世界展望
刑務所は人を変えるか
● 刑務所は“矯正”施設としてどれほど効果的だろうか。英国内務省の報告からすると,現状は実に惨めなものである。21歳未満の男性服役者の75%が出所後2年以内に重大な犯罪を再び犯して有罪の判決を受けることを報告は示している。成人した男性の場合,その割合は50%,女性の場合は40%である。同時に,英国における服役者の数は危機的な域に達しつつあり,昨年7月の時点でその数は4万5,500人であった。ホワイトロー内務大臣は,「我が国の刑務所の現状は,収監者は言うに及ばず,職員にとっても耐えがたいほどである」と語っている。また,デーリー・テレグラフ紙はさらにこう説明を加えている。「こうした難しい状況の下で,保護管理の建設的な規準を保つことはおろか,人間としての品位ある扱いの規準を維持できると主張することさえ偽善と言えよう」。
いまだに行なわれている人身御供?
● インドの人里離れた村から呪われた畑と行方不明になった何人かの幼い少年にまつわる,身の毛のよだつような報道がなされている。人口800人のクバラで,一人の地主と自称呪術師が4歳の少年を殺害したかどで逮捕された。その少年は,作男たちを病気にさせてきたとされるどう猛な霊を地主の畑から追い払う儀式の際に殺された。自供によると,その呪術師は少年を誘かいして絞め殺し,手足を切り離して血を土の器に集め,畑の全域にまき散らしたという。その地域で行方不明になっている他の4人の身にも同様の事が起きたのではないかと警察では懸念している。
結婚生活における欺き
● 「どんな世論調査でも,95%の人が,いかなる場合にも配偶者以外の者と関係を持つことは悪いと答える」。シートン・ホール大学の社会学者リン・アトウォーターはこのように述べている。しかし,同女史はさらに言葉を続けて,「そのうち少なくとも50%はそうした関係を持っている」と語っている。米国全土で幾百人もの女性を対象に行なったインタビューの結果に基づく同女史の研究は,24歳以下の若い既婚女性の間で浮気が最も急増していることを示している。同女史の意見では,「他の人と連絡を取ったり,親しい交わりを持ったり,知り合いになったりする機会」がこうした不倫な関係に至る最も主な原因であるとされている。ところが,その研究の示すところによると,夫を欺いているそうした女性のだれも現在の結婚生活を解消することを望んでいない。女史はそれについてこう説明している。「長く続く結婚という型を変えようとするより,一時の新しい関係を築くほうがずっと容易なのである」。
最も新しい国連加盟国
● 以前は英領ホンジュラスと呼ばれ,昨年の9月に独立したベリーズは,144対1の多数で国連の156番目の加盟国となることが認められた。反対票を投じたのは,この新生国家の隣国グアテマラである。同国はこの狭い地域に対する領有権を主張している。さしあたって侵略の危険はないとされているが,ベリーズは英国に1,600人の兵員を残留させるよう要請した。
隆盛をきわめる植物研究
● 全米で雨後の竹の子のように出現しつつある新しい研究所において,遺伝子工学の研究者たちが新種の作物の開発に真剣に取り組んでいる。それらの作物が,急増する世界人口と食糧生産の間のギヤップを埋めてくれるものと望みをかけているのである。研究の対象となっているものの中には,必要な肥料や殺虫薬を自分で作り出す作物,塩分を含む土壌や水の少ない所でも育つ植物などが含まれている。現在までのところ,科学者は,海水で育つトマト,砂漠で繁殖するトウモロコシ,蛋白質の保有量が10%ほど多い米の開発に成功している。経済評論家は,これが年に1,000億㌦(約22兆円)の収益を上げる市場に成長するものとみている。そして大企業は,お金という実を刈り取ることを夢見て,この最新の投機的事業,植物研究に盛んに投資している。
危険な廃棄物
