世界展望
コーラと子供の問題との関連
◆ 米国の首都ワシントンに住む,微生物学者また消費者保護運動の推進者であるマイケル・ヤコブソン博士は,コーラ飲料に含まれる“刺激物”,つまりカフェインをなくす運動を始めた。子供はコーラ飲料の最大の消費者に挙げられているが,カフェインは子供が落ち着きを欠いたり怒りっぽくなったりするなどの様々な問題を引き起こしかねない,とヤコブソン博士は考えている。「それは全く不必要である。ソーダ水にカフェインを添加することに何らかの益があったとしても,それは全く必要のないものである」とヤコブソン博士は語り,コーラ製造業者がその飲料にカフェインを添加することを定めた規則を取り下げるよう米国食品医薬品局に勧めている。同局は現在,一般に“安全”とされている食品添加物のリストからカフェインを除くことを考慮中である。
「霊的虚無感」とアルコール中毒
◆ ロンドンのザ・タイムズ紙は,「泥酔は,現在のソビエト社会が直面している最大の挑戦である」というモスクワ発のニュースを伝えている。アルコールの乱用は非常に深刻で,そのために工業生産の増大を図るソ連の努力が失敗に終わっているとのことである。非常に多くの人がアルコールの乱用が原因で死亡していると言われ,死亡統計は今後公表されないことになっている。調査によると,1925年当時ソ連の労働者のうちアルコール中毒にかかっていたのは11%ほどであったが,今日では男性労働者の約37%がアルコールを乱用している。「だが,最も恐ろしい影響は,アルコール中毒者には知恵遅れの子供の生まれる割合が高いことであろう」と,ソ連医学アカデミーの一会員は語った。
ソ連で発行されている無神論者の雑誌「科学と宗教」は,若い世代に見られるアルコール中毒の主な原因として「霊的虚無感」を挙げている。同誌はさらに次のようにも述べている。「精神的価値観の欠如,狭い視野,生活力(この語の持つ最高の意味における能力を指す)の不足が不快な現象,つまり酒の飲み過ぎを引き起こしている」。無神論という無価値なもので新しい世代を養えば,「霊的虚無感」を抱かせ,有害な結果を招くだけであろう。
母乳の方が優れている
◆ 米国,テネシー州ナッシュビルにある医学総合大学の生化学・医学部で行なわれた研究によって,母乳には細胞を刺激して新しい遺伝物質(DNA)を造らせ,分裂を促進させる働きのあることが判明した。しかし,検査の対象となった粉ミルクはDNA合成には何の影響も及ぼさなかった。
危険なメカニカルブル
◆ 米国では最近,メカニカルブルという名で知られる機械装置が次第に人気を集めている。これは,機械仕掛けの牛の背に乗って,ロデオをする時のような気分を味わうものである。しかし,メカニカルブルから落ちてけがをする人が出ており,裁判ざたにまでなっている。フロリダ州に住むある女性は,この装置から落ちて首の脊椎骨を傷付けたとして,200万㌦(約4億4,000万円)の賠償請求訴訟を起こした。コロラド州でも,男の人が同じような傷を負った。打撲症や切り傷を負った人は多数に上っている。
別の医師の意見を聞く
◆ ニューヨーク病院-コーネル医学センターのユージーン・マッカーシー博士を中心に行なわれた8年に及ぶ研究が明らかにしたところによると,手術を勧められた患者が別の医師の意見を求めたところ,その3分の1は手術が必要でないと告げられたという。その結果,それらの患者5人のうち4人までが最初に勧められた手術を断った。最初の意見を聞き入れていたなら,調査の対象となったこれらの人々の多くは「不要な手術を受けさせられていたことだろう」と,マッカーシーは語った。3年前に行なわれた議会の調査でも,毎年240万人のアメリカ人が不要な手術を受けさせられ,40億㌦(約8,800億円)が浪費され,1万1,900人の人命が失われているものとされている。
しかしこれは,別の医師の意見を聞くことによって手術全体の件数が減ることを必ずしも意味してはいない。例えば,ブルークロスの行なったある調査によると,相談を受けた二人目の医師の7割は最初の医師の診断に従って手術を受けるよう患者に勧めた。もし別の医師の意見を求めていなかったなら,最初の医師の勧めを無視したり拒絶したりしていた患者も少なくない。別の医師の意見を聞くことは,手術が本当に必要かどうかを注意深く判断するのに役立つことがあると考えられる。
脳に対するマリファナの影響
◆ 脳の機能にマリファナが及ぼす悪影響に関する物理的な証拠が,ルイジアナ州のトゥラネ大学医学部のロバート・ヒース博士によって観察された。実験に用いられたアカゲザルを観察したところ,6ないし8か月間,中程度以上の量のマリファナを吸った後に,脳に器質的な変化が生じた。顕微鏡検査が明らかにしたところによると,シナプシス,つまり脳の神経細胞が情報を伝達する小さな谷間が35%も広がり,そこが黒く変色した。「生物学的精神病学」の中に載ったヒースの報告によると,ノイロンの構造そのものの一部も崩壊し,脳の電気的な活動が妨げられた。
僧衣に身を包んだ政治家たち
◆ 最近の国際問題は,教会員がどれほど日ごとの政治と深くかかわるようになっているかをあらわにしている。
