若い人は尋ねる…
どうしてこんな感情を抱いてしまうのだろうか
「すごい葛藤があるんです。どこに助けを求めたらいいのか分かりません」― ボブ。
同じような精神的苦悩を経験している若者は少なくありません。異性に夢中になっているように見える友達と違って,自分がだんだん同性に引き付けられて行くことに気づくのです。そうしたことに気づいた若者は大抵,打ちのめされてしまいます。
ある女性は,自分の娘についてこう語りました。「娘の健康は次第に衰えていきました。食事ものどを通らず,眠れなくなり,憂うつになったりふさぎ込んだりするようになったんです。自殺を図ったことさえありました」。悩みの主な原因は何だったのでしょうか。「レスビアンの気があったのです」。こうした傾向を克服するのはある人にとって容易ではないかもしれません。一人の若い男性を仮にマークと呼ぶことにしましょう。マークはこう告白しています。「僕は十一,二歳ごろから,数人の友達と同性愛行為を行ない始めました。思春期になってからも,エホバの証人と聖書を研究し始めるまではこうしたことを続けていました。でも,今でも時々,間違った感情が自分の中に残っているんです」。
若者が,同性に引き付けられる原因は何でしょうか。そうした感情に悩まされている若者は,どうすればよいのでしょうか。
先天的か,それとも後天的か
同性愛者はそのように生まれついており,そうした性的指向は変えられないという説が現在広まっています。一例として,タイム誌は,「新たな研究からすると,男性の脳の構造は,同性愛者と異性愛者の間で違いが認められるようだ」と印象的な発表を行ないました。しかし,この研究は,エイズで亡くなった男性の脳を用いて行なわれており,もちろん,こうしたことを証明するものとはなりません。
別の学説はホルモンに関連するものです。科学者たちは,男性ホルモンを取り除いた実験用のネズミが交尾の際,“雌”のように行動するのを観察しました。それで,同性愛者も同様に生物学的な欠陥 ― 誕生前に,男性ホルモンが多すぎたか少なすぎたかした ― の犠牲者であるかもしれないという結論を下しました。しかし,ネズミが異常な行動をとるのは反射行動と大差なく,本当の『同性愛的な行動』ではないと信じる科学者も大勢います。さらに,人間はネズミではありません。「ハーバード大学医学部精神衛生レター」は,「出生前ホルモンが……ネズミの交尾に関連する反射行動を組織するのと同じ直接的な仕方で,人間の性行動に影響を及ぼすとは全く考えられない」と論じています。
遺伝子に関する研究にも多くの注意が向けられてきました。一卵性双生児の兄弟がいる同性愛者の男女の間では,その双子の半数ほどが同じように同性愛者でした。一卵性双生児の遺伝子は全く同じなので,謎の遺伝子が異常をもたらしたと結論するのはもっともなことのように思えます。しかし,双子の兄弟の半数は,同性愛者ではないことにも注目してください。この特徴がもし本当に遺伝的にプログラムされているとしたら,そのすべての双子が同性愛者になっていたはずではないでしょうか。確かに,遺伝子やホルモンが何らかの影響を及ぼすのかもしれません。それでも,サイエンティフィック・アメリカン誌は,発見されたかなりの証拠からすると「環境が性的指向の重要な要因となっていることを強力に示唆している」と伝えています。
環境上の要素
古代ギリシャの環境について考えてみましょう。神話上の神々に関する好色的な物語や,プラトンのような哲学者の作品,若者が裸になって訓練を受けていたギュムナシオンなどに刺激されて,ギリシャ語を話す地域の上流階級の人々の間では同性愛が大変なブームになりました。「古代ギリシャにおける愛」という本によれば,「クレタでは,家柄のよい少年に[男の]愛人がいないのは恥ずべきことであるとみなされていた」のです。そうした道徳的な退廃が謎の遺伝子やホルモンによるわけはありません。同性愛が流行したのは,ギリシャ文化がそれを容認し,それどころか,奨励したからなのです。これは,周囲の環境がどのように強力な影響を及ぼすかをよく例証しています。
同性愛に賛成する宣伝が氾濫していることが,今日そうした見解が広まっていることと大いに関係しているのは疑えません。テレビや映画,音楽,雑誌は,同性愛をほのめかすような事柄であふれています。ケーブルテレビによって,ある若者たちはハードコアポルノを簡単に見ることができます。男女共用(ユニセックス)の服装や身なりは,魅力的と見られるようになりました。また,一部の女権拡張論者たちによって推し進められてきた反男性思想の宣伝が,レスビアンの出現を助長したと感じている専門家たちもいます。若者は,同性愛者の生き方を公然と唱道するクラスメートとの付き合いによっても悪い影響にさらされるかもしれません。―コリント第一 15:33。
父親と息子
