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どこからが行きすぎなのだろう若い人が尋ねる質問 ― 実際に役立つ答え,第2巻
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4章
どこからが行きすぎなのだろう
正しいですか,間違いですか。
交際中の二人が互いに触れることはどんな状況でも間違っている。
❏ 正しい
❏ 間違い
性交をしていなくても,淫行を犯していることがある。
❏ 正しい
❏ 間違い
愛情を思うままに表現していないカップルは,本当に愛し合っているとは言えない。
❏ 正しい
❏ 間違い
この点について,これまで何度も考えてきたことでしょう。特に交際中なら,愛情表現に関してどこで一線を引くべきかを見極めるのは難しい場合があります。それで,ここに挙げた三つの文の正誤を考え,「どこからが行きすぎなのだろう」という質問に答える上で,神の言葉がどのように役立つかを見てみましょう。
● 交際中の二人が互いに触れることはどんな状況でも間違っている。
間違い。聖書は清く適切な愛情表現を非としてはいません。例えば聖書には,互いに愛し合っていたシュラムの娘と羊飼いの青年の話が述べられています。二人の交際は貞潔なものでしたが,結婚する前から互いに愛情を幾らか表現していたようです。(ソロモンの歌 1:2; 2:6; 8:5)今日でも,結婚を真剣に考えているカップルの中には,幾らかの貞潔な愛情表現はふさわしいと考える人もいるかもしれません。a
しかし,交際中の二人は細心の注意を払わなければなりません。キスや抱き合うこと,また興奮を起こさせるどんな行為も,性的不品行につながりかねません。まじめに結婚を考えているカップルでさえ,いとも簡単に感情に流され,性の不道徳を行なってしまうことがあるのです。―コロサイ 3:5。
● 性交をしていなくても,淫行を犯していることがある。
正しい。「淫行」と訳される原語のギリシャ語(ポルネイア)には広い意味があります。この語は,結婚関係外のあらゆる形の性関係を表わし,性器の誤用に焦点を当てています。ですから淫行には,性交だけでなく,他の人の性器を刺激する行為,またオーラルセックス(口腔交接)やアナルセックス(肛門交接)も含まれます。
さらに,聖書が非としているのは淫行だけではありません。使徒パウロは,「肉の業は明らかです。それは,淫行,汚れ,みだらな行ない……です」と書き,「そのような事柄を習わしにする者が神の王国を受け継ぐことはありません」とも記しています。―ガラテア 5:19-21。
「汚れ」とは何でしょうか。これに相当するギリシャ語は,話す事柄や行動における清くない物事すべてを含みます。他人の衣服の下に手を入れてまさぐったり,衣服を脱がせたり,胸や陰部などを撫でたりするのは確かに汚れたことでしょう。聖書では,胸を撫でることは結婚した人だけの喜びと結びつけられています。―箴言 5:18,19。
若者の中には,神の規準を平然と無視する人もいます。故意に行きすぎたことをしたり,貪欲にもいろいろな相手と性的な汚れを行なったりするのです。そのような人は,使徒パウロが「みだらな行ない」と呼んだ罪を犯している可能性があります。「みだらな行ない」に当たるギリシャ語には,『非道な行為,不節制,不遜,放逸な欲情』という意味があります。「貪欲にもあらゆる汚れを行なおうとして,身をみだらな行ないにゆだね」,『いっさいの道徳感覚を通り越す』ようなことを,あなたはもちろん避けたいと思うでしょう。―エフェソス 4:17-19。
● 愛情を思うままに表現していないカップルは,本当に愛し合っているとは言えない。
間違い。ある人たちが考えるのとは異なり,愛情をふさわしくない形で思うままに表現しても関係は深まりません。むしろ,互いに対する敬意や信頼が損なわれます。ローラの経験を考えてください。「ある日,母がいない時にボーイフレンドが家に来ました。ただテレビを見るだけだと思っていました」と語っています。「最初,彼はわたしの手を握っていただけでした。それから急に彼の手があちこちと動きはじめました。彼が怒って帰ってしまうのが怖くて,やめてと言えませんでした」。
あなたはどう思いますか。ボーイフレンドはローラのことを本当に気遣っていましたか。それとも,ただ自分の欲求を満足させたかったのでしょうか。汚れた行為に誘おうとする人は,本当にあなたを愛していると言えますか。
