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目ざめよ! 1980
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核融合エネルギーは答えとなるか

核融合が実用化され,必要なエネルギーをまかなえるようになるまでに克服しなければならない障害を一原子科学者が率直に検討しました。

核融合(原子核の結合過程)が制御できそうでできない至難の業であることに疑問の余地はありません。種々の核融合反応のどれか一つ,例えば二個の重水素原子の関係した反応(20ページの表の第4番目の反応)だけでも行なえるようになれば,無限の燃料供給源を開発することになります。広大な海洋を含め,世界中にある水の分子3,000個につき一つの割合で重水素原子が存在しています。考えてもみてください,0.5㍑そこそこの水に,400㌔㍗時,つまり一軒の家でひと月間に使用する電力を供給する可能性が秘められているのです。その上,現在の原子力発電所から出る山積みされた放射性核分裂生成物からも解放されることでしょう。これはエネルギー問題に,前途有望な光を投げかける解決策ではありませんか。

これらの反応を研究するためにサイクロトロンと呼ばれる装置が用いられていますが,この装置はエネルギーを利用可能な形で取り出すものではありません。幾百万個もの粒子を十分に加速させて反応を起こさせるには大量のエネルギーがいるのに対し,他の原子に衝突してエネルギーを放出するのは,そのうちのほんのわずかな粒子にすぎません。残りの粒子は微量のエネルギーを出すだけで,すべてむだになります。実験を行なうために必要とされるエネルギーはそこから得られるエネルギーを大きく上回ります。

太陽が優れた核融合炉である秘密は,内部が非常な高温であるため,粒子が高速で幾度も衝突を繰り返しながら最終的には反応を起こすという点にあります。このことから,実用的価値を持つ核融合反応を地上で生じさせるのは非常に難しいことがお分かりいただけたでしょう。なんとかして,太陽の内部の状態をほんの幾らかでも再現しなければならないのです。しかし,水素の集団を幾百万度にも熱し,反応が起きるまでそれを離散させないでおくには,どうしたらよいでしょうか。既知のどんな材料もこれを収めておくことはできないように思えます。優れた耐熱材料も数千度で溶けて蒸発してしまいます。

確かに科学者は,核融合の力を地上で実証したことがあります。しかしそれは,恐ろしい水素爆弾の爆発という形で示されただけでした。もちろんこの場合,爆弾の内外にあるすべてのものは,一秒のほんの何分の一かの間に蒸発したり吹き飛んだりしてしまいます。この狂暴な怪物を制御し,その力を利用するには,どうすればよいのでしょうか。

磁気によって閉じ込めて行なう核融合

核融合による力を利用するのは不可能に思えますが,解決不能に見えるこの問題を解決してくれるかもしれない一つの方法があります。それは磁気断熱効果を利用する方法です。これがどのように行なわれるのか説明しましょう。放電によって水素を熱し,それがすべてイオンと呼ばれる粒子になるほどの高温にします。そうなると,粒子はすべて正の電荷を帯びた原子核か負の電荷を帯びた電子のいずれかになります。この状態をプラズマと呼びます。プラズマが強力な磁場に囲まれていると,荷電粒子やイオンはまっすぐ動くことができず,堅く締まったらせん状の軌道を進みます。磁場を適当に整えておくと,このらせん軌道は収容容器の両端で反射されるようになり,“磁気びん”が形成されます。

粒子の進路をトーラス(円環体)と呼ばれるドーナツ状の磁場に閉じ込め,その進路を一つの円にする設計もあります。このような装置を使うと,陽子や電子は金属容器の壁と接触することがありません。容器を冷えた状態に保ったまま,内部を幾百万度にも熱することができます。この種の最も効率の良い装置は,これを考案したソ連の科学者たちによってトカマクと名付けられました。

磁場によってプラズマをどのように閉じ込めようと,核融合反応を起こし,それを持続させるには,三つの条件が満たされなければなりません。その条件とは,温度,密度,および時間に関するものです。

