まさに間一髪!
ゴキブリに悩まされている人は,ヒキガエルを哀れに思うでしょう。ヒキガエルはそのねばつく舌を電光石火のごとく伸ばして,ゴキブリを軽く打つようにして捕食します。問題は,しばしばゴキブリがその舌をかわして逃げてしまうことです。ゴキブリはどのようにその攻撃をかわすのでしょうか。
1980年12月号のサイエンティフィック・アメリカン誌(サイエンス誌,日本語版,1981年2月号)に載った記事によると,ゴキブリは待ち伏せしているヒキガエルの攻撃をかわすのにその姿を見ることもその物音を聞くことも必要ではありません。ゴキブリの体の後部に,空気の動きを感知する非常に敏感な感覚毛が備わっているのです。ヒキガエルがゴキブリめがけて突進すると,空気が乱れて一陣の風が生じ,それが先にゴキブリに達します。空気の動きをこれらの小さな感覚毛が捕らえ,ゴキブリの体内のどこかで警告が発せられます。それから20分の1秒以内に,ゴキブリは逃避行動を起こし,走り出します。
ゴキブリは逃げる方向をどのように知るのでしょうか。微小な感覚毛すべてが同一の方向から来る風を感じるわけではないのです。舌が側面からではなく背後から迫って来ると,特定の感覚毛が強い刺激を受けます。ゴキブリの神経系がマイクロコンピューターのような働きをして,刺激を受けた感覚毛からの情報を解析し,風の方向を判断します。それから,風の発生源とは反対の方向に逃げ去るのです。そしてこのすべてが一瞬のうちになされます。
ゴキブリのような虫がこうした解析能力を身に着けていることに科学者たちは驚嘆しています。わたしたちも,創造者の優れた工学技術の能力に驚嘆を覚えます。