● 米国環境保護局は,国内の有毒もしくは有害な化学廃棄物の投棄所のうち最も劣悪な400か所を13億㌦(約2,860億円)を投じて整備する計画を発表した。現在までに同局は,公衆衛生に大きな脅威となると考えられる114か所をリストアップし,これらの整備を「最優先」することにしている。そのうちの典型的な例を挙げると,化学物質の漏出が激しく,市民の飲料水に用いる地下水が汚染されるまでになっている所がある。危害を及ぼしかねない別の危険な場所では,有毒廃棄物が詰まり,さびのこびり付いたドラム缶1万7,000個が放置され,別の場所では危険な化学物質11万3,500㍑が道端に投棄されていた。このリストに載せられている投棄所の大半は会社または個人の所有地であるが,これを整備するには一か所につき550万㌦(約12億1,000万円)の税金が使われるものとみられている。
犬の生活
● トロント・スター紙によると,多くの人にとって赤字を出さずに生活することが難しくなっている今日,犬の暮らしぶりはこれまでになくよくなっているようである。食事がよくなっている ― 値段も高く味のよい健康ペットフードの売り上げは昨年10%増え,値段の安い得用缶入りフードの売り上げは10%低下した。大事に育てられている ― 口内洗剤,オーデコロン,足の指に塗るマニキュア,シャンプー,しみ取りなどのおしゃれ道具も整っている。立派な服を着ている ― トレンチコートや毛のスノースーツ,ベルベットや皮の服を着込んだり,時にはミンクのコートに身を包んでいることもある。死んでも大切に扱われる ― ひつぎに納められて特別の墓地に埋葬され,墓石が置かれる。このいずれの場合も,値段は問題でないらしく,店の品物はすぐに売り切れてしまうことが多い。「人々はパニック状態に陥っているように思う。その時買わないとなくなってしまうと考えているのだ」と,ある専門店の主人は語った。どうやら犬はまだインフレの影響を被っていないようである。
ネコの旅
● オーストラリアのブリスコー家の人々が昨年,休暇で旅行に出た時のこと,その家族の飼いネコのティミーが車の開いていた窓から急に飛び出し,深いやぶの中に姿を消してしまった。家族の人々が何時間も捜したが見付からなかったので,家に帰ると別のネコを買った。ところが,それから7か月後に,ネコのティミーが家にたどり着いた。425㌔も歩いて来たので,幾らか足を痛めていた。ネコがどのようにして方角を知るかは定かでない。
湯でやけどをする人
● アメリカ医師会ジャーナル誌の報告によると,やけどの原因としては湯に触れてやけどをすることが一番多い。米国では毎年,11万2,000人が熱傷を負って救急患者として病院に収容されるが,そのうちの2,600人はじゃ口から出る湯でやけどを負った人たちである。研究の結果,湯でやけどをするのは子供やお年寄りが多く,そのやけども一般に他の熱傷より「広範囲に及び,ひどい」ことが明らかになった。「家庭の湯沸器から出る湯の温度を摂氏55度以下,できれば49から52度の間にしておけば,こうした事故のほとんどは未然に防げたであろう」とその報告書は述べている。実際のところ,家事にはこれより高い温度の湯は必要としない。
金門橋の名折れ
● 米国のサンフランシスコにある,世界に名だたる美しい金門橋は,あまりよくない面でもその名を知られている。高さ67㍍のこの橋は自殺の名所ともなっているようである。ハイウエーパトロールの記録によると,1937年にこの橋が開通して以来,橋から飛び降りた人の数は708人に上る。ほかに720人がフェンスを乗り越える寸前に保護されている。また,書き置きがあったり,車が乗り捨てられていたりした例が285件あった。飛び降りた人のうち,時速120㌔の衝撃を受けながら生き延びたのはわずか12人にすぎなかった。1971年には,フェンスを高くする案も出されたが,美観上の理由からこれは受け入れられなかった。そのため,いつまでもぐずぐずしていて景色を楽しんでいる風でもない人々を警戒する仕事はハイウエーパトロール隊員にゆだねられている。
