ものみの塔 オンライン・ライブラリー
ものみの塔
オンライン・ライブラリー
日本語
  • 聖書
  • 出版物
  • 集会
  • 目77 7/8 16–20ページ
  • 南極大陸,世界最大の“冷蔵庫”

視聴できるビデオはありません。

申し訳ありません,ビデオをロード中にエラーが発生しました。

  • 南極大陸,世界最大の“冷蔵庫”
  • 目ざめよ! 1977
  • 副見出し
  • 関連する記事
  • 発見と探検
  • 気象の研究
  • 動植物
  • 科学研究所
  • 南極大陸 ― 最後のフロンティア
    目ざめよ! 2000
  • 南極大陸 ― 悩める大陸
    目ざめよ! 2000
  • 飛行機で地球の底へ
    目ざめよ! 1981
  • 南極の“小男たち”
    目ざめよ! 1980
もっと見る
目ざめよ! 1977
目77 7/8 16–20ページ

南極大陸,世界最大の“冷蔵庫”

幾千年も閉ざされてきた冷蔵庫のとびらが開かれ,中のどの棚にも人間がこれまで見たこともない新しいものが置かれているのを発見したという光景を想像してみてください。160年ほど前に,まさにそうしたことが起きました。世界最大の“冷蔵庫”とも言うべき南極大陸の存在が発見され,そのとびらが開かれて,内部が現代文明の光に照らし出されることになったのです。

宇宙空間から地球をながめた宇宙飛行士たちは,我々の惑星の顕著な特徴の一つは南極大陸を覆う氷床であると語っています。この氷床は,米国と中央アメリカを合わせたよりも広い1,424万4,934平方㌔に及ぶ広大な地域を覆っています。科学者たちの発見したところによると,氷の厚さは平均で1,981㍍もあり,世界の氷の90%以上がこの南極にあります。南極大陸の地はだの露出している部分は,同大陸全体のわずか5%にすぎません。近年になって踏査されるようになったこの“冷蔵庫”の氷を全部解かすなら,海面は現在より46㍍から61㍍上昇し,世界中のすべての海港や低い沿岸地域は海中に没してしまうでしょう。氷床がなくなるにつれて,南極大陸の各地も海中に没し,同大陸は今より小さくなることでしょう。

発見と探検

人間が南方の世界に関心を向けて,探検を行なうようになったのは,18世紀半ばになってからのことです。そのわずか数年前まで,南半球の大半は未知の領域でした。南半球までの距離があまりにも大きいことが災いして,同地域の大半を占めているのは陸地なのか,それとも海洋なのかといった基本的な問いに対してさえ,正確に答えることのできる人は一人もいませんでした。

1772年のこと,英国の海洋探検家ジェームズ・クック(キャプテン・クック)は,南半球の高緯度地方に向けて3年にわたる航海に出掛けました。クックは,南極大陸の周囲を航行したものの,氷に阻まれて,同大陸そのものを発見することはできませんでした。1800年から1821年にかけて,アザラシの狩猟家や探検家が,南極の島や半島の一部,そしておそらく大陸本土の一部を直接目にしたようです。その後,米国の海軍将校チャールズ・ウィルクスや英国の探検家ジェームズ・ロスが南極大陸に関する数多くの情報を集め,同大陸に対する関心を高めました。こうして,大陸本土の探検に向けて道が開かれていったのです。英国の探検家ロバート・F・スコットは,1903年に,南極点から925㌔の地点まで進みました。1911年12月14日には,ノルウェー人のロアルド・アムンゼンが実際に南極点に立ちました。約1か月後,スコットと同行の隊員4人が南極点に到達しましたが,その帰路,ロス棚氷で遭難し,全員が死亡しました。南極点に到達することがいかに困難であるかは,次の陸行隊が,1957年から1958年にかけてようやく南極点を再踏破した事実からもうかがえます。こうして,ついに,世界最大の“冷蔵庫”の巨大なとびらが開かれ始めました。中には何がありましたか。

気象の研究

とびらが開かれるにつれ,南極大陸は科学者の目を喜ばせるものとなりました。そこが他とは大いに異なっているため,科学者の興奮を誘ったのです。北極圏の大半が海洋であるのに対し,南極は陸地で占められています。南極の気候が北極より冷たいのはそのことと幾らか関係があります。地表面におけるこれまでの最低気温は,1960年8月にソ連のボストーク基地で観測された摂氏零下88.3度です。南極は,今日においてさえ,外部からの資源の供給がなければ住み続けることができない唯一の大陸です。

南極の気候は地球全体の気候を制御する上で助けとなっています。科学者の発見したところによると,この巨大な“冷蔵庫”は世界のどの場所よりも大量の寒気を送り出しています。凍てつくような寒気塊が極点付近の傾斜地を海岸に向けて流れ下り,海岸線沿いに秒速63㍍から65㍍の突風を生じさせます。事実,この寒風が南極探検を困難にする最大の要素であると考えられています。やがてこの風は,海を渡って,チリ,アルゼンチン,オーストラリアの一部そしてニュージーランドに達します。このようにして,南極の風はわたしたちの住みかである地球の“空調”に大きく寄与しているのです。

