世界展望
日光と健康
◆ 米国のコーネル大学における最近のある研究は,日光に似せた光線の下で勉強した学生は,普通の人工照明を使用した学生より疲労が少なく,視力がよいことを明らかにした。また別の研究では,マサチューセッツ州ボストンの近くにあるチェルシー癈兵院の年輩の男子を,数週間にわたって,昼の間屋内にとどめておいた。彼らは二グループに分けられ,一方のグループは(紫外線を加えることによって)日光に似せた電球を使用し,もう一方のグループは普通のけい光燈を使用した。その結果はどうだっただろうか。日光に似せた照明を用いた人々のほうが,健康状態が優れていることが分かった。一つの点として,日光に似せた照明を用いた人々の体内では,カルシウムがより有効に利用されていた。したがって,毎日,日の照っている時間にしばらくの間だけでも屋外に出るのは,良いことであると思われる。
減少する輸血
◆ 西ドイツのキール大学産科が五年にわたって観察した結果,とりわけ貧血症患者に対する輸血の回数がはっきりと減少していることが分かった。同大学のH・アンゲル博士の最近の報告書は,その点を明らかにしている。メディカル・トリビューン・ワールド・サービス誌も,同博士の報告書に基づいて次のように記している。「輸血によって血清に敏感になる危険を考えれば,とりわけ出産適齢期の女性の適応症を減らすための厳格な処置を取るよう促されるはずである。キール大学の産科は女性患者527人の輸血に対する適応症を調べたところ,実施された輸血のうち,絶対に必要だったものはわずか63%にすぎなかったと報告している」。もちろん,聖書に従って行動する人にとって,輸血が「絶対に必要」なことなど決してない。こうした処置は神の言葉に反するものだからである。―創世 9:3,4。使徒 15:28,29。
危険な組合せ
◆ 米国の連邦薬剤乱用警告機構の一調査は,精神安定剤などの薬剤を服用中にアルコール飲料を飲むことの危険性に注目している。24都市を対象にした同調査によると,薬剤に関連した病気や死の中で最も多いのは,アルコールと薬剤を一緒に飲むことによるものである。
赤ん坊を母乳で育てる
◆ パレード誌の伝えるところによると西欧諸国では,赤ん坊を母乳で育てる母親は全体のわずか20%にすぎない。そして6週間以上授乳を続ける母親はその中の約6%にすぎない。「母乳を与えることは栄養の上で良いだけでなく,赤ん坊の情緒の発達を促すという点で,ほとんどの小児科医の意見が一致している」ことを,同誌は指摘している。
廃虚を荒廃させる汚染
◆ 最近,ギリシャのアテネでは,アクロポリスの丘への観光バスの乗り入れを禁止することになった。観光客は丘の頂上まで徒歩で登らねばならなくなる。また女像柱のある歩廊も,女像でできた大理石の石柱を博物館へ移すまでは,透明のビニールで覆われることになった。その跡には複製の石柱が置かれる。自動車の排気ガスは空気中の湿気と結合して硫酸となり,その結果,大理石が少しずつはがれてきている。西暦前五世紀にできた有名な歩廊も,今日の汚染を免れなかったようである。
喫煙も原因
◆ 米国には喫煙者がほぼ5,500万人いる。シドニー・S・フィールドは,喫煙のために毎日約800人が死亡しているとリーダース・ダイジェスト誌に書いている。また,「過去10年間に,喫煙を原因とする死亡数は,少なくとも合計200万に上った」とも述べている。米国では,肺気腫という特に喫煙者に多い病気による死亡者が,過去15年間に100%も増加したことが指摘されている。さらに,冠状動脈の異常からくる心臓病による死亡率は,喫煙者の場合,喫煙しない人の二倍であった。肺がんによる死亡者は1930年には3,000人に満たなかったが,「今日その数字は,8万4,000人へと急速に近付きつつある。肺がんの主因は喫煙にある」。フィールドはこのように語っている。
米国のカトリック人口
◆ 現在,米国のローマ・カトリック教徒は,ほぼ4,900万を数える。公認カトリック聖務案内によると,その数は1974年から1975年にかけて18万37人増加した。こうした数字を示したパレード誌は,米国の人口の22.78%がカトリック教徒であることを指摘している。
再び黒死病に見舞われる
◆ 疫病防止センターの報告によると,米国では1975年に20人がペスト患者と認定された。中世に黒死病と呼ばれたこの伝染病は,ペスト菌に感染したげっ歯類動物によってまん延する。米国南西部では,過去10年間にペスト患者の数が増加している。今年も,6月から8月にかけてのペストの流行期が始まるまでに,すでに少なくとも8人がこの病気にかかっていた。ペストは抗生物質を用いて治療できるが,何も処置しないでおくと患者は短期間のうちに死亡する。
ミミズ産業
◆ 最近,米国ではミミズの飼育が一つの小さな産業となっている。伝えられるところによると,約9万人の農業経営者がミミズを飼育して売っている。買い手は,ミミズをえさに用いる漁師や,ミミズのふんが優れた有機肥料であることを知っている園芸家などである。ミミズの売り上げ高は,年間約5,000万ドル(約150億円)と言われている。ニューズウィーク誌によると,あるテストではガラス,金属,そしてゴム類を除いた10㌧分のごみの山に,560万匹のミミズが放たれた。45日でミミズの数は倍になり,そのごみの山は消え,代わりにミミズのふんが3㌧残った。
誰がために鐘は鳴る?
