『こうべを上げ』て救いを知らせる
エホバの証人の1969年度年鑑より
タイ
人口: 31,800,000人
伝道者最高数: 334人
比率: 95,210人に1人
バンコックにある支部は,タイ,カンボジア,ラオスおよびベトナムでの御国のわざを監督しています。戦争で分裂した現代の世界にあって,この地域一帯には対策を必要とする多くの困難があります。しかしそれにもかかわらず,エホバの証人は御国のよいたよりを引き続き宣べ伝えており,これらの国の人々に多くのなぐさめを与えています。
タイの伝道者は広い範囲に分散していて,その多くは仏教徒に囲まれた孤立した場所に住んでいます。会衆を離れて孤立した所に移り,霊的に弱くなった人がいます。しかし,つぎの経験が示すように,弱くならない人もいます。数年前,ある特別開拓者はタイの最北端に住む一人の少女に1冊の本を配布しました。この開拓者はそれからつぎの区域へ移りました。ところがこの少女は真理についてさらに深く学ぶためにわざわざバンコックまで行きました。少女はバプテスマを受けて故郷に帰り,一人で勤勉に伝道しました。その結果,一人の婦人が真理を受け入れバプテスマを受けました。最初に姉妹になったこの少女は,特別開拓者になって別の土地に移りました。しかし,2番目の姉妹である婦人は,孤立していたにもかかわらず何年ものあいだその霊的な状態を保って,定期的に野外奉仕をし,また自分の子供たちと研究をしました。子供たちは成長して野外奉仕に参加しはじめました。二人の息子は進歩したいと考えて大きな町に移り,そこで会衆と交わりました。この二人は浸礼を受けました。一昨年このうちの一人は数か月間休暇開拓奉仕をし,もう一人は現在正規開拓者です。娘は今年バプテスマを受け,現在正規開拓者の資格ができるまで休暇開拓奉仕をしています!
子供たちを導いたこの姉妹はそのめいとも研究しました。その少女は開拓奉仕のことを聞いた時から自分も開拓者になろうと心に決めていました。学校を卒業した時,真理に反対していた親族は学資を出してあげようと申し出ましたが,少女は断わりました。進学するかわりに会衆に交わってさらに真理を学び,開拓者の資格を身につけようとバンコックで仕事を見つけました。少女はすべての集会に定期に出席し,勤勉に宣教に参加しました。開拓者になる準備ができたと感じた時,パートタイムの仕事をさがしてみましたが成功しませんでした。少女はエホバに祈りを通して近づき,自分をエホバにゆだねて仕事をやめ,開拓奉仕をはじめました。少女はエホバの奉仕に従事したことを後悔したことはありません。最近の地域大会の劇でエフタの娘の役を一生けん命演じました。この少女は今では幸福な特別開拓者の一人です。
集会にはいつもおとなに交じって多くの子供が出席しますが,これはわたしたちの喜びです。真理が子供たちの心にどれほどしみ込むかを軽く見てはなりません。学校に行くようになる前に家で教えられていれば,子供たちはいろいろな事情のもとでどのようにすればよいかがわかるでしょう。
一兄弟は次のように書いています。「4歳になるわたしの子供が通っている幼稚園は仲間の園児の誕生会の最中でした。誕生会は休み時間に開かれました。全員がまるくなってすわり,バースデー・ケーキを食べながら『ハッピー・バースデー』の歌を歌うことになっていました。わたしの子供は先生に,エホバの証人がクリスマスや誕生日を祝わないことを話し参加するのを断わりました。そして一人で席をたつと幼稚園の階段に腰かけてミルクを飲みました。子供はバースデー・ケーキを食べたり歌を歌うことをきっぱりと断わりました」。
イエスは「わが羊はわがこえを聞き……彼らは我に従ふ」と言われました。一人の特別開拓者は町から18キロも離れた村に住む仏教徒の家族と数か月研究し,つぎの任命地へ移りました。その家の主婦は創世紀の創造の記録と「楽園」の本の最初の2,3章から非常な感銘を受けました。それで開拓者が来なくなると夫にタクシーで町まで行ってエホバの証人を捜してくれるように頼みました。この夫婦は一組の特別開拓者を見い出し,研究を続けました。まもなく開拓者はこの家族を大会に招待し,主婦はバプテスマを受けました。1年後にその家の長女がバプテスマを受け,まもなく休暇開拓をしました。後に夫も真理を受け入れてエホバに献身しました。夫は車を買うことを計画していましたが,その費用で大きなすばらしい,コンクリートと木材を使った御国会館を建てました。この御国会館は設備が十分整っており,特別開拓者夫婦のためのここちよいすまいが付属しています。1968年4月の献堂式には巡回大会がこの新しい会館で開かれ,12人がバプテスマを受け,188人が公開講演に出席しました。この家族の長女はもうかなり長いあいだ開拓奉仕をしています。
