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聖書に出てくる生気あふれた修辞的表現ものみの塔 1985 | 10月1日
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に思いに描き,覚えることのできる生気あふれた情景を脳裏に描き出してくれます。
誤解されている修辞的表現
これらをはじめ他の数多くの修辞的表現によって,聖書は生き生きしたものになります。そうした修辞的表現のおかげで,聖書に収められている考えがあたかもページから飛び出して来るように思えます。しかし,問題がないわけではありません。修辞的表現が用いられているのにそれを見過ごしてしまうと,誤解をすることになりかねません。
例えば,「天と地は過ぎ去るでしょう。しかしわたしの言葉は決して過ぎ去らないのです」というイエスの言葉の中に,修辞的表現があることに気づきますか。(マタイ 24:35)多くの人は気づきません。そうした人々は,イエスがここで,いつの日か地球が滅びることを示唆しておられたと考えます。しかし,イエスの話に耳を傾けていた人々はそのような印象を受けたでしょうか。
とてもそうした印象を受けたとは思えません。人々はヘブライ語聖書を読んで,地が永久に存続することをすでに知っていました。(詩編 104:5。伝道の書 1:4。イザヤ 45:18)ですから人々には,イエスがご自分の言葉の永続性を生気あふれた仕方で強調しておられたことが分かったでしょう。イエスの言葉が天と地以上に永続するのであれば,天と地はとこしえに続くのですから,イエスの言葉はまさに永続することになります。起こり得ないことが仮に起きて,天と地が実際に過ぎ去ったとしても,イエスの言葉は依然として残ることになります。実に印象的な誇張表現です。―マタイ 5:18と比較してください。
もう一つの例として,次の言葉の修辞的表現を見つけることができますか。「父がわたしの名によって遣わしてくださる助け手,つまり聖霊のことですが,その者はあなた方にすべてのことを教え,わたしが告げたすべての事柄を思い起こさせるでしょう」。(ヨハネ 14:26)この言葉を読んで,聖霊が実際に人格的な存在であるという意味に取る人もいます。しかし,聖霊は他の非人格的な力やものと一緒に取り上げられることがあまりにも多いので,人格的な存在であるはずがありません。(マタイ 3:11。エフェソス 5:18。使徒 6:3,5; 13:52。コリント第二 6:4-8)イエスは明らかに,わたしたちが擬人法と呼ぶ修辞的表現を用いておられました。
確かに,聖書の修辞的表現は,人々を教え,人々に動機づけを与える強力な道具になっています。そのおかげで神の言葉は生き生きしたものとなります。そして,どうすれば力強い影響を与える教え方ができるかを示す見事な手本となっています。
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読者からの質問ものみの塔 1985 | 10月1日
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読者からの質問
■ 聖書は,サムソンが「人が雄の子やぎを二つに裂くかのようにして」ライオンを引き裂いた,と述べています。これは,当時の人々がよく若いやぎを引き裂いたことを意味していますか。
いいえ,この注解は単なる例えであったようです。これはサムソンがライオンを,防御のすべのないだだの若いやぎであるかのように素手でやすやすと退治したことを意味していました。
イスラエルで裁き人として仕えていたサムソンは,「フィリスティア人に立ち向かう機会」を求めてティムナに向かって旅をしていました。その途中,若くて強いほえたけるライオンに出会い,それに襲われたものと思われます。歴史の記録によると,神の活動力がサムソンに臨み,「そのため彼は,人が雄の子やぎを二つに裂くかのようにして[たてがみのあるライオン]を二つに引き裂(き)」ました。『しかもその手には何も持っていません』でした。―裁き人 14:4-6。
聖書の記録によれば,独力でライオンを殺した人はほかにも二人いますが,素手でそれをやってのけたと述べられているのはサムソンだけです。(サムエル第一 17:36。サムエル第二 23:20)その上,サムソンは『それを二つに引き裂き』ました。これがライオンの力強い口のところから引き裂いたことを意味しているとすれば,イスラエル人の中には若いやぎに対して同様のことをするだけの力を持つ者がいたかもしれないということは考えられます。しかし,イスラエル人がそのようなことをしたという証拠はなく,そのようなことをしてみようとする理由も見当たりません。一方,サムソンがライオンを何らかの仕方で“八つ裂きに”していたとしたら,やぎに関する注解はいよいよもって直喩以外の何ものでもなかったということになるでしょう。要は,神の霊がサムソンに並外れた身体的な力を与えたということです。そのような助けがあれば,防御のすべのない若いやぎが普通の人にとって少しも恐ろしくないのと同様,武器を手にしていないサムソンにとっても力のあるどう猛なライオンは少しも恐ろしくありませんでした。
後にこのライオンの死がいが一つのなぞの種になり,それがきっかけとなって,神から力を与えられたサムソンは敵を30人打ち倒しました。―裁き人 14:8-19。
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