世界展望
犯罪は高くつく
米国では,州刑務所や連邦刑務所が一人の犯罪者を鉄格子の中に入れておくのに,年に平均1万2,000㌦(約156万円)ないし2万4,000㌦(約312万円)の費用がかかる。「それだけのお金があれば,子供一人をハーバード大学に入れることができる」と,フォーブス誌は述べている。ところが,ニューヨークのような都市では,その費用が年に3万5,000㌦(約455万円)にも上ることがある。そのように費用のかかる懲役刑に対する懸念は,「雪崩のように服役者数が」年々増加しているため,深刻化している。入手可能な統計資料によれば,服役中の男女は米国全体でおよそ55万人。「アメリカ人450人に一人が服役中ということになる。その割合は西欧世界で最高だ」と,フォーブス誌は報じている。しかし,負担を増大させているのは,年に3万5,000人ないし4万人が服役者に加わっている事態である。そうなると,「四日に一つの新しい刑務所を設けなければならなくなる」。
幸福ではない当せん者
失業者の中には,宝くじで何千万ドルという賞金をものにしたいという夢を抱いている人が少なくない。27歳になる一人の失業者は,宝くじに当せんして640万㌦(約8億3,200万円)を獲得し,その夢を実現させた。ところが,当せんして大金持ちになったボブ・キャンベルは,「だれにもこうなってほしくない」と言っている。なぜだろうか。トロント・スター紙によると,キャンベルは,物を買うことが,あまり喜びや満足をもたらさないことに気づいたのである。「なければないで幸福になれる」と,キャンベルは言う。仕事を探す苦労がなくなったことは認めながらも,「まあそれぐらいのことだ」と述べている。他の人には,多額のお金を獲得しても即座に幸福になれるわけではない,と忠告している。
疑問は残る
現存する何百万という種がどのように出現したのか。これは,長い間,進化論者たちを悩ませてきた疑問である。一つの種が一つの種であるためには,同じ種から発達したと考えられる種であっても,別の種であれば交雑はできない。実際に子が生まれても,その子は不妊(ラバはその例)であるか,成獣になる前に死ぬかのどちらかである。科学雑誌「ディスカバー」によると,いま遺伝学者たちは,「救助遺伝子,すなわち,種を区別する障壁の小さな穴と言えるもの」を見いだしたと述べている。その遺伝子があるために,それを持つハエは虚弱にはなるものの,ショウジョウバエの雑種の雄の一部は生き残ることができた。「しかし,その遺伝子は,種を区別する障壁を完全に突き破らなかった。その雄を繁殖させることはできなかったからである」と,その記事は述べている。これによって「厄介な疑問」が生じる,とディスカバー誌は述べている。「もしその遺伝子を有している親がそれによって益を受けず,その遺伝子を受け継いでいる子孫がそれを子孫に伝えることができないのであれば,その遺伝子はどのように進化することができたのだろうか」。
長続きさせる
体と共に“成長”する人工血管と世界一細い(内径1.5㍉)人工血管が日本で開発された,と毎日新聞は報じている。“成長”する血管とは,手術時に取ってしまう人体の血管を化学処理して特殊な接着剤で形が崩れないようにしてあり,外側はポリエステル製の目の粗いチューブで覆われている。この血管は体の成長と共に太くなるため,心臓の動脈や静脈に異常のある幼児の手術に使えるようになるものと期待されている。もう一つの新しい血管は,多孔質のテフロンを使用し,その内側にコラーゲン(ゼラチンのもと)を塗り,さらに内側にコラーゲンと抗血栓性のヘパリンを塗るという三層構造になっている。ヘパリンが徐々に血液中に出てゆくため血は固まりにくく,目詰まりを起こしにくい。この人工血管が臨床に使えるようになれば,形成外科分野で応用は限りないと言われている。
妻を殴ってもよいとされている
オーストラリア全土から無作為に1,500人の男女を選んで調査したところ,驚いたことに,平均してその20%(女性の17%,男性の22%)は,妻を殴ってもよいと考えていたことが明らかになった。正当と認める身体的暴力の程度は様々だったが,男性も女性も,「もし妻が夫に従わず,無駄遣いをし,家の中を片付けず,夫と寝ようとしなかったり,ほかの男と寝ていることを告白したりするなら」,夫は妻を突いても,蹴っても,殴ってもよいと考えていた,とザ・オーストラリアン紙は伝えている。その調査によって,自分が目にした近所の家庭内暴力を警察に通報したがらない人がいることも明らかになった。調査の対象になった人たちの少なくとも3分の1は,家庭内暴力を私的な事柄とみなしている。
修道士に対するエイズ検査