スペイン
人口: 31,343,800人
伝道者最高数: 6,686人
比率: 4,688人に1人
10年ほど前に一人の兄弟は,エホバにより効果的に奉仕する目的で,小さな町から会衆のない大きな都市へ妻子を連れて移りました。家族を養う責任があるのでその兄弟は開拓奉仕に参加できませんでしたが,急速に発展するその土地での伝道のわざにあずかれたことは兄弟にとってどんなに大きな喜びだったでしょう。現在までに4つの分会が組織され,それに加えて地方にも多くの群れができました。この兄弟は都市のしもべの一人として奉仕していますが,奉仕の数々の特権に関して現状を維持することに満足しませんでした,彼の長女が結婚し,その夫と孤立した区域で特別開拓奉仕をはじめると,家族に対する責任も軽くなりました。その兄弟は妻と残った10代の息子とともに奉仕の特権を拡大できないでしょうか。この神権的な家族はついに目標が達成されるまでそれを追い求め続けて,働き人を大いに必要とする大きな都市でふたたび奉仕しています。しかし今度は3人とも特別開拓者です。そして,さらにもう一つの会衆がまもなく組織されるでしょう。このように,一時は開拓奉仕を妨げる聖書的な義務があっても,家族全員で最大の奉仕をしようという精神を培うことはなんと大切なことでしょう。
多くの場合,特別開拓者の姉妹は新しい土地で奉仕を始め,将来の会衆の基礎を備えることができます。しかし,一家族が姉妹たちのあとからそこへ移り住み,会衆を組織するのを手伝うならば,それはなんと大きな助けとなるでしょう。そのような一つの例があります。開拓者の姉妹はある大きな都市で12人の伝道者の群れを作りました。そのために神権的な一家族がその区域に移転することができました。一家が移って以来,家族とその群れはなんという祝福を楽しんだことでしょう。その時から9か月のあいだに伝道者の数は60パーセント増加しました。この家族の頭はある資格を持つしもべであり,このしもべから今訓練を受けている兄弟たちが将来建てられる会衆のいろいろなしもべの務めを果せるようになるのもま近でしょう。一家の頭としてこの兄弟は,ここに移転してきたことが,家族全員の霊的状態にもよい影響を与えたと述べました。家族は宣教者が経験する喜びを大いに味わうことができ,また家族のきずなは密接になって事を一層円滑に運び,御国の関心事の拡大にできる限り参加するという共通の目標に向って努力を続けています。
すべての兄弟が他の区域に移転できるわけではありません,しかし,あらゆる証言の機会を利用すれば,いつも伝道されている区域からすこし離れた所に住む人にも音信は行きわたります。タクシーの運転手はしばしばこうした人々に証言することができます。タクシーの運転手をしているある人の話によれば,その人は1か月に76冊の本をお客に配布し,1年を通じて1か月に平均100冊以上の雑誌を配布しているということです。
つぎの経験からは,クリスチャンの良い行ないが永続的な効果をもたらすことがわかります。保険の外交員が保険証書をつくるためにある家を訪問しました。彼は協会発行の雑誌がテーブルの上に数冊あるのを見つけると,その雑誌はプロテスタント系のものですかと尋ねました。出版物がエホバの証人のものであることを聞くと,およそ6年前軍隊に招集された時に深い感銘を受けた経験を話しました。その時彼と同じ年齢の若いエホバの証人は与えられたいろいろな命令に従いましたが,クリスチャンの伝道者は政治の事柄に厳正中立の立場をとるので,軍部で働くことは良心的にできないと述べました。そして多くの嘲笑を浴びたにもかかわらず自らの立場を静かに保ちました。このように忠実を保つ人々とふたたび接することができ,この男の人はどれほどうれしく感じたことでしょう。この外交員は生命保険証書のことなどすっかり忘れて,夜がふけるまでつぎつぎに聖書について質問しました。つぎの日曜日にこの人は「ものみの塔」研究に出席しました。そしてその時にはすでにこのよい事柄を親族にも伝えはじめていました。夏の大会では神への献身をバプテスマによって表わしました。この人はつぎのように語っています。「わたしは死んだ時の保険証書を売るために訪問しましたが,永遠の生命という神のお約束のすばらしい保証を得ました」。