なうべく献身しました。その後,彼女の夫も献身し,休暇開拓奉仕をし,今では正規開拓者になっています。
中国人の一婦人と聖書研究が行なわれていました。この婦人は何か新しい事を学ぶとすぐ,自分の友だちに話すのが常でした。話を聞いた友だちの一人は,早速,自分の夫にも伝えました。主人も関心を持っているとの事なので,再訪問がとりきめられました。
翌週から,タイ語と英語と中国語の「良いたより」の小冊子を使って,勉強が始まりました。主人はすでに英語の聖書を持っていましたが,妻のためにタイ語の聖書を注文しました。彼は聖書を真実なものと認めており,学んだことはすぐ,職場にいるカトリックの同僚に話しています。
何度も雑誌活動をした区域がありますが,その区域に,伝道者が訪ねるたびに雑誌を求める少女がいました。彼女は家族や,親籍,友人がなく,仕事の主人からもあまり良く扱われていませんでした。しかし,真理が彼女の心をひきました。
ある時,雑誌を受けとった彼女は,タイの支部事務所をたずねてみましたが,うまく見つかりませんでした。雑誌を配布した伝道者の再訪問もありませんでした。彼女は協会の事務所に宛てて手紙を送り,聖書の勉強を望んでいる旨書きました。その手紙には,必要なら,またあまり高くないなら,入会金を払うとも書いてありました。
伝道者がたずね,聖書研究が始まりました。彼女は良く予習し,質問には正確に答えます。御国会館の集りには一度出席し,毎週の出席を望んでいますが,仕事の主人の協力が得られず,まだ毎週は来られません。彼女は聖書を買うためにお金をためており,真理を教える人に来てもらう事を非常に喜んでいます。
カンボジア
最高伝道者数: 8
人口: 5,750,000
比率: 718,750人に1人
「神を真とすべし」の本を求めたカトリックの少女と聖書研究が始まりました。彼女はその研究を非常に喜びました。何度か研究したのち,彼女は本を持って修道女のところに行きました。修道女の意見を聞くためです。その意見は容易に想像できるでしょう ― 自分だけでこの本を勉強してはなりません,私たちがまず調べます,どうすべきかはあとで知らせます。しかし,彼女は研究を続けました。勉強を続けている事を知った修道院の人々は,彼女を異端者と呼び,本を戻しました。彼女は仏教徒の父親に励まされて研究を続けています。
あるエホバの証者は,国連の仕事をしている夫婦を訪ねました。二人は,神の御国こそ人類の唯一の希望である,という話を聞いて深い関心を示し,エホバの証者の信仰,および,エホバの証者と他の宗教との相違について,多くの質問をしました。その後,主人は自分のたずさわる国際連合について話しましたが,その意見は注目に価します。内部から見る者として評すれば,国連はまさに,「荒らす憎むべき者」と呼ぶにふさわしい,と彼は言いました。人間の不足を知り,世界の困惑を正すために,さらにすぐれた手段を求めている人がたくさんいます。
ラオス
最高伝道者数: 17
人口: 3,000,000
比率: 176,471人に1人
昨年まで,ラオスにラオス人のエホバの証者は一人もいませんでした。昨年の年鑑を読んだ方なら,覚えておられるかも知れませんが,ラオス人で教会の監督をしている人が,教会員数人と共に,真理の勉強を始めました。昨年11月,この人は,偽りの宗教との関係を一切たちきり,妻を共に水のバプテスマを受けて,献身したエホバの証者になりました。それ以来,この人は開拓奉仕を始め,御国の良いたよりを宣べ伝え,キリスト教徒や仏教徒など,知人の多くに強い影響を与えています。その上,彼の教会の後任に任命された人もエホバ神に献身し,開拓奉仕者になる事を目ざして励んでいます。それゆえ,サバナケットには合計6人のラオス人の証者が,良いたよりを宣明しており,その奉仕時間の平均は毎月60時間です。
兄弟たちの中には,仏教徒に御国の真理を伝えるのに成功している者もあります。しばらく前,一人の若い兄弟は,家から家への伝道に従事していたおり一軒の家に,キリスト教国の一宗派から派遣された宣教者が来て話しているのに気付きました。その家の人は,自分は仏教徒であり,すでに自分の宗教を持っているから,宣教者の話には関心がないと説明していました。これといった要点もないまま,数分話したのち,宣教者は帰って行きました。どんな人にでも真理を聞く機会を与えるべきだと考えたこの兄弟は,すぐその家にはいり,自分を紹介しました。彼は,ラオスと東南アジア全域における不穏な情勢を指摘し,それがいかに昔に書かれた聖書の預言と一致しているかを説明しました。今度その家の人は,大変熱心に聞き,兄弟にいすをすすめ,これは『ナファン』だ,すなわち,これは聞く価値があると言って,さらに説明を求めました。この土地の多くの人々が同じような反応を示しており,キリスト教国のさし出すもみがらではなく,エホバの言葉にもとづく,豊かな真理に『ナファン』なものがあることは明らかです。