ポーランドの新しい組合「連帯」のメンバーによるストライキが収拾した後,ニューヨーク・タイムズ紙は,「この事件の意義は……教会の役割にある」と報じている。この記事は,ポーランドのウィジンスキー枢機卿の代弁者とみなされることの多いブロニスラフ・ダブロブスキー司教が政府当局との交渉に「自分が関与していることを覆い隠そうともしなかった」ことを指摘している。ニューヨーク・タイムズ紙は次のように伝えている。「カトリック教会側の5人から成る特別調停団の団長として,この人物は秘密の話合いが行なわれていた部屋に出入りし,自らの黄金の十字架のすぐそばにこの組合『連帯』のバッジを付け,最終的な協定をストライキ中の人々に発表することまでした。……彼は,自分が協定の工作をしたことを記者の前で認めた」。
ナショナル・カトリック・レポーター紙は次のように述べている。「エルサルバドルのカトリック10団体は,同国政府に対する現在の反抗運動を,『教会が合法的な反乱の権利を認める状況』として是認する声明を発表した」。声明は,この革命が人々の「公正と平和を得るための最後の手段」であると主張している。幾千人もの人がその革命で死亡した。同紙が伝えるところによると,「この公文書はイエズス会の指導者で首都ワシントン在住のサイモン・スミス神父によって翻訳され,米国内で配布された」。
AP通信によれば,隣国のグアテマラでは1980年に少なくとも「5人の僧職者が殺害され,キチェー族の司教を含む他の数人が辛うじて暗殺を免れた」。「インディオの暴動の責任を問われ,ゲリラをかくまったことをとがめられ,『共産主義者』と判断された50人の司祭たちが,同国から逃れた。幾人かは地下に潜り,少なくとも一人はゲリラと共に戦うために銃を執った,と教会の情報筋は述べている」。グアテマラの大統領フェルナンド・ロメオ・ルカス・ガルシアは次のように言明している。「司祭と僧職者が魂を救う仕事に携わらないなら,我々は彼らを追放する」。
釣合いの取れた見方をする
◆ イランが52人のアメリカ人の人質を1年以上にわたって拘留したことは,世界の多くの注目を浴びた。彼らは1月に解放されたが,その後,彼らの受けた虐待を非とする多くの世論がわき上がった。ところが,ニューヨーク・タイムズ紙の客員論説委員は,この問題に関するより実際的で釣合いの取れた見方を述べ,次のように書いている。「これら52人の人々は確かにひどい目に遭った。しかし一生涯それよりもひどい暮らしをする人を5万2,000人,いや5,200万人見いだすのはわけのないことである。人質とは異なり,こうした幾万人,幾千万人という多くの人々は解放の見込みを持っていない。……シナ海,およびそのちょうど反対側にあるカリブ海の“ボートピープル”のことを考えるとよい。過去14か月の間,おぼれ死に,飢え,凍え死に,打たれ,強姦されて殺された人の数が52名に達しなかった日があれば,それは良い日だったのである」。
下水の肥料が商売になる
◆ 東京都当局は,都営の南多摩下水処理場で製造された肥料を今市場に送り出している。試験栽培に基づいてこの製品は化学肥料よりも効率がよいとされているだけでなく,市販の肥料の約半額であるとされている。東京で行なわれた“試食会”では,「この廃棄物の肥料で栽培されたキャベツがおいしいと述べた参加者は60%に達した」と英文読売は報道している。「そして化学肥料で栽培されたキャベツのほうがおいしいと述べた人は40%にとどまった」。
あらかじめ染色された木綿
◆ 少なくともペルー北部では,木綿のすべてが白色ではない。テキサス大学で人類学を専攻する一人の学生が地元のインディオを調査するためにペルー北部を訪れた。この学生は,白,ベージュ,茶,紫,グレーという5種類の自然色の木綿の標本を持ち帰った。これらの植物も丈夫そうに見える。科学者たちは,この不思議な木綿と,その商業的可能性を調べるためペルーに戻る計画を立てている。
宗教が非合法化される
◆ 伝えられるところによると,アルバニア政府は宗教の影響力を根絶するため,あらゆる形態の宗教を非合法化した。地下で活動していた信者たちは,聖書や宗教文書を所持している者を逮捕するという新しい波にのまれていると言われる。
『みみしいのような沈黙』
◆ ヒトラーによるユダヤ人虐殺に関して得られた最新の記録に基づく「恐怖の秘密」という本の書評の中で,ウォール・ストリート・ジャーナル紙は次のように述べた。「中央ヨーロッパと東ヨーロッパ全域に住む司祭および忠実な信徒たちから,だれよりもよく情報を得ていたバチカン当局は,1942年の夏には,いやその春にもうすでに,[その大虐殺について]間違いなく知っていた。ドイツ国民およびドイツ軍隊の中のカトリック教徒に良心の転換期をもたらし得たはずの,法王の火のような回勅がどこかにあっただろうか。ピウス12世は,迫害の火が燃え盛っていた間も,外交上はみみしいのような沈黙を保っていた」。
暴力をふるう愛煙家
◆ 中国の北京で,あるバスの車掌が幾人かの若者の喫煙をやめさせたところ,怒りにかられた若者たちによって殺害された。「北京イブニングニューズ」紙によると,乗客の降車の際に切符を確認するためこの車掌がバスを降りると,11人の若者もバスを降りて車掌を取り囲んだ。若者たちはレンガで車掌の頭を殴り,殴打し,足で蹴り,最後には刃物で刺して死に至らせた。彼らは他の多くの人と同じように,“喫煙家の権利”について非常に強い主張を持っていたものと見られる。全員が警察によって逮捕された。