世界展望
魚の不足
◆ 世界中の一流の漁船団の漁獲高はますます減少している。最近,アイスランドと英国はかつて共同で使用していた北大西洋水域の漁業権をめぐって争っている。1961年には,両国は合わせて11万㌧のタラを捕獲したが,現在では1年間に約4万㌧である。アメリカのニューイングランド沿岸沖で数か国の漁船団が捕獲しているタラ,小タラ,スズキ,ニシン,小エビなどもますます少なくなっている。ペルーは1970年に1,230万㌧のアンチョビー(カタクチイワシ属の小魚)を捕獲したが,1972年にはわずか450万㌧にすぎなかった。サイエンティフィック・アメリカン誌によると,ペルー近海の「今年の漁獲高はさらに減少する恐れがある」とのことである。
正直に関する2つの規準
◆ カナダのブリティッシュ・コロンビア州の製油所から,過去数年間に100万㌦(約2億6,000万円)以上にも相当するガソリンが盗まれた。製油所の作業員と仲買人が盗みの容疑で訴えられた。製油所で働いている170人の従業員のうち,「それら悪徳者たちを通報することは市民としての自分の義務であると考えた者は……ひとりもいなかった」と,カナディアン・タイム誌は述べた。しかし,製油所の近くのフォート・セント・ジョンのある食肉卸業者は,「今でも,正直な人がいることを知って非常に喜んでいる」と,アラスカ・ハイウェー・ニューズ誌は伝えた。彼はうかつにもトラックの上に置いていた現金のはいった箱を風に吹き飛ばされてしまい,3,000㌦(約78万円)近くを失った。その日に,ひとりのエホバの証人がその箱を見つけて,持ち主のところに届けた。証人は,「自分のものでもないものを着服するのは,わたしの良心が許しません」と説明した。
変化する献立
◆ アメリカでは,牛肉の値段が驚くほどの勢いで高騰しているため,牛肉から他の食品に切り替えつつある家庭もある。「わたしたちはたくさんのサラダと,力のつくスープをメインコースにすることがしばしばです」と,フロリダに住むある主婦は語っている。また,ペンシルバニア州の一婦人は,「わたしたち夫婦は菜食主義者になりました」と言った。この夫婦は大豆といんげん豆を食べて問題に対処している。「こんなにからだの調子がよくなったことはありません」とその婦人は付け加えた。
弱まる神学校の影響力
◆ アメリカの7つの主要な神学校は,「価値の危機」に対処するため,4,200万㌦(約109億2,000万円)の募金運動を行なっている。これらの神学校の当局者たちは,神学校の教育は今日の世界においてもっと大きな「影響力」を持つものにされねばならない,と考えている。この計画に関して,クリスチャニティ・ツデー誌は適切にも次のような問いを発している。「価値の危機が進展していた時,それらの神学校はいったい何をしていたであろうか。……神学校には有力な立場にあるおおぜいの卒業生を用いて,わが国に適正な霊的指導を与える機会があったが,彼らはその機会をのがした」。
「積極的な」僧職者
◆ 米国のある保険会社の社長は同国の僧職者の収入を調査した後,それら僧職者たちは「適切な給料を要求する積極性に欠けている」と述べた。しかし,次のようなクリスチャン・センチュリー誌の報道からもわかるように,アメリカの僧職者のすべてがそうであるわけではない。同誌は次のように報じた。「長老派教会の5人の牧師は年間3万5,000㌦(約910万円)以上の給料を得ている。(そのうちの最高は4万2,000㌦[約1,092万円]であった。)3万㌦(約780万円)から3万5,000㌦を得ている僧職者は8人おり,33人は2万5,000㌦(約650万円)から2万9,999㌦の収入を得ている」。
教会は引き続き衰退している
◆ アメリカの諸教会は引き続き会員数の減少をきたしている。アメリカ・教会全国会議編「アメリカ・カナダ教会年鑑」1973年版には,主要な「進歩的」教会の大半が1971年に教会員の新たな減少を報告したことが示されている。興味深いことに,「保守的」な教会も会員数が減少するか,以前に比べてごくわずかな増加がみられただけであった。全体的に見て,教会員数の増加は過去100年ほどのうちで最低であった。教会またはユダヤ教の会堂に所属するアメリカ人の割合は(1970年の)63.2%から(1971年の)62.4%に低下した。同期間中の人口の増加は約1%であった。1971年に会員数の増加がみられた中できわだっていたのはエホバの証人で,その増加は7%以上であった。同年鑑の編集者C・H・ジャケット二世は,「増加の答えは,出かけて行って自分の考えを語るその闘志にあるようだ」と述べている。
『教会の理事会に粗野でたくましい人びとを』
◆ カナダ合同教会の大会議長,ブルース・マクレウドは次のように述べている。「われわれは,教会の理事会の役員に是が非でもなるという意気込みの粗野でたくましい若者たちをさらに多く必要としている。……若い人びとがわれわれの教会の重要な立場を占めるようになることは緊急に必要である」。しかし,『粗野でたくましい人びと』が「柔和で謙そんな」キリストをどのように代表できるというのだろう。興味深いことに同教会は,過去10年間に増加どころか,約1,300か所の「伝道地区」で教会員が減少したことを報告している。
