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目ざめよ! 1991
目91 5/22 20–22ページ

コレラの大流行 ― ある西アフリカ人の日記

西アフリカの「目ざめよ!」通信員

年配の婦人が最初の犠牲者になったのは12月のことでした。最初の症状は下痢です。水様性で頻繁に起こりました。それから嘔吐が始まりました。けいれんによって股と腹部が締めつけられるように痛みました。呼吸が速く,かつ浅くなりました。皮膚にはしわがより,目も眼窩に落ち込みました。48時間後,彼女は亡くなりました。

次の日に同じ家に住んでいた別の人が倒れ,次いでもう一人が倒れました。さらに何人かの近所の人々が病気にかかりました。病気は近くの村や町にも現われ始めました。症状はすべて同じです。下痢や嘔吐を引き起こし患者の3分の1が死亡しました。

パスツール研究所は便のサンプルを調査し,医療専門家たちの最悪の予想が正しかったことを確認しました。それは過去25年間に93の国々を悩ませてきた病気,しかも余りにも致死率が高いためにその名前を聞いただけで恐ろしくなる病気,つまりコレラだったのです。

西アフリカのある国の首都で,私はこの恐ろしい病気の大流行に伴うドラマを目撃しました。以下はその年の出来事をつづった日記です。

「心配する必要はない」

2月13日: うわさが広まる中,新聞は第一面に「下痢: 70人が死亡。しかし危機は収まる」という記事を掲載した。記事は「コレラの大流行を心配する必要はない」として読者を安心させている。

4月25日: 小児科医であり,この国の下痢性疾患抑制計画の責任者であるL・バッカ博士a に,根強いコレラのうわさが本当なのかどうか尋ねてみた。「それは本当です」と彼は言う。「コレラが発生しており広がっています。13の地区中,10の地区にはコレラ患者がいます」。

私は集団予防接種について尋ねた。博士の答えはこうだ。「私たちは人々にワクチンを接種するつもりはありません。それは流行を防ぐ点でも,抑制する点でもそれほど効果がありません。現在のワクチンの有効期間はたかだか3か月から6か月です」。

「博士は,コレラの大流行と闘う点でワクチンには価値がないとおっしゃるのですか」と尋ねた。

「いいえ,そう言っているのは世界保健機関です」。

「ご自身はワクチンを受けておられますか」。

「いいえ。しかし,私はあちこちのコレラ発生地域に行ったことがありますし,沢山のコレラ患者を診てきました」。

バッカ博士の説明によると,コレラはある種のビブリオまたはバクテリアによって引き起こされる。ビブリオは汚染された食物や水を通して体内に侵入する。それから腸に集まり,そこで増殖して下痢や嘔吐を引き起こす有害物質を産生する。その後,これらのビブリオは飲料水に入ったり,洗っていない手により汚染された食物に付着するかもしれない。こうしてこの病気は伝染する。

博士は自分の口を指差し,「重要なのは何がここに入るかということです」と言う。このようなことも言われている。「コレラを食べることや飲むことはできる。しかし,コレラを捕まえることはできない」。

病気が首都を襲うことは考えられるだろうか。「既に襲っています。今日5人の患者を病院に収容しました」とバッカ博士は言う。

5月7日: てんてこ舞いの病院は,コレラの流行に対処する準備ができていない。コレラ患者が隔離される大部屋は,コンクリートの床で,天井にファンが一つだけ付いている。トイレは遠すぎて使用できないため,排せつ物は病人用の浅い便器かプラスチック製のバケツに集め,殺菌してから廃棄する。今12人の患者がいる。大人の男女と二人の子供だ。全員やつれており,見る影もない。

病人は木製のベンチに寝ている。ベッドも,病院の食事も,個室もない。しかし,だれも不平を言わない。やせ衰え,しわだらけになったこれらの犠牲者たちには,「乳酸リンゲル液」という印の付いたビニール製の1リットルパックという形の“命”が与えられている。その溶液は点滴によって体内に注入される。

私はコレラが脱水症によって人々を死に至らせることを知った。肝要な体液や必要不可欠な塩分が嘔吐や下痢によって失われると,人間の体は衰え,死を迎える。乳酸リンゲル液の点滴は,失われた水分を補給し,下痢や嘔吐が止まるまで ― 通常二,三日の間 ― 体液を維持する。テトラサイクリンという抗生物質はビブリオを殺し,病気からの回復を早める。

ニュースになる

5月29日: イギリスのラジオ局のニュース放送は,コレラによってこの国全体で300人から600人が亡くなったというニュースを流した。そのうちの一人は私の知り合いだった。父親が仕事に出かける時には,その幼い息子は楽しそうに遊んでいた。しかし夕方父親が帰宅した時には,既に男の子は死んでいた。

今日の午後,エホバの証人の支部事務所は,この病気の予防法を説明した情報を国内のすべての会衆に送ることを決定した。

6月2日: ビニールのシートを張ったベッドが今コレラ病棟に運び込まれている。10人余りの新しい患者が毎日やって来る。ショック状態でやって来て,ORS(経口水分補給用塩類)溶液を飲むことができない人々には,乳酸リンゲル液の点滴が行なわれる。最初の1時間で3㍑から4㍑与えられることも多い。b 一日か二日すると,彼らは退院する。軽症の患者にはORSが与えられ,二,三時間後には家に帰される。

