世界展望
“大異変”
「第三世界では,毎年,オランダ国土の約3倍に相当する1,100万㌶余りの熱帯樹林が伐採されている」と,オランダの雑誌「インタナショナール・ザーメンベルキング」は述べている。「過去半世紀の間に全雨林の50%が早くも地上から姿を消してしまった」。森林が消滅してゆけば,全世界の気候は劇的な影響を受け,自然界のバランスや世界の食糧生産は混乱をきたすのではないかと懸念されている。薪はすでに欠乏しており,第三世界のおよそ1億人の人々は,日中の大半を費やして薪を探し求めている。FAO(国連食糧農業機関)によれば,19億㌶の熱帯樹林がまだ残っている。しかし,手を打たなければ,その樹林の25%は21世紀になるまでに失われてしまい,85年以内に全部が消滅してしまうことになる。その損失は「我々の時代における最大級の環境異変」になる,とFAOは述べている。
一風変わった採用方法
企業は,欠員を満たす際に,だれが最良の有資格者かをどのようにして決めるのだろうか。「雇用者はますます求人会社に助けを求めているように見受けられ,求人会社はあらゆる奇抜な方法を試みているように思われる」と,業界誌「エンジニアリング・ディメンションズ」は述べている。フランスの求人会社の中には応募者の中から最適任者を選択するようプログラムされたコンピューターを使っているところもあるが,求人会社の約70%は筆跡の分析に頼っている。そのほかに,人相や手相,また恒星や惑星の影響と思われるものを分析する方法を用いているところもある。「日本人は,血液型によって良い技師を選ぶ方法を考え出した」と,その雑誌には述べられている。
再印刷されるグーテンベルク聖書
「フランスのある出版社は,あらゆる聖書を全部持っている収集家のためにグーテンベルク聖書を再印刷している」と,ザ・オルランド・センチネル誌は伝えている。その出版社は,紙の手触り,重さ,色,木目などをわざわざ原版通りにすることまでした。その聖書は,モロッコの山羊革で手製本がなされ,22カラット金で縁が塗られ,金文字で箔押しされる。1455年にヨハネス・グーテンベルクが印刷したグーテンベルク聖書は,可動活字を用いて印刷された最初の本だった。その聖書は2巻になっていて,180冊が印刷されたにすぎず,そのうちの20組が完全な形で残っている。1978年には原版による1冊の聖書が240万㌦(約5億400万円)で売却された。復刻版を作る費用は1冊に付き4,500㌦(約94万5,000円)にすぎない。
既婚司祭の会議
11か国からやって来た約150人の人が,ローマにほど近いアリッチアで「既婚のカトリック司祭とその妻の全体会議」のために集まった。彼らが「神学上の議論を平和裏に提出し,攻撃的なところがなかったことから,これが教会に対する結束した反逆事件でないことは明らかである」と,ドイツの新聞「フランクフルター・アルゲマイネ」は解説している。「むしろ,なすすべがなく助言を求めている感があった」。カトリックの公式の統計では,既婚司祭で教会における活動から全く除外された人は,全世界で7万人と推定されている。バチカンは1963年以来4万6,302人の司祭をその独身の誓いから解いた。法王ヨハネ・パウロ2世は,そのような嘆願書に署名することをあまり快く思ってはいなかった。同紙は,「財政上の思惑が関係している」と述べている。独身制を廃止すれば,教会は司祭の家族を扶養しなければならなくなる。
届け出ることのない犯罪
「犯罪の被害に遭った米国人の3分の2は警察を呼ばず,自動車を盗まれたことは届け出ても,強姦などの暴行は届け出たがらない」と,ニューヨーク・デイリー・ニューズ紙は述べている。司法省の最新の報告には,警察に届け出のあったものは,1983年中に起きた約3,710万件の犯罪のうちの35%にすぎないことが示されている。犯罪が未遂ではなく既遂であったとしたら,また,被害者がけがをしたなら,盗まれたり損なわれたりしたものの価値に比例して,届け出の数はもっと多かったことだろう。すり,夜盗,強姦,強盗などの事件の約半数は届け出があった。届け出が69%という最も高い率だったのは自動車の盗難の場合で,25%という最低の率だったのはありふれた盗みの場合だった。「さほど重大な事件ではなかった」から届け出なかった,また暴力犯罪の場合には,「私的な,個人の問題だった」から届け出なかったと言う人が多かった。
火葬の問題
今,日本では,ペースメーカーを使用している人が多く,年に2,000人から3,000人の割で増加している,とアサヒ・イブニング・ニューズ紙は伝えている。心臓の鼓動を規則正しく保つために手術によって胸に埋め込まれたその装置は,火葬場で問題を引き起こしている。高熱にあうとその装置は爆発する。その爆発によって,のぞき穴から炎と破片が噴き出し,物が壊れたり,けが人が出たりする。葬儀場としては,遺族にペースメーカーのことを尋ね,取り除いてもらうよう依頼している。「墓地のための土地が不足している日本では,火葬が義務づけられている。土葬はめったに行なわれない」と,同紙は述べている。
慢性偏頭痛の緩和