南極海は,実際には地球全体にまたがる一つの大きな海洋の一部であり,大西洋,太平洋およびインド洋とつながっています。しかし,南極海にはそれ独自の特徴があります。北方の幾つかの海洋に比べて,海水の温度が低く,塩分も少なくなっています。南極海の冷水塊は北に移動して,南極海が北寄りの海洋と接する“南極収束線”で暖かい水の下にもぐり込み,赤道のはるか北にまで広がっています。他のそれぞれの海洋の西部を南に流れる海水が南極海の冷たい海水にぶつかると,両者はいっしょになって東に向かい,南極周極海流を形成します。この海流は,南緯47度から61度付近の海域を不規則な流路を描いて流れ,地球を完全に一周しています。海洋学者は,海流を測定し,海水中の鉱物含有量を調べ,様々な深度の海中温度を測定し,音波を海底で反射させて水深を測っています。こうした情報は,気流や氷河の動きに関する知識とともに,気象学その他の分野の科学に大いに役立つことが明らかになりつつあります。

動植物

冷蔵庫の中のようなこうした寒冷な気候の中で自生する植物はごくわずかしかありません。南極の夜は長いため,地衣類,こけ類,淡水藻類,バクテリア,かび,酵母および陸上で繁殖する菌類などの約800種の植物は長期にわたって休眠します。しかし,これらの植物は,わずか数日,もしくは数週間,あるいは1,2か月のごく短い夏が訪れると,ほぼ瞬時に光合成活動を開始します。

植物の数が少ないのに対し,動物はたくさんいます。しかし,陸生動物はその種類も数もごくわずかです。南極の動物の多くは海洋に生息するか,海から食物を得ているため,その大半が氷床の縁や海中に見いだされます。陸地に生息している動物の中には,小さな昆虫やクモ,および何種類かの微視生物がいます。このうち一番大きいのは,普通のイエバエに近いハエで,体長はわずか3㍉にすぎません。南極には,飛翔力のないペンギンのほかに,ナンキョクオオトウゾクカモメやナンキョクフルマカモメがいます。また,南極および亜南極圏の島々には,アジサシやアホウドリ,ウ,カモメその他の鳥類がいます。鳥の中には,南極大陸の内陸へ飛んで行くものもあります。

キョクアジサシは,世界で最も優れた飛行士です。この鳥は,1年のうち6か月を南極で,残りの6か月を北極ですごします。南極の夏を楽しむために,北方から実に1万7,700㌔の道のりを飛んで来ます。キョクアジサシは,こうしてほとんどいつでも,陽光のもとで生活できるようにしているのです。

世界に17種いるペンギンのうち5種がここ南極で見られます。このうち,南極大陸で繁殖するのは,アデリーペンギンとコウテイペンギンの2種類だけです。平均体長約38㌢,体重4.5㌔から6.8㌔のアデリーペンギンは,太陽光線による方向感覚と体内の生物時計機構によって方角を判断するようです。

アデリーペンギンの兄貴格にあたるコウテイペンギンは,“冷蔵庫内”の極限にまで下げられた寒気を味わっているかのようです。高貴な容姿のこの鳥は,体重が25㌔から45㌔で,背丈は1.2㍍近くあります。母鳥は冬のさなかに卵を一つ産みます。産卵の時期が近付くと,この母鳥は,長い冬の夜の凍て付くようなやみの中へと,南に向けて移動します。母鳥は,卵を産み落とすとすぐに,それを水かきの付いた父鳥の足の上に注意深く置きます。こうして,抱卵は父鳥の仕事となります。父鳥は,その卵を幅の広い足の上に載せ,上から腹部のひだ状の皮膚で覆って,2か月間暖めます。忍耐強い未来の父親が食物を取らずにこの重責を果たしている間,母鳥は北の海に行ってえさを集めます。海から戻ると,母鳥は胃の中の食物を口にもどしてひなに与えます。コウテイペンギンは,積氷が北方に拡大する冬期にも,北に移動しない唯一の鳥です。激しい雪嵐<ブリザード>にさらされながら,ほぼ6か月に及ぶ厳しい冬の夜をすごします。こうした環境のもとでは,他の鳥のように,巣を造ることは不可能です。

南極大陸周辺の氷の浮かぶ海域には,数種類のアザラシが幾百万頭も生息しています。これらのアザラシは保温作用のある脂肪の層で覆われているため,こうした環境の中でも全く快適に生活しています。養分の貯えともなるこの脂肪の層は,海中のアザラシに浮力を与えます。このアザラシには,魚がいっぱいいる海中の“えさ場”があります。南極海には,様々な種類のクジラも見られます。オキアミと呼ばれる小エビに似た甲殻類の密集した大群が海中に漂っているため,食物には事欠きません。海底付近にすむ魚類には南極特有のものが多く,その90%は地上の他の場所では見られません。

