世界展望
衰える信頼感
◆ 米国では,主要諸機関の指導力に対する信頼が低下しつつある。1975年後期に行なわれたハリス世論調査で,平均的な成人を対象に,12の主要機関に対しどれほどの信頼感を抱いているかを尋ねたところ,テレビのニュース報道に対する信頼以外は,すべて著しく低下していることがわかった。例えば10年前には,インタビューの対象となった人々の55%が大企業を信頼していると答えたが,今回そう答えたのはわずか19%であった。医学の分野の場合,信頼度は同期間に72%から43%に低下した。軍隊に対する信頼は62%から24%へと薄くなり,また,政府の行政機関のそれは41%であったのがわずか13%に落ち込み,議会もそれにほぼ等しかった。こうした結果は,米国人が指導者の不在を感じていることを物語っている。
トウモロコシの“落穂拾い”
◆ 米国イリノイ州のある大学生たちは,刈り取り機による通常の取り入れの後,畑に残されたトウモロコシを数百ブッシェルも拾い集めた。彼らはこのトウモロコシを1ブッシェル約3㌦で売り,その資金を,世界の飢えた人々に食糧を与えるための民間救援機関への寄付に当てた。一人の学生は,もしトウモロコシを手で拾わないならそのまま腐って,やがて土と一緒に耕されてしまう点に注目し,こう語った。「これは,現代の機械化農業の浪費を表わす一例にすぎない」。農業専門家によると,米国では,トウモロコシの出来高57億ブッシェルの約5%が複式収穫機による収穫もれとなっている。
大会社の倒産
◆ 米国のW・T・グラント社は連邦破産法に基づき会社更生法の適用を申請したが,これは小売業では米国史上最大の倒産であった。40州に1,000余りの支店を持ち,昨年の売り上げが17億6,000万㌦(約5,300億円)だったこのチェーンストアは,負債が資産を超えたため倒産した。日本でも一流の繊維会社である興人が,財政難に陥り倒産した。日本では第二次世界大戦後,最大の倒産であった。これら二つの会社は,近年アメリカやヨーロッパで倒産した多数の大会社と同じ道をたどった。間もなく同じ道をたどろうとしている会社も少なくない。
口火の浪費
◆ 米国の天然ガスは不足しつつある,と言われている。ところが,ニューヨーク州公益事業委員会が最近計算したところによれば,ガス器具の口火によってニューヨーク州だけで浪費される天然ガスの量は,22万世帯の年間需要を満たすに足るものである。しかし技術者たちは,口火を消すならガス器具の安全性が失われると警告している。また,ガスの口火の装置と電気点火装置を取り替えるには多額の費用を要する。そのために,新しいガス器具を購入する際には,電気点火装置の付いたものを選ぶように勧められている。だが,自動湯沸器の口火はそれほどガスを浪費しない。口火の熱は,むだになるというよりも,湯の温度を保つのに役立つからである。
死のセールスマン
◆ 最近,米国ワシントン特別区で行なわれた空軍合同会議は,兵器製造業者に新型商品を展示することを許可した。国会議員や軍人たちは,「爆弾とまばたきする光とが入り混じり,主催者側のある人の言葉で,最も致死的な兵器がさながら“練り歯みがきやネクタイピン”のように荷造りされたり売り込まれたりする所」とタイム誌の評する光景を見た。そこには,モデルや実演者や熱心なセールスマンがいた。ある展示場では,客が“爆弾”を落とすこともできた。「製品の目的は殺人にあると指摘してお祭り気分に水を差すような者は一人もいなかった」とタイム誌は述べている。
薬剤を用いない安眠法
◆ 牛乳,肉,チーズなどに見いだされる天然のアミノ酸が,睡眠を促すために多くの人の使う惑溺性の鎮静剤に取って代わる日が来るかもしれない。1-トリプトファンと呼ばれるこのアミノ酸は,実験の対象となった人々に投与されたが,その人たちは通常の約半分の時間で眠りに就き,それ以前より45分も長く眠った。研究者たちは,1-トリプトファンがどう作用するかについてまだ十分理解していないが,脳の中の睡眠と関係のある化学物質の生産を促すのかもしれないとの説を立てている。乳製品に1-トリプトファンが豊富に含まれているという事実は,「寝る前に温かい牛乳を一杯飲むと,よく眠れると言う人が多い理由を説明するかもしれない」とニューズウィーク誌は伝えている。
裏目に出た人生哲学
◆ 今日,言動の面での自由が増大したことによって,多くの人の予告のように,精神病者や自殺者の数は低下したであろうか。シカゴ大学の精神医学部長ダニエル・フリードマン教授は,否,と答え,むしろ,そうした自由は,『その両者の増加率を引き上げたとも言える』と主張している。フリードマン教授によれば,今日の人々に負わされた,「善悪に関して自分で決定する」という重荷は,社会が「道徳や作法の同じ規準を広く受け入れていた」時には存在しなかった精神的圧迫を生み出した。
不況のあおりを受ける刑務所
◆ 英字読売新聞は,「経済不況は刑務所内の労働にも影響を及ぼしている」と伝えた。過去一年間に,「日本全国65か所の刑務所で300件の[仕事の]注文が取消されたり削減されたりした」。ある刑務所では,昨年四月以来,自動車部品の注文が三分の二も減少した,と伝えられている。最近では,外部の会社との契約で,仕事を行なう代わりに,『通常の作業時間中に度々スポーツ活動に携わる』囚人たちもいる。