女性に圧力をかけて,クリスチャンとして受けた訓練や良心に背かせようとする男性は,神の律法を破っており,相手を心から愛しているという主張を否定していることになります。また,言いなりになる女性は,もてあそばれるのを許していることになり,さらに悪いことに,汚れた行ないや,場合によっては淫行を犯していることにもなります。b ―コリント第一 6:9,10。
はっきり線を引いておく
もし交際中なら,どうすれば不適切な愛情表現を避けられるでしょうか。賢明なのは,前もってはっきり線を引いておくことです。箴言 13章10節は,「一緒に協議する者たちには知恵がある」と述べています。ですから,どんな愛情表現が適切か,交際相手と一緒に話し合ってください。基本的なきまりを定めないまま,気持ちが高まるロマンチックな状況に身を置くことは,火事が起きるまで家に警報器を取り付けないでいるようなものです。
こうしたデリケートな事柄は話しにくく,気恥ずかしく感じるとしても無理はありません。交際を始めて間もないなら特にそうでしょう。しかし,はっきり線を引いておくことは,深刻な問題を防ぐのに大いに役立ちます。賢明に引かれた線は,火災のわずかな気配もとらえて警報を発する煙感知器のようです。さらに,こうした点をよく話し合えるかどうかは,二人の関係がどれほどうまくいくかの目安ともなるでしょう。実際,自制や辛抱や利他的な態度は,結婚生活において性関係から満足を得るための基本です。―コリント第一 7:3,4。
確かに,神の規準を固く守るのは簡単ではありません。しかし,エホバの助言は信頼できます。何と言っても神は,イザヤ 48章17節でご自身のことを,「あなたに自分を益することを教える者,あなたにその歩むべき道を踏み行かせる者」と述べておられます。エホバはあなたの最善の益を図ってくださるのです。
第1巻,24章も読んでみましょう
純潔を守るのは異常なことではありません。むしろ,賢明な歩み方です。なぜそう言えるのか調べてみましょう。
[脚注]
a 世界のある地域では,結婚していない男女が人前で愛情を表現するのは品のない不快なこととされています。クリスチャンはどんな点でも人々をつまずかせることがないよう注意します。―コリント第二 6:3。
b この節で扱われている点はもちろん,男性にも女性にも当てはまります。
かぎとなる聖句
『愛はみだりな振る舞いをしません』。―コリント第一 13:4,5。
アドバイス
グループでデートするか,だれかに付き添ってもらうようにしましょう。止めた車や部屋の中で二人きりになる,といった危険な状況を避けてください。
知っていましたか
婚約中なら,性についても幾らか話し合う必要があります。しかし,性的な欲求を高めることを意図した露骨な会話は,電話やメールを通してであっても,一種の汚れです。
やろうと思うこと
不道徳な行為をしてみようという気を起こさないためにできること __________
付き合っている人が汚れた行為をさせようとしてきたら,こうする __________
この章の内容で親に聞きたいこと __________
考えてみましょう
● 異性に触れることについて,あなたは自分にどんな制限を設けますか。
● 淫行,汚れ,みだらな行ないの違いを説明してください。
[46ページの拡大文]
“婚約者と一緒に,貞潔さについて聖書から論じた記事を幾つか読みました。清い良心を保てるように助けられたことをうれしく思っています。”― レティシア
[44ページの囲み記事]
もし行きすぎてしまったなら
もしふさわしくない行為に陥ってしまったなら,どうしたらよいでしょうか。自分たちだけで問題を解決できる,という思い違いをしてはなりません。ある若者は,「『二度とこんなことをしないよう助けてください』とよく祈りました。うまくいった時もあったけれど,失敗した時もありました」と打ち明けています。ですから,親に話してください。聖書には,「会衆の年長者たちを……呼びなさい」という有益な助言もあります。(ヤコブ 5:14)それらクリスチャンの牧者は,神との関係を回復するために必要な諭しや助言や戒めを与えてくれます。
[47ページの図版]
火事が起きるまで家に警報器を取り付けずにいますか。情欲が高まるような状況になる前に,行動の基本的なきまりを定めましょう