アトス山(ギリシャ)にある20の東方正教会修道院の修道士たちは,「極めて不穏な状態」の中で生活している,とフランスのニュース機関AFPは伝えている。なぜだろうか。元修練士の一人が「エイズウイルスの保菌者である」ことが分かったのである。修道院の指導者たちは今,「全部で2,000人ほどの修道士や隠修士にエイズ検査を受けさせることを考えている」。
健康を脅かすものが忍び寄る
種々の研究の示すところによると,人が一番嫌う生物はゴキブリだが,研究科学者のバン・カン博士は,最近ワシントン特別区で開かれた昆虫学のゼミナールにおいて,ゴキブリは健康をも脅かすと説明した。ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると,ゴキブリによるアレルギーはこれまでに考えられてきたよりもはるかに一般的であり,「アメリカのスラム街でぜん息にかかっている人が多いのは,そういう地域にひどくはびこっているゴキブリのせいかもしれない」と,カン博士は語った。菌類,原虫類,バクテリア,ウイルスなどはみなゴキブリが運んで来ると言われている。ニューヨーク州保健省の研究科学者,ステフェン・C・フランツ博士は,人の住む都会でゴキブリが増加していることに関して注解し,「全般的に見て,我々がそういう問題を抱えているのは,それらの生物が我々と共に住めるような状態を我々が作り出しているからである」と述べた。
部分的な解決にすぎない
人工器官に関するミュンヘン国際会議の席上で,「科学技術は,本来の器官の複雑な性質を十分にまねることは決してできないと思う」という意見が述べられた。ミュンヘンの南ドイツ新聞の報道によると,「機械的な器官の短所」は,「身体の活動を単一の機能に,たとえそれが主要かつ極めて重要な機能であるとしても,ただそれだけのものに」縮小してしまうことにある。例えば,人間の心臓は単なる血液ポンプではなく,腎臓は単なる毒物排除装置ではない。種々のホルモンの製造も行なっている。人工心臓は循環器系に血液を送り出すかもしれないが,ホルモンや神経からの信号に反応することも,『血液循環を釣り合いの取れたものに保つ複雑な調整機構に影響を与える』こともできない,とその記事は述べている。透析にしても,人間の腎臓の「細胞膜の複雑な自然のシステム」に代わるものではない。「体組織を毒さないようにするため,厳密にどの物質が血漿から除去されねばならないのか,今もって医師たちに確かなことは分かっていない」。
脅威にさらされるミツバチ
「カナダの養蜂業者は,すでにミツバチを脅かしているアジア・ダニ[varroa jacobsoni]の音なき侵入に恐れをなしている」と,カナダの新聞「サンデー・スター」は報じている。ハチがさなぎの状態の時に,そのダニが襲い,「ハチの体液」を吸ってハチの寿命を半分に縮めてしまう。ハチに関するある権威者は,そのアジア・ダニの脅威を,養蜂業者にとってここ300年の間に直面した「最も重大な」危機と呼んでいる。「ハチの専門家の予告によると,米国にあるハチの巣はみな……今後2年以内に襲われ,農業に及ぶ影響は甚大なものになろう」と,同紙は述べている。ミツバチの数が大幅に減少するなら,穀物に必要な授粉作用は低調になる。
弾丸による手術
「1日に何百回も体を洗わずにはいられない衝動に取りつかれた」22歳の男性は,自殺を図り,偶然にも「自分自身に神経外科手術を行なって成功した」と,ニューヨーク・デイリー・ニューズ紙は報じている。その人は,自分の強迫神経症的な行動に悩み,「22口径ライフルの銃口を自分の口にくわえて発砲したため,弾丸は大脳の左前頭葉を貫通した」と,同紙は説明している。その青年は,自殺に失敗し,脳内で強迫的な行動をつかさどると考えられている部分を事実上取り除いた,とレスリー・ソリョム博士は,英国精神医学ジャーナル誌の中で報告した。その人は強迫的行動から解放されて新しい仕事に就き,今は大学に通っている。
無意識でも目覚めている?
「麻酔をかけられた患者は無意識だが,必ずしも耳が聞こえないわけではない」と,ゲオ誌は報じている。種々の研究が明らかにしたところによると,聴覚に入った刺激を記憶する脳の能力は,患者に十分な麻酔が施されている時でも弱まることなく保たれる。麻酔をかけられた患者が,なぜ手術室で話された事柄を知っていて,あとで思い出す場合があるのかは,これで説明できる。ミュンヘンのある医師は,「麻酔のかかった患者は,患者が目覚めている時と同じように扱うべきだ」と提案している。それには,患者について楽観的な意見を述べることや,冷笑的な言葉や当人を不快にさせる言葉を使わないことが含まれる。