世界展望
世界の刑務所一覧表
違法者の投獄が一番多いのはどの国だろうか。判決プロジェクトという調査グループは,それは米国であると述べている。その一覧表によれば,第2位は南アフリカ,第3位はソ連である。100万人を超えるアメリカ人が刑務所に入っている。そのため米国は,投獄されている人の人口に対する割合が,住居者10万人につき426人で,番付の第1位の国である。投獄するために毎年いくらかかるのだろうか。米国だけでも160億㌦(約2兆1,600億円)かかる。米国のある政府関係者はその報告に関してこう述べた。「投獄するのをやめて,社会復帰させなければならない。我々は必要と思える刑務所をいくらでも建てて,何千何万という人を閉じ込めることはできるが,犯罪の根本原因に取り組まない限り全く効果がないだろう」。
脳腫瘍の治療
「放射線外科定位脳手術」という言葉は発音するのも難しいかもしれないが,まだ小さい初期の脳腫瘍を患っているある人々にとって,それは希望をもたらす言葉かもしれない。ロサンゼルス・タイムズ紙によると,放射線外科定位脳手術では,「患部に正確に焦点を合わせた数本の放射線で,そこを破壊する」。メスを使わないこの方法を用いれば,脳の他の部分や頭蓋骨や皮膚には比較的影響が出ない。しかし,この治療法は脳以外の器官に用いることはできず,直径3.5㌢以上の腫瘍には効果がない。とはいえ,南カリフォルニア大学医学部の神経外科の教授,マイケル・L・J・アップツォー博士は,「これは非常に注目に値する着想である」と述べている。
インドの血液銀行の危機
「血液。それは命を守るものなのか,それとも命を奪うものなのか」。インドの民間血液銀行の嘆かわしい状態について伝えた最近のインディア・トゥデー誌はそのように問いかけた。インドの保健省の委託で行なわれた研究により,国内の売血者から取られた血液の70%以上は,エイズの原因となる致死的なHIVウイルスに関して適正に検査されていないことが明らかになった。その記事はまた,病弱で貧しい献血者から血液を買っている多くの民間血液銀行には非衛生的な状態が広く見られると述べている。こうした献血者の中には,「アルコール中毒者や麻薬の常用者」,あるいは「不特定多数の者と性関係を持つ人」が少なくない。それで同誌は,献血された血液が「肝炎やマラリアや梅毒,そして今ではエイズを」うつす場合があるため,「外部から血液を買うのは,ロシア式ルーレットをするようなものだ」と嘆いた。
有罪とされた外科医
「この判決は医学界に必ずや旋風を巻き起こす」とラ・レプブリカ紙は述べている。イタリアにおいて初めて,外科医に殺人罪の判決が下されたのである。この外科医は,ある高齢の女性に,本人の同意なしに極めて危険な手術を施して死なせたため有罪を宣告された。フィレンツェの法廷の判決によると,この外科医は「全く必要がないのに,また患者がこの種の手術に断固反対していたにもかかわらず」,手術を施した。法廷は,患者が重体だったため手術は延期できなかったと主張する被告側の弁護士団の論理を退け,検察側と原告の弁護士団の論議を認めた。後者は「患者の同意」を論議の土台に据え,「そのような同意がなければ,すべての手術は違法行為であり」,メスによる一刀一刀は「ナイフを突き刺すことに匹敵する」と,同紙は伝えている。「判決によると,自分の体と運命に関する選択権を有しているのは患者のみである」。
ストレスを感じている若者
フランクフルター・アルゲマイネ紙は,「女子は毎日の決まりきった活動からくるストレスのために,男子よりはるかに悩んでいる」と伝えている。12歳から17歳までの若者1,700人を対象にして,ドイツのビーレフェルト大学で行なわれた4年にわたる研究により,極度の圧力のもとで,女子は不安を抑え,その反動として,頭痛,いらいら,不眠,胃の不調などを訴えることが分かった。男子の場合は外向的に振る舞ったり,荒々しくなったり,攻撃的になったり,暴力的になったりすることによって日常のストレスを解消するほうが普通だと言われている。ストレスはどこから生じるのだろうか。学校の成績に対する親の期待が不当に高いこと,同い年の人からほとんど認めてもらえないこと,極端に物を欲しがること,余暇に過度に興奮することなどから生じる。
