世界展望
第三世界の健康問題
● 世界保健総会(世界保健機関の管理機関)の議長であるマレーシアのチョン・ホン・ニュワンはスイスのジュネーブで開かれた総会で演説をし,「かつては富の副産物と考えられていた」健康問題が,今や第三世界を襲っている,と述べた。アルコール中毒,麻薬の乱用,喫煙などを原因とする病気だけではなく,心理社会的な病気,それに心臓血管に関する病気も第三世界でごく普通に見られる。同議長は,「もはや生活様式は単に気候や文化だけで決まるのではない。生活様式の模倣は,種々のコミュニケーションが一つの国から他の国へイメージを駆り立てるその同じ速さで進むのである」と述べた。
ヨーロッパでは初めて
● ヨーロッパでは初めてのエホバの証人の「速成」王国会館が,最近英国イングランドのノーサンプトン市で建設された。500人以上の有志で構成されているエホバの証人の作業団は24時間通して働き,原っぱに置かれた基礎を三日半で完全な建物に変えた。建設の速度がエホバの証人の主要な目的なのだろうか。ノーサンプトン市のクロニクル・アンド・エコー紙には,「出来るだけ速く建設の仕事を終わらせ,私たちの伝道の業を始められるようにすることが目的である」という,地元の長老であるサム・ツリーの話が掲載されている。
この王国会館の突貫工事の期間中に現場を訪れた一警察官は目を疑い,壁に触り,それから壁によりかかった。当人の言葉によれば,「それが本物かどうかを調べたかった」からである。米国とカナダでは二日間で完成する王国会館が200ほど既に建設されているので,北アメリカから40人以上の建設奉仕者が,イングランドの仲間の証人たちの援助のために駆けつけた。英国では,さらに短時間で建てる「速成」王国会館が現在計画されている。
青少年犯罪が日本で増加
● 「日本では青少年犯罪がなお増加しており,女生徒や低学年の生徒たちに広まっている,と警察庁は警告した」とアサヒ・イブニング・ニューズ紙は伝えている。「警察庁は,大人よりも未成年者のほうが犯罪の告発を多く受けるようになったことに注目している」。違犯者の数が一番多いのは14歳のグループで,次が15歳のグループだった。それぞれ6%,17%の増加を見ている。
フィンランド人の信仰
● フィンランドのギャラップ調査社の行なった最近の報告によると,フィンランドにおける組織宗教の影響力は減退している。この研究は過去30年にわたるフィンランドにおける宗教の役割を調査したもので,フィンランド人が祈らなくなっているだけでなく,親たちは夕べの祈りを子供たちに教えなくなっていることを明らかにした。過去30年間に日曜の教会の出席者は16%から現在の12%に下がった。女性の僧職者の叙任を支持する声はフィンランド人の中で高まっている。今日,女性の叙任を支持する割合は,30年前は52%だったのが77%になっている。
新しい太陽系?
● 赤外線天文衛星により,別の太陽系の存在を示唆する最初の直接的な証拠が発見された。英国,オランダ,米国の共同計画である,軌道を回るこの観測所は,ベガという星の周りを回る固い物体を発見した。その物体の大きさは,小石大から惑星大までさまざまで,ベガを包んでいる雲あるいはシェル ― 太陽系の諸惑星が占めている領域よりも膨大 ― の中にある。カリフォルニア工科大学のジェット推進研究所の職員は,この発見を,「初期の太陽系がどのように星のくずから結合してゆくかを研究する初の科学的な機会」と評している。ベガは地球から250兆㌔のかなたにあり,太陽の2倍の大きさがある。
原子を見る窓
● 固体内の原子の映像が,ARM(原子解像力顕微鏡)と呼ばれる超高圧電子顕微鏡の助けを得て,初めて直接人間の目に触れた。ARMには以前よりも精巧な電子装置が備わっており,コンピューターの力を借りなくても,固体の深い内部の原子を見ることができる点で,他の電子顕微鏡とは異なっている。電子顕微鏡が作り出すぼやけた映像を解釈するために普通はコンピューターが必要とされる。日本で設計,製作されたARMは,カリフォルニア州のロレンス・バークレー研究所の国立顕微鏡検査法センターの三つの階を占めている。それは,新しいタイプの鋼鉄製品や窯業製品の企画に役立つ機器となる。
従業員の健康
