教える技術を向上させる ― 良い教え手を目指す
1 昨奉仕年度中,できるだけ多くの人が聖書研究を司会することが強調された結果,日本の聖書研究の平均は21万件近くに達し,大幅な増加が見られました。さらに喜ばしいこととして,1990年12月以降,ほとんどの月に1,000名を上回る伝道者の増加が報告されるようになりました。今ではかつてないほど大勢の奉仕者が弟子を作る業に積極的に取り組んでいます。そして今,わたしたちは良い教え手を目指すようにとの挑戦を受けて立つよう勧められています。
2 良い教え手となるための基本的要素: その一つは,研究生を良く理解し,個人的な関心を向けることです。イエスは,人が『神の像に創造された』ものの罪深い性向を受け継いでいることを理解し,個々の人の必要を十分に認めて忍耐強く教えてゆかれました。(創世記 1:27。ヨハネ 2:25)研究生が聖書を神の言葉として受け入れ,人類に対する神の目的は何か,また個人的に神の祝福にあずかるために何をしなければならないかを理解するには,多くの情報を取り入れ,種々の疑問に答えてもらう必要があります。人は,生まれ育った国や環境,世俗の教育や宗教の影響力によって,様々な人生観を持つようになります。したがって,霊的な関心の度合いや知的水準が異なる研究生に真理を分かつには,辛抱強さをもって霊的な富を進んで分かち合いたいという純粋な動機と願いを持たなければなりません。(イザヤ 50:4)イエスは弟子たちの理解力に限界があることを知っておられ,一度に多くの事柄を教えようとはなさいませんでした。―ヨハネ 16:4,12。
3 二つ目は,研究資料とそこに参照されている聖句に精通することです。司会者は単に質問に対する答えを知っているだけではなく,特定の主題のもとにある資料全体を把握していなければなりません。「律法の中で最大のおきてはどれですか」と問われたとき,イエスはためらわずに聖句を引用し,律法全体を二つのおきてに要約されました。(マタイ 22:36-40)それで,研究用の出版物の主題と各章との関係,章ごとの要点,聖句がなぜ,どのように適用されているかを把握しておくことは大切です。様々なタイプの研究生を教える際に用いる「見よ!」のブロシュアーや『永遠に生きる』の本などの出版物に是非精通するようにしてください。
4 三番目の要素として,わたしたちは研究生に聖書の真価を理解させ,「実際的な知恵」を分かち与えることを心から求めるべきです。イエスは,実際的な知恵を身につけた人を「岩塊の上に家を建てた人」にたとえられました。そのような人は,賢明で先見の明があり,永続的なもののために働き,破壊的な影響力にも屈しない人です。(マタイ 7:24,25)テモテ第二 3章15,16節は,聖書こそ真理に基づく正しい教理と行動の規準を教え,人の生活と思いの中で物事を正し,必要な教育を施す力を有しているものであることを明言しています。それで種々の問題を例として取り上げ,聖書の教えが人間の知恵とは比較にならない「実際的な知恵」を与えることを確信させてゆきましょう。学んだ事柄を自分の生活に適用してゆくなら,幸福な人生を送る上で聖書から最大の益を受け,しかも新しい世における永遠の命に至る道を歩むようになることを是非悟らせてください。―箴言 3:21,22。
5 このように,良い教え手となる三つの基本的要素を認識し,真剣に実践してゆくなら,やがて種々の教える技術を向上させることができるようになります。あなたは研究を司会しながら,何を,どのように,なぜ,どこで,いつ説明したらよいかを自然に学び取るようになり,時の経過と共に,イエスの教え方の特徴となった,平易さ,例えを用いること,意味深い質問を投げかけることなどの技術を習得してゆくに違いありません。
6 良い教え手であることの報いは大きなものです。というのは,エホバが引き寄せておられる羊のような人々に神の言葉の真理を教えるという奉仕にあなたが用いられているからです。そしてそのような奉仕は,『あなたとあなたのことばを聴く人たちとを救うことになるのです』。―テモテ第一 4:16。