“産学協同教育”はあなたに役立ちますか
ハワイの「目ざめよ!」通信員
「お母さん,わたし高校を卒業してから何をしたらいいか考えているの」と15歳の少女が言いました。あなたが親あるいはまだ在学中の若者であれば,このような言葉はよく耳にするに違いありません。
ここに述べた少女デボラの賢明な母親は,娘がふと口にしたように見えるこの言葉を聞き捨てにはしませんでした。娘の真剣な気持ちを察した母親は,その晩,父親と一緒に皆で相談してはどうかと提案しました。
家族で話し合った時,デボラは大学には行きたくないと言いました。大学教育を受けるよりも,歯科技巧士あるいは広告代理店,日刊新聞などのレイアウト・アーティストの職を身に着けるのが彼女の望みでした。
あなたにも,あなたの家族のだれかにも同様な志望がありますか。たぶんデボラの経験は,あなたが高校時代から最大の益を得ることを目ざして対策をたてるのに役立つことでしょう。
「産学協同教育」について知る
その家族が行なった討議は端緒にすぎませんでした。数日後,デボラの両親は彼女の高校に出かけて行き,進路指導専門のカウンセラーに面会しました。おそらくあなたの地域社会の高校にもこのようなカウンセラーがいることでしょう。カウンセラーにしてもらえる事柄は非常に助けになる場合があります。精密な適性検査,検査結果の診断,生まれつきの才能と志望を現実的に適合させることなどが行なわれます。
デボラの両親は,彼女の高校が大学進学を強調しているものの,「産学協同教育」を含め,大学進学に代わる数多くの教育プログラムを用意していることに驚きました。これは学校が土地の企業や工場と協同して行なう訓練です。カウンセラーの指摘したように,「この取り決めによって,生徒は職場での貴重な実習を体験し,高校卒業のための単位を得,最低あるいはそれ以上の時間給を受け,そのすべてを同時に行なえる」のです。生徒はパートタイムの学校生活を送り,それ以外の時間を志望する分野の職場で働きます。
デボラの場合,このプログラムの下で高校3年間(ソフォモア,ジュニア,シニアの学年)に学科で通常の“充実した”8単位を履習することが要求されています。通常これに含まれるのは英語3単位,数学2単位,社会科2単位,科学1単位です。
相違があるのは「選択科目」の分野においてです。高校3年間にわたって履習されるこれらの科目は合計してふつう7から9単位で,体育,音楽,図書館学,上級セミナー,学生自治,美術などを含みます。産学協同教育はこのような選択科目に代わるものです。これらの代わりに,職業に関連した,教室での授業,そして後には職場での実習が行なわれます。
多様な「専門職の集団」
カウンセラーの説明によれば,産学協同教育には広範な「専門職の集団」が含まれています。何百という関連分野にわたる,総合的な仕事の領域があります。例えば「保健」一般の領域には,デボラの志望分野である歯科技術が含まれます。
訓練を受けることのできる専門職集団はきわめて多様です。いくつかの例をあげれば,「農業」,「保健」,「製造業」,「運輸」(自動車工学,ボディーとフェンダーの修理,重装備操作および整備),「建設」(大工仕事,設計,れんが工事,配管,基礎的な電気学),「商業および実務」(会計,秘書,事務一般),「コミュニケーションとメディア」(印刷芸術,ラジオ,テレビ技術,電子技術),「環境」そして「消費者および家政」などがあります。
デボラは歯科技術を選択しました。その結果,彼女は,仕事に対する態度,専門用語,歯科医院における正しいマナー,事務手続き全般,歯科医の用いる共通の書式を含む,在学しながらのプログラムに編入されました。産学協同教育のプログラムの下で彼女を採用したいという申込みが,高校1年の終わりまでに2軒の歯科医院からありました。それで彼女は半日は学校に行き,残りの半日を医院で働いて過ごすことになります。
家族の移転
デボラが高校1年から2年に進む前の夏,家族は父親の仕事の都合で米国領グアムに移転することになりました。これによってデボラが産学協同教育を受ける機会はなくなりましたか。そのようなことはありません。
グアムの公立学校当局と事前に手紙で連絡したところ,同様な取り決めを有する職業工業高校のあることが分かりました。むろん,別の土地に行けば,設けられているプログラムのタイプも,その土地の労働市場の必要に応じて異なっています。デボラの新しい高校には,歯科技術を含む「保健」の部門は設けられていないことが分かりました。
しかしその学校には「コミュニケーションとメディア」の部門があったのです。この部門では特に印刷美術の仕事それに広告美術や新聞の割付けの仕事も教えています。これはデボラが関心を持つ別の分野です。グアムに落ち着いて3か月たたないうちに,デボラはグアム島の日刊新聞二社のうちのひとつの編集部でレイアウト・アーティストの訓練生として働くことになりました。
このプログラムは管理の行き届いたものでした。産学協同教育の調整者は,デボラおよび彼女の上司つまり雇用者と毎月,「訓練生評価調査」を行ないました。彼女は身だしなみ,仕事および訓練に対する態度,意思伝達能力,仕事を計画し,最小限の監督の下で働く能力,一緒に働く人々と協力し,また責任を引き受ける能力,安全の習慣,工具および材料を使用する際の能率,指示された方法および技術の応用,技術および知識の進歩の程度について採点されました。
このようなプログラムに採用される人はすすんで努力する人でなければなりません。生徒はこの訓練を始める時そして訓練の全期間を通して非常に良い出席率また普通かそれ以上の学業成績をおさめていなければなりません。また志望職業科の教師と産学協同教育の調整者の両方から保証書を得る必要があります。これは生徒が職場での実習を受ける用意のあることを保証するためです。
あなたは産学協同教育に関心をお持ちですか。もしそうであれば,家族で話し合うことがおそらく有益でしょう。それからあなたの地域の学校ガイダンス・カウンセラーを訪ねると,適当な職種を選ぶのを助けてくれます。大学進学を望まない人々にとって,産学協同教育は優れた機会を提供するものとなるかもしれません。