エホバはあなたの涙を見過ごしません

1-2. どんな時に涙を流すことがありますか。

私たちはいろいろな時に涙を流すものです。何かうれしいことや特別なことがあった時には，喜びの涙を流すかもしれません。例えば，子供が生まれた時や懐かしい思い出がよみがえってきた時，また何年も会っていなかった親友と再会した時などです。

² でも涙を流すのは大抵，悲しいことやつらいことがあった時です。例えば，誰かに深く傷つけられた時や，重い病気に苦しんでいる時，大切な人を亡くした時などです。そういう時には，エルサレムがバビロニア人に滅ぼされた時の預言者エレミヤと同じような気持ちになるかもしれません。エレミヤはこう言いました。「私の目から涙が川のように流れる。……私の目は止めどなく涙を流し続ける」。（哀 3:48，49）

3. エホバは，ご自分に仕える人が苦しむのを見ると，どう感じますか。（イザヤ 63:9）

³ エホバは，私たちがつらい状況で流す涙を全て知っています。聖書にはっきり書かれている通り，ご自分に仕える人たちをいつも見守っていて，助けを求める声を聞いてくださいます。（詩 34:15）私たちの涙を見て声を聞くだけでなく，愛情深い親のように，子である私たちが泣いているのを見ると，つらく感じ，助けるために行動してくださいます。（イザヤ 63:9を読む。）

4. 聖書に出てくる人たちの例から，エホバについてどんなことを学べますか。

⁴ 聖書には，エホバがご自分に仕える人たちが涙を流した時にどのように助けたかが書かれています。ではその中から，ハンナ，ダビデ，ヒゼキヤ王の例を考えてみましょう。この人たちが涙を流したのはどうしてでしょうか。エホバはどのように助けたでしょうか。悲しくなったり，裏切られたり，先のことが不安になったりして涙を流す時，こういう人たちの例を考えると力が湧いてきます。

悲しい時に流す涙

5. ハンナはどんな状況にいて，どう感じていましたか。

⁵ ハンナは幾つもの問題のせいで悲しくなり，涙を流しました。問題の1つは，夫にペニンナというもう1人の妻がいて，そのペニンナから見下されていたことです。それだけでなく，ペニンナには何人も子供がいたのに，ハンナには子供ができませんでした。（サム一 1:1，2）ペニンナはそのことでハンナをしきりにあざけりました。もしあなたがそういう状況にいたら，どう感じると思いますか。ハンナは「泣いて，食事をしようとしな」いほどひどく感情を乱され，「非常に苦しんで」いました。（サム一 1:6，7，10）

6. ハンナは悲しみを和らげるためにどんなことをしましたか。

⁶ ハンナが悲しみを和らげるのに役立ったことの1つは，真の崇拝の中心地である幕屋に行ったことです。ハンナは幕屋に着いてから，おそらく幕屋の庭の入り口の近くで，「エホバに祈って激しく泣きだし」ました。その祈りの中で，「私の苦悩をご覧になり，私のことを思い出してお忘れになら」ないでください，とエホバに懇願しました。（サム一 1:10，後半，11）そのように自分の気持ちをエホバに吐露しました。エホバは，愛する娘であるハンナが涙を流すのを見て，どれほど心を揺さぶられたことでしょう。

7. ハンナは気持ちをエホバに吐露した後，どうなりましたか。

⁷ ハンナは祈りでエホバに気持ちを吐露した後，大祭司エリから温かい言葉を掛けられました。その後どんな気持ちになったかについて，聖書にはこう書かれています。「彼女はそこを離れて，食事をした。もう沈んだ顔ではなかった」。（サム一 1:17，18）つらい状況が変わったわけではありませんでしたが，ハンナは心が軽くなりました。心に重くのしかかっていたものをエホバに託したからです。エホバはハンナが苦しんでいるのを見，泣いているのを聞いて，後にハンナに子供ができるようにしました。（サム一 1:19，20; 2:21）

8-9. ヘブライ 10章24，25節にあるように，クリスチャンの集会にできるだけ出席するようにするとよいのはどうしてですか。（写真も参照。）

⁸ 学べること。あなたもつらい状況にいて涙を流すことがありますか。家族や友達を亡くして悲しく感じているでしょうか。そういう時，1人になりたいと思うのはごく自然なことです。でもハンナが幕屋に行って悲しみが和らぎ，元気をもらえたように，私たちも，たとえ気分が優れないとしてもクリスチャンの集会に出席するなら，悲しい気持ちが和らぎます。（ヘブライ 10:24，25を読む。）集会では，心温まる聖書の言葉を聞くことができます。エホバはそのようにして，私たちが悲しいことばかり考えずに明るい気持ちになれるよう助けてくれます。そのおかげで，状況がすぐには良くならないとしても，感情にのみ込まれてしまわずに済みます。