高度記録
1990年10月24日,52歳になるヘレン・スタマタキーがヒマラヤ山脈のトゥクッチェ峰と呼ばれる,高さ約6,880㍍の山の登頂に成功し,ギリシャ人の登山の記録を塗り替えた,とアテネの新聞「タ・ネア」は伝えた。同紙によると,「肺に水腫ができて数時間以内に死ぬことがあるため,大半の登山家が極めて危険なものとみなしている,無酸素での」登頂に成功した女性は彼女が初めてである。
放置車
「ひところの放置自転車が,車に代わった」と,警察庁の一当局者はこぼした。政府の推計によると,日本全国で毎年約400万台の車が放置されている。かつて車の所有者は,古くなった車を解体業者に売ったものだが,今では撤去のために業者にお金を払わなければならない。車が投棄される理由を説明した読売新聞は,解体業者は最近の鉄くずの値段の急落により,車の解体があまりもうけにならないことに気づいている,と述べた。しかし警察も腕をこまねいているわけではない。車を放置する人々を送検し始めたのである。
スパゲッティ・アレルギー
イタリア人1,000人のうち一人は“パスタ・アレルギー”のためスパゲッティを食べる楽しみを味わえない。それどころか,ミラノの日刊紙「コリエーレ・デラ・セラ」によると,こうしたかわいそうな人々はセリアック病にかかっている。パンとパスタを主食とするイタリア人は少なくないので,この病気は社会問題に発展している。実際,昨年の11月,この分野の専門家たちがローマで開かれた会議に集まって治療法を話し合った。セリアック病にかかると,小麦,大麦,ライ麦,オート麦に含まれるグルテンという成分に対して長期間過敏になり,腸の粘膜の変化を引き起こす。
消費者は要注意
「1,500億㌦(約20兆円)規模の医薬品市場に目をつけて,ここ10年間,有名な医薬品のコピー製品が出回るようになった」と,ニューズウィーク誌は伝えている。その中には,世界で最もよく売れている医薬品も幾つか含まれている。「これらの『海賊薬品』は製品名やラベル,効能書,密封シールまで本物そっくりだ」。しかしその中には,工業用溶剤,おがくず,泥,化粧用パウダー,汚染された水などの有害物質が含まれている場合がある。含まれている成分は大抵効き目が弱められているか,あるいは全く効かない。どんな結果が生じただろうか。ロンドン衛生・熱帯医療大学の保健経済学者,スーザン・フォスターは,「数百人,いや数千人が死亡した」と述べている。医師や医療関係者たちは図らずもこのような薬品を調剤するかもしれない。合法的な製造業者は解決策に窮している。こうした薬品の出どころは,医薬品の国際特許を認めていない国々である場合が多い。通例,合法的な製薬会社は,問題が公表されると人々が恐れを抱いて自社の製品を買わなくなるため,沈黙を保っている。
恐れても当然?
飛行機による旅が極めて安全な方法であることは今でも変わらない。しかし,空を飛ぶことに恐れを感じている人々にとって,ニューズウィーク誌に掲載された飛行機の飲酒操縦に関する次の統計は驚くほどのことではないかもしれない。「米国の免許を受けたパイロット67万5,500人のうち,飲酒操縦を行なった経験のある者は1万人を超える。過去15年間にアルコール中毒の治療を受けて復職した旅客機のパイロットは1,200人を超える。毎年墜落事故で死亡する一般航空機パイロットのうち,5%ないし10%は,血液中からアルコールが検出される。1980年から1988年までに起きた通勤便と近距離便の6件の事故は,全面的,または部分的にパイロットの飲酒によるものであった」。
文盲と闘う中国
中国は40年に及ぶ文盲との闘いで目覚ましい進歩を遂げてきたが,この苦闘はまだ終わっていない。チャイナ・トゥデー誌の伝えるところによれば,1949年には中国人の約80%が字を読めなかったのに対し,今ではその数は20%近くまで下がった。しかし,12億近くの人口を抱える国にとって,これはまだかなりの数である。中国には非識字者または準識字者が約2億2,000万人おり,毎年約200万人の十代の若者がまともに読み書きができないまま15歳を迎える,と同誌は見ている。このため政府は,毎年少なくとも400万人の非識字者に読み書きを教える10か年計画を開始した。