第4部
別の世界的な規模の中毒 ― アルコール
世界保健機関は,アルコールの乱用について世界中に「警鐘を鳴らす時期」が来ている,と伝えました。報告されている幾つかの傾向をここに挙げることにしましょう。
1950年から1976年までの間に,一人当たりのアルコール年間消費量は25か国で増加しました。それはポルトガルの30%増からドイツ連邦共和国の500%増という驚くべき数字に至るまで幅があります。
イングランドとウェールズでは,過去25年間にアルコール中毒で入院する人の数が20倍に増加しました。
ブラジルでは最初にアルコール中毒という診断を受けて入院する人が1960年から1970年の間に3倍になりました。
ザンビアでは交通事故による死者の3分の1,ベネズエラでは3分の2までが飲み過ぎによるものでした。
「アルコールに関連した問題が……あまりにも急激に増加したために,今やそうした問題は世界の主要な公衆衛生上の問題になっており,第三世界の経済発展のテンポを遅らせ,ほとんどの国の保健機関の重荷になるのではないかと懸念されている」― 世界保健機関の報告。
アルコールのからんだ犯罪は世界中で見られます。その報告によると,「婦女暴行の13ないし50%,暴行の24ないし72%,殺人の28ないし86%がアルコールがらみのものである」ことを種々の調査は明らかにしています。
「我々は増大の一途をたどっているように見える問題を極めて憂慮している。すなわち飲酒と暴力犯罪の関連である。この国で行なわれる殺人の約半数は,人が酒を飲んだあとに犯されていることは極めて明白である」― 英国の仮釈放委員会の議長,ハリス卿。
妊娠したら飲酒は禁物!
3万2,000人の婦人を対象にしてカリフォルニア州で行なわれた調査によると,アルコール飲料を1日に2杯飲む婦人が流産する危険はアルコール類を飲まなかった女性の2倍に上ります。
ニューヨークで行なわれた一研究の示唆するところによると,アルコールは「胎児にとって非常に有害と言える毒物」になるようです。そして1週間にわずか30ccだけでも胎児にとって危険なものになりかねません。
妊娠期間中に1日数杯のアルコール飲料を飲むと,子供が胎児性アルコール症候群をもって生まれてくる危険性が大いに増大することもあります。それは奇形や知恵遅れを招きかねません。
「子供を産むことを考えている婦人は妊娠期間前および妊娠期間全体を通してあらゆる種類のアルコール飲料を控えるべきである」― 臨床遺伝学者のパトリック・マクラウド博士と小児科医のデービッド・F・スミス博士。