「慢性的な頭痛持ちを治療する最善の方法は,その人たちに頭痛薬離れをさせることかもしれない」と,カナダのザ・メディカル・ポスト紙は述べている。同紙は,デンマークのコペンハーゲンで開かれた第2回国際頭痛会議に提出された数々の研究論文に関して報じ,さらにこう述べている。「ASAやアセタミノフェンといった鎮痛剤を過度に使用すると,慢性的な頭痛持ちの痛みを長びかせたり,ひどくならせたりすることがあり,効き目のあるはずの薬物療法の効果を妨げることがある」。ほかの治療法を用い,「鎮痛剤を服用せずに3か月経過した」患者のうち,75%から82%の人に「頭痛の頻度と程度に著しい減少が見られ」,禁断症状の問題はほとんどなかったことを二つの研究論文が示している。「純然たる偏頭痛の患者」にとって頭痛薬「離れはプラスになる」というのが,その報告の結論であった。
養牛
米国の熱心なヒンズー教徒たちは,毎年幾百万頭もの牛が屠殺されていることに抗議するため,牛を守る「養牛」運動に加わるよう求められている,とインディア・オブザーバー誌は報じている。ペンシルバニア州のハレ・クリシュナ農場がその運動の口火を切る場所として選定された。これにより,「すべてのヒンズー教徒が,基本的で敬虔な宗教信条の一つである,牛の保護に対する自分の誓約を表わす」道が開かれることになる。三つの方法が選べるようになっている。すなわち,牛をその生涯にわたって保護するために月額30㌦(約6,300円),月額100㌦(約2万1,000円),あるいは一括して3,000㌦(約63万円)かそれ以上の額のお金を寄付することである。参加者たちは,自分の養牛のカラー写真と牛の成長報告をもらい,その農場で自由に週末を過ごし,自分の“ゴー・マタ”すなわち聖母に会うことができる。「牛は最も栄養に富んだ自然食品を提供してくれるので,ヒンズー教徒は人間社会の母として牛を」あがめる,と同誌は述べている。
イスラエルの入植問題
「昨年のイスラエルへの入植者数は,1948年の建国以来最低になった」と,ニューヨーク・タイムズ紙は報じている。「1985年にイスラエルに入植した人はわずか1万1,298人で,1万9,230人が入植した1984年に比べると41%の減少となる」。政府関係者はその減少の原因を,国が直面している難しい経済状態にあるとしている。それにしても,なぜこの問題がそれほど心配されているのだろうか。一つには,高い出生率のために,イスラエル内でアラブ人の人口がユダヤ人の人口の2倍の速さで増加しているからである。アラブ人がついには過半数を占めるようになるのではないかと恐れられている。「入植者の減少は,やがてはすべてのユダヤ人が住むようになる国という国家的自画像を傷つけることになり,それがイスラエルに一層の苦痛を与えているのである」と同紙は述べている。世界中のユダヤ人の27%に当たる350万人ほどのユダヤ人がイスラエルに住んでいる。
テレビ贖宥
サンピエトロ広場で行なわれる法王の恒例のクリスマス説教をテレビかラジオで聞いたカトリック教徒に対して,これまでは実際にその場に居合わせた者だけに与えられたのと同じ全贖宥が授けられた。ルイジ・ダダリオ枢機卿が署名した1枚のバチカンの布告によって,電子工学の進歩ゆえの変更が認められた。それは,自分の教区で年に3回,“教皇掩祝”を与えることを許されている,地方の司教たちにも当てはまる。カトリックの教理によれば,全贖宥とは,「犯した罪が許された後にもなおその罪に対して残る有限の罰から全く解放することを表わす」と,ニューヨーク・タイムズ紙は述べている。贖宥を授けるという慣行は,プロテスタントによる宗教改革を引き起こす根本原因だった。「マルティン・ルターのような宗教改革の指導者は,献金と引き換えに贖宥を授けるという一般的な慣行に激しく反対した」と同紙は述べている。「サンピエトロ大聖堂を建てるために用いられたお金の多くはそのような方法で集められた」。
身の守りとはならない
暴力行為が増加しているため,襲われた時に身を守ることができるようにと,大勢の大人や子供が護身術を教える教室に通うようになっている。しかし,費やされる時間やお金は全く無駄になるかもしれない。「高いお金を払ったとしても,それは学ぶ人が身を守れるようになるという保証にはならない」と,ウォールストリート・ジャーナル紙は述べている。「大量の時間とお金をつぎ込んで,照明の明るい教室で鮮やかに見える複雑な動作を学んでいる人は少なくないが,それは街路の暗闇で恐怖にとらわれた時には役に立たなくなる」。しかも,護身術を教える人たちの資格に関する国家的な基準は何もない。専門家たちが指摘する誤った考えや落とし穴には次のようなものがある。すなわち,武道の知識があれば不思議に安全が保障され,無傷で切り抜けられると思う; 路上強盗に渡す額の10倍ものお金を武道のけいこのためにつぎ込む; 技を修得するために努力しなければならない期間の長さや厳しさを過小評価する; 幼い子供たちは武道を習うと弱い者いじめをするようになるかもしれない,などである。
中国における学費
中央政府からの助成金の不足分を埋め合わせるためにそれぞれの地方で資金を調達してよいとする中国政府の方針を不当に利用している学校がある,とロンドンのガーディアン紙は報じている。当局者のもとには,法外な学費のことで親たちからの苦情が殺到した。山東省の一労働者は,自分の子供を小学校に通わせるのに,前学期は35元(約2,400円)ですんだが,今学期は100元(約6,900円)もかかっている,とこぼした。湖北省では,ある親は小学生の子供たちのために80元,中学校に通う子供たちのために300元を負担していると語った。自分の子供が入学できるよう,複写機や石炭など供給量が少ない品物を求められた親もいた。中国における地方労働者の平均的な年収は約115㌦(約2万4,150円)である。