世界展望
たばこと仕事
「アメリカ医師会ジャーナル」に載せられたある報告は,米国の幾つかの地域で「たばこ製品に費やす資金を減らせば,雇用を増やすことになるだろう」と述べている。以前たばこに費やされた資金をほかの事にどう使えるかということと,その結果,仕事が国全体で実質的に増加するということが,コンピューターによる試算で示された。たばこ栽培地域における仕事は,たばこ産業が予想するほどには減らない,とも報告されている。「たばこに関連して第一に憂慮すべきなのは,たばこが健康に及ぼす害の大きさであって,雇用に及ぼす影響ではない」とも報告されている。ロサンゼルス・タイムズ紙によると,アメリカ医師会はまた,株式投資家たちに,たばこ会社13社の持ち株を売るよう呼びかけた。アメリカ心臓協会のスコット・バーリンは,「国の内外を問わず,病気と死を売り続ける会社を,我々は支援すべきではない」と述べた。
世界一のっぽのビル
世界一高いビルが米国以外の国にお目見えするのは,およそ100年ぶりのことである。超高層ビルの国際的な判定機関である「高層ビルと都市居住地に関する委員会」は,マレーシアのクアラルンプールにあるペトロナス・ツインタワーを最高と認定した。前の記録保持者であるシカゴのシアーズ・タワーは,テレビ塔を含めると,依然として一番高い。しかし同委員会は,テレビ塔はそのビルの構成部分ではないと判断した。アジアのさまざまな国の高層ビル建設は,その地域における目ざましい経済成長の象徴であると,支持者たちは見ている。事実,90年代末には,ペトロナス・ツインタワーは,中国の上海<シャンハイ>に完成予定の世界金融センターに,そのいと高きタイトルを譲ることになっている。
海鳥を救助?
陸地に近い海で大量に油が流出すると,野生生物に及ぶ影響は悲惨なものになりかねない。ボランティアで構成される場合の多い組織が時折,直ちに活動を開始し,自分たちにできる事柄を行なう。第一に行なわれることの一つは,油にまみれた海鳥をきれいにしてやることだ。しかし,これはどれほど効果的で長続きするだろうか。最近の調査によると,きれいにされて生息地に戻される何千羽もの鳥の多くが,十日以内に死んでいる。なぜだろうか。人間に触られたショックもあるが,羽づくろいをしようとした時にすでに油をいくらか飲み込んでいて,結局それがもとで死ぬようである。この害を相殺するため,英国では鳥たちに陶土と木炭とグルコースを混ぜたえさを与えて,毒素を排出させることに努めている。そのようにしても,繁殖する時まで生き延びる鳥はごくわずかで,ロンドンのサンデー・タイムズ紙によると,ある生態学者は結論として,その洗浄も「化粧」程度にみなさなければならないと述べている。
C型肝炎と血液
「フランス公衆衛生全国ネットワーク」の報告は結論として,「フランスでは50万ないし60万人がC型肝炎ウイルスに感染している」と述べている。パリの新聞「ル・モンド」によると,C型肝炎ウイルス感染の60%は輸血か麻薬の静脈注射が原因である。さらに,器具がきちんと殺菌されていなかったため,治療中に汚染された人もいる。C型肝炎は肝硬変や肝臓ガンに移行することがある。
喫煙をやめると
喫煙をやめると,体は20分以内に快方に向かい始める。リーダーズ・ダイジェスト誌は,喫煙をやめた後の,特定の時間内に起きる有益な変化について次のようなリストを載せた。20分: 血圧と脈拍が正常値に下がる; 手足の温度が正常値まで上がる。8時間: 血中の一酸化炭素濃度が正常値にまで下がる; 血中の酸素濃度が正常値にまで上がる。24時間: 心臓発作の可能性が少なくなる。48時間: 神経終末が再成長し始める; 味覚や聴覚が良くなる; 歩行が楽になる。2週間から3か月: 循環器系が良くなる; 肺機能が30%高まる。1か月から9か月: 咳,鼻腔のうっ滞,疲労,息切れが減る; 肺の線毛が再成長する。1年: 冠状動脈性心臓病にかかる危険が喫煙者の半分になる。
図書館から来る性と暴力