「意義のない」宗教
◆ 「信仰生活はますます意義を失いつつある。というのは,宗教はアメリカにおいて新しい役割,つまり非宗教的な役割を果たすようになったからである」と,U・S・ニューズ・アンド・ワールド・リポート誌の会見記事の中で,文化および哲学の教授,ウィル・ハーバーグ氏は述べている。同教授は,アメリカはいわゆる「市民宗教」を作り上げたとも述べた。同教授は例として大統領就任式を取り上げ,次のように述べた。「そこでは,ちょうど古代都市アテネで行なわれた行列におけると同様に,市民宗教の伝統的役割を力強く果たしている兵士や僧職者の姿が見られた」。
売りに出された武器
◆ ある国が戦争から手を引くと,その国の兵器製造業はどうなるだろうか。ワシントンの一著述家によると,アメリカの航空機および兵器製造会社は外国の軍隊に軍事兵器を売却するためのいっそう自由な政策を強く求めている。制限が緩和されたため,ラテンアメリカの5か国は超音速戦闘機を購入できるようになった。前述の著述家は次のような問を発している。「財力の乏しい開発途上諸国の支配勢力に,その国の限られた財源を使い果たしてしまうような新しい軍事兵器を売りつけようと,裕福な先進諸国が競い合っているのを見るのは,とりわけ心が痛まないであろうか」。
霊的な応援団長
◆ カトリックの著述家ウィリアム・J・ワレンはセント・アントニー・メッセンジャー誌上で,教会と国家の関係について次のように述べている。「非常に密接な関係にあるので……司祭や牧師は霊的な応援団長となっている。キリスト教の諸教会は,政府の指導者たちが決定する戦争や危険な企てをすべて祝福するという印象をしばしば与える」。アフリカの2つの国を血に染めた,部族間の殺し合いはこの事実をいっそう明らかにしている。最近のニューヨーク・タイムズ紙に掲載された記事は,「両方のグループの成員は僧職者として多くのカトリック教会で働いている。さらに,両国とも人口の約半数はクリスチャンである」と述べている。
「キリストのため」?
◆ 「私は目的のための手段として空手を使う」と,バプテスト派の教育を受けた牧師マイク・クレインは述べている。「悪鬼らは人びとを教会から引き離すのに策略らしい策略をほとんど用いない。私は人びとを教会に留めておくために空手を用いる。……私は空手を使う合間に宗教や麻薬の使用に関する考えをつぎ込むのである。それは非常に効果的である」。「平和の君」の代表者をもって自認する同牧師は,「もし,人びとにキリストを教え込むことができないのなら,彼らの中から悪魔をたたき出さなければならない」と述べている。彼はキリストのための柔道および空手協会の会長である。
エネルギー消費量の比較
◆ 全米石油精製業会の年次総会で,ある話し手は,「アメリカは空気調節装置だけで中共の全電力消費量を上回るエネルギーを消費している」と述べた。その結果生じた窮状は,「通商上の価値規準を急速に金からエネルギーに変えつつある」と,ドウ・ケミカル・カンパニイの一エネルギー専門家は述べている。たとえばニューヨークでは,夏の暑さに伴う空気調節装置の電力消費に対処するため,電力会社の送電電圧を定期的に下げざるを得なくなっている。
ガソリン不足の犠牲者
◆ ガソリン危機は最近,アメリカ,カリフォルニア州,オークランドでひとりの人間の命を奪った。前日に自分の自動車の燃料タンクにガソリンを満たして行った男が再びガソリンを求めに来たので,ガソリンスタンドの従業員はそれを断わった。怒ったその男は従業員を撃ち殺した。
「薬物嗜癖にかかる」アメリカ人
◆ ウィスコンシン州選出のアメリカ上院議員G・ネルソンが述べているように,大勢のアメリカ人が,「薬を必要としているか,いないかにかかわりなく,薬物嗜癖にかかっている」ことを示す多くの証拠が明らかにされている。医師の処方した錠剤の影響によるだけでも,おそらく約100万人のアメリカ人がバルビツール酸塩に対する嗜癖に落ち入っている。その結果,毎年2,000人ほどの人が死亡し,他にも多くの人が狂暴になったり,壊疽になって肢体の一部を失ったりしていると言われている。医師について論評した,ウォールストリート・ジャーナル誌は,「医業はアメリカで最も安易に薬を提供する組織の一つ」であると述べている。1ないし5%の医師がバルビツール酸塩もしくはアンフェタミンに惑溺していると考えられている。一般人の間での割合(ヘロインも含める)は0.3%である。医師の間で割合が高い主要な理由の一つは,容易に薬が手にはいることであると考えられている。
安全運転を
◆ 昨年,アメリカでは6万275人が交通事故で死亡した。これは1971年の2.4%増加に当り,同国では史上2番めの記録であった。そのうち,高速道路での衝突事故による死者は5万5,000人以上にも上った。
オーストラリアの汚染
◆ オーストラリアン・ニュース・サマリー誌の報道によると,毎年約1,200万㌧の汚染物質がオーストラリア大陸の大気中に侵入している。メルボルン大学の行なった最近の調査に基づくこの数値は,汚染物質の量がオーストラリアの住民ひとりにつき1㌧近くにもなることを示している。