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目ざめよ! 1980
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飲酒の問題を克服する方法

アルコールの乱用という問題は,家族全体の生活に大きな影響を及ぼしかねません。ですから,問題を家族として話し合い,家の者すべてが問題を理解するよう助け,その一員が飲酒で問題をまぎらわしたいと思うような状況を作り出さないために協力するのは有益なことです。

アルコール中毒のために家庭生活が損なわれるまで,それについて何の対応策も講じないというようなことがあってはなりません。予防策を講じるのです。

残念なことに,問題がすでに大きくなってしまった家庭も少なくありません。そのような場合にはどうすればよいのでしょうか。

すでに問題がある場合

まず最初に,アルコールの問題があるという現実を認める必要があります。アルコール中毒者は自分がそのような問題を抱えているとは考えないことでしょう。それでも,家族の者や外部の友人は,その人に飲酒の問題があると思うかもしれません。どうしてでしょうか。当人の体内の器官が損なわれているかどうかは分からなくても,当人の行動の乱れは見て取れるからです。

アルコールに依存するようになりつつある人は,寂しい時や落胆している時に酒のびんに手を伸ばしがちになります。その人は自分の飲酒のことで罪悪感にさいなまれたり,他の人々が批判すると怒ったりし,自分の飲んだ量を隠そうとするかもしれません。飲みたくなると,一杯飲むまで幾らか怒りっぽくなることがあります。その飲酒癖の結果として,その人は衝動的になり,理性を失いがちになって,配偶者に暴力をふるうことさえあるでしょう。毎日飲むことはなくても,飲み出すと度を過ごしてしまいます。やがて,一杯飲めないと,アルコール性記憶喪失や禁断症状に陥ることになるかもしれません。

飲酒の問題を抱えている人は,自分の家庭生活が悪化しているのを承知していることでしょう。自分が仕事の面で問題を抱えていることにも気づいているでしょう。それでもだれかから,こうした問題の原因として見過せないのはアルコールに依存するようになりすぎたことだ,とほのめかされると,そのような人は往々にして弁解がましい態度に出るものです。医師から,あなたはある食物に対してアレルギー反応を示すからそれを食べないように,と告げられれば,その人はきっとその言葉に従うでしょう。アルコールの場合にはどこか異なっているでしょうか。異なっています。それは気分を転換させる薬剤となり,心理的にも,身体的にも,人はそれに依存するようになり得るのです。

アルコールに関して自分には弱味があり,それが人生に破綻をきたしかねないとはいえ,それを克服するのは可能であり,そうするだけの価値があるという事実を直視するつもりがあれば,回復の見込みがないわけではありません。それには固い決意と明確な手順に付き従うことが求められます。

アルコール依存を打破する

週末にしか飲まないということでは,問題の解決になりません。また,強い酒をやめて,ぶどう酒やビールにしたところで,アルコール依存を断ったことにはなりません。専らビールしか飲まないという人は,アルコール中毒者の中でもかなりの割合を占めています。

全身からアルコール分を一掃し,細胞が可能な限り元の状態に戻れるようにしなければなりません。飲酒を完全に断つことが求められます。医師の中には,最後に飲んだアルコール飲料が完全に体内から除き去られるまでには,少なくとも四日を見なければならない,と言う人もいます。しかし,無分別な飲酒の習慣のために損なわれた細胞が元通りになるまでには,六か月かそれ以上の期間が必要とされます。その期間中には,栄養補給が行き届くよう特別に注意が払われます。

禁断症状は必ずしも現われるわけではありませんが,習慣的な大酒家やアルコール中毒者にはよく見られます。血中アルコール濃度が下がり,その変化に神経系が適応すると,その人は落ち着きを失い,怒りっぽくなり,失意・不眠・混乱・動悸・発汗・震え・吐き気などを経験するかもしれません。こうした症状は,普通,飲酒をやめてから8時間ないし24時間たって現われます。アルコール中毒の状態が長期間続いていたり,体調が極めて悪かったりすると,もっとひどい症状が現われ,医師の手当を必要とすることがあります。

体が損なわれた器官をどの程度まで回復させることができるかは,“機能余力”がどれほど奪われたか,その状態がどれほど続いたか,また体を回復させる目的でどれほど世話が与えられるかにかかっています。本当にアルコール中毒にかかっている人の場合,アルコール飲料を正常に用いられるようになることはほとんどないようです。どれほどの期間がたったとしても,一杯のアルコール飲料でも多すぎるということになりかねません。体内に火山があり,爆発するのを待ち構えているようなものだからです。そのような場合,正常な生活を続けてゆく唯一の道は,アルコール飲料を完全に断つことです。

