世界展望

ハルマゲドンを未然に防ぐ？

ミハイル･ゴルバチョフ書記長とロナルド･レーガン大統領がモスクワで会合し，批准証書を取り交わした6月に，地上基地から発射される中距離および短距離ミサイルを撤廃するソ連とアメリカの条約が発効した。同条約のもとに，ソ連は1,752基のミサイルを，アメリカは859基のミサイルを廃棄することになる。西側の報道陣は，ミサイル撤去の実演を見るため，ソ連のロケット基地訪問を初めて許された。イブゲニー･A･コズロフ大佐は報道陣を伴って基地を案内していた時，武器の廃棄についてどう思うか意見を求められた。「我々はハルマゲドンも，戦争も決して望んでいない」と同大佐は述べた。

良い投資？

日本の多くの親は，高等教育が子供に優れた地位と高収入と良い暮らしを保証すると固く信じている。中には，子供を一流の私立校や大学に進ませるために，借金までして6,000万円以上費やす親もいる。親は期待した配当を得ているだろうか。「実際のところ……その考え方はもう当てにならない」と，マイニチ･デーリー･ニューズ紙は述べている。「受け皿となる役職が足りず」，多くの人は会社で，以前は高卒者が占めていた地位に甘んじなければならなくなっている。平均生涯所得は大卒者のほうが高い ― 高卒事務職の1億9,293万円に対して2億655万円 ― とはいえ，「いつか日本の親たちは，その差があまりにも小さいので，家計に大きな負担をかける価値がないことに気づくかもしれない」と同紙は述べている。

貴重なダチョウ

ダチョウの商業的価値をご存じだろうか。ダチョウの卵1個は鶏の卵24個に匹敵する。おまけに，ダチョウの肉はかなり味がよいのに加えて脂肪がなく，コレステロールが少ないといった利点がある。ダチョウの羽根は1本最高5㌦（約650円）で売れ，ダチョウの硬い皮は高品質の革になる。南アフリカと米国テキサス州には，景気のよいダチョウ農場がすでにお目見えしており，現在ではオーストラリアにもできつつある。ザ･ウィークエンド･オーストラリアン紙は，1番目ではないにしても，最初のダチョウ農場の一つがニューサウスウェールズ州の中部に作られたことを伝えている。同紙によると，ダチョウは体は大きいが，扱いはそれほど難しくないと楽天的な農場経営者は述べている。その農場経営者はダチョウを羊ややぎと一緒に放牧している。ダチョウは食物として草を食べるが，それに加えて毎日余分の干し草か大麦を与えるだけで必要は満たされる。

記録的な深さ

1988年3月にフランスのダイバーたちは，水圧が1平方㌢当たり50㌔にも達する水深520㍍ないし530㍍の場所で3時間半余り作業して，以前の潜水記録をすべて塗り替えた。その潜水作業は，フランス南東部のカシス沖の地中海で行なわれた。6人のダイバーたちはその1週間前に，圧力が徐々に高まって作業地点の水圧と等しくなる高圧室に入れられた。フランスの日刊紙「ル･フィガロ」は，「彼らはそのような圧力のもとにいたので，高圧室を出て，水面下520㍍の所まで無事に潜ることができた」と論評した。実地に応用できそうな分野としては，沖合い油田のプラットホームの水中部分の補修作業がある。

人工の涙

涙腺が損傷したり，涙管がふさがったりして涙が出なくなると，重大な問題が生じ，時には失明することさえある。パリの医師ジャン-アントワ･ベルナールはその治療法として，患者がわきの下に装着して使う，電池で動く重さ400㌘の自動涙ポンプを完成させた。フランスの週刊誌「ル･フィガロ･マガジン」によれば，その装置は「生理的食塩水の詰まった……注入器で，生理的食塩水はほとんど目に見えないビニール管を伝わり，まぶたの下に取り付けられたシリコン製の精巧なカテーテルを通って目を定期的に潤す」。流出の割合は，風の強い日には多く，睡眠中は少なくといった具合いに，必要に応じて調整することができる。