まず最初に,プラズマの温度を発火温度にまで高めなければなりません。最も低い温度で反応するのは重水素の原子と三重水素の原子ですが,その発火温度は摂氏4,600万度付近です。プラズマの内部に誘導電流を起こしたり,高エネルギーの原子束<ビーム>を投入したりして,プラズマの温度を上げることができます。しかし,粒子の不完全な衝突によるエネルギーの損失が核融合反応を絶えず妨げています。こうした衝突によってX線が発生し,そのX線は容易に磁場の外に逃げ出し,そのためにプラズマから熱が奪われていきます。反応が外部からの力を借りずに自然に進行していくには,プラズマの温度が十分高くなっていて,核融合によって得られるエネルギーがこうした損失を上回るようになっていなければなりません。

第二に,プラズマを圧縮して,粒子の数が1立方㌢につき100兆個(1014個)もしくはそれ以上という非常に高い密度にしておかなければなりません。そして最後に,最低限の数の衝突が起こるまで,ある時間このような状態を維持しておく必要があります。密度と秒単位で計った時間の積が最低60兆(60×1012)に達していなければなりません。この数値は数学的に閉じ込めパラメーターと呼ばれています。例えば,最高密度が10分の一秒間持続されるとすると,重水素と三重水素の核融合が自然に進行するには,密度の値が少なくとも600×1012なければならないことをそれは示しています。

磁場の強さを急激に増すことによって,プラズマを圧縮できます。それによって密度が高くなると同時に,プラズマの温度も上がります。ですから,適切な磁場を作り出し,プラズマを十分長く保つことができれば,結果として核融合が生じます。ところが残念なことに,これを行なうのは非常に難しいことが明らかになりました。プラズマは腹立たしいほど安定性に欠けています。プラズマは,磁場の弱い所を見つけるとその部分に押し入って袋のようになり,そこがたちまち破裂してプラズマは崩れてしまいます。タイヤの外包から取り出したむきだしのチューブに空気を入れ過ぎたときのようになります。

多くの年月と幾億円もの資金を投じて,安定したプラズマを作り出すための努力が払われてきましたが,十分な成果を上げるには至っていません。気まぐれなプラズマを制御しようとする多くの困難を伴う努力がなんとか成功を収めるのではないかとの希望を抱かせるような実験が幾つか行なわれるようになったのはここ二年間のことにすぎません。米国,マサチューセッツ工科大学の“アルケーター”と名付けられたトカマク型核融合実験装置が30兆という閉じ込めパラメーターを達成しました。しかし,温度は目標にはるか及ばず,わずか1,000万度ほどにすぎませんでした。その後,プリンストン大学の核融合実験装置,“大トーラス”(“バルジ”)によって7,500万度の高温が得られました。この高温によって,初めて重水素と三重水素の融合反応が起きました。しかし,この場合の閉じ込めパラメーターは1兆足らずであったため,核融合の火が実際にともされる前にその炎は再び消えてしまいました。

このようにして,投入するエネルギーと核融合によって得られるエネルギーが五分五分になる見込みが出てきたため,さらに多くの資金を投じて,より大型の,次世代のトカマク型装置を作れば核融合に成功するのではないかという期待が高まっています。今後二,三年のうちに,その型の装置が米国のプリンストンに一基,また欧州では英国のカルハムに一基建設される予定です。いずれの装置も3億㌦(約720億円)の建設費が見込まれています。これらの装置が核融合の制御に成功すれば,次に核物理学者は商業用核融合炉に通じる道に立ちはだかる他の障害に取り組むことになります。

前途に立ちはだかる問題の一つは,プラズマの中に蓄積され,それを破壊してしまう不純物です。前述のX線による損失は原子番号が大きくなるにつれて飛躍的に増大します。ガス状の元素であるヘリウムでさえ,その損失量は水素の8倍になります。酸素では500倍にもなります。実用的価値を持つ核融合発電を行なうには,プラズマを不純物のない状態に保っておかなければならないことをこれは意味しています。

これらの問題すべてが解決されたとしましょう。その場合,核融合発電所はどのようなものになるでしょうか。現在までに得られた最も楽観的なデータを基に米国のウィスコンシン大学で作成された設計図はその手掛かりを与えてくれます。トーラス,つまりドーナツ状の容器は高さ27㍍,直径44㍍になります。これは12個のパイ形のセクションから成っており,それぞれのセクションは重さが3,500㌧あります。それを収容する建物は高さ102㍍,直径120㍍になり,その大きさはヒューストンのアストロドームにほぼ匹敵します。巨大なパイ形の各セクションは,高度の真空状態を作り出せるように,非常に厳密な基準に基づいて製作されなければなりません。これを取り巻く巨大な磁石は液体ヘリウムを用いて絶対零度(摂氏マイナス273度)から4度以内に冷やされます。