当てにならない相談員
◆ 米国ミシガン州の長老教会の牧師トーマス・カークマンは,別居したり離婚したりする僧職者の増加している点を指摘している。多くの場合,彼らは僧職を辞し,別の仕事に就く。「これら元僧職者十人のうち九人は,“結婚問題の相談員”やもめごとの調停員,あるいは社会奉仕者としての仕事を見付ける」とカークマンは述べた。自分の問題を解決できない人が,他の人の問題を解決する仕事に従事することに関し,カークマンはどう見ているだろうか。「彼らがある科目を“落第”しながらその“科目”を人に教える立場に格上げされたように思えてならない。……“罪人”が“教師”になるのと似ている。教師とは,自分の教える事柄を自ら行なえる人だと考えたい。キリスト教の寛容さを否定するつもりではないが,よく事故を起こす人に“自動車運転教習所”の指導員になってもらいたくないのである」。
胎児を守る
◆ 妊産婦は胎児を守るために,過度の飲食や喫煙を避けるようにと長い間勧められてきた。最近,ジョンズ・ホプキンス病院の二人の研究員は,一年余りにわたる実験の結果,喫煙する妊産婦はその胎児をある意味で窒息させていると述べた。その発表によると,紙巻きたばこを吸うことにより,酸素の代わりに有害な一酸化炭素が,母親の血液から胎盤を通って胎児の体内に入る。イリノイ大学の別の研究では,一日に六杯以上のコーヒーを飲む妊産婦の場合,流産,子宮内死亡,死産の率が高くなることを裏付ける証拠が,不十分ながらもある,としている。
自動車の爆発的な売れ行き
◆ 昨年,西側の大抵の国では新車の販売数の減少が見られたが,ペルシャ湾に面する石油で豊かになったアラブの首長国アブダビでは新車をすぐ入手するのが困難な状態である。当地の新車販売店では供給が需要に追い付かないとこぼしている。同国の人口は6万人足らずだが,石油による収入は一日に90億円を下らないと推定される。現在,一か月に約1,200台の割で新車が登録されている。ところが予備の部品が不足しているため,車が故障するとさばくに捨てられる場合が多い。一通信員の伝えるところによると,アブダビからドバイに通じるハイウェイ沿いには,部品がないためスクラップにされた車や,事故にあった車の残がいなどが捨てられているのが見られる。この国では車がどれほどガソリンを食うかということは問題にならない。
安い入院費
◆ 西欧諸国では医療費が急騰しているが,中国を訪れて治療や手術を受けた人々の伝えるところによると,世話が行き届いている上治療費が極めて安い。シアトル・タイムズ紙は,ニューヨークであれば,約2,000㌦(60万円)と一日当たり100㌦(約3万円)の入院費を取られる目の手術を受けた一アメリカ人のことを伝えた。ところが中国で受けたその手術は,外科手術,麻酔,入院費を含めてわずか15㌦(4,500円)足らずの費用で済んだ。食費は別払いだったが,それも一日三食で50セント(150円)足らずであった。
膨張する宇宙
◆ 幾十年もの間,科学者は,畏怖の念を起こさせる宇宙の起源と将来について論じてきた。近年,科学者の間で最も広く受け入れられている説によると,宇宙は,遠い昔に最初の“大爆発”を遂げて以来,今日に至るまで膨張し続けている。やがて引力により宇宙は再び“収縮”し,もう一度“大爆発”からやり直すだろう,と考えていた人もいる。しかし,さらに進んだ研究の結果,そのようなことは起こりそうもなく,宇宙が膨張し続ける可能性のあることが明らかになった。ナチュラル・ヒストリー誌はこう説明している。「不確かな点が残っているので決定的な答えとは言えないが,この研究方法の示すところによると,恐らく宇宙には膨張を逆行させるに足る十分の物質がないということになる」。同誌はさらにこう続けている。「もし,これがデータを正しく解釈しているという点が証明されるなら,将来膨張する宇宙をもとに戻すほどの引力が働くことはなく,宇宙は永遠に膨張し続けるであろう」。
女性の家出人の増加
◆ 15年前,問題や欲求不満のために妻子や家庭を後にして家出をするアメリカ人の男性の数は,女性の場合の約300倍であった。ところが,米国トレーサーズ社の語るところによると,一昨年家出した女性の数は男性とほぼ同数であった。また昨年の報告ですでにまとまっているものによると,男性の二倍の数の女性が家出をしている。しかし,身の安全に対する恐れや孤独感のため,これらの女性のほとんどは家に戻るか,家族に連れ戻してもらえるように発見されやすい所に現われるかのどちらかである。
巨大な野菜
◆ 英国ウイラストンの園芸家コリン・ボウコックは,ギネス世界記録事典に七回登場する。何に関してだろうか。巨大な野菜を栽培することである。彼は注射をすることによって植物に養分を与えると言われている。その並はずれた結果をもたらしたものが何であれ,ボウコックは,15㌔余りのセロリーや43㌔のキャベツなどの巨大な野菜を栽培した。
略奪に遭ったケルン大聖堂
◆ 昨年11月の初め,ケルン大聖堂の貴重品室に泥棒が入った。真夜中に押し入ったこの泥棒たちは,数億円相当の金銀宝石を盗んだ。略奪されたものの中には,九人の司祭の指輪,宝石をちりばめた十字架,そしてダイアモンドで飾られた,16世紀の大皿などがある。泥棒は,貴重品室に至る通風口から押し入った。