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一種類の作物を大量に栽培する危険目ざめよ! 1972 | 10月22日
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「現代社会の他の多くの分野におけると同様,経済的に短期間で効果をあげるものは,生態学的にも経済学的にもあとあとまで尾をひく重大な問題を残す」。
それにしても,それらの新しい品種はこれと同じような被害を実際に受けたでしょうか。新しい米はすでに影響を受けています。「環境の危機」と題する本は次のように述べています。「稲のIR-8種はこの問題で実に多くの被害をこうむっている。しかし,それよりもさらに大規模の単一栽培がすすめられている」。
「単一栽培とは」,一つの作物の栽培で,その他の作物のためには土地を利用しないのが普通です。したがって,問題が生じているにもかかわらず,農家が短期間に金を得ようとするため,新しい穀物の単一栽培がさらに規模を広げて行くのが通例です。
1972年2月,全国食料農業会議は,フィリピンの実状について新しい数字を発表しました。それによると,植物に致命的な打撃を与えるツングロというビールスが,ルソン島とミンダナオ島の稲作地帯のうち約5万6,000ヘクタールを枯らしたとのことです。フェルディナンド・マルコス大統領は国会で,「フィリピンの農業にとって本年[1971年]は災厄の年である」と語りました。
1966年以後,収量の多い米の新品種を栽培したため,フィリピンは米の自給自足ができるようになり,1970年まで多少の余剰米を出していました。しかし昨年,1971年には,46万トンという大量の米を輸入しなければなりませんでした。しかも政府の予想によると,1972年には,64万トン,1973年にも同程度の深刻な不足が生じるとのことです。
このように,遺伝的に非常に狭い原種から育てあげられた作物を広い地域に栽培して行くのは非常に危険なことでもあり,近視眼的でもあります。それにしても,新しい穀物に関連した問題はこれだけではありません。
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「緑の革命」から最大の益を受けるのはだれか目ざめよ! 1972 | 10月22日
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「緑の革命」から最大の益を受けるのはだれか
「緑の革命」によって,収穫が驚くほどふえたという報道に接して一般の人はどのような結論を出すでしょうか。貧しい人々が食糧を手に入れることができるから,その数はどんどん減って行くだろうと考えられがちです。
はたしてそうでしょうか。不幸なことに,現状はそうではありません。最大の益を受けているのは,最も困っている人たちではありません。その理由は,収量の多い新しい作物を栽培するには何が必要かについて,農業の専門家の説明を聞くと理解できます。
インジアナ大学ビールス学教授ディーン・フレーザーの説明によると,一つには,新しい種は「大量の肥料を施してはじめて」多くの果を結びます。ですから,肥料もなければなりません。しかし,開発途上国では,必ずしも多くの肥料が手に入るわけではありません。
そうした肥料が手に入るにしても農民にはそれを買うだけの余裕がなければなりません。貧しい国の農民は,たいてい彼ら自身貧しく,したがって,飢えと貧困にあえいでいる農家ではなく,すでに金があって肥料を買うことのできる農家が最大の益を受けるのが通例になっています。
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