その発電所が操業を行なうと,トーラスの内部は核融合反応の進行する温度に保たれ,その中を循環する重水素と三重水素の電荷によって140万㌔㍗の電力が生産されることになります。ところが,途方もなく大きなこの発電所は90分毎に運転を停止して不純物を排出し,燃料を入れ替えなければならないのです。一日に15回周期的に訪れる,一回6分に及ぶ運転停止時間中,代替発電施設が電力を供給しなければなりません。このようにしょっちゅう止まる巨大な施設を引き取ることに電力会社の幹部が難色を示したとしても不思議ではありません。

レーザー核融合 ― 慣性法

核融合の制御を目指す別の方法が秘密裏に開発され,その実情が最近になって明らかにされました。これはレーザー核融合法と呼ばれています。この種の装置では上下左右のあらゆる側から幾本かのレーザー光が一点で対称的に交差するように発射されます。重水素と三重水素の混合体の入った非常に小さなガラス球をレーザー光の収束点を通るように落下させます。ガラス球が定められた正にその位置に来るとレーザー光が発射されます。すべてのレーザー光線が同時にその球に当たります。十億分の一秒ほどの間に,その小球は幾百万㌔㍗ものエネルギーを受けて熱せられます。突然,熱が加えられることによって小球は蒸発してしまい,外側のガラスの殻の破裂により内破と呼ばれる現象が生じて中の気体が圧縮されます。これによって,燃料の温度は瞬時に推定1,000万度に達し,密度も通常の200倍になります。この温度は発火温度よりかなり低いものの,ある程度の核融合を起こすには十分の温度です。幾つかのテストでは1,000万個もの中性子が生成されました。何も支えるものがないため,それは瞬く間に四散してしまいます。その物体の慣性が水素原子を結び付けている間だけ核融合が持続し,強い圧力を受けてそれが吹き飛ぶと,反応は直ちに停止します。

この方法は様々な点で磁気による閉じ込め方式より早期に開発が進むのではないかと期待されています。しかし,現段階の成功は,この考えに科学的根拠のあることを実証する程度のものにすぎません。レーザー光線を発するためには,この実験によって得られるエネルギーの幾千倍ものエネルギーを必要とします。さらに強力なレーザーを使えば,今まで以上に高い温度を得ることができ,核融合の効率も高まるでしょう。レーザーを操作するのに必要とされるエネルギーと同量のエネルギーを得るには,現在の最良のレーザーより10倍から100倍強力なレーザーが必要になります。

しかし,消費されるエネルギーと生産されるエネルギーが五分五分になったとしても,経費の面で採算が取れるようになるまでにはまだまだ長い道のりがあります。たとえ,必要とされる力を備えたレーザーを作ることができても,一つの小球から取り出せるエネルギーはごくわずかな量にすぎません。実用的価値を持つエネルギーを得るには,レーザー光線を毎分幾百回もしくは幾千回も発射し,それと同じ数の小球を目標の位置に落下させることが必要になるでしょう。そのためには努力を集中して,レーザー光線発生装置の実用耐用期間を延ばし,幾百万個もの微小球を手ごろな価格で製造できるようにしなければなりません。

核融合: 放射能とは無縁か,それともある程度の問題があるのか

核融合のこれらいずれの方法にも暗い影を投げ掛けるものに放射能汚染の問題があります。核融合発電は原子力発電の抱えるこの問題を回避できるという主張が時折りなされてはいますが,放射能汚染の危険があることは事実なのです。核融合反応の中には(第4番目と5番目の反応のように)水素の放射性同位元素である三重水素の関係しているものがあります。これらの反応では中性子も発生し,それが外部に漏れて周囲の物質に放射能を帯びさせます。核融合反応の表を見ると,太陽の内部で行なわれている反応は「放射能とは無縁」のものであることが分かります。これらの反応からは少しも放射能が発生しません。しかし,その他の反応で放射能と無縁なのは重水素とヘリウム-3の間の反応(第6番目)ひとつだけです。残念なことに,放射能とは無縁のこれらの反応には,いずれも非常に高い発火温度が求められます。