米国コネティカット州スタンフォードのアドボケート紙によると,コネティカット州には,性行為や生々しい暴力行為を描いた映画を子供たちが借り出すのを許している図書館がいくつかある。ときどき子供たちは,インターネットとつながっている図書館のコンピューターに自由にアクセスすることができる。それにより,若者たちがどんなものを入手できるか,という疑問も生じている。多くの親は動揺を表わしているが,図書館員は,子供たちが図書館から何を借りてくるかを監視する権利と責任を持つのは親だけだ,との見方を取っている。「難しい状況です」と司書のルネイ・ピーズは語り,「多くの小説も子供たちには不向きかもしれません」と述べた。
女性性器切除
米国に避難所を得たアフリカのある若い女性が,女性性器切除の問題に再び注意を喚起した,とニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。その女性は,強制的に結婚させられる場合の条件である性器切除から逃げているのだ,と語った。アフリカの多くの国では,女子の性器の一部を切り取ることが子供の時に,あるいは女子の成人式として行なわれている。これは,麻酔や衛生上の措置を施さずに行なわれることが少なくない。その結果は,感情的な痛手だけでなく,感染,出血多量,不妊,死であることもある。(「目ざめよ!」誌,1993年4月8日号,20-23ページをご覧ください。)同紙によれば,推定8,000万から1億1,500万人の女性がこの慣習に支配されてきた。米国では,これを違法とする処置が取られた。
ミツバチ追跡
高さ16㍉の世界一小さなレーダー用アンテナが,英国のミツバチたちの背中に貼りつけられた。そのアンテナはミツバチの足取りをたどれるように工夫されている。この実験を通してもっと小さなアンテナが開発されれば,やがてはそれをアフリカのツェツェバエに取り付けて,その飛行パターンを観察できると期待されている。それは,ツェツェバエが媒介する睡眠病の制圧促進につながるかもしれない。そのアンテナを作動させるのに電池は不要である。必要なエネルギーはすべて,入ってくる追跡信号から得られるようになっているからだ。科学者たちはまた,ハチの巣をより効果的に捜し出せるようになるという余得を期待して,ミツバチの習性に関する知識を深めることを望んでいる。
テレビとてんかんの関係
衛星テレビがインドに導入され,番組を1日24時間提供するようになってから,子供たちの間に神経系の問題が増えている。そう主張したのは,「全インド神経学最新情報 ― 1996」会議に出席した,指導的な神経科医たちである。アムリツァール医科大学神経学部の部長アシュク・ウパル博士は次のように述べた。「子供たちがテレビにくぎづけになる時間が前よりも長くなったために,神経学者たちが『光刺激過敏性てんかん,あるいは,テレビ誘発てんかん』と呼ぶものが増加している」。ウパル博士は親たちに,子供たちがテレビを見るのを制限するか,長時間見る場合は一定の間隔を置いて息抜きをさせることを勧めた。
殺し屋を特定する
メキシコの女性のほとんどはたばこを吸わないが,40歳以上の女性の多くが,普通は喫煙と関連づけられる肺の病気にかかっていると,ヘルス・インターアメリカという会報は伝えている。原因は何だろうか。研究者たちは最近,「まきを燃やすかまどで料理をすること」が原因だと述べた。医学部の教授ピーター・パレによると,この問題にあまり注意が向けられないのは,「木の煙は,健康に大きな害をもたらすとみなされていない場合が多い[から]だ。死因はたいてい心不全と診断されるが,本当の原因は木の煙に過度にさらされることにある」。世界保健機関の推定によれば,世界中で4億人がこの危険にさらされており,その大半は,換気の悪い小さな建物の中でかまどを使う農村の女性である。煙突をつけるとよいが,「最大の難関は,何世紀も続いてきた生活様式を変える必要のあることを人々に確信させることだ」とパレ博士は述べた。