アルコールの誤用 ― 高い代償の伴う問題
アルコールの誤用は高い代償の伴う問題で,あなたに影響を及ぼしています。「わたしですって。わたしはアルコール中毒ではありません!」と言われるでしょう。ところが,驚かれるかもしれませんが,一滴もアルコールを飲まない人でも,何らかの仕方でアルコールの誤用の影響を受けているのです。すべての人が影響を受けています。どのようにですか。
全米アルコール中毒協議会(NCA)によると,米国には一千万人ほどのアルコール中毒患者がいます。アルコール中毒患者一人が約4人のほかの人々 ― 同居している家族 ― に直接影響を及ぼすことを考えると,さらに4,000万人ほどがアルコール中毒により直接,有害な影響を受けていることになります。そして,それがわずか1か国における数字であることを忘れてはなりません。
では,どのような仕方で影響を受けているのでしょうか。身内に飲み過ぎる人がいる場合,恐れや恥ずかしさ,失望,さらには怒りさえあなたにとって無縁の感情ではないはずです。全米アルコール中毒協議会の統計によると,離婚と青少年非行の少なくとも30%,家庭でのけんかや暴行の55%,通報された児童虐待事件の90%までに,アルコールの誤用がからんでいました。全く高い代償を払わされるものです。
次に,身体的な高い代償があります。長期に及ぶ大量の飲酒は,肝硬変や心臓病,胃炎,潰瘍,膵臓炎,および種々のガンにかかる危険などを含む数多くの慢性的な健康問題と結び付けられています。ですから,アルコールを大量に飲む人は,身体面でも非常に高い代価を支払っているのです。
たとえ自分では酒を飲まなくても,影響を受けます。アルコールの誤用が原因で,衣服や車,実のところすべての工業製品のために余分のお金を支払わされているのです。米国政府の推定によると,アルコールの誤用のために工場の生産が落ちて,年間200億㌦(約4兆6,000億円)の損害を与えています。それは商品の価格が上がり,品質が悪くなるという形で跳ね返ってきます。
アルコールの誤用の代償は,人の命をあずかる仕事に就いている人が酒を飲む場合に特に高くつきます。例えば大量輸送機関の運転士や飛行機のパイロット,あるいは外科医などが飲酒のために判断を誤ったらどれほど高くつくことになるか,少し考えてみることができるでしょう。
車を運転しますか。全米アルコール中毒協議会によると,死者の出た交通事故のすべて(死者の中には自分の側に落度のなかった被害者も含まれる)の50%がアルコールの誤用と結び付いています。そして,たとえ酔っ払い運転の車に跳ねられなくても,自動車保険の保険料を支払う時が来れば,そうした人の飲酒の影響を感じるでしょう。
しかし,多くの人にとって,アルコールは楽しみとくつろぎの源であることも認めなければなりません。節度をもって飲めば,アルコールはほとんど,あるいは全く人に悪い影響を及ぼさないように思えます。ですから次のように尋ねるのはごく自然なことです。アルコール中毒とは一体何なのか。どうすればそれを見分けることができるのか。どんな対策があるのか。