世界展望
高根の花になるマイホーム
◆ マイホームを持つという夢を実現させることは,アメリカでも困難になってきている。住宅の価格が急騰したため,“中流階級”の人でさえマイホームを持てない人は少なくない。特に,家族に稼ぎ手が一人しかいない場合にそう言える。全米住宅協議会によると,1980年には平均的な住宅は7万8,000㌦(約2,300万円)になり,年収2万㌦(約600万円)以上の人でないと手の届かないものとなった。マイホームを持っている人のうち500万人は,現在,収入の25%を上回る住宅金融の支払いに追われており,自分たちの生活空間を賃借りしている1,000万人余りの人とほとんど変わらない。
危険なスポーツ
◆ 近年,ハンググライディング,つまり滑空が幾千人もの熱狂者を引きつけている。滑空機にぶら下がって空を舞うことにはスリルがあるかもしれないが,ハンググライディングはこれまでに人間の考え出したスポーツの中でも特に危険なものの一つである。コロラド大学の外科医ブルース・パットン博士の話によれば,ハンググライディングには,「少なくともパラシュート降下の二倍の危険があり,スキーやロッククライミングとは,比べものにならないほどの危険が伴う」。コロラド州だけでも,ここわずか数年の間に,15人の死者と幾十人もの負傷者を出している。操縦者の腕が良ければ良いほど,大きなけがをしたり死んだりする可能性が大きくなる。それは,経験を積んだ操縦者がより高い崖や山から飛び下り,より大きな危険を冒すからである。パットン博士によると,コロラド州でハンググライダーの事故で死亡した人のほとんどすべては“超ベテラン操縦者”と目されていた。カリフォルニア州ではこのスポーツによる死者がさらに多く,毎月平均一人の死者を出している。
一貫しない保健習慣
◆ 西側の観測筋は,中国がその8億5,000万人民の基本的な健康管理をする点で示した進歩に感銘を受けている。しかし中国では,十年間にたばこの消費量が85%も増加している。中国のたばこ生産高を上回る国は米国をおいてほかにない。その結果,肺ガンが増加している。英国のニュー・サイエンティスト誌はこう論評している。「保健運動が成功していることでこれほど賞賛されている国に,中国人民に喫煙の危険性を教える一般的な情報ポスターさえ見られないのは不思議なことだ」。
はだしで歩くのは有害か
◆ はだしで歩くことは自分の足に有害だろうか。米国ルイジアナ州立大学の整形外科医ポール・ブランド博士によると害はない。ブランド博士は30年にわたって,世界各国で足の研究に従事してきた。同博士によると,“はだしで生活する人”の間では,水虫,肉に食い込んだ足のつめ,うおのめ,腱膜瘤,つち状足指症,中足の痛みなどが,事実上全く見られない。インドで足首を骨折して同博士の治療を受けに来た人は,くつをはいていた人だけだった。はだしであれば自分のバランスがくずれたことに早く気づき,体勢をすぐに立て直すことができる,と博士は語っている。しかし,糖尿病患者ははだしで歩いてはいけないと警告している。糖尿病患者の足の感覚は比較的に鈍いからである。ごくわずかな切り傷やけがでも,化のうして足を切断しなければならなくなることがある。
強制的な国旗敬礼がなくなる
◆ 米国カリフォルニア州教育委員会の認可した新たな裁定は,譴責を受けることなく国旗敬礼を拒否する特権を生徒に与えている。生徒は,忠誠の誓いが行なわれている間沈黙を守ることができるが,それを妨害することは許されていない。
往診の減少
◆ 最近の医学関係の報告書によると,米国の医師たちは,年間約1,700万件の往診をする。しかし,医師が現在より少なく,人口も少なかった20年前には6,300万件の往診が行なわれていた。現在,往診は医療業務全体の2%を占めているにすぎない。
たばこを吸わない人への補償
◆ 屋内の公共の場所で他の人々がたばこを吸うことに異議を唱える人は少なくない。最近の幾つかの訴訟では,たばこを吸わない人に有利な判決が下され,中にはたばこを吸わない人に金銭的な補償を与える判決さえあった。ニューヨークでは写真の暗室で働いていた人が,同僚の喫煙のために職場を離れた後,失業補償を受けた。ボルチモアの政府経済学者が,職場のたばこの煙のために病気になり,仕事をやめねばならなくなったと訴えたとき,連邦政府の一部局はその人に補償を与えた。カリフォルニア州の一スチュワーデスは,飛行機の喫煙者席の空気に対するアレルギー反応を示すようになり仕事をやめなければならなくなった後,補償を受けた。ニュージャージー州の電話会社に勤める一従業員は,同僚の喫煙のために重い病気になったと訴え,会社側には有害な煙のない職場を備える責任があると主張した。州の裁判所はその言葉に同意し,従業員による喫煙を一つの部屋だけに限るよう会社側に命じた。
氷山を飲料水に?
