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電力はどこから得られるか目ざめよ! 1972 | 11月8日
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に対する需要は驚くべきものがあります。1970年にアメリカは約1兆5,500億キロワット時の電力を消費しました。1950年の消費量の約5倍にあたります。1969年から1970年までに消費量は9.2%急増しました。アメリカは,世界の電力の約35%,ソ連は15%を生産します。
アメリカでは,工業が最大の消費者です。エジソン電力会社によると,工業は,生産される電気の約41%を消費します。そして32%は一般家庭,23%は商店,ショッピング・センター,オフィス,ビル,病院また他の商業関係の会社によって消費されます。最後の4%は,街灯をともし,地下鉄その他を動かします。
この大量の電力はどこから来るのでしょうか。
電気はどのように生産されるか
電気は大部分,「掘り出した燃料」と呼ばれる石油,石炭,天然ガスから生産されます。これらの燃料は,発電所の大きな炉の中で燃やされ,その炉は水の入ったボイラーを熱して,過熱された蒸気をつくり出します。するとその蒸気は時速1,600余㌔で巨大なタービンの中に突入し,羽根車を回します。水力発電所では,蒸気の代わりに高い所から落下する水を利用してタービンを回して,タービンは発電機を回転させて電気を発生させます。
アメリカでは,電気の80%以上が汽力発電所で生産され,残りの大部分は水力発電所で生産されます。最初の汽力発電所は90年前に,ニューヨーク市内で操業を開始しました。今日では全国に3,400の発電所があります。
実際問題として,汽力発電は能率があまりよくありません。石炭,石油,またはガスなどのエネルギーは,変換過程においてわずか3分の1しか電気に変わりません。残りの3分の2はむだな熱や,汚染物質の形で逃げてしまいます。また生産された電気の20%までは,発電所から,使用場所に送られるまでに失われます。
発電所が発掘された燃料を消費する量は想像を絶するものがあります。巨大な火力発電所なら,1時間に600トン以上の石炭を燃やすでしょう。アメリカでは電力の半分近くが石炭の使用によって生産され,残りはだいたい水力,天然ガス,石油などによって生産されています。
もちろん,電気は動力のひとつの形にすぎません。自動車を走らせ,飛行機を飛ばすための動力や,暖房その他に必要な動力の需要もふえています。こうした目的に対しては,石油と天然ガスがおもなエネルギー源です。
環境におよぼす害
これら種々の燃料の中でも,石炭はいちばん環境を害します。たとえば,1日に1万トン余の石炭を消費するバージニア・エレクトリック・アンド・パワー会社の発電所は,毎時約60トンの浮遊塵と約20トンの刺激の強い亜硫酸ガスを出し,その大部分を空気中に排出しています。ことしの初め,デラウェア市のデルマルバ・パワー・アンド・ライト会社は,毎日74,000トンの亜硫酸ガスを排出しているということで訴訟通知を受けました。
原子力委員会の委員長ジェームス・R・シュレシンガーは,大気の汚染問題に関する説明で最近次のように述べました。「[火力]発電所は,大気中に大量の硫黄酸化物と相当量の窒素酸化物を放出している。微粒子類[固形物質]は言うまでもない」。
また環境を破壊するもののひとつは石炭の掘りかたです。昨年は,石炭の44%が露天掘りされて,アメリカ国内のもっとも美しい山岳地帯の多数の地域が荒されました。このやりかたに対する最近の抗議の代表的なものは,ケン・ヘクラー国会議員の抗議で,同議員は去る2月に次のように述べました。
「石炭王や電力王,および西部のある立法者たちは,アパラチア山脈諸州の人々を服従させて,大都市のあくことを知らない電力の必要に奉仕するために,われわれの丘を引き裂き,われわれの河川を汚そうとしている。われわれが立ち上がって,この政策に反対して戦わねばならないところまできている」。
しかし,発電所で,石炭の使用をやめてほかのものに切り換えても ― ニューヨーク市はことし,相当の費用をかけてこれを完了した ― 問題は解決しません。石油やガスも汚染源になるからです。石油に含まれる硫黄も空気中に排出され,天然ガスは燃焼するときに窒素酸化物を出します。また,近くの川や湖に流される,発電所から出る廃棄熱の問題もあります。これは川や湖の温度を危険なまでに高めることがあります。
現在の電力危機はこの環境に対する脅威によるものでしょうか。あるいはそれ以上に深刻な原因があるのでしょうか。
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今日,電力危機が存在するのはなぜか目ざめよ! 1972 | 11月8日
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今日,電力危機が存在するのはなぜか
すべての力には源があります。たとえば馬は,その食料である植物の中に貯蔵されている化学的エネルギーから力を得ます。植物は,動物と人間の筋力の源です。
今世紀まで人間は自分の仕事を成し遂げるのに筋力に大きく依存し,人間自身の筋力か,または動物の筋力を用いてきました。また人間は,植物 ― まき ― を燃やして,それから出るエネルギーを利用しました。1870年というごく最近まで,まきから出るエネルギーが,人間の動力の必要の大半をまかない,初期の蒸気機関,河川用ボート,機関車などを走らせていました。
掘り出された燃料の使用
しかしながら,産業が発達するにつれて,人間は新しく発明された機械を動かすのにさらに多くの動力を必要とするようになり,遠い昔に地中に埋没したものが燃料として掘り出され利用されることになりました。石炭が採掘されて,その使用量は増加しました。1910年までには石炭は,人間の必要とする動力の4分の3のエネルギー源となっていました。
1859年ごろ,人間は掘り出した燃料を大量に使用しはじめました。その年に油井を掘ることに成功したのです。今日における石油の主要な用途は,自動車や他の輸送機関に動力を供給することです。アメリカだけでも現在,1日に平均24億4,500万㍑ほどの石油(重油)を使います。
もっと最近になって,とくに第二次世界大戦以来,地下に埋蔵されている天然ガスが採取されるようになりました。アメリカでは,128万㌔以上におよぶ,地下を走るガス・パイプライン網が敷設されました。これは国のオイル・パイプラインの長さの4倍に当たります。主婦が料理に使うガスは,何百㌔も離れた遠い天然ガス発生地から直行したものかもしれません。
今日では,アメリカの必要とするエネルギーの95%以上が,これらの掘り出された燃料によってまかなわれています。1970年には,国のエネルギーの全必要量の約43%を石油が,約33%を天然ガスが,20%余を石炭が供給しました。残りの動力はおもに水力発電施設によって供給されました。動力危機の根本をなすのは,地下から掘り出す燃料へのこの依存です。
危機
1972年3月19日のニューヨーク・タイムズ紙は次のように説明しています。「エネルギー資源 ― 石炭,石油,天然ガス ― がなくなりはじめたのに,世界の他の国々のこれらの資源に対する需要は,アメリカにおける需要よりも急速に伸びているため,まさつが感じられるようになった」。
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