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目ざめよ! 1978
目78 3/8 16–19ページ

超大型タンカー ― この“海の怪物”は絶滅しかけている?

アイルランドの「目ざめよ!」通信員

オリンピック・ブレイバリー号の処女航海はほんの数時間であえなく終わりを遂げました。この超大型原油輸送船(V.L.C.C.)は,フランスのブルターニュ沖で座礁してしまったのです。この船は船主にとって二重の意味で頭痛の種でした。お金をかせぐ前に難船してしまっただけでなく,航海に出る前からすでにこの『海の怪物』は時代遅れになっていたからです。オリンピック・ブレイバリー号は,この惨たんたる航海を終えると,他の数多くの船舶と同様,余剰船舶と呼ぶには時期しょう早ながら係船の憂き目を見ることになりました。

オリンピック・ブレイバリー号のこの惨状は,その巨大な船体のゆえに“超大型<スーパー>タンカー”と呼ばれる近代的な船にかかわる種々の問題をよく表わしています。超大型タンカーが建造された当初,これこそ現代工業社会の必要とする多量の原油を運ぶ理想的な手段である,とみなす人は少なくありませんでした。最初のうちは超大型タンカーの開発にぼう大な資金が投入されました。しかし,こうした船舶を建造できるように造船所の施設を改造したものの,最近になって受注件数はめっきり減ってしまいました。

超大型タンカーをつぶさに見る

ベルファストの造船所にご案内いたしましょう。ここでは,完成間近の新しい超大型タンカー,リマ号が建造されています。リマ号のような大型タンカーは,船体を優美に見せるという伝統に従ってはいません。船体は極端に機能的に造られています。げん側は垂直に切り立っています。船首も,先が優雅にとがっているのではなく,大きな半円形をしています。船首にはずんぐりした,だんご“鼻”のような突起がありますが,それは普通,水の中に隠れています。こうした特徴には,船舶の航行をより容易にする働きがあります。超大型タンカーは水を切って進むのではなく,水を押し分けて進むのです。

リマ号のそばに立ってみました。そのげん側(右げん)は24㍍もの高さにそそり立ち,鋼鉄の断がいを思わせます。竜骨<キール>から甲板までの実際の高さは29㍍,船の全長は352㍍,つまり1㌔の三分の一以上もあるのです! 船尾に回ると,推進器も超大型であることに気付きました。プロペラの直径は9㍍を超え,重量は60㌧に達します。

甲板に上ると,縦横無尽に走るパイプや至る所にあるバルブや栓に当惑させられます。これらのパイプ類は,石油の積み降ろしに使われたり,種々の供給および安全管理の施設として用いられたりします。甲板は幅55㍍あり,中央から端に向かってゆるやかに傾斜しています。この甲板の広さはテニスコートを60面作っても余るほどです。実のところ甲板はこの船の貯蔵タンクの天井になっています。各タンクには点検用のハッチが取り付けられています。ハッチを開けてタンクの中をのぞいても,船底がはるか下にあるため,タンクの底は暗やみにかすんで見えません。

後部の甲板上には,コントロール室や乗組員の居室,プール,その他の施設を収容した6階建ての建物があります。最上階の船橋の幅は船幅と全く同じになっています。

リマ号は33万“重量㌧”の船とされています。これは,この船の積載許容量が33万㌧であるという意味です。(リマ号が実際に就航した暁には,原油が満載されることになっています。)これを原油に換算すると,大ざっぱに言って,3億8,200万㍑になります。

こうして,リマ号を目の当たりにすると,人間の造り出した史上最大の動く物体,超大型タンカーの不確かな将来を思わずにはいられません。1960年代の工学技術上の“奇跡”が1970年代には海運界の“恐竜”と化した理由はどこにあるのでしょうか。その答えを得るために,超大型タンカーが開発されたいきさつと理由を調べてみましょう。

超大型タンカーの開発

リマ号のような超大型タンカーの構想は,海運の分野でもごく新しい概念です。石油が重要な燃料として注目され始めたのは,ここ百年来,つまり内燃機関が発明されて以来のことですから,石油の輸送という概念自体それほど古いものではありません。初めのうち,石油はたる詰めにされて,“一般貨物”の一部として通常の船で運ばれました。そして,1886年に,特別に建造された最初の“タンカー”クリュックアウフ号(2,300重量㌧)が進水しました。その後も,積載トン数の急激な増加は見られませんでしたが,第一次世界大戦の前には8,000㌧,第二次世界大戦のころには1万6,000㌧のタンカーが建造されるまでになりました。それに続く10年間に,タンカーの積載トン数は3万重量㌧にまで増大しました。この時は,超大型タンカー時代到来の前夜と言えました。飛躍的な進歩のきっかけとなったのは日本の造船業界でした。

1960年代に入って間もなく,最初の10万㌧級タンカーが建造されました。この時以降,タンカーの船型は加速度的に大型化し,新しい記録は作られるはじから書き替えられていきました。今日の最大級の超大型タンカーの中には,約50万重量㌧に上るものもあります。

設計技師たちはこれより大型の船舶の構想も持っています。ベルファスト造船所のドックでは100万㌧のタンカーを建造することも可能です。入手できる資材の強度と,こうした超大型船を接岸させるに足る水深を有する港の不足が,タンカーの巨大化を制限する要因となっているにすぎません。

