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麻薬中毒に並ぶもう一つの問題ものみの塔 1974 | 11月1日
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胃の変調,(水分が細胞から細胞膜の外に移動するために生ずる)ひどいのどのかわき,などを伴う,よく知られている「二日酔い」でしょう。
長期間に受ける影響はそれほど劇的でないにしても,結果はずっと重大です。アルコール飲料は熱量の高い飲み物です。しかしこれは“実質のない”熱量で,ビタミン,ミネラル,アミノ酸などは少しも含まれていません。大酒家は普通の食事をきちんととらない場合が多く,そのために栄養失調が始まります。この栄養失調が,アルコール中毒に伴う種々の病気の大きな原因となります。アルコールを代謝させる(“燃やす”つまり酸化させる)ことですでに重労働を行なってきた肝臓がとくに強い影響を受け,そのうちに,慢性中毒者の間で最大の死因となっている肝硬変が始まります。
多量のアルコールは,口やのどや胃の組織を刺激します。フランスのある医学者たちは,同国における口腔および咽頭,喉頭のガンの90%は,アルコール中毒に原因するものであると考えています。酒を長年飲んでいる飲酒家には,酒客譫妄が現われるかもしれません。これは,激しいふるえ,恐ろしい幻覚,いろいろな形のまひなどが起こる状態で,三日から十日ほどつづくだけですが,これで命を失う場合も少なくありません。
もっと重大で,もっと直接的なのは,アルコールの飲み過ぎが人の行動に及ぼす影響です。これはアルコールが,血流中に吸収されると,まず第一に,考えること,学ぶこと,記憶すること,重要な決定や判断を下すことなど,脳の最高機能すべてに影響するからです。少量のアルコールなら,たいていの人はほとんど影響を受けません。しかし,比較的短時間に数杯も飲むなら,記憶力,注意力,問題を解決する能力などは急速に低下します。脳は,入ってくる情報を一度に一つ以上処理するのに困難をおぼえます。(詩 107:27)視力もそこなわれ,横の方が見えなかったり,焦点の合っていない双眼鏡をのぞいているような感じがするかもしれません。それでも,アルコールは幾分催眠術に似た影響を与えるので,飲み過ぎていても,自分の感覚はまだ全く確かだと思うかもしれません。―イザヤ 28:7。
脳から発する注意力や反射反応は,高濃度のアルコールのために弱くなるので,自動車の運転は非常に危険なものとなります。アメリカのハイウェーで一年間に生ずる5万5,000件の死亡事故と,100万件の重傷の半数は,酒の飲み過ぎと関係があります。州が飲酒の法定年齢を18歳に引き下げたところでは,10代の若者たちの酔っ払い運転による即死事故が急激に増加しています。
最大の悲劇は,アルコール中毒が家族生活に及ぼす影響です。アルコール中毒者の配偶者と子どもたちにとって生活は悪夢のようなものになります。若い命はそこなわれるかまたは永久的な害を受けるかもしれません。アメリカにおけるアルコール中毒者の別居と離婚の率は,残りの人口のそれの7倍という高さです。フランスでは,全部の自殺の四分の一,全部の殺人事件の半数は,アルコール中毒が原因です。(箴 4:17とくらべてください)研究調査の示すところによると,慢性アルコール中毒の母親からは,頭が先天的に異常に小さく,顔の均整が欠け,発育能力がなく,また低能という,身体に欠陥のある子どもが生まれることがあります。
慢性中毒者は望ましい従業員とは言えません。正常な状態のときのまねほどの働きもできません。他の従業員たちよりも欠勤率がはるかに高く,病気による欠勤は二倍であり,就業中に他よりも多く事故を起こします。自分自身の仕事の能率が低いだけでなく,その仕事と関連のある仕事をしている人たちの能率まで低下させるのが普通です。(箴 21:17; 23:20,21とくらべてください)アルコール中毒のために企業や産業が1年間にこうむる損害は,アメリカだけでも120億㌦(約3兆6,000億円)にのぼります。アルコールの乱用は,道徳の低下と犯罪の増加につながります。調査によると,アルコール中毒はまた麻薬常用への飛び石となることも少なくありません。
国々は今日,この大きな問題の解決策を捜し求めています。それは,人びとがなぜ,またどのようにアルコール中毒者になるかを調べることを意味します。どのような保護対策がとれるか,あるいはすでにアルコール中毒の犠牲になっている人びとをどのように効果的に治療するかを知るためです。この点にかんし結果は何を示しているでしょうか。そして真の解決策はどこにあるでしょうか。
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アルコール中毒になる原因とその療法ものみの塔 1974 | 11月1日
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アルコール中毒になる原因とその療法
人びとはどんな理由から,自分の生活と家族の生活が台なしになるまでアルコールにおぼれるのでしょうか。
アルコールそのものに問題はありません。たばこやヘロインとちがって,アルコールには本来惑でき性はありません。問題は飲む側にあります。関係している要因はたくさんありますが,それらはみなひとつの基本的不足または必要を指し示し,それはさらに真の解決策を指し示します。
大酒家の子どもは,同じ飲酒の習慣に引き込まれる可能性がはるかに大きいことを,調査は示しています。一方,米国保健教育福祉省の一報告が示すところによると,「幼い時から,少量の薄いアルコール飲料が飲まれるのしか見ないしっかりした家庭や宗教グループの中」,またアルコール飲料がおもに食物と考えられ,食事の時に用いられるところでは,アルコール中毒は多くありません。アルコール飲料について,親から健全な教えを受けなかった人の多くは,知識がないために危険に落ち入るということも考えられます。そういう人たちは,飲み物によってアルコール含有量がちがうことを知らないかもしれません。たとえばビールは約5%のアルコールを含んでいます。ほとんどのテーブル・ワインは10%から14%ですが,シェリー酒やポルトなどの,アルコールを補強したワインは16%から20%,蒸溜酒(ラム,ジン,ウィスキーなど)は40%から50%のアルコールを含んでいます。たとえこういうことを知っているとしても,ビールの小びんを1本飲むと,約42㌘のウィスキーを飲んだとほぼ同量のアルコールを摂取したということには気づかないかもしれません。
ふつうはからだの大きさも影響します。からだが大きければそれだけ血液の量と細胞の数は多く,したがって吸収されたアルコールは薄くなります。しかし,同じ体格の人でも,大きな個人差があって,ある人は少量のアルコールで頭がふらふら
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