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なぜ純潔を守るべきなのだろう若い人が尋ねる質問 ― 実際に役立つ答え,第2巻
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5章
なぜ純潔を守るべきなのだろう
「セックスをさせようとする圧力を感じます」。―ケリー。
「まだ経験していない自分は異常じゃないかと感じます」。―ジョードン。
「まだ経験してないの?」 こう尋ねられると,どこかに隠れたくなるかもしれません。実際,多くの場所で,純潔を保っている若者は奇妙に思われ,変わり者と見られるようです。まだ十代のうちに性体験をする若い人が非常に多いのも驚くには当たりません。
自分の欲求と仲間の圧力
あなたがクリスチャンなら,聖書が「淫行を避ける」ようにと述べていることを知っているでしょう。(テサロニケ第一 4:3)それでも,性的な衝動を抑えるのが難しいと感じるかもしれません。ポールという若者は,「これといったきっかけも理由もないのに,セックスについて考えてしまうことがあります」と認めています。多くの場合,そう感じるのは普通のことです。
しかし,純潔を守っているためにしつこくからかわれたり,いやがらせを受けたりするのは,不愉快でしょう。例えば,体験していないからまだ一人前ではないと言われたなら,どうですか。エレンはこう言います。「周りの子は,セックスが刺激的で普通のことだと思わせます。いろいろな人と寝ないと,変人と決めつけられるんです」。
しかし,結婚前のセックスには友達が話さないような一面があります。例えば,マリアはボーイフレンドとセックスした時のことを振り返ってこう言います。「後になって,きまりの悪い恥ずかしい思いをしました。自分のことがいやになり,彼のことも嫌いになりました」。こういう経験は,多くの若者が考えているよりもよくあることです。実のところ,結婚前のセックスはしばしば感情的につらい経験となり,悲惨な結果を招きます。
しかしながら,シャンダという女の子はこう尋ねます。「結婚してからでないと性欲を満たしてはいけないことを神は知っておられたのに,なぜ若い人にそうした欲求を与えたのでしょうか」。もっともな質問です。でも,以下の点を考えてみてください。
人が強く感じるのは性的な衝動だけですか。そのようなことはありません。エホバ神は人間を,様々な欲求や感情を持つものとして創造されました。
内面で衝動を感じたら,すぐそれに従って行動しなければなりませんか。そうではありません。神は人間に,行動をコントロールする能力もお与えになりました。
これらのことから何が分かりますか。何かの欲求を生じさせないことは不可能かもしれませんが,その欲求に対する反応をコントロールすることは可能だということです。実際,性的な衝動を感じるたびにそれを満たそうとするのは,怒りを感じるたびにだれかを殴るのと同じほど愚かで間違ったことです。
実のところ,神は人が生殖能力を間違った仕方で用いることを決して望んでおられません。聖書は,『あなた方一人一人は,自分の器をいかに聖化と誉れのうちに所有すべきかを知る』ようにと述べています。(テサロニケ第一 4:4)「愛するのに時があり,憎むのに時がある」ように,性的な欲求を満たしてよい時とそうすべきでない時があります。(伝道の書 3:1-8)結局のところ,欲求をコントロールするのはあなた自身なのです。
でも,もしだれかから信じられないという様子で「まだ経験していないって本当なの?」と言われ,からかわれたなら,どうしたらよいでしょうか。おじけづかないでください。ただあなたをばかにしようとしている人には,こう言えるでしょう。「そう,そのとおりよ。それでいいと思っているの」。または,「こういう話は,ほかの人とはしないの」とも言えるかもしれません。a (箴言 26:4。コロサイ 4:6)一方,もっと知らせてあげてもよいと思う相手には,聖書に基づく自分の立場を説明することができるでしょう。
「まだ経験していないって本当なの?」とからかわれるとき,ほかにどんな答え方ができますか。思いつくものを書いてみましょう。
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大切なプレゼント