ベトナム
最高伝道者数: 15
人口: 14,500,000
比率: 966,667人に1人
ベトナムに根強い信仰は,先祖崇拝です。しかし,ひとたび真理を聞くなら,若い人でも年配の人でも,その種の考え方を改めます。それまで長年の間従ってきた偽りの宗教を捨てさり,エホバ神の御心に従って自らを新たにした52歳の婦人の場合がそうでした。聖書を2年ほど勉強したのち,なんらかの決定をせねばならぬ事を知りました。婦人は,次の巡回大会でバプテスマを受ける積りだ,と家族に話しました。すでに善意者となっていた彼女の主人は7人の子供を集めて言いました。「いいかい,今日はみんなのお母さんにとって大切な日なんだよ。私も子供たちも,みんなでバプテスマの話を聞きに行き,浸礼の様子を見て来ようじゃないか」。子供たちはこれに従いました。浸礼ののち,この新しい姉妹は早速野外奉仕に行きました。奉仕が終って夕食のために帰宅すると,主人は家族にむかってまた言いました。「お母さんが神へのちかいに従って進めるよう,みんなで助けよう。私たちはお母さんに協力しなければならない。まずはじめに,線香をたてるのは先祖崇拝だから,これからは止める。無駄な事であり,浪費にもなるから,この家ではもう香をたかない」。それから,先祖の法事もこれからはやらない。それ以来この姉妹は良く進歩しています。彼女は神権宣教学校に参加し,子供たちに毎週聖書を教え,集会に出席し,奉仕にも定期的に参加しています。彼女の主人も聖書の勉強を続けており,この主人が妻の手本にならって進歩することが私たちの願いです。
ニュージーランド
最高伝道者数: 4,355
人口: 2,538,033
比率: 583人に1人
兄弟数人がクック諸島に移り,その地で証言を始めたため,ニュージーランド支部事務所は,仕事を少し拡大することになりました。その兄弟たちは野外奉仕に多くの時間をささげ,すぐれた証言が行なわれています。その他,世界一周大会の一部として,ニュージーランドのオークラントでは大きな大会が開かれ,この国の人々に良い証言となりました。この土地での昨奉仕年度の活動について支部の僕の説明を読みましょう。
すでに支配する神の国について,ニュージーランドで最大の証言がなされたのは,8月21日から25日までオークランドで開かれた世界一周大会をもって閉じた1963奉仕年度です。道伝し教える仕事がこれほど多くなされた年は他にありません。また,昨年の大会ほど,エホバの証者に対する称賛の言葉を集めたものはありません。先例のないことながら,ニュージーランド全域に及ぶテレビとラジオがオークランド大会の宣伝に大きな役割を果しました。宗教的な会合でこれほど世間の話題に上ったものはありませんし,この国の記録上最大の大会となりました。
雑誌は,人が真理を知る助けになります。しかし,御国の種が育つためには,その後つづいて援助する事が必要です。雑誌が2冊配布され,配布した姉妹はまた訪ね,婦人はさらに『楽園』の本を求めました。姉妹はそれで終りにせず,その本を十分に理解できるように使い方を説明し,それと同時に聖書研究を始めました。婦人はいつでもよく予習してあり,勉強の際には本を見ないで答えます。その事をほめると婦人は「本を見るのは正しい方法ではないと思いました」と言いました。その後,しばらく勉強が進んでから研究後の簡単な制度の話の際に,神権宣教学校について説明し,婦人も参加でき,それが宣教に役立つ事を話すと,婦人は非常に喜び,次のように言いました。「私もエホバの証者になる事について考えていました。宣教学校は私にちょうど役立ちます」。
私たちは,奉仕年度を通して続いた霊的な繁栄に対し,エホバに感謝しています。また,ニュージーランド最初の国際大会のために奉仕したフランズ,スーター両兄弟にも感謝しています。
クック諸島
最高伝道者数: 6
人口: 18,378
比率: 3,063人に1人
1962年,ラロトンガ島にニュージーランドの一家族が移住して以来,クック諸島の人々に神の御国の良いたよりを伝える仕事が始まりました。クック諸島は242平方キロの海域に散らばる15の島からなり,ニュージーランドに所属し,ニュージーランド政府が統治しています。ラロトンガ島には8676人が住んでいます。