◆ 世界の真水の九割は,南極の氷の中に眠っている。この氷を乾燥地方の飲料水にしようというフランス人コンサルタントの提案を検討するため,30人の専門家から成る一グループがパリで会合を開いた。サウジアラビアは,自国の増大する水資源の需要を満たす上で,その方法が海水を真水にするよりも安上がりかどうかを調査するよう,その研究に委託した。フランスの科学者たちは,南極から氷山を引いて来て,それを切って解かすほうが,海水を真水に変えるよりも三割ないし五割安くつく,と推定している。ニュー・サイエンティスト誌は,この方法が「サウジアラビアやクウェートなどのような乾燥地の国々だけでなく,オーストラリア,チリ,果ては水不足がそれほど深刻でないカリフォルニアでも十分採算が取れる」ことに注目している。
“マシュマロ”道徳
◆ 米国のカトリック神学協会の委託で行なわれた,性に関する最近の調査は,性行為に関して,聖書やカトリック教会の教理以外の指針に従うよう勧めている。神学者たちによると,婚前交渉,姦淫,同性愛などの問題は,「統合への独創的な発展」という光に照らして考慮すべきである。聖書の導きを採用するどころか,神学者たちは,人は自分が『自己を解放し,他人を富ませ,正直で,忠実,社会的に責任感があり,一生仕え,そして喜びをもっている』かどうかによって,自分の性行為を判断できると言っている。イエズス会の神学者,リチャード・マッコーミックの短評によると,カトリックの公式の教理とは相入れないこの調査は,「彼らの道徳規準のマシュマロ的性格」を反映している。
相撲取りにとって命取りになる脂肪
◆ 世に聞こえた日本の相撲取りには,致命的な職業病がある。すなわちそれら相撲取りの巨大な腹である。相撲では,相手の体の一部を土俵につけるか,相手を直径4.6㍍の土俵から押し出すかによって勝負が決まる。ゆえに,英字読売紙は,「筋肉よりも脂肪が優勝者を決める要素となる」と述べている。米飯,ちゃんこ科理,ビール,そして酒などの食事のお陰で,相撲取りの体重は180㌔にもなる。しかし,この体重にはそれなりの代価が伴う。最近,力士の間の糖尿病患者の率が,普通の人の場合の五倍にも上ることが明らかになった。平均的な日本人の男子は70歳以上も生きるのに,力士は50代の初めか,50代の半ばで一生を終える。
ギリシャ人の転落
◆ 61歳になるギリシャの一司祭は最近,自宅の四階のバルコニーから落ちて,隣家の車の屋根にかすり傷一つ負わずに着地した。その時この司祭は,自分が助かったことを,「聖母マリアのご慈悲」と語った。しかし,アテネ・ニューズ紙はこう述べている。「同司祭は……駐車中のその車の持ち主の怒りからは保護されなかったようである。車の持ち主は,司祭が自分の娘を非常に嫌っていたので,故意に自分の車の上に落ちたのだとして,8,000ドラクマ[約6万4,000円]の損害賠償を求めた」。
現代の針療法
◆ 胃の手術の後にしゃっくりが止まらなくなったのではたまったものではない。最近,フランスのリオン大学病院センターの一医師は,この問題の治療に,針療法を使って成功を収めたと報告している。耳と足のつぼに針を打った後,ギルベール・ベンヤミン博士は,「針が抜かれたその時に,しゃっくりは止まった」と語っている。
ベルギーの「的確な国際情勢」誌はこう伝えている。「西ドイツだけでも,外科医たちはすでに500件の心臓手術を行なうのに針療法を使っており,マルセイユのフランス人の医師たちは,この方法を用いて麻酔薬を使わずに帝王切開をした」。
スコットランドの里程標
◆ 「スコットランドにとって悲しい里程標である」とザ・サンデー・ポスト紙は嘆いている。それは,「年末にはスコットランド教会の会員数が,今世紀になって初めて,100万人を割ることになる」からである。しかし,「この数字さえも幻想である」と同ポスト紙は述べている。「その100万人のうち,幾百幾千もの人は教会の中に入ったことさえほとんどない。寄付はできるだけ少額に抑えようとする。彼らは,結婚したり,生まれた子供に洗礼を施してもらうために会員になるかもしれないが,それが終わると再び離れて行ってしまう」。過去五年間の平均を出すと,毎月1,700人余りが脱落している。同教会はまた,会員の三分の二が,“不規則的”にしか,あるいは全く寄付をしないとこぼしている。
禁酒席
◆ スポーツ競技の観客の中には,他の観客の飲酒癖に対して嫌悪感を示す人が少なくない。一人の人は,「一日中酒を飲んでいるファンは,かなり不愉快な存在になる」と述べている。米国アトランタ市の自動車レース場の当局者は,次の特別な催しの際,酒を飲まない人のための席をスタンドに設けることに決めた。
高くつく“おやつ”食品
◆ チョコレート,ソーダ,プレッツェル,ドーナツ,ポテトチップ,クッキー,アイスクリームなどの“おやつ”食品は,肉,魚,野菜,卵,そして果物などより安いかもしれない。しかし,そうした食品を食べる子供は高い代償を払わされる。米国フィラデルフィア市の一小児科医は,栄養不良の子供が栄養の良い子供の二倍も多くそのような食品を食べていることを発見した。“おやつ”食品をよく食べる子供は,年齢の割に背丈が低く,やせており,虚弱で,貧血症である。
心臓に良い重労働
◆ 米国サンフランシスコ市で行なわれた,数千人の港湾労働者を対象にした調査は,長期間肉体の重労働に携わっていると,致命的な心臓発作に襲われる危険が少なくなるという事実を確証した。事務所の仕事に匹敵する,比較的軽い作業に従事した人々の間では,重い物を持ち上げたり押したりするような肉体の重労働に携わった人々の場合より五倍も多くの致命的な心臓発作が見られた。