重水素-三重水素の反応(第5番目)の発火温度が最も低いため,現在の研究の対象となっているのはこの反応だけです。そして最初の核融合発電所で使用されるのもこの反応でしょう。この反応はおびただしい数の中性子を発生します。単位エネルギー当たりの中性子発生数はウランを用いた核分裂の場合をはるかに上回ります。この中性子によって核融合炉内外のすべてのものは強い放射能を帯びることになります。ですから,修理や交換が必要になって核融合炉の部品に触れたり,それを処分したりするには,危険が伴います。

放射能の問題のほかにも,中性子が原子そのものをはじき出してしまう結果,核融合炉の周囲の曲面金属板が損傷を被るという問題があります。これは金属を弱めるため,例えば磁気核融合炉のドーナツ型のセクションは,おそらく二年から五年そこそこしかもたないでしょう。重量は3,500㌧もあり,高さは9階建の建物に匹敵するこれらの巨大な放射性建造物を発電所から取り外し,処理するのは,身震いを誘うような深刻な問題となるでしょう。核融合炉から出る放射性廃棄物の大きさは現在の原子力発電所から出る廃棄物の場合よりずっと大きくなることでしょう。

しばしば見過ごされる別の点として,三重水素自体も放射性物質であるという事実があります。三重水素は大気中にも微量ながら存在しています。それは宇宙線の反応によって作り出されたものです。単位量当たりの放射能の強さ(キュリー)からすれば,三重水素はヨウ素やストロンチウムなどの核分裂生成物ほど有害ではありません。しかし,核融合発電所で使用されるほどの量になると,放射能の強さは幾億キュリーにもなるでしょう。ある程度の漏洩は避けられませんが,通常,その量は一日につき10キュリーほどに抑えることができるものと思われます。しかし水素が空気と混ざると爆発を起こしやすくなるため,事故によってこれが漏出するなら,三重水素はたちまち反応を起こして水の形を取り,世界中に広がって回収不能になります。たった一か所の発電所の三重水素が外部に漏出するだけで,大気中の三重水素の濃度は世界中で10倍になることでしょう。

核融合発電へ向けて大きな前進がなされたという楽観的な報道を米国などでしばしば耳にします。研究を拡大するための年次予算を議会に提出する時期になるとこのような報道がなされるようです。しかし,現在知られている障害すべてを克服したとしても,経済的に採算の取れる核融合発電はまだまだ先の話であるというのが厳然たる事実なのです。エドワード・テラーによれば,レーザー核融合による実用的価値を持つ発電は二世代先の将来を待たなければならないでしょう。

核融合によって得られる無尽蔵のエネルギー

実際,だれかが理想の核融合エネルギー生産工場を頭の中に描いてみるなら,それは次のようなものになるでしょう。まず,十分の量の水素を重力の作用で一か所に集めます。これによって,閉じ込めの問題はすべて解決されます。重力による圧縮現象によってこの水素の球体の温度と密度は上昇し,核融合反応が始まるほどになります。重力と内部の圧力の均衡によって反応の速さが自動的に定まり,反応は低すぎることも,制御不能なほど激しくなることもありません。

放射線を外部に漏らさないよう手の込んだ遮蔽物を造る代わりに,この核反応炉を幾億キロものはるかかなたに持っていき,放射線の量を安全な水準に下げることができます。エネルギーを伝える送電線を引く代わりに,放射エネルギーや熱や光の形でそれを得ます。そして最後に,核融合炉から迷い出る陽子や中性子から身を守るために,これらの粒子をそらす弱い磁場やそれを吸収する空気の層で自分たちを覆う必要があります。

この種の核融合炉は創造者がわたしたちのために太陽の中に備えてくださったものと全く同じであることに,読者は当然,気づかれるはずです。地上の全住民のために,知恵に富む造り主であられ,あらゆるエネルギーの源であられるかたが,いつまでも尽きることのないエネルギー源を備えてくださったことにわたしたちは深く感謝してしかるべきでしょう。しかもこれは一方的に利用するだけのために備えられています。毎月,請求書の送られてくることはないのです。

[19ページの拡大文]

『核融合発電所が操業を行なうようになったとしても,途方もなく大きな発電装置全体は90分毎に運転を停止して不純物を排出し,燃料を入れ替えなければなりません』。

[21ページの拡大文]

「現在知られている障害すべてを克服したとしても,経済的に採算の取れる核融合発電はまだまだ先の話であるというのが厳然たる事実なのです」。

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