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あなたに影響を及ぼす不可解な夢ものみの塔 1984 | 7月1日
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あなたに影響を及ぼす不可解な夢
その夢は王を驚かせ,困惑させました。王は次のように考えたに違いありません。『わたしはこれまでにも夢を見たが,わたしの祭司たちはその魔術をもってそうした夢の解き明かしを与えてくれた。彼らが夢の隠された意味を明らかにできないなら,わたしのまじない師を呼んでそれを説明させたものだった。それでもだめなら,わたしの占星術者たちがそのなぞを必ず解き明かした。だが今度の夢,これは一体どうしてこんなに不可解なのだろうか』。
西暦前6世紀最大の世界強国の支配者であったバビロンのネブカドネザルは,このように首をかしげたに違いありません。その奇妙な夢の解き明かしをする者を自分の帝国のどこを探しても見いだすことができなかったのです。ただ一人の例外は,捕らわれになっていた外国人,ユダのダニエルだけでした。エホバ神を崇拝するこの人は,ほかのだれも解くことのできなかったネブカドネザルの夢の意味をかつて説明したことがありました。―ダニエル 2:1-45。
しかし,『そんなことにどうしてわたしが関心を持たなければならないのか。夢など人間の生活には普通にあることだ。この夢がどうして特異だと言えるのか』と,お尋ねになるかもしれません。しかし,それは確かに特異なものです。どうしてですか。その意味するところは,あなた,また1914年以来生きてきたすべての人に影響を及ぼすからです。
王の夢
階段式庭園のある自分の宮殿でくつろいでいた時,ネブカドネザルは非常に大きな木の夢を見ます。
「さて,わたしは床の上で,自分の頭の中の幻を見ていたのだが,見よ,地の真ん中に一本の木があった。それは途方もなく高かった。その木は成長して強くなり,その高さはついには天に達して,全地の果てにまで見えるほどであった。その葉は麗しく,その実は豊かであり,その上のすべてのもののために食物があった。その下には野の獣が陰を求め,その大枝には天の鳥たちが住み,すべての肉なるものがそれから糧を得るのであった」― ダニエル 4:10-12。
王はその夢の中で次に見るものに仰天させられます。一人のみ使いが次のような命令を大声で与えるのです。
「この木を切り倒し,その大枝を切り落とせ。その葉を振り落とし,その実をまき散らせ。獣をその下から,鳥たちをその大枝の中から逃げさせよ。しかし,その根株は地に残し,鉄と銅のたがを掛けて野の草の中に置け。天からの露によってそれをぬれさせ,地の草木の中でその分を獣と共にならせよ。その心を人の心から変わらせ,獣の心をそれに与えて,七つの時をその上に過ぎさせよ。この事は見張りの者たちの定めにより,その要請は聖なる者たちのことばによる。これは,至高者が人間の王国の支配者であり,ご自分の望む者にそれを与え,人のうち最も立場の低い者をさえその上に立てるということを,生ける者が知るためである」― ダニエル 4:13-17。
王にとってのその夢の意味
この王の夢の主題は世界の支配権です。この夢には二重の意味がありました。一方はネブカドネザルにかかわるもので,もう一方はあなたに影響を及ぼします。ダニエルは,この天まで届くほど高い木がネブカドネザルにとってどんな意味があるかをこう説明しています。「王よ,それはあなたです。あなたは大いなる者となって強くなり,あなたの雄大さは大いなるものとなって天に達し,あなたの支配権は地の果てに及んだからです」― ダニエル 4:22。
次いで,ダニエルは誇り高い王の幻の残りの部分の意味を解き明かしてゆきます。ネブカドネザルは,草をはむ獣のような行動をさせる病気にかかり,支配者の座から一時的に追われることになります。それは7年間続きます。しかし,その「七つの時」が過ぎ去ると,王は正気に戻り,支配権も王のもとに戻ります。このことは,その夢の木の根株の周りをきつく包む金属の2本のたがにより表わされていました。そのたがを除くと,その木はすぐに再び芽を吹きます。ダニエルの言葉によれば,このすべてのねらいは,「至高者が人間の王国の支配者であり,ご自分の望む者にこれをお与えになる」という点を証明することにありました。―ダニエル 4:23-26。
この王の夢をダニエルが解き明かしてから12か月後に,それは現実のこととなります。ネブカドネザルは突如,分別を失い,王位を失ってしまいます。7年後,ダニエルの言葉は再び真実となり,ネブカドネザルの正気が戻り,「普通を超えた偉大さ」をもってその王座に戻されます。その結果,王は次の点を認めるよう促されます。「今,わたしネブカドネザルは,天の王を賛美し,あがめ,その栄光をたたえる。そのみ業はすべて真実,その道は公正だからである。また,高ぶり歩む者を辱めることもおできになるからである」― ダニエル 4:29-37。
王は教訓を学び取りました。だれが,いつ地を支配するかについての最終的な決定権を持っているのは,全能の神エホバです。しかし,ネブカドネザルの夢の意味するところは,バビロンの人々に影響を及ぼしたにとどまりませんでした。世界支配に関するその預言的な重要性は,この20世紀に及び,あなたにも影響を及ぼしているのです。
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1914年 顕著な年 ― なぜ?ものみの塔 1984 | 7月1日
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1914年 顕著な年 ― なぜ?