結婚していないのに性関係を持とうとするなら,神はどのようにお感じになるでしょうか。次のような状況を思い浮かべてください。あなたは友達のためにプレゼントを買いました。しかし,それを渡す前に,何とその友達はただ好奇心から勝手にプレゼントを開けてしまいます。あなたはがっかりするのではありませんか。では,結婚していないのに性関係を持つなら,神がどのようにお感じになるかを想像してください。性関係というプレゼントを開けることは結婚するまで待つように,と神は願っておられます。―創世記 1:28。
性的な欲求にどう対処したらよいでしょうか。簡単に言えば,それをコントロールすることです。あなたにはそうする強さがあるのです。エホバに助けを祈り求めてください。神の霊はあなたの自制する力を高めてくれます。(ガラテア 5:22,23)エホバは『とがなく歩む者に良いものを何も差し控えられない』ということを心に留めましょう。(詩編 84:11)ゴードンという若者はこう言います。「結婚前のセックスをあまり悪いと思わなくなっている時は,霊的な面でどんな悪い結果が及ぶかを考えるようにします。すると,エホバとの関係を失ってまで犯す価値のある罪などないことに気づきます」。
純潔を保つ人は変人でも異常でもありません。性の不道徳によって,人は堕落し,尊厳を失い,害を被るのです。ですから,この世の宣伝に振り回されて,聖書の規準を守るのはどこかおかしいと考えることがないようにしましょう。純潔を保つことによって,身体的・感情的健康を守り,最も重要なこととして神との関係を守ることができるのです。
第1巻,24章も読んでみましょう
[脚注]
かぎとなる聖句
「童貞性を守ろうと自らの心の中で決めているのであれば,その人はりっぱに行動していることになります」。―コリント第一 7:37。
アドバイス
信仰の仲間だと言っていても,しっかりした道徳規準を持っていない人とは,交わらないようにしましょう。
知っていましたか
性的にルーズな人は,結婚したからというだけで,その習慣が変わることはほとんどない。一方,結婚前から神の道徳規準に忠実な人は多くの場合,結婚後も相手に忠実である。
やろうと思うこと
結婚するまで純潔を保つためにすべきこと __________
決意を貫くのが仲間のせいで難しくなっているなら,こうする __________
この章の内容で親に聞きたいこと __________
考えてみましょう
● 純潔を保つ人をある人たちがばかにするのはなぜだと思いますか。
● 純潔を保つのが難しくなることがあるのはなぜですか。
● 結婚するまで純潔を保つことにはどんな益がありますか。
● 純潔を保つことの益について,弟や妹にどのように説明しますか。
[51ページの拡大文]
“性的な誘惑を退ける動機となったのは,『淫行の者,汚れた者は,神の王国に何の相続財産もない』という言葉をいつも思いに留めていたことです。”(エフェソス 5:5)― リディア
[49ページの囲み記事]
ワークシート
そのあと実際にはどんなことが起きますか
結婚前の性関係の好ましくない現実は,周りの子,また人気のあるテレビ番組や映画などによって,巧妙に覆い隠されることが少なくありません。次の三つの場面に注目してください。それらの若者に実際にはどんなことが起きると思いますか。
● クラスメートの一人がこれまでたくさんの女の子とセックスしてきた,と自慢します。楽しいし,だれも傷つけていない,と言います。そのあとその男の子に,さらに女の子たちに,実際にはどんなことが起きますか。__________
● 映画のエンディングで,二人の結婚していない若者が愛情を表現するためにセックスをします。そのあと,実際の生活ではどんなことが起きますか。__________
● かっこいい男の子に出会い,セックスをしようと誘われます。その子は,だれにもばれないと言います。もし誘いに応じて隠そうとするなら,そのあと実際にはどんなことが起きますか。__________
[54ページの図版]
結婚していないのに性関係を持つことは,まだもらっていないプレゼントを開けるようなもの
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自分の体に何が起きているのだろう若い人が尋ねる質問 ― 実際に役立つ答え,第2巻
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6章