● 職場で運動をすると労働者の士気が高揚し,嘱託医のところに行く頻度が減り,雇用者は幾万ドルもの経費を節約できることが実証されつつある,とメディカル・トリビューン誌は伝えている。政府の機関であるフィットネス・カナダは,二つの会社の従業員のために実験的な健康計画を作成した。どんな結果になっただろうか。“非常に忠実に”運動を行なった人々の間では,10か月後に常習欠勤が42%減少した。この割合を会社全体に適用すれば,1年間で17万5,000㌦(約4,200万円)の節約が実現される。その記事は続けてこう述べている。「加えて,この健康計画に参加した人々が仕事を辞める割合は1.5%だが,同じ期間中の別の従業員のその割合は15%だった」。会社全体にこの計画を実施すれば,「年間の節約は51万㌦(約1億2,240万円)に達する」。米国では500以上の会社が職場における身体の健康計画を推し進めている。
女性の同性愛者たちの子供
● 「同性愛者のカップルによって育てられた子供は……性的な見当識障害になるかもしれない」と述べているのは,スタンフォード大学医療センターの児童精神医学の局長であるキャシー・ロバーツである。人工受精を受けた女性の同性愛者たちを観察した同女史はこう述べている。「私が個人的に目にしたある例では,(娘たち)が思春期に達すると,母親にどのようにして同性愛でない愛情を示すかという大きな問題が生じた。性的な不安という脅威があった。それが果たして解決したかどうか,私には定かではない」。
若者の失業
● 仕事のない若者にとって良い知らせと思えるものでも,実際はそうでないかもしれない。OECD(経済協力開発機構)の最近の研究によると,産業界での失業者数は減少し始めているが,過去10年間の失業率の上昇によって生じた経済的,社会的損失により,容易には消え去らない傷跡が残された。OECDの調査した8か国 ― ベルギー,フランス,英国,オランダ,西ドイツ,スウェーデン,米国,カナダ ― において,1年あるいはそれ以上の期間失業していた人の数は上昇した。失業期間が長引くと意欲がそがれ,その状態をずるずると続けることになる。OECDの報告についてエコノミスト誌はこう述べている。「以前より多くの若い人が長期間に及ぶ失業というわなに捕らえられるであろう。もしそうなれば,失業が減少し始める時にも彼らはあとに取り残され,職を持たず,また職業に就くことができない,いら立ちの状態を続けることになる」。
ペースメーカー: 是か非か
● 電気的な刺激によって心拍を調整する,1ドル銀貨の大きさのパルス発信器,つまりペースメーカーは50万人のアメリカ人に用いられている。南カリフォルニア医科大学にあるペースメーカー・センターの所長,ミカエル・ビリッチ博士の推測によると,去年は,1回1万2,000㌦(約288万円)で合計約12万個の新しいペースメーカーが植え込まれたようである。老化問題特別委員会の調査官である米国の上院議員は,毎年ペースメーカーの分野において,5億㌦(約1,200億円)相当の浪費と詐欺と誤用が見られるようだと結論した。ではどうすべきだろうか。ペースメーカーが必要であると医師が考える理由を正確に知るように,とビリッチ博士は提案している。「もし医師がその人にペースメーカーの必要な理由を説明できないなら,患者はその点について疑念を抱くべきであり,恐らく別の医師を探したほうがよいだろう」とも述べている。
母乳栄養の益
● 科学者たちは母乳に関する新事実を発見した。母乳は寄生虫を駆除するのである! サイエンス誌は,「人間の乳の中にある,寄生虫に対抗する要素に関しては,これまで情報が全くなかった」と伝えている。研究者たちは,実験室の状況のもとでは初めて,消化管の中で病気を引き起こすある種の微生物が人間の乳の攻撃を受ける証拠を見いだした。このような寄生虫の一つによる感染は子供たちの間で広く見られ,激しい下痢や,食物の栄養分を十分消化できない症状などが結果として生ずることがある。牛やヤギの乳には寄生虫を殺す力がない。人体実験はまだ一度も行なわれていないが,科学的な要約は,「人間の乳は,この寄生虫にさらされる幼児の体内で保護となる役割を果たすのかもしれない」と述べている。
16万9,834㌦(約4,076万160円)の体?
● 人間の体にはどれほどの価値があるだろうか。「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」誌は,約70㌔の人の体には次のような価値を持つ成分が含まれていると主張している。コレステロール,525㌦(約12万6,000円); フィブリノゲン,739.50㌦(約17万7,000円); ヘモグロビン,2,550㌦(約61万円); アルブミン,4,819.50㌦(約115万円); プロトロンビン,3万600㌦(約734万円); IgGの抗体,3万600㌦(約734万円); ミオグロビン,10万㌦(約2,400万円)。