『着る服が何もないわ!』
どんな服を着るかということは,どの国の女性にも共通する関心事です。国が違えば服装のスタイルも異なるため,この記事は西欧の女性を念頭に置いて書かれました。しかし,述べられている原則の中には他の地域でも役立つものがあるでしょう。
「ある人の計算によると,大抵の人の場合,ほとんどいつも着用するのは持っている衣装のうちの1割にすぎないということである」と「ファミリー・サークル」誌は述べています。ぎっしり詰まった洋服だんすを困ったような表情で眺めながら,『着る服が何もないわ!』と言う人の場合は正にそれです。
あなたもそう言うことがありますか。しかし,それは着る服がないということでしょうか。それとも,もしかしたら,持っている服をどのように着たらよいか分からないということでしょうか。
多くの女性にとって挑戦となっているのは,ごく限られた予算で高価なものを着ているように見える装いをすることです。インフレのために経済的余裕がなくなり,以前のようにはお金を使うことができなくなったという人もいれば,経済的“余裕”など最初からないという人もいることでしょう。あるいは,家族の必要品を先にして自分のものは後回しにしている人もいます。さらには,特別なボランティア活動にもっと時間を用いるため勤めを減らしたいと思っている女性もいます。例えば,クリスチャン婦人の中には,聖書の良いたよりの伝道に全時間携わるためすでにそれを実行に移している人が少なくありません。それでもなおかつセンスがよくて満足のいく装いをするにはどうすればよいでしょうか。元気を出しましょう,それはできないことではないのです。
まず洋服だんすを調べる
在庫目録を作ることから始めましょう。いちばん良いのは,洋服だんすの中味を全部取り出すことです。衣類を勝ち組と負け組の二種類に分類します。勝ち組に入れるのは,たいへん着心地がよくて自分によく似合い,いつも着ているものです。a 負け組に入れるのは,古くさいものとか,体に合わなくなってしまったものです。
ここ一,二年着ていないものは処分しましょう。(交換するか,友達に上げてもよい。)しかし,着ていない衣服の中に,少し小さいけれどもプルオーバーのセーターかジャンパーの下なら着られそうなブラウスがあるでしょうか。体に合うように,あるいは現代風に仕立て直しのできる衣服がありますか。そういうものは勝ち組に入れます。
このようにすると,満足できて自分に似合う,中核をなす衣服が残るはずです。ちょっと少ないように思えてもあわてないでください。衣服がたくさんなければいろいろな装いができないという訳ではないのです。それに,負け組の衣服はあったところであまり着ないでしょう。
洋服だんす数学
次に,勝ち組の衣服だけをハンガーに掛けます。自分の持ち衣装をよく眺め,今すぐどんな組み合わせが可能か考えてみます。スーツの上着はブレザーとして,別のスカートと組み合わせることができるでしょうか。ワンピースの上にその上着かチョッキを重ねるのはどうでしょうか。セパレーツタイプの服の場合,上半分はブラウスとして,またスカートのほうはほかの物と組み合わせて着られますか。単品のスカートにそれと同色のブラウスを組み合わせてアンサンブルとし,それが引き立つジャケットを羽織ることができるでしょうか。一つのブラウスのボウタイを別のブラウスに使って,古いアンサンブルに新鮮味を出すことができるでしょうか。
これは“ファッションの数学”です。少ない衣服を幾通りにも着るのです。例えば,わずか12点の衣服 ― ジャケット2枚,スカート3枚,ブラウス4枚,セーター2枚,ワンピース1枚 ― だけで48の異なる装いができるのです! しかもこの場合,基調となる色は2色しか使っていません。これは,1か月半くらいの間毎日違った服装ができるということです。これに,気の利いたアクセサリーを使えば,組み合わせはさらに増えていきます。しかし,この数学の一番良いところは,財布の中味を数えるのでなく,洋服だんすの中味を計算する点にあります。
店へ足を向ける前に
しかし,いつかは服を新たに買わなければならない日が来ます。ですから,現在手元にある幾組かの服を調べながら,必要の度合いを考慮し,実際的な予算とにらみ合わせながら,将来買う必要のある物の一覧表を作ります。そして,買い物に行く前に次の提案に目を通します。
● 一覧表にあるもの以外は買わない。衝動買いをしない。冷静に,厳しく自分を訓練する。
● すでに持っている服に合う物を選ぶ。合わせる服を着て行くか持って行くかして,配色がぴったりの物を選ぶ。
● クラシックな型の物から始める。ある服飾研究家が述べているように,「たとえファッション業界が積極的に売り込む品でなくても,昔から出回っている型の衣服は大変良い買い物になる」。