ところで,超大型タンカーが開発された理由はどこにあるのでしょうか。より大きな船舶を求める傾向が絶え間なく続いたのはなぜでしょうか。

超大型タンカーの開発された理由

根本的な動機はお金です。世界の億万長者の中には,超大型タンカーに投資してその富の大半を築き上げた人が少なくありません。石油会社は,こうした超大型船を導入することによって多数の石油製品の価格を低く抑えてきたと主張しています。どうしてそう言えるのですか。ブリタニカ百科事典はこう述べています。「船が大きくなるにつれて,輸送費は安くなる。20万㌧のタンカーが運ぶ石油の輸送単価は,1万6,000㌧のタンカーを利用した場合より25%低くなる」。(1976年版〔英文〕,大項目,第16巻,689ページ)これには幾つかの要素が関係しています。タンカーがいくら大きくなっても,乗組員の数はほとんど変わりません。ですから,人件費はほとんど同じです。また,一定のスピードの場合,船体の長い船の方が短い船より楽に航行できます。ですから,超大型タンカーの大きさそのものが,必要とされるエネルギー,ひいては燃料使用量の節約に一役買っていることになります。

石油製品の需要の増大も,超大型タンカーブームに拍車を掛けました。1930年代には,世界の必要とするエネルギーの約75%が石炭によってまかなわれていました。1950年代までに,石炭より石油に頼る傾向が出てきました。ソ連とその同盟国は石油を自給自足できましたが,西ヨーロッパ諸国と日本は,アラブ諸国を主とする産油国からの輸入に全面的に頼るようになりました。1970年代になると,それまで石油を自給自足していた北アメリカまでが石油を輸入するようになりました。

こうして,需要が絶えず増大していったため,特にペルシャ湾沿岸の石油の豊富な地域から,海を隔てて幾千㌔も離れた石油消費国に石油を運ぶタンカー船団が必要になりました。1970年代の初頭には,世界の石油需要量は年に平均7ないし9%増大していました。それに伴って,タンカーの積載トン数を増大させる必要が生じました。超大型タンカーはその必要を満たすものとなったのです。

ブームが一変して衰退期へ

1973年の末に,アラブ諸国は石油禁輸措置を取りました。数週間のうちに,中東の石油価格は四倍になりました。これによって,生産者側の収益は増大しましたが,それまでの急増する需要の流れは全く変わってしまいました。それまでは,この増加率が年に10%にもなる国があったのです。

この驚くべき逆転が起きるまでは,石油の需要は着実に増加するものと見込まれていました。そのため,増大する需要に応ずべく,超大型タンカーが幾隻も発注され,建造されつつありました。ところが,石油の需要が突然減少し始め,既存のタンカーだけでも需要量をまかなって余るほどになったのです。今後建造されるタンカーは,余剰を増やし,事態の悪化を招くのみでした。“係船”の憂き目を見る超大型タンカーが世界じゅうで続出しました。新造タンカーの注文は,可能な限り取り消されました。

他の問題

超大型タンカーがその短い歴史の中で直面した問題は,こうした経済上の問題だけではありません。権威者の中には,船舶の大型化に伴って生じる種々の危険に対する安全対策が超大型船を設計する技術面の進歩に追いついてゆかないと考えている人もいます。

技術上の一つの重要な問題は,爆発事故の防止です。石油を抜いたタンクの中には,石油の残留物から気体が発生します。特別の予防措置を講じておかないと,これらの気体はちょっとしたことが原因で爆発してしまいます。一般的に言って,爆発の危険は,タンクの大きさに比例します。1969年の12月に,超大型タンカーの爆発事故が三件起きて以来,タンク内を清掃する新しい方法が導入されました。“不活性化”(Inerting)と呼ばれる清浄法,つまりその船のエンジンから出る不活性(非爆発性)の排気ガスをタンク内に充満させて爆発性の気体を吐き出す方法がこの問題の解決策であると考えられました。ところが,1975年12月29日に,この不活性化の技術を採用している超大型タンカー,ベルゲ・イストラ号が爆発事故を起こしました。

超大型タンカーには,他にも航行上の問題があります。その大きさと形のゆえに,正確に操船するのが困難です。また,完全に停止させるまでにかなりの時間がかかります。

大型タンカーの中には,“喫水”つまり船の水面下の部分が非常に深くなるため,世界のごく限られた港にしか接岸できないものがあります。ドーバー海峡のような場所では,超大型タンカーは海底からわずか30㌢から60㌢の所を通過します。多くの場合,こうした超大型船は,アイルランドのバントリー湾のように,水深を特別に深くした港で積荷を降ろさざるを得ません。

超大型タンカーによる汚染についても多くの懸念が表明されています。衝突や座礁を防止するのはなかなか困難ですが,ひとたびこうした事態が生じるとばく大な量の油が流出します。1967年にトレイキャニオン号が英国のランズエンドで座礁した時,積荷の原油10万㌧が流出し,海洋生物や鳥類に多大の被害を与えました。海岸は幾キロにもわたって汚染されました。この事故が契機となって,今後の流出事故に備えて,より効果的な浄化法の研究が促進されました。こうした災害そのものを別にしても,事故や不注意で毎年流出している幾百万㌧もの油が海洋の微妙な生態系に何らかの悪影響を与えているのではないか,と懸念する権威者は少なくありません。

超大型タンカーの運命の曲折は,人間の計り事の常である不確かさを如実に物語っています。目下のところ,超大型タンカーの開発プラン自体が暗礁に乗り上げています。“深海の恐竜の死”を予告する人もいます。世界に現在ある超大型タンカーは徐々に老朽化してゆくことでしょう。現在のところ,その前途には暗雲が垂れこめていますが,これらの“海の怪物”がいわば冬眠しているだけで,絶滅を免れるのかどうかは,時がたってみなければ分かりません。

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