読者からの質問

● 洪水がアダムの創造から1,656年後に生じたという結論は創世記 5章の系図の年齢をもとにしています。そこには，各人が何歳で次の人物の父親になったかが記されています。しかし，その年数より何か月か早いか遅いといったことがあったのではないでしょうか。そうだとすれば，合計の年数にかなりの誤差の生じるおそれはありませんか。

創世記の 5章には，アダムからノアに至る人間の系図の詳細が載せられており，各人が何歳で系図上の次の人物の父親になったかが記されています。例えば，『アダムは百三十年のあいだ生き，セツの父となりました』。（創世 5:3，新）これをまとめると次のようになります。

アダムの創造からセツの誕生まで 130年

エノスの誕生まで 105年

カイナンの誕生まで 90年

マハラレルの誕生まで 70年

ヤレドの誕生まで 65年

エノクの誕生まで 162年

メトセラの誕生まで 65年

レメクの誕生まで 187年

ノアの誕生まで 182年

ノアの誕生から洪水まで 600年

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合計 1,656年

しかし，次のような疑問を抱いた人もいます。『アダムが130歳と4か月の時にセツが生まれ，セツが105歳と4か月の時に子供が生まれるというように，そのそれぞれに数か月の誤差があったとしたらどうだろう。系図上のそれぞれの人物の年数にわずか3か月を加えるだけで，アダムから洪水までの年数は3年ほど増えることになる。そうしたことが考えられるのではないだろうか』。

率直にいって，そう考える正当な根拠はありません。

アダムが130歳4か月の時にセツが生まれたと考えるのは一つの推測です。一方，エノスが生まれた時，セツの年齢は105歳に4か月足りなかったと推測することもできます。そうなれば，互いの誤差は相殺され，平均すると創世記の記録から得られる年数の合計と同じものになるでしょう。

しかし，次の点を見落とさないようにしましょう。それは，マハラレルやヤレドよりずっと著名な数多くの人物が生まれた時のその親の年齢を聖書は記していないということです。サムエルはエルカナが何歳の時に生まれたのでしょうか。ダビデ（やその兄弟たち）が生まれた時のエッサイの年齢，バプテスマを施す人ヨハネが生まれた時のゼカリアの年齢，さらにはイエスが生まれた時のヨセフ（とマリア）の年齢についてはどうですか。聖書は何も告げていません。ところが，アダムからノアに至る系図についてはその年齢が挙げられています。なぜですか。

明らかに神は，ご自分の崇拝者たちが研究し，用いることをご存じの上で，これらの事実をみ言葉の中に含められたのではないでしょうか。神の民が使用すると誤導されてしまうような特定の数字を神が挙げるというのは理にかなったことでしょうか。そうではありません。悪魔とは違い，エホバ神は偽りや欺きを語るかたではありません。（サムエル前 15:29。ヨハネ 8:44）神がある事実をみ言葉の中に記されたのであれば，正確で信頼のおけるものとしてそれを使用することができます。

創世記 5章の系図をもとに，アダムの創造から1,656年後に洪水が生じたことを確定できます。またこのことから，当時の人びとが父親になった年齢が今とは大きくかけ離れていることや，それらの人びとが非常に長く生きたことが分かります。記録の示すところによると，それでも『彼らは死にました』。これは，わたしたちすべてがイエス･キリストの贖いの犠牲を必要としていることを強力に裏付けるものです。（テモテ第一 2:6。ローマ 6:23）イエスに信仰を働かせることにより，わたしたちはアダム（930年）やメトセラ（969年）よりも長く，そうです，永遠までも生きることができるでしょう。