● 着る頻度によって値段を考慮する。衣服を買う時の値段を,第1年目に着る回数で割る。さらにその数字を,その衣服の期待できる耐久年数で割る。つまり,半年間,週に一度着る100㌦(約2万4,000円)のスーツは,第1年目の場合1回の着用に3.85㌦(約900円)掛かることになる。このスーツが5年着られるとすると,1回の着用は77㌣(約180円)になる。しかし,50㌦(約1万2,000円)するパーティー用のドレスは,1年に3回しか着ないとすれば,第1年目は1回の着用に16.67㌦(約4,000円)掛かり,着られる期間は比較的短いので,3年着ると1回の着用は5.55㌦(約1,300円)になる。
● 手入れにかかる費用を考慮する。ドライクリーニングが必要な衣服や直す必要のある衣服の場合,最初の値段にその費用を足す。
● 多目的に使える物を探す。取り外しのきくライニングの付いたレインコートは寒さがそれほど厳しくない時に羽織る軽い合コートの役目も兼ねてくれる。
● 買いに出かける時にはきちんとした身繕いをする。品物を試着すると良い判断が下せる。買いたいと思っている衣服に合った下着を着け,合ったくつ下と靴をはいていく。
特別セール,季節ごとのセールそして二級品
本当の掘り出し物を求める人の好きなのはセールという言葉です。国や地方の特別な行事に関連したセールでは非常に大幅な値引きが行なわれます。そのほか大幅な値引きがあるのは,季節の初めのセール,そして特に季節の終わりのセールです。住んでいる国や地方によって季節ごとのセールは異なってきます。季節の初めのセールは一番品数が多く,かなりの値引きがあります。季節の終わりのセールでは正札の50%も値引きされることがあります。ただし,この時になると,選べるスタイルと色はかなり限られるかもしれません。
直売という言葉も多くの買い物客が好きな言葉です。工場直売,卸し直売,生産者直売にはどんな違いがあるのでしょうか。工場直売とは生産者から直接販売されるもので,40%から50%の値引きが期待できます。工場直売ですから品物は大抵一級品ですが,半端物やデザインに難点のある物が少なくないので,品物を一つ一つ丹念に調べる必要があります。
卸し直売には問屋が関係しており,この直売は生産過剰や生産者の手違いが起きた時にだけ行なわれます。最高50%は安く買えます。しかし,生産者から品物が十分供給されないと,卸し直売をしている問屋はもっと安い品を仕入れ,それを値引き商品として売ろうとする場合があります。買い手が品質の分かる人ならこうした直売は得です。
生産者直売というのは幾つかの生産者から仕入れた衣服を販売するもので,値引きは最も少なく,20%から30%です。いずれの直売でも,できれば二級品やきず物より半端物を選びます。比較的直しが少なくてすむかもしれないからです。いずれにせよ,その品物にどんな難点があるかを確実に知り,それが直せることを,あるいはそうした難点があっても着用できることを確認します。
見過ごしたくないのは,大型の廉売チェーン店です。この種の店はメーカー品をデパートの正価の20%から60%の値段で仕入れています。節約する方法としてもう一つ考えられるのは,仕入係か店の支配人を教えてもらい,少し傷(しみ,ボタンが取れていること,ほころび,糸のほつれ)のある衣料品を値引きしてもらえないか交渉することです。さらに,倹約の店やのみの市またガレージや庭先で行なわれるセールでも掘り出し物が見つかります。値下がりの時に生地を買い,服の作り方を学べばずいぶん節約になります。
女性の最高の装い
しかし何と言っても,女性が身に着けることのできる衣服の中で,聖書がみごとに描写している衣服ほど美しくて重要なものはありません。女性を真に美しくする数々の特質の一部として,箴言 31章は『その衣服は力と光輝である』と述べています。(25節)家族と友人の助け手になるのに必要なしっかりした性質を装いとし,しかも,女性特有の輝きを放っているという意味です。
使徒ペテロは女性の「飾り」について,「もの静かで温和な霊という朽ちない装いをした,心の中の秘められた人を飾りとしなさい。それは神の目に大いに価値のあるものです」と助言しています。(ペテロ第一 3:3,4)この種の衣服を身に着ける女性は完璧で永遠のファッションをまとっていることになります。
[脚注]
a 調和,スタイル,色の選択をどうするかについては,「目ざめよ!」誌の1985年2月22号に掲載された,「イチジクの葉,ファッションそして体型」という記事に提案が幾つか載っていますから,ご覧ください。