自分の体に何が起きているのだろう
「ぐんぐん身長が伸びたので,痛みがありました。背が高くなるのはうれしかったけど,すぐに足がつってしまい,嫌になりました」。―ポール。
「体の変化を自分でも感じていて,だれにも気づかれたくありません。そんな時だれかから,あなたって“安産型”ねって言われると,悪気はないと分かっていても,穴があったら入りたくなります」。―シャネル。
家族で新しい土地へ引っ越したことがありますか。大きな変化だったでしょう。家や学校や友達など,慣れ親しんでいたものすべてを後にしました。新しい環境に慣れるのにも,しばらく時間がかかったかもしれません。
身体的に成熟する時期である思春期に入ると,人生の中でも特に大きな変化を経験します。全く新しい“土地”に移転するようなものです。わくわくしますか。もちろんです。とはいえ,成人期へ移行するときには,さまざまな感情に襲われることがあり,慣れるのも簡単ではありません。わくわくといらいらの入り混じったこの時期に,どんなことが起きますか。
女の子の場合
青年期は劇的な変化の時です。その幾つかは,はっきり目に見えます。例えば,ホルモンによって陰部に毛が生えます。また胸,腰回り,太もも,お尻などが大きくなることに気づくでしょう。少しずつ子どもの体形から女性らしい丸みを帯びた体形になっているのです。それは全く正常なことで,何も心配いりません。子どもを生む時のために体が準備をしている証拠なのです。
思春期に入ってしばらくすると,月経(生理)が始まります。でも事前に十分な備えをしていないと,人生のこの重要な出来事にびっくりするかもしれません。サマンサは次のように言います。「それが始まった時には,予備知識が全くありませんでした。自分は汚いと感じ,シャワーに入って体をごしごし洗ったものです。そして,『自分はなんて気持ち悪いんだろう』と思いました。これから毎月生理になると知って,ぞっとしました」。
しかし月経があるということは,生殖力が発達しつつある証拠です。親になる準備が整うのは何年も先のことですが,今あなたは大人の女性になりつつあるのです。とは言っても,月経になると気持ちが不安定になります。「一番大変だったのは,気分がころころ変わることでした」とケリーは語っています。「昼間はあんなにうきうきしていたのに,夜になると目が腫れるほど泣いてしまい,理由が分からないので,いらいらしました」。
今そのように感じていても,辛抱してください。そのうち慣れてきます。20歳になるアネットはこのように言います。「これは大人の女性になるために必要で,エホバはわたしに子どもを生む賜物を与えてくださったんだと思えるようになった時のことを覚えています。少し時間がかかり,人によっては本当に大変ですが,そのうち受け入れられるようになります」。
これまでに挙げた身体的変化を何か経験していますか。そのことで質問があれば,書き出してみましょう。
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男の子の場合
男の子の場合,思春期になると外見が大きく変わります。例えば,肌があぶらっぽくなって,にきびや吹き出物ができます。a 18歳のマットはこんなことを言っています。「にきびがどんどんできるので,うっとうしくて,いらいらします。まさに闘いです。いつか消えるのか,痕が残るのか,にきびのせいで人から見下されるのか,全然分かりません」。
一方,プラスの面を挙げるなら,体格がよくなり,力がつき,肩幅も広くなります。また,足や胸,顔,わきの下などに毛が生えてきます。ついでながら,体毛がどれくらいあるかは全く遺伝的な事柄で,男らしさとは関係ありません。
体の各部の成長の速さは一様ではないので,幾らかぎこちなさを感じるかもしれません。ドウェインは以前を振り返って,「さながらローラースケートを履いたキリンのようでした」と述べています。「脳が命令を出しても,手足はそれを1週間後に受け取るような感じでした」。
十代の半ばになると,徐々にですが,声が低くなります。太い声が出ていたかと思うと,急にかすれたり裏返ったりして情けない思いをする時期があります。でも心配いりません。やがてスムーズに声が出るようになります。それまでの間,自分を笑えるなら,恥ずかしさを最小限にとどめることができます。
