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麻薬中毒に並ぶもう一つの問題ものみの塔 1974 | 11月1日
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それの7倍という高さです。フランスでは,全部の自殺の四分の一,全部の殺人事件の半数は,アルコール中毒が原因です。(箴 4:17とくらべてください)研究調査の示すところによると,慢性アルコール中毒の母親からは,頭が先天的に異常に小さく,顔の均整が欠け,発育能力がなく,また低能という,身体に欠陥のある子どもが生まれることがあります。
慢性中毒者は望ましい従業員とは言えません。正常な状態のときのまねほどの働きもできません。他の従業員たちよりも欠勤率がはるかに高く,病気による欠勤は二倍であり,就業中に他よりも多く事故を起こします。自分自身の仕事の能率が低いだけでなく,その仕事と関連のある仕事をしている人たちの能率まで低下させるのが普通です。(箴 21:17; 23:20,21とくらべてください)アルコール中毒のために企業や産業が1年間にこうむる損害は,アメリカだけでも120億㌦(約3兆6,000億円)にのぼります。アルコールの乱用は,道徳の低下と犯罪の増加につながります。調査によると,アルコール中毒はまた麻薬常用への飛び石となることも少なくありません。
国々は今日,この大きな問題の解決策を捜し求めています。それは,人びとがなぜ,またどのようにアルコール中毒者になるかを調べることを意味します。どのような保護対策がとれるか,あるいはすでにアルコール中毒の犠牲になっている人びとをどのように効果的に治療するかを知るためです。この点にかんし結果は何を示しているでしょうか。そして真の解決策はどこにあるでしょうか。
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アルコール中毒になる原因とその療法ものみの塔 1974 | 11月1日
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アルコール中毒になる原因とその療法
人びとはどんな理由から,自分の生活と家族の生活が台なしになるまでアルコールにおぼれるのでしょうか。
アルコールそのものに問題はありません。たばこやヘロインとちがって,アルコールには本来惑でき性はありません。問題は飲む側にあります。関係している要因はたくさんありますが,それらはみなひとつの基本的不足または必要を指し示し,それはさらに真の解決策を指し示します。
大酒家の子どもは,同じ飲酒の習慣に引き込まれる可能性がはるかに大きいことを,調査は示しています。一方,米国保健教育福祉省の一報告が示すところによると,「幼い時から,少量の薄いアルコール飲料が飲まれるのしか見ないしっかりした家庭や宗教グループの中」,またアルコール飲料がおもに食物と考えられ,食事の時に用いられるところでは,アルコール中毒は多くありません。アルコール飲料について,親から健全な教えを受けなかった人の多くは,知識がないために危険に落ち入るということも考えられます。そういう人たちは,飲み物によってアルコール含有量がちがうことを知らないかもしれません。たとえばビールは約5%のアルコールを含んでいます。ほとんどのテーブル・ワインは10%から14%ですが,シェリー酒やポルトなどの,アルコールを補強したワインは16%から20%,蒸溜酒(ラム,ジン,ウィスキーなど)は40%から50%のアルコールを含んでいます。たとえこういうことを知っているとしても,ビールの小びんを1本飲むと,約42㌘のウィスキーを飲んだとほぼ同量のアルコールを摂取したということには気づかないかもしれません。
ふつうはからだの大きさも影響します。からだが大きければそれだけ血液の量と細胞の数は多く,したがって吸収されたアルコールは薄くなります。しかし,同じ体格の人でも,大きな個人差があって,ある人は少量のアルコールで頭がふらふらするほどになり,別の人はその2倍の量を飲んでもなんともない場合があります。すき腹にアルコールを飲むと急速に血液中に吸収されますが,食物はその過程を遅くします。また,からだは一時間に約9㌘のアルコール分を除去できるだけですから,飲む間隔の長さも重要な要素となります。
交際は大きな役割を果たします。もし大酒することが「男らしい男」のしるし,「ハイカラ」で洗練されている証拠と見られているなら,そういう考えに従わせようとする圧力があるでしょう。若い男性や女性はそういうことから大酒するようになります。そして先太り式の飲み方,つまり定期的にパーティーや土曜日の晩の酒宴などではめをはずす習慣に落ち入ります。そして1週のうち酒を飲む日がだんだん多くなっていくでしょう。中毒の進行はわからないほど遅いかもしれません。男子の場合はアルコール中毒になるまでに平均16年かかり,女子の場合はわずか8年です。
おとなになると,自分の置かれた境遇がおもな要因となります。家族に関する問題,結婚生活の問題,重い借金,病気,失望,失敗そしてその結果としてのゆううつな気分 ― こうしたことは,人をしばしばアルコールに頼らせます。幹部の地位にいる人びと,またストレスや圧力の多い仕事をしている人びとは,緊張を解消する手段としてアルコールに頼るようになることがあります。売買に関係している人たちは,商売上の交際を円滑にするためにアルコールを利用する場合が少なくありません。単調な仕事をしている人たちは,偽りの友情を求めて,自由な時間を仕事仲間とバーで過ごすかもしれません。
現代において,アルコール中毒は,とくに女性の間で大きな増加を見せています。アメリカでは,アルコール中毒の女性の約半数が結婚に破れ,三分の一はアルコール中毒の夫を持っています。なかには,高給の職業を持ちながら,生活に満足と意義を見いだせないでいる女性もいます。主婦の役目を持つ女性は,退屈になったり,小さな子どもたちの世話をする責任を重荷に感じていたりするかもしれません。主婦には大きなプライバシーがあり,世間の目をのがれることができるので,飲酒の習慣がついてもしばらくは隠しておけるかもしれません。月経周期に伴うホルモンの変化だけが原因となって,ひとしきり酒にふけるということもあるでしょう。
解決策が見いだされるところ
こうした事がらはすべて,最も重要な方向を指し示しています。飲まずにはいられない酒飲みになる人びとは,アルコールに頼って感情面の必要を満たそうとします。時がたてば,彼らのからだの細胞が高濃度のアルコールに順応してしまうので,酒をやめると激しい反応を起こすのは事実です。このようにしてからだも酒のとりこになります。しかし,感情が先に酒に頼ることをしなければ,からだが酒のとりこになるところまではいかないでしょう。しかもアルコールは感情的な問題を解決するものではなく,むしろいっそう深刻な問題を生み出すにすぎません。アルコールが与える慰めや勇気,交わり,生活の煩い事からの逃避は,本物ではありません。この点を認めるときに人は初めてアルコールへの依存を真に解決する方法を見いだすことができます。
さてここでわたしたちは,アルコール中毒を治すさいの最もむずかしい問題にぶつかります。それはどんなことでしょうか。彼または彼女が本当に問題をかかえているということを,彼ら自身に認めさせることです。たいへん不思議なことに,アルコールに頼っている事実をいちばん直視しようとしないのは,たいてい当の中毒者自身です。ある人は,朝ひと口飲んで,正午に2,3杯飲み,午後またひと口,帰宅してまたひと口,そして夕方また2杯ほど飲み,それでも自分はアルコール中毒ではない,と自分に言い聞かせているかもしれません。なにかの理由で酒が飲めない時,酒客譫妄を想像させる激しい反応が起こり,自分の本当の状態を初めて知ってびっくりするかもしれません。
そこで,この問題を解決するための第一段階は,当人が,アルコールのとりこになっていることを認めることです。聖書は,真実と自由を,そして偽りと奴隷状態を結びつけています。(ヨハネ
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