世界展望
幕を閉じた一連の大会
◆ エホバの証人の“神の勝利”国際大会は,1月下旬に終了した。この一連の大会は,昨年6月に(アメリカ)ミシガン州のデトロイト市で始まり,その後アメリカ大陸,ヨーロッパ,東洋およびアフリカの諸都市,また太平洋の島々で開催された。ナイジェリアの大会の出席者数は,最近の報告の中でもきわだっていた。ナイジェリアで開かれた3つの大会に合計21万4,027人が出席し,7,153人がバプテスマを受けた。アフリカではまた,ガーナのアクラで開かれた大会に3万7,612人が出席した。ブラジルのサンパウロには9万4,586人が集まり,ベネズエラのバレンシアでは出席者は2万1,752人に達した。また,オーストラリアのシドニーの大会には,3万4,447人が出席した。大会の出席者数が,その地方のエホバの証人の総数をはるかに上回ったところは少なくなかった。なぜだろうか。ブラジルの新聞,ノティシアス・ポピュラレスの社説にその答えの一部を見いだせる。同紙は,「伝統的な宗教が消え去ろうとしている」点を指摘し,次いでエホバの証人について,それとは対照的にこう報じた。「彼らはほんとうに自分たちの信仰に基づいた生活を送っている。国籍の違いは証人たちの間に分裂を起こすことはない。なぜなら,証人たちはあらゆる人種また階層の人々から成っているからだ。……彼らの信仰は単なる形式的なものにではなく,現実の希望に基づいている。エホバの証人は聖書を毎日勉強しており,その信仰は聖書の知識とこうした探究とに基礎を置いている。このように彼らの信仰は,おびただしい数の人々およびその家族をとりこにしている今世紀の激しく吹き荒れるこの世的な旋風に強く抵抗するものとなっている」。
窮地に立つ食糧問題
◆ いわゆる裕福な国に住む人々にとってさえ,日ごとの食物を得ることはしだいに難しくなっている。多くの食糧品の価格は相変わらず高騰している。アメリカのワシントン州は農業地帯として知られているが,同州のシアトルでは,玉子の価格が高騰しており,昨年の7月に1ダース66セント(約198円)だったものが,それから6か月後の今年の1月中旬には82セント(約246円)になった。かん詰のいんげん豆は34セント(約102円)であったが,1月には49セント(約147円)になり,44%も値上がりした。
1か月分の食糧
◆ 1973年の一時期に,全世界の小麦備蓄量の合計が,明らかに世界の小麦消費量の1か月分をわずかに上回る程度にまで減少したことがある。ある地域では,思いがけない豊作のために当面の危機は回避できたが,燃料危機と深くかかわり合った長期的な問題が残っている。比較的貧しい“開発途上国”が大きな打撃を被るであろう,と考えている専門家は少なくない。これらの国々には,石油,および石油価格にスライドして騰貴している工業国の製品の値上げ分をまかなうだけの財政的余裕がない。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によると,ある専門家は,肥料,食料品およびガソリンに,開発途上国にとって「けたはずれの高値がつけられている」ため,飢きんによる「荒廃」が生じる,と予告している。
エネルギーの“肥満体”
◆ 英国のエネルギー問題の専門家ハービー・モーリスは,過去に安い値段で好きなだけ燃料が手に入ったため,アメリカ人はエネルギーを使い過ぎてエネルギーの“肥満体”になってしまった,と語っている。そして,次のように言い切った。「あなたがたアメリカ人は真のエネルギー危機に直面しているのではない。それは単に浪費の問題である」。モーリス氏によると,彼が調査したヨーロッパの工業用および家庭用燃焼装置の大多数は30年も前からのものであり,こうした装置の燃料ロスはわずか10ないし15%であった。「ヨーロッパで通常使われている複雑な装置は,アメリカで製造され[輸入され]たものである。アメリカでは,これまでこうした装置を必要としていなかったのである」と同氏は語った。アメリカ人は,休暇の旅行や種々のスポーツを中心としたレジャーにも昨年,306億6,000万㍑の石油を消費した。