厚さ13㍉の断熱材を入れたウェットスーツを着込んだ潜水夫たちが,摂氏零下2度の海中で一度に1時間ずつ働き,南極にすむ,魚や既知の海生生物の標本130種を集めました。その多くは,タコのように,血液が赤くなく,中には,血液が半透明のものもあります。温度が極度に下がっても凍結しない赤い血液の魚もいます。最近,ある潜水夫は長さ1.2㍍から1.5㍍のウナギの幼魚を発見しました。これは,これまでに知られているウナギの稚魚の20倍の大きさに相当します。

10月から2月まで天候は穏やかですが,南米大陸まで966㌔以内のところまで延びている南極半島を除けば,気温が氷点を上回ることはありません。この時期に,何種類かの小さな昆虫が寒気の緩みに誘われて活動を開始し,わずか数日後には,寒さのために再び冬眠します。ここには,ユキノミや八本足のダニも生息しています。これらの昆虫の体内でグリセロールと呼ばれる物質の分泌されていることが,科学者によって発見されました。これは,抗凍結剤として用いられることのある化学物質です。南極大陸の冬をこれらの小さな昆虫が生き延びるのはこのグリセロールの働きによります。

ノミその他の昆虫の存在は,病気に関する質問を提起します。南極大陸には病原菌がいないという説は,間違った昔話にすぎません。南極大陸は手術室の内側のように一面まっ白ですが,そこでは多数のバクテリアが発見されています。南極点の地下27㍍の地点で,微生物学者が,100年ほどの間閉じ込められていたと思われるある種の病原菌を採取しました。防護面をかぶり,殺菌消毒した器具を用いて,これら19世紀の細菌が現代の細菌と混ざらないよう注意深く作業を進めました。微生物学者は,重大な病気を引き起こす恐れのあるバクテリアの一つ,ブドウ球菌を発見しました。技術上の誤りや欠陥のある装置によって科学者自身の細菌の一部が漏れたのでない限り,これらのバクテリアは1860年には南極大陸に存在していたことになります。その上,氷づけになっていたこれらの病原菌は死滅しておらず,研究室の中で暖めると,再び活動を開始しました。

この南極の寒冷で乾燥した大気には優れた保存効果があります。ブリタニカ百科事典はこう記しています。「海からおよそ48㌔離れ,標高が約914㍍あるマクマード涸谷(ドライバレー)で,カニクイアザラシを主体とした多数のミイラ化したアザラシの死がいが発見された。こうした内陸をさまよいながら,カニクイアザラシはえさがないためやがて死んでいった。皮で覆われたそれらの死がいは,寒冷で乾燥した気候の下で保存されてきた」。

科学研究所

今日,南極大陸は科学者のための研究所と呼ぶことができるでしょう。地質学者は膨大な厚さの氷層の下に何が横たわっているかを知るために研究を続けています。近年になって,地震計の記録やラジオグラフの写真を調べた結果,南極の氷の下の岩層の大半は構造的に見て海洋性ではなく,大陸性であることが明らかになりました。南極大陸は,少なくとも現時点では,世界で最も地震の少ない静かな大陸であることが知られています。これまでに,人間は南極大陸のほぼ全域を見ることができました。山岳地域の大半も航空写真に基づいて地図が作成されています。地球全体の構造や環境系に関するより詳細な情報を得ようと,地質学者や生物物理学者,氷河学者,地球物理学者などがこうした地域を訪れ研究を続けています。

南極観測基地は数か国によって建設されてきました。南極条約に調印している12か国のうちの10か国は冬期にも基地を開設しています。ソ連は南極半島にベリングスハウゼン基地を設置しています。米国観測隊は太平洋側にあるマクマード基地を中心に活動しています。そこには原子力発電所が建設されていて,夏期には平均900人,冬期には200人が働いています。米国は南極点と南極半島にも常時隊員の滞在する小規模な基地を保有しています。中には,南極を危険なところのように思っている人がいるかもしれませんが,そこは実際には将来の観光保養地として期待されているほどです。現在でさえ,観光客が科学基地やペンギンの営巣地を訪れています。そしてもちろん,ここはスキーヤーにとってパラダイスと言えるでしょう。

この大陸の“冷蔵庫”から,今後どんな“宝庫”が出現するかだれも予想できません。これからも多くの調査や実験が行なわれることでしょう。今後,豊富な鉱物資源を利用する技術が開発されてゆくに違いありません。また,大気の状態や周辺の海洋の研究が進むにつれて,科学者は地球全域の気象をより正確に理解する助けを得ることでしょう。わたしたちが自分の家の冷蔵庫を重宝しているのと同様に,今やわたしたちの前に開かれた南極大陸という“冷蔵庫”は,時の経過とともに,ますます高く評価されるに違いありません。

    日本語出版物(1954-2026)
    ログアウト
    ログイン
    • 日本語
    • シェアする
    • 設定
    • Copyright © 2025 Watch Tower Bible and Tract Society of Pennsylvania
    • 利用規約
    • プライバシーに関する方針
    • プライバシー設定
    • JW.ORG
    • ログイン
    シェアする