生殖器系が成熟するにつれて,性器は大きくなり,周囲に毛が生えてきます。また精液を作り始めます。精液には微小な精子が無数に含まれていて,性交の際に放出されます。精子には卵子を受精させ,赤ちゃんを生みだす能力があります。
精子は体内にたまっていきます。一部は体に吸収されますが,夜眠っている間にいくらか放出されることもあります。これは一般に夢精と呼ばれます。そうした射精は正常なことで,聖書にも触れられています。(レビ記 15:16,17)夢精は,生殖器系が機能していること,大人に近づいてきたことのしるしです。
ここまでに出てきた身体的変化を何か経験していますか。そのことで質問があれば,書き出してみましょう。
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新たな感情に対処する
生殖器系が成熟するにつれ,男の子も女の子もそれまでになく異性が気になり始めます。「思春期になったら,突然,かわいい子がたくさんいるんだと気づき,すごくじれったく感じました。もっと大きくならないと何もできないことも分かったからです」とマットは言います。この本の29章では,成長期に生じるそのような状況が詳しく扱われます。しかし今は,性的な衝動を抑えることの大切さを意識しましょう。(コロサイ 3:5)難しく思えても,そうした衝動のままに行動しない,と決意できます。
思春期に対処しなければならない感情はほかにもあります。例えば,自分に自信が持てないということもよくあります。また,孤独を感じることも珍しくなく,一時的に憂うつな気持ちになることもあります。そうした時には,親か信頼できる大人に話すのはよいことです。気持ちを打ち明けられると思う人の名前を書いてみましょう。
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最も重要な成長
最も重要な成長には,身長や体形や顔立ちではなく,人としての成長,つまり精神的な成長や感情的な成長,そして何よりも霊的な成長が関係しています。使徒パウロは,「わたしがみどりごであった時には,みどりごのように話し,みどりごのように考え,みどりごのように論じていました。しかし,大人となった今,みどりごの時のことをやめたのです」と述べました。(コリント第一 13:11)学べる点は明らかです。大人のように見えるだけでは不十分なのです。大人のように行動し,話し,考えることを学ばなければなりません。自分の体に起きている事柄に気を取られるあまり,内なる人に注意を向けられないようであってはなりません。
神は「心がどうかを見る」ということも覚えておきましょう。(サムエル第一 16:7)聖書によると,サウル王は背が高く,顔立ちのよい人でした。しかし,王としても人としても欠けた者となってしまいました。(サムエル第一 9:2)一方ザアカイは「背が低かった」のですが,生き方を変えてイエスの弟子になるだけの内面的な強さがありました。(ルカ 19:2-10)明らかに,最も重要なのは人の内面です。
確かなことが一つあります。それは,身体的な成長の過程を速めたり遅らせたりする安全な方法はないということです。ですから,生じる変化を嫌がったり恐れたりするのではなく,むしろありのままに,時にはユーモアを持って受け入れましょう。思春期は病気ではなく,それを経験するのはあなたが最初ではありません。あなたもきっとうまくやっていけます。思春期のあらしが過ぎ去れば,成熟した大人になっているのです。
鏡に映る自分が気に入らないならどうしたらよいですか。どうすれば容姿に対して平衡の取れた見方ができますか。
[脚注]
a にきびや吹き出物は女の子にもできます。多くの場合,肌をきちんと手入れすると抑えることができます。
かぎとなる聖句
「わたしはあなたをたたえます。なぜなら,わたしは畏怖の念を起こさせるまでにくすしく造られているからです」。―詩編 139:14。
アドバイス
体の成長に伴い,挑発的な服装はしないよう注意してください。いつも「慎みと健全な思いとをもって」装うようにしましょう。―テモテ第一 2:9。
知っていましたか
思春期は,早ければ8歳,遅くても十代半ばには始まる。一般的とされる開始時期にも幅がある。
やろうと思うこと
大人になっていく今,自分の性格で一番直す必要のあるところ __________
霊的に成長するためにしたいこと __________