笑いごとではない

笑いは良薬であるという昔の考え方が真剣に考えられるようになった。米国には病気で苦しむ患者のために「ユーモアの部屋」を備えた病院があり，臨床医が「スマイル療法」を教え，「笑いを誘う看護婦」として知られる組織が人気を得ている，とバンクーバー･サン紙は伝えている。その記事は，笑いが「ストレス解消の手段」となり得るだけではなく，「免疫組織にとって良い」場合があることを研究者たちが突き止めたことや，笑いが「体内のジョギング」とまで言われていることを指摘している。同紙によれば，ある心理学の教授は，「笑うと，体内の自然の鎮痛剤であるエンドルフィンが分泌され，痛覚域値が引き上げられる」と主張している。また，カナダのある臨床医は，笑顔を作る筋肉は「その時の気持ちにかかわりなく，快く感じるよう脳に指令を出す」と述べている。

記録的な旅

ドイツ連邦鉄道は去る5月に，同鉄道の列車「インターシティー･イクスペリメンタル」（ICE）の特別な試験走行に参加するよう約80人の客を招待した。2両連結のICEの客車の中で座席に座ったり，立ったりしていた乗客は，扉の上の速度計の電光数字が時速405㌔の目標に到達するのを見守っていた。それは鉄道の速さの世界新記録を意味していた。フランクフルター･アルゲマイネ紙によると，ドイツ連邦鉄道は最近，15億ドイツマルク（約1,050億円）以上の経費がかかるICEの車両41両の製造を発注した。

トマトの木の新しいチャンピオン

1988年2月，つくば市で育てられた巨大なトマトの木が，1985年の世界記録を保持するトマトの木より3,585個も多くの実をつけて新記録を樹立した。以前のチャンピオンと今年のチャンピオンはどちらも水耕栽培法で育てられた。これは費用のかかる栽培法で，土を使わずに温室の中で植物に液体肥料を施す方法である。新しくタイトル保持者となったトマトの木の枝は，支えとして作られた格子棚の上をはって伸びていた。チャンピオンの木は挑戦を試みたわずか1年ほどの間に，1万6,897個のトマトの実をつけた。

放射能の上手な利用法

放射能の新しい利用法は，オーストラリアの老朽化した歴史的建造物のシロアリの駆除に役立つ。キャンベラ･タイムズ紙の伝えるところによると，微量の放射能がシロアリの食べ物に加えられてシロアリのコロニー全体に広がると，コロニーの位置を確かめられるだけでなく，その大きさを測定することが可能となる。放射性物質がシロアリを殺すわけではない。いったんシロアリのありかが突き止められると，従来の殺虫剤を使ったほうが効果的で，経済的である。この方法は非常にうまくいくので，スリランカ，マレーシア，フィリピン，タイ，エジプトなどの国々が自国のシロアリ問題の解消に役立たせようと，この方法に関心を寄せている，と同紙は伝えている。必要とされる放射性物質の量はごくわずかなので，人間を汚染する危険はないと言われている。

運動中毒者

適度の運動は確かに健康によいが，体をこわすまで運動するアメリカ人が増えている。「健康増進に対する国民の熱意は，食欲不振症や大食症といった食べることに関係した病気の原因となる同様の心理的問題と共に，運動に異常なほど溺れるという健康上の大きな問題を引き起こしてきた」と，ウォールストリート･ジャーナル紙は述べている。「運動をしないと，アルコール中毒者や麻薬中毒者がアルコールや麻薬をやめた時と同じ，抑うつ状態，神経過敏，不眠といった禁断症状を訴える者が多い」。健康と運動のしすぎは紙一重だが，医師たちによれば，けがをしても ― 大抵は痛みを隠すために炎症抑制剤を服用して ― 運動するのは運動中毒の間違いのない兆候である。「医師たちは，一般にジョギングやエアロビクス･ダンスのやりすぎによって起こる圧力骨折や向こうずねの炎症，それに腱炎などが，一生治らない場合もあることを知っているので心配している」と，同紙は述べている。