真の神を探し求める
[エルサルバドルの]ひとりの婦人は,幼い頃,イエス・キリストの父である唯一の真の神を知りたいとの強い願いを抱いていました。彼女はカトリック教徒として育ち,教会をあちらこちら巡ってむなしく神を尋ね求めました。その人は若い時に,非常に年上の,妻のある男性と生活するようになりました。彼女の生活はその男性を中心としていました。14年がたちましたが,エホバを知りたいとの彼女の願いは満たされていませんでした。その時突然その男の人が亡くなったのです。彼女の生活はその人と物質的な事柄とを中心にしていましたから,彼女には将来に対してひとすじの希望もありませんでした。彼女はどうすれば良いでしょうか。その時以来,婦人は不眠症にかかり,食欲がなくなってやせ細ってしまいました。人生には少しも意味がありませんでした。生き続けることを願うなら,真の神を見いださねばならないことを彼女は知っていました。それが彼女の唯一の希望だったのです。
ある日その婦人は大聖堂に行って神に祈りました。祈りは涙に変わり,婦人はさめざめと泣き続けました。彼女はそこに数時間いたのですが,何の慰めも得られませんでした。それで彼女はそこを去り,とある本屋に入って行くと聖書を一冊求めました。神はわたしたちに書き記されたみことばをお与えになった以上,きっとだれかがそれを理解しているはずだと考えたのです。それで彼女は教会を一軒ずつ訪ねて,聖書の秘義を解き明かすのを助けてもらえると自分が思ったあらゆる人と話し合いました。
その後,ある夕方,その婦人は近所の人のところへ行きました。彼女がそこにいると,ひとりの若い婦人が戸口に来ました。近所の人は彼女がエホバの証人だと知ると,その人の話を聞く気持ちがないと言いました。ところが,真理を探し求めていた人は戸口に走り寄って,若い婦人に,「聖書を理解するのを助けていただけますか」と尋ねました。証人にそれができたのはいうまでもありません。聖書研究はその晩から始まりました。彼女は真理を学ぶことにひどく飢えていましたから,10日の間毎日研究する取決めが設けられました。婦人は,来る日も来る日も神のみことばの知識を吸収していきました。彼女の生活は変化しました。何年かぶりに眠るようになり,食欲も取り戻しました。ほどなくして別人のようになった彼女は,しばらく後にバプテスマを受けました。今やその婦人は生がいにわたって探し続けたものをついに見いだしたのです。―「エホバの証人の1976年の年鑑」より