鳥の世界の決定権
ミソサザイの世界では,巣の材料集めに雌も雄も加わりますが,その時間のほとんどを,雄は雌に材料を運ぶことに,雌は巣を造ることに費やします。時折問題が生じます。「雄は時々,雌がはねつけ捨ててしまうような小枝を持ってくることがある。少し長すぎて枝が分かれていても,雄はその小枝を枝の逸品と考えたのかもしれず,その小枝に心が引かれたのかもしれない。ともかく,それは雌にはねつけられる結果に終わってしまう。それから愉快なことが始まる。雄はその小枝をつかみ,ねじったかと思えば次には回し,何度落とそうと,その枝を,巣の中に入れるべくあれやこれやと試みる。しかし,雄はあきらめるだろうか。決してそのようなことはない。雄は,小枝が遂に中に入り巣の中に置かれるまで働き続ける。戻ってきた雌は即座にその小枝を外に捨ててしまう。雄はそれを元に戻し,雌はそれをはねつける。この繰り返しは,遂にどちらかが折れるまで続き,その後は二羽で巣造りの仕事をするようになる」― L.L.ルー著「北米の鳥に関するさし絵入り案内書」三巻,273ページ。