世界展望
国連に落第点
「国連は設立されて40年たったが,世界の紛争を解決するために払ったその努力は,及第点をはるかに下回る成績である」と,トロント・スター紙は伝えている。非共産国17か国で2万人以上を対象に行なわれたギャラップ調査が明らかにしたところによると,「直面しなければならなかった諸問題の解決を試みる点で」国連がよくやっていると考えていた人は3分の1ほどにすぎなかった。
この機構の生みの親とも言える人々も,失望を表明している。「非常に大勢の失望した親と同じように,“40周年を迎えた国連”を議題にした二日間にわたる会議の参加者の多くは,自分たちの生み出した子供が自分たちの望みどおりにならなかったことに対する幻滅と怒りと憤りを言い表わした」と,ニューヨーク・タイムズ紙は述べている。ニューヨーク大学で開かれたこの会議には,数多くのベテラン国連評論家,法学教授,元大使などが集まり,その中には国連憲章に署名したアメリカ人としてはただ一人存命中の人物も含まれていた。国連は「討論会」より少しましな程度のものにすぎないと批判された。
高くついた火葬
タイの太皇太后ランバイ・バーニの遺体は,死後ほぼ1年たった今年の4月に火葬にされた。それは豪しゃな衣装に身を包んだラッパ手,鼓手,それにほら貝の吹き手を勢ぞろいさせた手の込んだ儀式で,100万㌦(約2億6,000万円)以上の費用がかかり,準備に6か月余りを要した。式の締めくくりに,25万㌦(約6,500万円)相当の宝石類が同太皇太后の遺骨と共に骨壺に納められた。同太皇太后の夫君,プラチャーティポック国王はタイの最後の絶対君主であった。
遺伝子の「指紋」
「科学者は遺伝子の指紋に相当するものを発見し,その結果人間の細胞一つから,婦女暴行事件の犯人,実父確定訴訟における父親,および死体の身元を立証できるようになった」と,カナダのトロント市のグローブ・アンド・メール紙は伝えている。事実を明らかにするこの要素は,DNAの「無用な部分と思われていた」イントロンと呼ばれるもので,そのコピーが人間の染色体のどこにでも見いだされる。二人の異なった人間がそのDNAのらせん構造の中にこれらのコピーの同じ型を持っている可能性は,100億×10億 分の1である。レスター大学の研究者たちがこれを発見した。
人口問題
ケニアの人口の増加率は4%で世界一の水準にあり,今世紀末には4.5%に増加するものと見込まれている。「耕作に適した土地が国土の5分の1しかない国において,ほとんどの家族は第三世界のほかの国々の平均の2倍に相当する数の子供を産み出しており,それが衰える兆しはない」と,カナダのトロント市のサンデー・スター紙は述べている。増加を抑えるための努力は成功していないが,その理由の一部は大人の文盲率が高いことと乳児死亡率が低下していることにある。加えて,収入を維持してゆくには大家族が必要であるという見方が伝統的になっており,産児制限をすれば部族が小さくなり,大きな部族の支配下に置かれてしまうとみなされている。ある調査によると,ケニアの人口の半数はすでに貧困生活を送っている。
善用と悪用
原子力発電による電力の生産は増加している,と国際原子力機関は伝えている。1984年の年末には,前年よりも33基多い,総計344基の原子炉が作動しており,26か国に電力を供給していた。原子力発電の占める率が高いのは58.7%を原子力で賄っているフランスで,ベルギー,フィンランド,そしてスウェーデンがそれに続く。米国は自国の電力の13.5%を原子力発電によって賄っていると同機関は述べている。また,同機関の推定では,ソ連の場合にその率は9%である。
核兵器保有能力を持とうとする努力を推し進める国の数も増えている。「カーネギー国際平和財団は……1983年以来,核クラブの正式会員になることに向けて,“重大な段階”を踏んだ国々8か国を挙げている」と,サイエンス・ダイジェスト誌は述べている。名前を挙げられた国々は,南アフリカ,パキスタン,インド,イスラエル,イラク,リビア,アルゼンチン,ブラジルの各国である。
原住民のための聖書
オーストラリアの原住民は間もなく,数ある自分たちの言語のうちの一つに訳された聖書の部分訳を入手できるようになる,とブリスベーンのクーリエ・メール紙は述べている。原住民の中で最大のグループの話すクリオル語が最も適した言語として選ばれた。この本の準備には10年の歳月が費やされた。Holi Baibulと呼ばれるこの本には,創世記とルツ記が収められており,さらに裁き人の書,四福音書,フィレモン,および啓示からの抜粋が収められている。
正確な時間
米国政府の計時の基準として使われている原子時計にまた,うるう秒が加えられた。1972年以来11回目である。気づかなかった人もあるかもしれないが,そのうるう秒は6月30日の終わりと7月1日の初めの間に入れられた。ワシントン特別区の海軍天文台の話では,地球の自転の速度に基づく太陽時が,セシウム原子の共鳴振動数に基づく原子時計ほど正確でないためにうるう秒が入れられる。地球の自転は,「誤差が1日に1,000分の1秒以内」であるが,原子時計のシステムは「誤差が1日に10億分の1秒以内である」と,ニューヨーク・タイムズ紙は述べている。
ビールと野球