この章の内容で親に聞きたいこと __________
考えてみましょう
● 思春期に伴う身体面や感情面の変化に対処するのが難しいのはなぜですか。
● そうした変化の中で特に大変だと思うのはどんなことですか。
● 思春期に,神への愛が薄れてしまうことがあるのはなぜですか。そうならないよう何ができますか。
[61ページの拡大文]
“青年期には不安なことがたくさんあって,自分の体が次にどうなるのかさっぱり分かりません。でも,年齢と共に,変化を受け入れ,それを喜べるようにもなれます。”― アネット
[63,64ページの囲み記事]
性について親にどのように話せるだろう
「性について知りたいことがあっても,親には聞けません」。―ベス。
「親に話す勇気なんてありません」。―デニス。
あなたもベスやデニスのようなら,ジレンマを感じているでしょう。性について知りたいのに,答えることのできる人,つまり親には,一番聞きたくないのです。あなたにはいろいろな不安があります。例えば……
親からどう思われるだろうか
「質問しただけで疑われるなんて嫌です」。―ジェシカ。
「親は,子どもがいつまでも純真無垢でいることを願っています。それで子どもが性について話すと,その日から違った目で見られるんです」。―ベス。
どんな反応が返ってくるだろうか
「わたしが話し終わらないうちに,両親は勘違いして,長々とお説教するんじゃないかと思います」。―グロリア。
「うちの親は感情がすぐ顔に出るので,親の失望した顔を見るのが怖いです。父は,わたしがまだ話している間に,どんな説教をしようかときっと考えると思います」。―パム。
なぜ質問したか誤解されるだろうか
「親は過剰に反応して,『だれかに誘われたの?』とか『友達から圧力をかけられているのか』といったことを聞いてくると思います。子どものほうはただ知りたいだけなのに」。―リサ。
「わたしが男の子のことを話すと,父はいつも心配顔になって,すぐ性についての話を始めます。わたしは心の中で,『パパ,わたしは,あの子かっこいいねって言っただけで,結婚とかセックスのことなんか何も言ってないよ』とつぶやいています」。―ステーシー。
次のことを知ると,あなたも少し安心するかもしれません。それは,性についてあなたが親に話すのをきまり悪く思うように,親もあなたに話すのをきまり悪く思っているということです。ある調査で,親の65%が性について子どもに話していると述べたのに対し,そうした話し合いをしたことを思い出せる子どもは41%しかいなかったという結果が出たのも,そのためかもしれません。
あなたの親も性について話すのをためらっているのかもしれません。親自身,自分の親から性について話してもらっていないことが多いのです。ですから,その理由が何であっても,親に要求しすぎないようにしましょう。おそらく,あなたのほうから思い切ってその話題を持ち出すことができるかもしれません。それはあなたにも親にも益となります。では,どのようにできますか。
話を切り出す
親には性についてのさまざまな知識があり,子どもにアドバイスできることもたくさんあります。あなたは話のきっかけを作ればよいのです。次のようにしてみましょう。
1 自分の不安を率直に伝える。「こういうことを聞いたら,どう思われるかちょっと心配で,どうしようかなって考えてたんだけど,……」。
2 次に,どうして親のところに来たのかを話す。「でも,聞きたいことがあるの。ほかの人よりお母さん(お父さん)に聞いたほうがいいと思って」。
3 それから聞きたいことを話す。「聞きたいことはね……」。
4 話し合った後に,また話をしてもいいか尋ねる。「また聞きたいことができたら,質問してもいい?」
親が同意してくれると分かっていても,そう言ってもらえれば,また尋ねたいことができた時,もっと気楽に話せるでしょう。ぜひ試してみてください。あなたもいつかトリーナと同じように感じるかもしれません。現在24歳になるトリーナはこう述べています。「母と話していた時は,こんなこと話したくないなと思っていました。でも今は,母がとても率直に,そして包み隠さず話してくれたことを感謝しています。本当に身の守りとなりました」。
[59ページの図版]
子ども時代に別れを告げるのは,引っ越しをするようなもの。でもそのうち慣れます
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