原住のポリネシア人は,ニュージーランドのマオリ族の言葉,マオリ語の一方言を用い,「新しい世における生活」のパンフレットがラロトンガ語に訳された事を喜びました。そのパンフレットが一般に発表されたのは,映画「幸福な新世社会」が上映された時です。この映画は6回上映され,全部で300人が見ました。これらの活動の結果,家庭聖書研究を望む人が多くなりました。映画を公開する前から,ニュージーランド人の特別開拓者二人が16の研究を始めていました。すでに土地の伝道者3人が『永遠の福音」を宣べ伝え,家庭聖書研究を司会しています。
1962年の記念式の際,一人の善意者は,カトリック教徒であるその妻がおので自転車をこわすほどの反対をしたため,望みながらも出席できませんでした。しかし,この人は忠実に忍耐を続け,今では妻も真理を受け入れました。この二人が助け合って多くの人たちをさそったため,1963年の記念式には,24人もの人が集りました。
オーストラリア
最高伝道者数: 16,544
人口: 10,869,475
比率: 657人に1人
オーストラリアのエホバの証者は,魂を得るに至る者となるため,退くことなくおし進んでゆく事を決意しています。1963奉仕年度中,オーストラリアにおいては,良い進歩が見られました。各地で新しい御国会館が建設されました。しかし,とくに顕著な出来事は,メルボルンで開かれた「永遠の福音」大会です。一人の人は言いました,「ここ1週間みなさんの集りのことがこの辺一帯の話題になりました。好意的な人もけなす人もありましたが,すべての人が一致してみなさんの行儀の良さをほめています」。支部の僕から送られた経験をいくつか紹介します。
オーストラリアの兄弟のうち70パーセントが,奉仕年度の終りにメルボルンで開かれた「永遠の福音」大会に出席しましたが,出席した人々はみな,努力してメルボルンまできた事を喜びました。冬の天気の悪いことで知られるメルボルンで,8月に国際大会を開くことに多少の懸念もありましたが,大会初日の金曜日朝,兄弟たちが次第に集まるに連れ,そうした心配はきえてゆきました。全国的な一有力雑誌は,大会について次のような記事をのせました。「メルボルンにおいても大規模な国際的会合がいくつも開かれてきた。しかし,このたびのエホバの証者の永遠の福音大会のようなものは初めてであろう。オーストラリアには1万6500名のエホバの証者がいるが,そのうち,1万2000名以上がメルボルンに集った。特別列車やバスでどんどん証者が集まる様子はまさに見物であった。……この大きな会合はオーストラリア最大の建物,羊を集める大天幕で開かれた。羊を入れる天幕にエホバの証者を集めるとは中々の思いつきだ」。
メルボルン大会出席の費用を得るために努力した兄弟はたくさんありました。80歳の老姉妹は,2年の間,年金を受けるたびに10シリングずつ貯えました。しかもこの姉妹はほとんど目が不自由です。11歳の男の子は毎朝5時に起き,登校前に空びんを集め,夕方には古紙を売り,芝生を刈るなど様々な仕事をして出席の費用をためました。9歳になるその妹は,花を育てて売り,近所の人の手伝いをしました。こうして二人はメルボルンまでの家族の旅費を補いました。
4ヵ月にわたる「ものみの塔」予約運動期間に,予約の目標を達成する会衆がすくないので,協会は達成した会衆の僕から活動の様子をききました。僕の報告によると,その会衆では予約の目標を達成するために,次の八つの事柄を実行しました。(1)僕たちが率先する(2)会衆と群と個人の目標を定める(3)予約切れの再訪問を残さず行なう(4)大きな通りを開拓して新しい予約者を探す(5)いつでも予約のことを考える(6)集会で予約の経験を話して運動の雰囲気を高める(7)御国会館の掲示板を利用して視覚の助けを用いる(8)いつも兄弟たちを励ますために,エホバの祝福を祈り求める。この会衆で得られた116の予約のうち,40は9人の僕たちによりました。
年の聖句を日毎に思い出すなら,忠実に奉仕を続ける勇気が出てきます。一人の伝道者は次のように語りました。「金曜日の晩,会衆の監督は,翌日の土曜日に街頭伝道がある事を発表しました。私はこの特別の機会に喜び,参加する準備をしました。翌朝,たくさんの雑誌をもって集合場所に行きましたが,だれも来ていません。私はがっかりして,家に帰ろうと思いました。しかし年の聖句を思い出し,ともかくやってみることに決めました。その日に私は52冊の雑誌を配布し,たくさんの再訪問をし,研究を一つ始めました。その研究はずっと続き,よく進んでいます。私は街頭伝道の大切さをよく知りました。そして,自分ひとりでもゆくつもりです。」