⁹ 集会に行くと，思いやり深い兄弟姉妹と会うこともできます。兄弟姉妹は，気持ちが明るくなるような，気遣いや愛の表れた言葉を掛けてくれます。（テサ一 5:11，14）妻を亡くしたある特別開拓者の兄弟はこう言っています。「今でも涙が出ます。一人涙に暮れることもあります。でも集会に行くことで，本当にたくさんの力をもらってきました。兄弟姉妹が掛けてくれる温かい言葉のおかげで，気持ちがすっと軽くなります。集会に行く前どれほど気持ちが乱れ，沈んでいたとしても，集会に行くと必ず元気になれます」。集会に行けば，エホバが兄弟姉妹を通して助けてくれるのです。

10. 胸が張り裂けそうなとき，ハンナに倣ってどんなことができますか。

¹⁰ ハンナにとって，祈りでエホバに気持ちを吐露したことも，心を落ち着かせる助けになりました。私たちも「心配事を全て[エホバ]に委ね」ることができます。エホバは必ず聞いてくださいます。（ペテ一 5:7）夫を強盗に殺されるという経験をしたある姉妹はこう言っています。「まるで自分の心が粉々に砕けてしまったかのように感じました。でも愛情深いお父さんエホバに祈ると，心が安らぎました。何と祈ったらよいか分からないこともありましたが，エホバは私の気持ちを分かってくださいました。心がひどく乱れる時には，穏やかな気持ちになれるよう祈りました。そうしたら本当に心が落ち着いて，前に進む力が出てきました」。あなたが涙ながらに自分の気持ちをエホバに打ち明ける時，エホバは心を揺さぶられ，あなたの心の痛みに寄り添ってくださいます。苦しい状況そのものは変わらないとしても，エホバはあなたの心を落ち着かせ，穏やかな気持ちを持てるように助けてくださいます。（詩 94:19。フィリ 4:6，7）そして，つらい中でも忠実に頑張るあなたに必ず報いてくださいます。（ヘブ 11:6）

裏切られた時に流す涙

11. ダビデはつらい状況に直面してどう感じましたか。

¹¹ ダビデは生涯中，涙が出るようなつらい状況に何度も直面しました。他の人から敵意を向けられたり，信頼していた人に裏切られたりしました。（サム一 19:10，11。サム二 15:10-14，30）ある時，ダビデはこう書きました。「私はため息ばかりで疲れた。夜通し泣いて寝床をぬらし，寝椅子は涙であふれる」。それほどの気持ちになったのはどうしてでしょうか。「私を悩ます人たちのせい」だとダビデは言っています。（詩 6:6，7）他の人たちの心ない言動によって，ダビデは深く傷つき，涙を抑えることができなかったのです。

12. 詩編 56編8節に表れている通り，ダビデはどんなことを確信していましたか。

¹² ダビデはいろいろなつらい状況に直面しましたが，エホバが自分を愛してくれていることを確信していました。「エホバは私が泣く声を聞いてくださる」と書いています。（詩 6:8）また別の時にダビデが書いた印象的な言葉が詩編 56編8節に収められています。（読む。）そこにはエホバの優しい気遣いが美しく表現されています。ダビデは，エホバがまるで自分の涙を袋に入れて集め，書物に記録してくれているかのように感じていました。エホバが自分の苦しみに目を留め，覚えていてくれると確信していたのです。また，愛情深い天のお父さんエホバが，自分が置かれている状況だけでなく，自分がどんなダメージを受けているかもよく分かってくれているとも信じていました。

13. 誰かにひどくがっかりさせられたとき，どんなことを思い出すといいですか。（写真も参照。）

¹³ 学べること。あなたも信頼していた人にがっかりさせられたり，裏切られたりして，つらく感じていますか。交際相手や結婚相手に背を向けられたり，身近な人がエホバに仕えるのをやめてしまったりしたでしょうか。ある兄弟は，妻が姦淫を犯し，自分のもとを去った時のことを振り返り，こう言っています。「とてもショックで，そんなことが起こるなんて信じられませんでした。自分は誰にも必要とされていないと感じ，悲しみや怒りが込み上げてきました」。あなたも誰かに裏切られて気持ちが沈んでいるなら，エホバに見捨てられることはないということをぜひ思い出してください。先ほどの兄弟はこう言っています。「人間同士の関係は終わってしまうことがあっても，エホバは岩のように変わらない方だということが分かりました。どんなことが起ころうと，エホバはそばにいてくださいます。ご自分に尽くす人を見捨てることはありません」。（詩 37:28）エホバの愛は人の愛よりもはるかに深いということも忘れないでください。人から裏切られるというのは確かにつらい経験ですが，あなたに対するエホバの愛は変わりません。（ロマ 8:38，39）あなたが人からどんな扱いを受けようと，天のお父さんはあなたを愛しているのです。