読者は1914年にどこにおられましたか。『まだ生まれていませんでした』とお答えになりますか。しかし,いまだに1914年のことを覚えている人々が今日数百万人もいます。
1914年当時,メアリーは高校の最終学年を終えようとしており,ドイツ語を学び,学校の教師という,報いの多い職に就くことを楽しみにしていました。その年の夏,大学へ入る前に,メアリーが米国の北東部の海岸にある父親の農場の畑で,熟しつつあるトマトのつやつやした皮から虫を取っていたその時,そこから世界を半周したあたりにあるサラエボで,オーストリアの皇太子が暗殺者の銃弾に倒れていました。それが第一次世界大戦のぼっ発する発火点となりました。その戦争のニュースがメアリーのもとに伝わってきた時,彼女は,『やはり本当だったんだ! 聖書研究者たちが言っていたことが本当に起きたんだ。1914年は顕著な年になる!』と思いました。
世界の出来事についてそのように感じたのは一人メアリーだけではありませんでした。1914年8月30日に,「1914年にすべての王国は終わる」という人目を引く見出しが,ニューヨークの一流新聞であったザ・ワールド紙の日曜雑誌欄の4ページに大きく載せられました。この特集記事は次のように述べていました。「欧州における恐るべき戦争のぼっ発は異例な預言の成就となった。過去四半世紀の間,『千年期黎明派』としてよく知られる『国際聖書研究者[エホバの証人]』は,伝道者や出版物を通して,聖書に預言された憤りの日は1914年に明けるであろうと世界にふれ告げてきた。『1914年に注意せよ!』というのが旅行する幾百人の福音宣明者の叫びであり,彼らはこの風変わりな信条を携えて国じゅうを回り,『神の王国は近づいた』という教理を宣揚した」。
その年に生きていたかどうかにかかわりなく,読者にとって1914年は,時たつうちに黄ばんで丸まってしまった単なる1枚のカレンダー,あるいはぼろぼろになった雑誌のページに載せられた見出し以上のものを意味するはずです。それはあなたの今日の生活に影響を及ぼす重大な年なのです。
1914年はなぜ顕著な年なのか
エホバの証人はどのようにして30年以上も前に,1914年が神の支配権にとって重要な年になることを知ったのでしょうか。当時エホバの証人は起ころうとしていた事柄の意味を完全には理解していませんでしたが,「ものみの塔」誌は早くも1879年12月から,1914年を聖書預言に関して顕著な年として指し示してきました。そして,「ものみの塔」誌の1880年3月号は,「諸国民の定められた時」つまり「異邦人の時」とイエス・キリストが呼ばれた期間の終わりと,神の王国の支配とを結びつけました。(ルカ 21:24; 欽定訳)「ものみの塔」誌のその号は,「『異邦人の時』は1914年にまで及び,天の王国はその時まで完全に権力を執ることはない」と述べていました。
「異邦人の時」あるいは「諸国民の定められた時」という表現は何を意味しているのでしょうか。そして,それは神の王国とどのように結びつくのでしょうか。こうした質問に答えるために,イエスの言葉をもっと細かく調べてみることにしましょう。イエスはこう言われました。「エルサレムは,諸国民[異邦人]の定められた時が満ちるまで,諸国民[異邦人]に踏みにじられるのです」― ルカ 21:24。
「エルサレム」は何を意味しているのでしょうか。それは神の王国を指しています。どうしてそう言えるのでしょうか。古代イスラエルは,西暦前1513年から西暦1世紀まで,神の選ばれた民でした。(出エジプト記 19:6。マタイ 23:37,38)エホバはイスラエルを予型的な神権政府,つまり神の支配のもとに組織しました。エルサレムはその首都になり,ダビデの家系の,神に油そそがれた王たちが「エホバの王座」に座したのはそこエルサレムでのことでした。彼らはエホバに代わって王として支配しました。(歴代第一 29:23。歴代第二 9:8)マクリントクとストロングの「百科事典」は次のように述べています。「エルサレムは全イスラエルの王の居住地とされた。そして,しばしば『エホバの家』と呼ばれた神殿は,同時に,王の王,神権国家の至上の首長の居住地をなした」。
エルサレムは,いつ,どのようにして異邦人によって踏みにじられたのでしょうか。踏みにじられるようになったのは西暦前607年のことです。どのようにして?ダビデの王朝がにわかに断たれることによってです。ゼデキヤ王は退位させられ,エルサレムの市街は侵入して来たネブカドネザル配下のバビロニア人の軍勢によって滅ぼされました。聖書はエゼキエル 21章26節と27節で,ダビデの王統に対するこの侵害についてこう予告していました。「冠を取り外せ。……それは法的権利を持つ者が来るまで,決してだれのものにもならない。わたしはその者にこれを必ず与える」。神の支配は,「諸国民の定められた時」が終わるまで,抑えられていました。ですから,異邦人の時とは,エホバ神の支配権を地上で代表する政府なしに,諸国民が支配をした期間のことです。