家族にできる事柄

アルコール依存を打破する上で,家族の協力は大切です。そして,ほとんどの場合,家族は助けを差し伸べることにやぶさかではありません。誘惑を最小限にとどめるために,家の中からアルコール飲料を一掃するのは賢明なことです。また,家族の他の者たちがアルコールの誘惑に弱い者の前では飲酒を控えるようにするなら,当人にとって耐えやすくなるでしょう。

もちろん,その人がほかの人の家を訪問することもあるでしょう。当人の状態を知らないため,あるいは思慮を欠いて,訪問先の人がアルコール飲料を勧めるかもしれません。そのような時にはどうしたらよいでしょうか。それは前もって考えておかなければならない事柄です。長々と説明をする必要はありませんが,き然とした態度で辞退すべきです。例えば,「せっかくですが結構です。でも,炭酸飲料[あるいは水]ならいただきます」と言えるでしょう。

アルコールの乱用から逃れようとしている人にとって,聖書の言葉は非常に励みになります。聖書は,その問題を首尾よく克服した人について(コリント第一 6:9-11),および個人的な理由から一切アルコール飲料を断った人について述べています。(民数 6:2,3)また,一族の頭への従順から,家名を守るために一族全体がアルコール飲料を完全に断ったという出来事も詳述されています。この点で特に名を挙げられているのは,レカブ人の諸家族です。彼らは近隣に住む他の家族が平生ぶどう酒を飲んでいたのに,幾世代も続いて,酒を一切飲みませんでした。神はレカブ人にぶどう酒を飲まないようにと求めませんでしたし,今日でも神の言葉はアルコール飲料を完全に断つようにと求めてはいません。それでも,神はレカブ人がその家族の頭に従って行なった事柄を好意の目をもってご覧になりました。―エレミヤ 35:5,6,8,18,19。

霊的な力を得る

神の言葉の正確な知識があれば,弱さを克服するのに必要とされる霊的な力を得る面で大いに役立ちます。聖書は,大酒して現実から逃避することではなく,問題に首尾よく対処する方法を示しています。

例えば,深刻なアルコールの問題を抱えていた,オーストラリアの一人の若者のことを考えてみましょう。この人は酒場から自宅へ帰るために,自分の車のギヤーを低速に入れ,ドアーを開いて首を出し,白線を見ながら走り,自宅までわずか11㌔の道のりを行くのに二時間もかける,ということがしばしばありました。週末には,酒のために40㌦(約1万円)を費やすこともありました。幻覚に悩まされることさえあったので,禁酒の誓いを立てました。しかし,それは成功しませんでした。

そんなとき,この人はエホバの証人の助けを得て聖書を研究するようになりました。アルコールの問題を持ち出してみたところ,神は泥酔する者を是認されないが,聖書の規準に従って生きる人の前途には復興された地上の楽園で永遠の命を享受する可能性があることが示されました。―ガラテア 5:21。ヨハネ 17:3。

この若者は飲み友達の中でもいける方だったので,変化するのは容易なことではありませんでした。その飲酒の習慣が静まるようになると,飲み友達はガールフレンドでもできたのだろうと思い,そのうち熱もさめて,また仲間に加わるようになるだろうと考えていました。しかし,神の約束の力は友人たちが考えていた以上に若者を捕らえ,若者は二度とその飲み仲間のところには戻りませんでした。その人はこう語っています。「飲酒の問題を克服して,これで十年目になります。エホバの親切に感謝すべきことに,今では昔よりもずっと幸福で,健康な人間になっています」。

この変化は一朝一夕に起きたわけではありません。知識が増し,理解が深まるにつれて,徐々に起きました。かつて独りでは成し遂げられなかった事柄も,神の霊の助けによって首尾よく成し遂げることができたのです。―コリント第一 6:11。

聖書の知識はより幸福な結婚生活やより幸福な家庭生活を築くのに寄与します。それは生活においてより賢明な決定を下すのに助けとなるので,問題を少なくするのに役立ちます。また,衝動を和らげるのに役立ち,邪悪な状態が見られ,災いが臨むことのある理由を理解するのにも役立ちます。聖書は,命を愛し,神のご意志を行なう者の前途には新しい体制が待ち受けていることを描写しているので,神に受け入れていただけるように自分の生き方を変える上で必要とされる動機付けを培う面でも役立ちます。―ローマ 12:1,2。ペテロ第二 3:13。

ふさわしい仕方で用いれば,アルコール飲料は楽しみをもたらすものになり得ます。しかし,もしアルコールの問題を抱えておられるなら,そのために人生を台なしにしてはなりません。その問題に取り組むのです。明日に延ばしてはなりません。

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