内部からの崩壊
◆ イタリアの一司祭は,教皇にあてた自分の手紙を広く一般に公開した。その中で同司祭は,自分の教区内の貧しい人々が無視されている点を指摘して,教皇パウロを非難している。同司祭によると,真のカトリック信者はごくわずかしかおらず,ローマ・カトリック教会は,女性の2%が売春婦から成る“暴力の学校”と化しつつある。また,麻薬が「弱い者たちののがれ場」ともなっているとのことである。ここ数週間に,イタリア各地の諸教会から寄せられたニュースには,きわめて批判的なものが多い。コリエレ・デラ・セラ紙は「目につく,ミラノの聖職者の間の不一致。100人を数える反抗的司祭」という見出しを掲げた。ル・ヨーロペオ紙は,著名な神学校の神学者アンブロギオ・バルセクチが信仰をあからさまに否認したと報じている。また,イル・メヅゾギオル紙によると,司祭に叙任されることが決定しているアベザノの一司祭が,儀仗兵を伴ったぜいたくな就座式に反対しているとのことである。同司祭は,そうした儀式を,「なんとか生き延びることと,『名士』の間で良い評判を得ることだけに関心を払っている教会の犯している罪」と呼んでいる。また同司祭は,「福音を売りものにしている」点を激しく非難し,さらにこうも語った。「われわれはもはやクリスチャンではない。いや,これまでにもクリスチャンであったことはないのだろう」。
喫煙の傾向
◆ アメリカ・ガン協会によると,過去10年間に1,000万人のアメリカ人がタバコを飲まなくなった。しかし,喫煙者の数は5,000万人から5,200万人に増えた。しかも,少女を中心とした(12歳から17歳までの)子どもの間の喫煙率が上昇している。皮肉なことに,ラジオとテレビによるタバコの宣伝が禁止されて以来,喫煙率は3%増加した。
輸血による恐怖
◆ ウィースバーデナー・クリール紙によると,昨年ドイツのキール大学付属病院で,輸血によって二人の赤ん坊が梅毒に感染した。梅毒はさらに親にも伝染した。感染源を知らなかったため,これらの家族のうち少なくとも一家族は,家庭が崩壊する憂き目に会った。配偶者は,互いに相手が不忠実になったと非難した。法廷で真実が明らかになったものの,この家族はすでに大きな痛手を被ってしまった。「真実を知ったら恥ずかしくなるようなことを,二人は互いに言い合ったのであろう」と,同紙は報じている。
臓器移植のもたらす,より複雑な併発症
◆ 臓器移植を受けた人のガン罹患率が一般の人の100倍にも達することが最近報じられた。しかし,コロラド大学付属病院のウォルフ・M・キルシ博士によると,脳腫瘍の発生率は「約1,000倍」にもなっている。新しい臓器の拒否反応を抑える抗生体反応療法を長期間続けると,しばしば患者は「病理学的方法」の犠牲者になる,と同博士は語っている。こうした患者が回復する見通しはきわめて暗い」。
農夫が直面する挑戦
◆ 食糧の需要は増えている。またそれとともに,農夫も問題に直面している。その一つは,耕作地の価格が高騰している点である。経済学者C・K・ランダルは,米国農務省が開催した最近の農事予想会議で,農地の実質価格が昨年の11月までの1年間に全国で20%も記録的に上昇したことを示す報告がある,と語った。
農業専門家たちは,作物を改良して,病害に強い新しい品種を作り出そうとしている。しかし,新しい品種の小麦を栽培してテストするには,普通10年以上の歳月を要する。たいていの場合,この期間の半分つまり5年ほどで新品種の作物は病害によって実質的に収穫量が激減してしまう,と報じられている。
“ブラッド・マネー(血の報償金)”
◆ インドの厚生大臣の話によると,世界保健機構は,アメリカの会社10社がインド人の血液を不法に輸入して,年間1億5,000万ドルもの収益をあげている,との報告を発表した。同大臣は,「こうした密貿易を未然に防ぐために,[関係当局が]きわめて慎重な」調査を行なうよう求めた。