ポリッジをどうぞ
● 英国人の間ではポリッジ,アメリカ人の間ではオートミールと呼ばれているものを,医師たちはいまや“ミラクル”(奇跡)と呼んでいる。ケンタッキー大学医学部のジェームズ・アンダーソン博士はオート麦に複合炭水化物であるゴム質の物質が含まれていることを発見した。これは血液中の糖分と脂肪分のレベルを下げ,血液のコレステロールの量を3分の1減らす働きをする。糖尿病や心臓病,高血圧症にかかっている人には正にそのことが必要とされている。「特定の食品が血液中のコレステロールの値を下げることが実証されたのはこれが最初である」と同博士は語っている。アンダーソン博士の実験から豆類にも同様の炭水化物が含まれていると思われるが,オート麦のほうが効果が大きい。10年以上にわたって糖尿病の研究をしてきた同博士は,澱粉質の炭水化物が多く,糖分(溶解性炭水化物)の少ない食品を摂るよう勧めている。
上昇する極地の温度
● コロンビア大学の科学者たちは,地球の極地の地表の温度が上昇している証拠を見いだしたと語っている。ニューヨーク・タイムズ紙によると,これらの科学者は人工衛星から送られてきた南極の最近の写真と古い地図や捕鯨船の記録とを比較した結果,1973年から1980年の間に夏期の氷原の広さが平均35%減少したとの結論に達した。北極の温度の研究からも,現在の気温がこれまでの高温期より摂氏で0.9度も高いことが明らかになった。化石燃料の燃焼に伴って大気中に二酸化炭素が蓄積され,温室効果の生じていることがその原因であるとの説が出されている。ほかの種類の汚染の影響を余り受けない南北両極ではこの効果が非常に顕著に認められるのであろう。もしこの傾向が続けば,夏が巡ってくるたびに解ける極氷の量が増えるため,世界的規模の洪水の生じる恐れがある,と科学者たちは語っている。
食品の保存に放射線?
● 電力等の料金が上がっているため,食品加工業者の間では,冷凍保存や缶詰め保存に代わる食品保存手段として放射線による処理に関心が高まっている。実際のところ,この考えは1950年代から論議されている。食品中に放射能を生じさせるのに必要な量よりはるかに少ない量のガンマー線の照射ですべての細菌を殺すことができ,香りや組織の変化も最小限に抑えられるとされている。この処理に要する費用は,缶詰めを作るのに要する経費の20%から30%ですむと言われている。放射線処理をした食品はホイルの袋に入れて室温で保存できることも別の利点である。これによって,食品を船積みしたり輸出したりする際に必要とされる多額の冷凍保存費が不要になる。日本やヨーロッパの幾つかの国ではこの方法がすでに認可されている。政府が認可すれば,米国の市場でも二,三年のうちに放射線処理された食品がお目見えするものと考えられている。
中国用の聖書
● 最近,中国語の聖書100万冊が中国大陸にひそかに持ち込まれた。真珠<パール>計画と呼ばれるスパイもどきのこの宗教活動は「門戸開放」と称する福音派の一グループの主唱のもとに行なわれた。オランダに本部を持つその団体は米国,カナダ,その他の地域で集めた600万㌦(約13億2,000万円)の資金をもとにこの計画を遂行した。タイム誌によると,その計画の目的は,「5万軒はあるとされる“家庭教会”で……崇拝を行なう,500万を数える中国人のプロテスタント信者に,大いに必要とされている聖書を与える」ことにあった。この「家庭教会」というのは,1960年代の文化大革命の時期に正規の教会の建物が閉鎖された後に作られたものである。しかし,中国の公式の教会指導者たちはそうした活動を非とし,密輸は「人々の心を刺激してアヘンや麻薬に関心を抱かせ」,「宗教の不信を招くものである」と語った。中国キリスト教協議会のタン会長は,聖書を合法的な方法で中国に持ち込むことに問題はないと語り,さらにこう述べた。「人々をキリスト教徒にするため,我々は独自の聖書を印刷している」。