◆ ギリシャの新政府が自由に集まる権利をエホバの証人に与えたのは,ギリシャ正教会からの大きな反対を抑えてのことだった。それで,アグリニオンで大きな大会が開かれた際,アテネの日刊紙エレフテロティピアに引用されたアグリニオンからの報告は,予期されていたものであった。「大会中,町の[ギリシャ正教会の]鐘は悲しげに鳴っていた」。ところが,その報告はこう続けている。「しかし,だれのために鐘は鳴っていたのだろうか。それが問題だ」。それは教会にとって,弔いの鐘だったのだろうか。
地下鉄内のエチケット
◆ 東京の地下鉄の駅には,乗客が互いにエチケットを守ることを奨励する目的で,幾千枚ものポスターが掲げられている。この運動によって,人々が老人に席を譲り,満員電車に押し入るのをやめ,また喫煙しなくなることが期待されている。一つは一人の女優が疲れた様子のおばあさんに席を譲っているポスターであるが,それにはこういう文句が書かれている。「人間は老いるのは早いが,賢くなるのは遅い。50年後にはあなたにとって必要な,その席を譲りましょう」。
金持ちだけのため?
◆ ニューヨーク市にある八つの医学部の学部長たちは,医師を養成するための費用が大幅に上がったため,この職業は将来金持ちの子弟だけに開かれたものになるだろうと述べた。医学部に対する連邦政府や州の援助が削減され,授業料やその他の費用が急騰して,大部分の比較的貧しい家庭の予算を上回ったため,医学教育はそれらの家庭の子弟にとって手の届かないものとなった。1973年には,年収1万2,000㌦(約360万円)以下の家庭の子弟が医学部志願者の半数を超えていたが,昨年はそうした家庭の子弟は32%にすぎなかった。
『不正直なのか,無器用なのか』
◆ 最近ニューヨーク市でこんなことがあった。ちょっとした点を除けば調子は良好と保証されていたテレビに欠陥のあることが簡単に見付かり,21軒のテレビ修理店にそれが持ち込まれた。その際のいい加減な検査について,消費者問題委員会の委員,エリノア・グッゲンハイマーは意見を述べ,同市のテレビ修理工の非常に多くは「大変不正直であるか,途方もなく無器用であるかのどちらか」だと語ったという。伝えられたところによると,それら21軒の修理店のうち15軒は,修理費を偽って要求した。例えばある修理店は,一台のテレビに,真空管二本と波長整調器を取り替える必要があったとして,73㌦19セントを請求した。しかし,実際に必要だったのは,外れた被覆電線をまたレセプタクルに差し込むだけのことだった。検査に出されたテレビのうち四台は,前よりひどくなって戻って来た。
CB泥棒
◆ アメリカで今泥棒に一番よくねらわれるのは自動車の無線機である。そこで自動車保険業者は,普通の保険保護の範囲からそれをはずすか,あるいは保険率を上げることを望んでいる。彼らの希望は,無線機の価格に応じて,保険料を20㌦ないしは70㌦上げることである。
都会生活は良いか,悪いか
◆ 世界保健機構の専門家の報告によると,都会生活は男性の寿命を縮め,女性の寿命を延ばす,ということである。考えられる理由として,都会にいると,男性は農場で働く場合に比べ,喫煙することが多く運動量が少ない,といった点が挙げられた。しかし,それら研究者たちによると,女性の場合は,いなかにいると,十分な食事を与えられずに過度な労働を強いられることが多く,都会にいたほうが酷使されることが少ない,というわけである。
廃れる計算尺
◆ 学生,技師,またその他の人々は,長い間,計算に計算尺を用いてきた。しかし今日では,対数計算尺と滑尺の付いた計算尺に代わって,安価な小型計算器が使用されるようになった。実際,米国で最も有名な計算尺製造会社は,計算尺に対数目盛りを刻むのに用いていた機械をスミソニアン研究所に引き渡した。
計算機の失敗は高くつく
◆ 米国保健教育福祉省の監査役が7月に報告したところによると,社会保障管理局は計算機に関係した諸問題のために,補足扶助計画にあずかっている老人,盲人,そして障害者420万人に対する給付金を「適確に記録,分類,また要約する」ことに失敗した。その結果,少なくとも6億6,200万㌦(約2,000億円)が余分に支払われた。
ネコは全員上陸せよ!
◆ 英国海運一般協議会は,船内のネコを1977年3月までに船から出すよう,乗組員に指示した。ピーター・ニードハムは,ガーディアン紙にこう書いている。「18世紀に木造の商船を悩ませた大ネズミは,ずっと前から別の場所に住みかを見付けて住んでいるし,機械やコンテナ化における科学技術のおかげで,昔のように船内でネコやイヌを飼って,ネズミを殺させる必要はなくなった」。また船内のネコは狂犬病にかかる危険があると考えられている。これらのペットは,陸上で新しい生活を始めるよう船が停泊している間に船外に連れ出されることになっている。
記録的な赤字
◆ 1976会計年度は去る6月30日をもって終了したが,同年度中,米国連邦政府は656億㌦(約20兆円)の赤字を出した。これほどの赤字の出た年は,同国史上初めてであった。