“ベストセラー”
“ベストセラー”とは一般の人々のあいだで異常なほど大量に売れている本のことをいいます。厳密にいって,古今最大のベストセラーとはただ1冊,すなわち聖書だけです。聖書はその全巻もしくは一部が1,400以上の言語に翻訳され,何十億冊も売られてきました。これに比べれば,他のどんな本もせいぜいのところ,いわば“グッドセラー”(よく売れる本)にすぎません。
今日,ベストセラーのリストはたいてい,フィクション(虚構に基づく小説類)とノンフィクション(虚構でない話)の二つに大別されています。では,どのようにしてそうしたリストが作られるのですか。
書店が売った各の表題の本の実数を報告するのでしょうか。そうではありません。そうするには時間がかかりすぎます。米国最大の書籍チェーン・ストアの一つの副社長は,書店からの報告は,“気持ち”を伝えるものであることを指摘して,次のように書いています。
「ベストセラーに関する書店からの報告は直観,“気持ち”,希望,愛情,さらには嘆かわしいことに,まだ売れないが売れると期待されている本の売れ行きをよくしたいという要求,もしくは欲求によって作り上げられている。……ベストセラーのリストなるものは,書籍の販売者自身にとって驚きとなる事柄で満ちている。自分の店では週中1冊も売れなかったり,あるいはほんのわずかしか売れなかったりした本がそうしたリストに載せられているのはいかにも奇妙である。その種のリストはある表題の本が先週全国で18,000冊,今週は全国で23,000冊売れたなどと数字をあげることは決してしない。出版者はそうした情報を提供してはいないのである。……
「そのリストに関して真に興味深いのはそれに載せられていない本のことである。……書店は小説や一般的なノンフィクションものについて自動的に報告する。……が,ベストセラーとして取り上げられるべきなのに,決してリストに載らない入門書や“手引き”の世界が全然取りざたされずに存在しているのである」。(ザ・ライター誌,1968年1月号)したがって,料理の本など相当量売れても,ノンフィクションものの週間ベストセラーのリストには載せられません。また,普通,聖書や教科書類もそうしたリストからはずされます。それでも,聖書の重要な新しい翻訳が発行されると,それはベストセラーとしてリストに掲げられることがあります。
価格の安い紙表紙の本が発行されるようになって,多数の本の売り上げは大いに伸びました。たとえば,堅い表紙に付したフィクションものの本はわずか何万冊しか売れないのに,紙表紙の同じ本が何百万冊も売れることがあります。特に,探偵小説や性やサディズムを取り上げたものの紙表紙の本はよく売れています。
この20世紀はこれまで以上に多くの本が出版されています。では,フィクションあるいはノンフィクションを問わず,今世紀に書かれた本すべてのうち,最も多く頒布されているのはどんな本でしょうか。その正確なリスト,たとえば,世界の十大ベストセラーのリストを作るには種々の問題があります。宗教関係の出版物の中には,広く頒布されながら,その数字が得られないものもあるからです。さらに,共産圏の土地でベストセラーとされている本の頒布数は容易には入手できません。しかし,たとえば「ギネス・ブック・オブ・ワールド・レコード」の記録を見ると,「ペイトン・プレイス」が1965年末までに9,915,785冊(その大半は紙表紙版)売れたとして,フィクションのベストセラーとされています。ノンフィクションの部としては,合計2,200万冊売れた「赤ちゃんと子どもの世話にかんする常識書」(英文)がベストセラーの筆頭に掲げられています。その部数は今では2,300万冊に達したとされています。
しかしながら,頒布数のさらに多い本があります「とこしえの命に導く真理」と題する聖書の手引きは,1968年6月以来,67か国語に訳されて,その頒布数は3,500万冊に達しています。
前ページの表は,ノンフィクションの書物のうちの十大ベストセラーを示していますが,その中の6冊は聖書に基づく本であり,それらはエホバの証人によって頒布されています。
聖書が古今を通じての世界のベストセラーであることを考えれば,前ページのリスト中の1位を占めるベストセラーが,聖書がいったい何を述べているかを説明する本であるというのは,たいへん当を得たことといえるでしょう。エホバの王国を人類の唯一の希望として強調するそれらの本が,あらゆる本の中でも最も広く頒布されているということを知るのは,神のみことばを愛する人々にとって励みとなります。
[19ページの図表]
(正式に組んだものについては出版物を参照)
世界のベストセラーa
出版物の表題 国語 頒布数
1. とこしえの命に導く真理(1968年) 67 35,000,000
3. 赤ちゃんと子どもの世話にかんする常識書(1946年) 23,000,000
3. さし絵つきラルース新小辞典(1906年) 20,000,000
4. 「神を真とすべし」(1946年) 54 19,246,710
5. より良い家庭の料理の本(1930年) 14,800,000
6. 失楽園から復楽園まで(1958年) 59 13,097,668
7. 進化と創造 ― 人間はどちらの結果ですか(1967年) 11 11,580,153
8. 聖書はほんとうに神のことばですか(1969年) 18 11,079,468
9. ポケット地図書(1917年) 11,000,000
10. 「神が偽ることのできない事柄」(1965年) 34 9,984,234
[脚注]
a 20世紀に書かれたノンフィクショの本の中のベストセラー。この表は,おもに「ギネス・ブック・オブ・ワールド・レコード」およびものみの塔聖書冊子協会から得た頒布数に基づくものであり,別の典拠に基づく表はこの表と同じではない。