乳酸リンゲル液とORSのパックが国内にどっと押し寄せ,今のところ都市部よりは需要の大きい,地方の保健所に急送されている。60万パック以上のORSが既に分配された。政府は医療チームと補給品を必要な地域に輸送するための乗り物を供給している。国民はラジオ放送とちらしによって,コレラ感染の予防策や,症状が現われた場合の対処法を学んでいる。首都を巡回している宣伝カーも同じ情報を伝えている。

6月10日: コレラ病棟の入院患者は71人にまで跳ね上がった。今15人の看護婦が診療所で働いている。患者の親族も病人を世話するために看護婦と共に働く。部屋はいっぱいで,二人に一つのベッドしかない。床に寝る患者もいる。

人々は病人を背中におんぶして運び込む。中には何キロも歩いて来たので排せつ物でぬれた人もいる。『うちの子の命は……弟の命は……母の命は助かるでしょうか』と目で訴えている。

6月21日: 報道機関に対する声明文にはこう書いてある。「保健省は,……あわてふためいたりパニックに陥ったりする必要が全くないことを一般の人々が確信するように願っている」。しかし,人々は現にあわてふためいている。乳酸リンゲル液が買いだめされているとのうわさもある。タクシーの運転手たちはコレラ患者を病院に運ぶ時に,法外な料金を請求する。もっとも,それは運転手たちが患者を車に乗せればの話だ。コレラ診療所のそばを通って学校に歩いて行く子供たちが,手で口や鼻を覆っている様子も見られる。愚かにも病気の予防になると思って,毎日テトラサイクリンを飲む人もいる。

私は病院で看護学生のアラフィアと話をした。彼女は明らかに動揺している。「寄宿寮のコックの一人がコレラで倒れてしまったんです!」と彼女は声を荒立てる。「看護婦の中にはコレラの大流行にかかわりたくないと思って休暇を取っている人たちもいます」。

しかし,すべての人が手を貸すことをしぶっているわけではない。スーザン・ジョンソンは,あるコレラ診療所を担当している看護婦長だ。彼女は普段は陽気な人だが,今日は緊張している様子だ。私が病室に入った時,ちょうど患者の親族が紙コップを持って,つぼに入ったきれいな水の中にそれを浸していた。「手をそこに入れないで!」とスーザンは怒鳴る。「汚れた水で病気が広がるのよ」。彼女は私を見据え,いらいらしながら言った。「あの人たちは全く分かっていないんです」。

戦いは続く

9月1日: 公式の発表では,今のところ国全体で1万200人の患者がおり,796人が命を落とした。死亡したケースは,医療上の処置を受けなかったか,受けたとしても手遅れだった場合がほとんどだ。

この診療所に入院した3,341人の患者について言えば,死亡したのは93人に一人の割合に過ぎない。そのほとんどは,運び込まれたときに既に死にかかっていた。脱水症が進行していたために意識がなかった人もいる。その段階になると,血液の濃度が増し,色も黒っぽくなって,静脈がしぼんで見えにくくなる。緊急手段として,乳酸リンゲル液を頸静脈か大腿動脈に直接注入する。

12月30日: 大流行は終わりに近づいた。ほぼ1万4,000人が病気にかかり,1,213人が死亡した。皮肉なことだ。医師たちはコレラの原因,広がり方,さらには患者の命を救う方法を知っている。しかし,コレラの撲滅にはほど遠い状態だ。人間が無力にもこうした病気の流行を防げないということは,「疫病」がこの「終わりの日」のしるしになるというイエスの予告をいっそう際立たせている。―ルカ 21:11。テモテ第二 3:1-5。

私はこの流行の期間に活躍したS・ハーディング博士にイザヤ 33章24節の聖句を見せました。この聖句は,「『わたしは病気だ』と言う居住者はいない」時のことを予告しています。博士はこの節をじっと見つめ,それからこう言いました。「聖書がそう言っているのなら,それは真実であるに違いない」。確かに,これは真実です。そしてその約束が最終的に実現するとき,すばらしい安心感を味わえることでしょう。

[脚注]

a 名前は変えてあります。

b 「目ざめよ!」誌,1985年9月22日号の,「命を救う,塩分を含む飲み物!」という記事をご覧ください。

[22ページの囲み記事]

コレラにかかるとき

飲料水はコレラの主要な感染源です。コレラを引き起こす細菌は,衛生状態が悪いと人間の排せつ物から飲料水に入ります。この汚染された水を飲んだり,扱ったりするなら感染するかもしれません。コレラのおもな症状は下痢です。これによって体液が大量に失われ,ショック状態や死にさえ至ることも少なくありません。コレラを予防するには:

1. 煮沸したきれいな水,またはきちんと処理した水だけを使用します。

2. 食物を扱ったり食事をしたりする前には石けんと水で手を洗います。

3. ハエがたからないように食物には覆いをかけます。

4. 生の食べ物はきれいな水か,きちんと処理した水で洗います。

5. 井戸や川,小川などから離れたトイレや適切な場所で用を足します。戸外は禁物です。

6. 万一,感染したら,患者を医師のところか保健所に急いで運びます。

情報源: 世界保健機関

[21ページの図版のクレジット]

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