大リーグの数多くの球団は,野球の試合中アルコール飲料を飲むことに制限を設けている。なぜだろうか。「ファンがけんかをしたり,卑わいな言葉を吐いたり,ビーチボールやビンをグラウンドに投げ込んだりすることについて憂慮の念が高まっているからである」と,ニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。デトロイト市のタイガー・スタジアムでは,アルコール分の少ないビールしか売られていない。ニューヨーク市のヤンキー・スタジアムでは,7回でビールの販売が打ち切られる。シカゴ市のコミスキー・パークでは,飲みすぎないようにとファンに警告する言葉がビールのカップに印刷されている。アトランタ市では,グラウンドに近い特定の部分は,飲酒者立ち入り禁止になっている。野球のコミッショナーの顧問であるリック・セローネはこう述べている。「昨今では人々が球場での事件を恐れるようになっているが,球場は酔っぱらったり騒いだりするために出かけて行く場所でないことを知ってもらいたいと思う」。
大気汚染
化学会社は大気中に,発ガン物質を含む有毒物質を幾千トンも排出している,と最近の米国議会の調査は示している。その水準はかねて考えられていたよりもはるかに高く,またはるかに広範に及んでいることが分かった。「我々は数々の化学工場に関する情報を受け取ったが,そのほとんどは,日常の排出においてさえ,危険な化学物質を驚くほど高い割合で排出している」と,下院保健・環境小委員会のヘンリー・A・ワックスマン委員長は述べた。大気中の汚染物質に対する国家基準値は,石綿,ベンゼン,ベリリウム,水銀,塩化ビニールの五つの有害物質についてしか定められていない。他の物質に対する基準値は各都市あるいは州に任されており,その基準値には大きなばらつきがあり,時には桁が違うこともある。
過去を略奪する
史跡に対する世界的な略奪行為は「空前の規模に達している」と,US・ニューズ・アンド・ワールド・リポート誌は述べている。「南北両アメリカおよび世界各地のすでに知られている考古学的遺跡すべてが蛮行によってほどなく裸にされてしまうのではないかと当局者は恐れている」。裕福な収集家から多額のお金を得るために,泥棒たちはアステカ族やマヤ人の墓,アメリカ・インディアンの埋葬地,沈没船などを荒らした。そして大抵の場合に史跡を荒廃させてしまって学術調査を不可能にしてしまう。「略奪の責任は,『レイダース 失われた聖櫃<アーク>』や『ロマンシング・ザ・ストーン』といった最近の映画における考古学の大衆文化的な描写にある,とする人は少なくない」と同誌は述べている。
ガンの脅威
「1985年に米国で誕生する子供が,やがて,健康な組織を冒すガンにかかる可能性は3分の1を上回る」と,米国ガン協会(ACS)の発行する「臨床医のためのCa-Aガン・ジャーナル」誌は述べている。同協会によると,1985年に生まれた男子について言えば,ガンで死亡する可能性はほぼ4分の1である。女子については,その可能性は5分の1である。ガンで死亡する確率が高くなっているように見える一因は,心臓血管系の病気のような他の死因となるものが減少しているために,人々が長く生きるようになったことにもある。この状況によって今度は,ガンにかかる危険にさらされることの多くなる人が,増えるのである,と同協会は述べている。もっと明るい面では,最近の米国ガン協会の報告は,「新たにガンと診断された患者の5年生存率は事実上50%」であることを示している。
第2位
「最近のギャラップ調査では,世界でも特に暴力的な国として,コロンビアに次いでブラジルが第2位に挙げられている。その調査によると,過去5年間に,ブラジルの家庭の34%は何らかの犯罪に遭った。米国におけるそれに相当する数字は13%である」と,ウォールストリート・ジャーナル紙は述べている。犯罪があまりにも多く起きるので,「暴力事件のニュースはもはや,ほとんど興奮を引き起こさなくなっている」とその記事は伝えた。銃の売り上げは伸び,ボディーガード産業は繁盛している。サンパウロとリオデジャネイロの警察は,強盗に遭う恐れがあるので,夜間に車を運転する人は信号でも止まらないようにと勧めている。強盗事件の大半は貧しい家庭の出である若者で,一司祭の話によると,そうした若者は,「金持ちから奪うのは全く正当なこと」と考えており,「盗みを罪として告白することさえない」。
言い訳なしの日曜日
ある日曜日に人々を教会に来させようとして,ベツレヘム合同メソジスト教会は,人々が口にする言い訳をすべて扱うことにした。テキサス州のラフキン・デイリー・ニューズ紙に伝えられたところによると,ゆっくり眠れるのは日曜日だけと考えている人々のためにはベッドがあり,好きな番組を見逃したくないと思う人々のためにはテレビがあり,「わたしが教会に行ったりしたら,屋根が落ちてくる」という人のためにはヘルメットがあった。建物の中が暑すぎるとか寒すぎると感じる人々のためには毛布と扇子が準備され,知っている人がいないという人のために名札が,日曜日は遊ぶことにしている人にはスポーツ用品,着る物のない人には衣服が用意された。そのほか,背もたれの垂直な堅い椅子と安楽椅子,送迎サービス,「出席している偽善者すべての記録を取るための」スコアカードなどが用意された。