世界展望
法を守る人々
◆ 「一都市に4万人の訪問客,しかもその訪問客のすべてが常に心から法律を守る市民たち,こんなことを想像してください」,とシアトル・タイムズ紙は報道した。これはカナダ,ブリティシュ・コロンビア州のバンクーバーで開かれた,「地に平和」国際大会に出席したエホバの証人についての報道である。記者はさらに次のように続けている。「訪問客の中に酒に酔った者,芝ふの上を歩く者,駐車違反,交通違反,みだらなことばを使う者などはひとりとしていなかった。そして驚いたことに,紙くず一つ落ちていない。エンパイア・スタジアム内を縦に横に歩いてみたが,何万もの人が紙製の皿やコップで飲食しているにもかかわらず,グランドには紙片一つ見当たらない。昼食の休けい時間に何万もの人が席を立ったが,午後のプログラムのため同じ席が取れるようにテープレコーダー,双眼鏡,かさ,さい布,セーター,カメラなどを残したまま90分余りも自分の席に返ってこない。別に盗難の心配もしていない。彼らの持つ高い道徳水準,礼儀正しさ,正直さのゆえに,大会開催地として選ばれた都市には良いことばかりがもたらされるに違いない」。
シカゴにおける大会中,警察官スイーニーは,「もしみんながエホバの証人のようだったら,警察は失業ですよ」と語った。エホバの証人の大会には大ぜいの群衆が集まったにもかかわらず,どの大会にもこのような法律に服する平和な態度が顕著に見られた。北アメリカの八つの大会で,「近づく一千年の平和」と題する講演に出席した人は合計49万2,310人を数え,ヨーロッパの五つの大会における34万8,262人と合わせて,合計84万572人となる。これらの大会での喜ばしい別の点は,2万7,442人が浸礼を受けたことである。
大被害を出したカミーユ
◆ さる8月17日ハリケーン・カミーユはアメリカのメキシコ湾岸に押し寄せ,ミシシッピー州とルイジアナ州で300人以上の死者を出した。アメリカで気象観測の記録が保存され始めてから約一世紀になるが,カミーユはアメリカ本土を襲った記録上最悪の暴風雨となった。このハリケーンのもたらした時速330キロメートルの風のために,多くの市町村は全くみじめな状態と化してしまった。家を捨てて避難した人は約20万人。損害額合計が10億ドル(3,600億円)に達するのは必至とみられた。カミーユの勢いは非常に強く,アパラチア山脈にまで吹き荒れ,バージニア州と西バージニア州に洪水をもたらし,メキシコ湾沿岸地方での被害に相当する死者と損害をひき起こした。
UPI通信の8月17日付至急報によると,ビオラ台風は中国広東省の沿海地方で1万人以上の死者を出した。大波に完全に押し流された村もあった。
犯罪と一般社会
◆ 主任警部エリック・セイント・ジョンストン卿は,英国内で犯罪が増加しており,ロンドン市外の犯罪件数が昨年初めて100万台を越えたことを発表して英国民を悲しませた。「不正直になる人が年々増加している事実を無視することはできない。人身及び所有権の侵害に関する法律を破る人がどんどん多くなっている」とエリック卿は語った。
心臓移植手術
◆ 心臓移植手術を受けた人の中で最長の生存者であった,P・ブレイバーグ博士が8月17日に死亡した。他人の心臓を移植されてから19か月15日間生きたことになる。60歳であった。移植された心臓の止まった理由は長期間続いた拒絶反応であった。新しい心臓がブレイバーグ博士の体内に移植された瞬間から,彼の体はそれを拒絶しようと戦った。そして死んだ時のその心臓は傷だらけの筋肉の寄せ集めと化していた。薬品の助けを借りて拒絶の過程を遅らせることは可能でも,それを完全に阻止することはできない。1967年12月3日以来心臓移植手術を受けた人の合計は,141人になるということだが,さる8月まで生き残った人はわずか29人であり,心臓移植手術を受けた人の平均余命は約2か月に過ぎない。クリブランド診療所のアービング・ページ医師の話だと,手術をしない方が長く生きられる患者もいる。
犯罪ときょう正手段
◆ アメリカ合衆国内の犯罪件数は1960年から1968年までの間に,人口増加率の11倍に相当する122パーセントの上昇を示した。この数字は連邦検察局が年次「平均犯罪報告書」で明らかにしたものである。常習犯の統計を見ると,1963年に釈放された犯罪者の63パーセントが5年以内に再び逮捕されており,その43パーセントは釈放後1年以内に法律違反に関係している。ニューヨーク・タイムズ紙の社説の述べるところによると,「法廷が有罪の判決を下した時に犯罪は終わった,とするのは現在の機構では欺まんである」。
恐怖の影
◆ アレンスバッヘル協会の最近のドイツにおける調査によると,ドイツ人5人に一人は説明のしようのない極度の恐怖感にとりつかれている。かれらはこの恐怖感を大小犯罪の増加とその報道のせいにしている。調査の対象となったドイツ人のほとんどは,交通がひん繁で明かりのある通りでないと夜は安心できないことを認めた。
従業員の不正
◆ ある信用会社の社長が推測したところによると,不正と盗難のためカナダの商人は年間4億5,000万ドル(1,620億円)の損害をこうむっている。損害の内訳はつぎのようなものとされている。外部の労働者による窃盗約3~5パーセント。送り状などの誤りによるもの16パーセント,万引きによるもの28~31パーセント,残りの48~51パーセントは従業員の不正直によるものである。コックス・リーテイル監査株式会社の創始者であるゴードン・S・コックスは次のように語っている。「レジから進行部門に至るまで会社のただ中で盗難事故が起こっている。不正直な従業員から取りもどした品物の中には,50ドルのものから3万ドルのものに至るまであらゆるものがあった」。このような事実は,この事物の体制の終わりの日をしるしづける道徳の退廃を示す別の証拠となっている。
強制された平和
◆ 自動ライフル銃で武装した英国軍が,北アイルランドにおける新教徒と旧教徒間の平和維持に当たっている。英国は50年も昔に,二度としないと言ったこと,つまりアイルランド人民に武力で平和を強制することを行なっているわけである。宗教的に分裂した人々の間に持ち上がった紛争のため,さる8月の2週間に8人が殺され,幾百人もの負傷者が出た。
堕胎を求めて
◆ 69年度の観光業は繁栄していると英国の旅行関係者は発表した。一つの原因は,中絶手術を望む婦人を対象とする団体旅行であろう。妊娠中絶に関する法律が厳しくないため,英国に旅行する婦人の数は1週間に150ないし200人と推定されている。