時々,誤った家庭環境も,特に男性に対して重大な影響を及ぼしているように見えます。a 父親は子供の感情的な発達に重要な影響を与えます。(エフェソス 6:4)「あなたの家族生活を幸福なものにする」という本は,「平衡の取れた丸味のある性格を身につけるのに,父親の男らしい特質は重要な影響を与えます」と述べています。b 少年は父親から,認められ,愛され,是認されることを必要としています。(ルカ 3:22と比較してください。)父親が子供に,こうした必要な関心を示さないなら,どんな結果になるでしょうか。精神的な苦悩がもたらされます。精神衛生学者である著述家のジョセフ・ニコロシは,男性の同性愛は「ほとんどの場合,家族関係,特に父親と息子の問題に起因する」と主張しています。
母親が,夫をそしったり息子を過度に独占したりすることによって,無意識のうちに状況を悪化させることもあるかもしれません。なよなよした少年たちを対象にしたある研究では,次のような結果が得られました。「ある親たちは,男の子ではなく,女の子のほうを望み,息子にそれとなく女の子の格好をするよう勧めたり,そうした格好をさせたりした」。
ゆがんだ性的感情は,即,親に責任があると言っているのではありません。独占欲の強い母親,怠慢な父親,父親不在,あるいは虐待する父親のもとで成長した男性の中にも,男らしい特質を身に着けている人がいます。そのうえ,同性愛的な傾向を持つ人すべてが,正常に機能していない家庭の出身であるというわけではありません。しかし,少年たちの中には非常に独特な方法で傷ついている子供もいることが明らかになっています。ニコロシ博士は,「父親から拒絶された幼児体験の結果として……同性愛者は,男らしさ,つまり権力や主張,力などを兼ね備えた者と比べると,自分の内に弱さや無能さがあるという意識を持っている。同性愛者は,男らしくなりたいという無意識的な欲求から,男らしい力強さに引き付けられるのである」と主張しています。
ピーターという名のクリスチャンの若者は,こう書いています。「僕の父はアルコール中毒で,いつも母を殴ったり,たまに子供の僕たちも殴ったりしました。僕が12歳のときに,父は家を出て行きました。父がいなくてとても寂しい思いをしていました。僕はいつも,毎日味わっていた喪失感をだれかに満たしてほしいと願っていたんです。やっと,必要を満たしてくれそうな立派なクリスチャンの男性と友達になったとき,その人に対して,性的感情を持つようになってしまいました」。
興味深いことに,非常に多くの同性愛者は子供時代に性的ないたずらの犠牲者となっています。c そうした性的ないたずらは,身体的・感情的な傷を後々までずっと残す可能性があります。こうした傷は,ある作家の言う「ゆがんだ性」をある人々の内に形作らせるものとなるかもしれません。こうしたことは古代ソドムで明らかに生じました。そこの少年たちはゆがんだ性関係を異常なまでに欲しました。(創世記 19:4,5)確かに,大人が食いものにした結果,そうした子供たちが出現したのです。
道徳の問題
科学者たちは,同性に引き付けられるという衝動が,先天的なものなのか後天的なものなのか,決して正確に解明できないでしょう。しかし,一つのことは明らかです。それは,人間はすべて生まれつき,悪い考えやよくない傾向に屈する性向を持っているということです。―ローマ 3:23。
それで,神を喜ばせたいと思っている若者は,それが非常に難しいことであったとしても,神の道徳規準に固く付き従い,不道徳な行為を避けなければなりません。ちょうどある人たちが,聖書の言う『すぐに憤る』傾向を持っているのと同じように,同性愛的な傾向が強い人たちがいることも確かです。(テトス 1:7)しかし,それでも聖書は,不当な怒りを表わすことを非としています。(エフェソス 4:31)同様に,クリスチャンは不道徳行為の言い訳として,彼は『そのように生まれついているんだ』と言うことはできません。子供に性的ないたずらをする者たちが,自分は「生まれつき」子供たちを切望するようになっているんだと言うとき,同じようなばかげた言い訳をしていることになります。しかし彼らが,ゆがんだ性的欲求を抱いているということを否定できる人がいるでしょうか。同性に対する性的な欲求についても同じことが言えます。
それで,同性に引き付けられる若者は,自分の感情に屈することがないようにしなければなりません。とは言っても,聖書はなぜ同性愛を非としているのでしょうか。その生き方は,本当に病的でゆがんだものなのでしょうか。もしそうなら,同性愛を避けるために何ができるでしょうか。これらの質問は,「目ざめよ!」誌の将来の号で取り上げられます。
[脚注]
a 女性が同性愛者になることに関する研究は比較的わずかですが,この場合にも家庭環境の影響があることは確かです。
b ものみの塔聖書冊子協会発行。
c 古代ギリシャにおいて,子供を食いものにすることは,同性愛の発展の要素となっていたようです。少年たちを唆していた年長の者は普通,“貪欲や厚顔無恥な獰猛さの象徴”である“オオカミ”と呼ばれていました。えじきとなった少年たちは,“子羊”と呼ばれました。