14. 詩編 34編18節はどんなことを保証していますか。

¹⁴ 誰かに裏切られたとき，詩編 34編18節に書かれているダビデの言葉も心の癒やしになります。（読む。）ある資料によると，この聖句に出てくる「打ちのめされた人」とは，「待ち望める良い事柄が何もない者たち」のことを指しているようです。エホバは，誰かにひどくがっかりさせられてそのように感じている人を，どのように助けるでしょうか。愛情深い親がつらい思いをしている子供を抱き締めて元気づけるように，エホバは私たちの「そばに」いて寄り添ってくださいます。私たちが誰かに裏切られて打ちのめされるとき，すぐに助けの手を差し伸べてくださいます。傷ついた心を癒やしたいと思ってくれるのです。そして，私たちが今ぶつかっている問題を乗り越えていけるように，素晴らしい将来を約束してくださっています。（イザ 65:17）

先のことが不安になる時に流す涙

15. ヒゼキヤは，泣きたくなるようなどんな状況に直面しましたか。

¹⁵ ユダのヒゼキヤ王は39歳の時に重い病気にかかりました。そして預言者イザヤを通してエホバから，その病気で死ぬことになると告げられました。（王二 20:1）回復の見込みがないと知ったヒゼキヤは打ちのめされ，激しく泣きだしました。そしてエホバに熱烈に祈りました。（王二 20:2，3）

16. エホバはヒゼキヤの涙ながらの訴えにどう応じましたか。

¹⁶ エホバはヒゼキヤの涙ながらの訴えに心を動かされ，ヒゼキヤにこう伝えました。「私はあなたの祈りを聞いた。あなたの涙を見た。あなたを癒やそう」。そしてイザヤを通して，ヒゼキヤの寿命を延ばし，エルサレムをアッシリア人の脅威から救うと約束しました。エホバの優しさや憐れみ深さがよく表れています。（王二 20:4-6）

17. 健康上の深刻な問題を抱えるとき，エホバはどのように支えてくださいますか。（詩編 41:3）（写真も参照。）

¹⁷ 学べること。あなたも回復の見込みが薄い健康上の問題と闘っていますか。そうであれば，涙を流しながらであっても，祈りでエホバに心を向けてください。聖書には，私たちがどんな試練に遭うとしても，「温かな憐れみの父，あらゆる慰めの神」が慰めてくれるという保証の言葉があります。（コリ二 1:3，4）今は，エホバが私たちの抱える問題を全てなくしてくださると期待することはできませんが，エホバが支えてくださると信じて頼ることができます。（詩編 41:3を読む。）エホバは聖なる力によって，私たちが問題に対処するのに必要な力や知恵を与え，穏やかな気持ちにさせてくださいます。（格 18:14。フィリ 4:13）また，聖書の中であらゆる病気をなくすと約束し，私たちに希望を持たせてくださっています。（イザ 33:24）

18. あなたにとって，非常に厳しい状況でどんな聖句が心の支えになりましたか。（「涙があふれる時に心の支えになる聖句」という囲みを参照。）

¹⁸ ヒゼキヤは，エホバの言葉を聞いて元気づけられました。私たちも，神の言葉である聖書を心の支えにすることができます。エホバは聖書の中に，つらい状況にいる私たちを元気づける温かい言葉をたくさん収めてくださいました。（ロマ 15:4）西アフリカのある姉妹は，がんと診断されてからよく泣いていました。こう言っています。「私にとって特に心の支えになったのは，イザヤ 26章3節です。状況を良くするためにできることはあまりないとしても，その状況にどう反応するかはコントロールできるということを学べました。エホバが平和を与え，穏やかな気持ちにさせてくれるからです」。あなたにとっても，非常に厳しい状況，もしかするともう先がないと思えるような状況で，心の支えになった聖句がありますか。

19. 私たちにはどんな将来が待っていますか。

¹⁹ 今は終わりの時代の最終部分で，涙が出るような状況は今後も増えていくことでしょう。でも，ハンナやダビデ，ヒゼキヤ王の例から学んだ通り，エホバは私たちが涙を流すとき，それに目を留めていて同情してくれます。エホバが私たちの涙を軽く見ることは絶対にありません。それで，つらい状況に直面するとき，祈りでエホバに気持ちを吐露しましょう。会衆の愛情深い兄弟姉妹との交友をやめてはいけません。そして，聖書に収められている温かい言葉を心の支えにしましょう。諦めずに忠実にエホバに仕え続けるなら，エホバは必ず報いてくださいます。近い将来に約束通り，私たちが悲しみや裏切りや不安のせいで涙を流すことが全くなくなるようにしてくださいます。（啓 21:4）その時，私たちが流すのは喜びの涙だけになるのです。