異邦人の時が終わると,エホバは,「法的権利を持つ」方,イエス・キリストに支配権を与えることになっていました。それゆえ,1914年はキリストが王として神の天の王国で支配を始めた時をしるしづけるものとなるのです。そして,その支配権は今日に至るまで続いているので,それはあなたに影響を及ぼします。
どのように年代を計算して,1914年が顕著な年であることが分かったのでしょうか。「ものみの塔」誌の1880年6月号は,こう説明しています。「2,520年という長い期間と野獣(人間の諸政府,ダニエル 7章。)の支配下での彼らのつらい経験とは,ネブカドネザルの『七つの時』と野獣の間での同王のつらい経験とによって,ダニエル 4章の中にはっきりと予表されていた」。それで,1914年に至る年代の流れをたどるために,バビロンの王の見たあの不可解な夢に戻らなければなりません。
預言的な青写真
エホバはご自分の預言者たちを通して,従うべき預言的青写真を常にご自分の民に与えてこられました。「主権者なる主エホバは,内密の事柄を自分の僕である預言者たちに啓示してからでなければ何一つ事を行なわないのである」と,アモス 3章7節は述べています。例えば,ノアは4,000年以上前に,神の特別な使者でした。エホバはノアに,あの邪悪な世に臨もうとしている水による滅びについての預言的な警告をお与えになりました。(創世記 6:3; 7:4)その時に起きた事柄はまた,目に見えない,「人の子[イエス・キリスト]の臨在」の間に起きる,不敬虔な者たちの将来の滅びの型ともなっていました。(マタイ 24:37-39)ですから,ダニエルがネブカドネザルの持っていた世界の支配権について明らかにした事柄 ― その失脚と権力への復帰 ― がやはり,神の油そそがれた王による神権的な世界支配が変化することを示す小規模な例えであったとしても,別に異例なこととは思えないはずです。
ダニエル 4章10節から17節の預言的な型を調べるとき,どんなことが分かるでしょうか。天に達する巨大な木は神の支配権を表わしています。その木はエルサレムに首都を置くユダの神の王国が西暦前607年に倒れた時に切り倒されました。諸国民による獣のような支配の「七つの時」が過ぎ去った後,締めつけていた2本の金属のたがが外され,イエス・キリストが1914年に神の天の政府の王として支配し始めた時に神の支配権は回復されました。
1年に対して1日
「七つの時」が2,520年であるとどうして分かるのでしょうか。その計算の方法は,ものみの塔協会の初代会長,C・T・ラッセルが1877年に行ない,ラッセルが共著者の一人になっていた「三つの世界」と題する本に記されているものと同じです。その計算法は次の通りです。啓示 12章6節と14節から,1,260日が「一時と二時と半時」,つまり合計3 1/2時と等しいことが分かります。ですから,「一時」は360日になります。「七つの時」は360×7,つまり2,520日になります。ここで聖書の規則に従って,1年に対して1日として数えるなら,「七つの時」は2,520年になります。(民数記 14:34。エゼキエル 4:6)ゆえに,「七つの時」,つまり異邦人の時の続く期間は,西暦前607年から西暦1914年までになります。
ネブカドネザルの見た預言的な木の夢が20世紀にまで及び,神の王国に関して成就を見ると信じてよいどんな理由があるでしょうか。一つの理由は,ダニエル書の大半が,ダニエルが生涯を終えた後に,世界の支配権と神の王国について成就を見る預言に関係しているということです。例えば,ダニエル 2章をお読みになってください。それは,連綿と続く世界強国を表わす,複数の金属で成る一つの像が粉々に砕かれる様を描いています。何がそれを砕くのでしょうか。神の王国です!(ダニエル 2:44)あるいは,ダニエル 7章をお読みになってみてください。そこでは連綿と続く世界政府が海から上って来る数匹の野獣として登場し,最後には一つの支配権によって取って代わられます。それらに取って代わるのは何ですか。神の王国です!(ダニエル 7:14)あるいは,ダニエル 11章と12章をお読みになってください。それらの章の中で,北の王と南の王は世界の至上権をかけて行なわれる戦いで互いに相手を試し続け,ついには君ミカエルの手で双方共敗北を喫します。(ダニエル 12:1)このミカエルはだれでしょうか。神の王国の支配者であるイエス・キリストです。
ですから,1914年は顕著な年であるということには十分の理由があります。それは地に対する神の王国の義の支配の始まりを表わし示しました。そして,邪悪な者には滅亡を意味しました。また,この不敬虔な事物の体制の「終わりの日」を指し示しました。(テモテ第二 3:1)それは地上の楽園の始まりへの秒読みをしるしづけるものとなりました。
1914年があなたに影響を及ぼす顕著な年である理由はほかにもあります。こうした点は今後の「ものみの塔」誌の号の中で扱われるでしょう。
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