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認識の目をもって物事を見る目ざめよ! 1970 | 12月8日
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は,設計にあたり,周囲への影響をも含めてあらゆる事柄を考慮に入れます。彼は利権や,ある技術上の能率という狭い面にとらわれることがありません。事実,すぐれた設計士は,技術上の必要条件と,審美的な必要条件とをうまく平衡させ,しかるのち努力して両者から最大限を引き出すというやりかたをします。
このことに留意して,飛行の別の面を考えてみましょう。あなたは,飛ぶ生き物が人の感覚をかき乱さないことに気づいたことがありますか。たとえばそれらがたてる音です。これはふつう聞いて感じのよいものです。それにひきかえ,固定翼をもつ飛行機やヘリコプターは,神経をいためつけるような音をたてます。また人間の作る飛行機は,わたしたちが呼吸する空気を汚し,不健康や病気の原因となります。なんという大きな相違でしょう!
空気動力学上の性能
しかし空気動力学の面から見た性能を,飛行機と比較する場合,鳥はどうでしょうか。まず翼のことを考えてみましょう。これはどれほどの性能をもちますか。
空気動力学上の性能は,翼の形によって大きく左右されます。人間は,高等数学やら風洞内の実験やらを含む,多くの努力を重ねた結果,満足のいく飛行性能の翼を設計することができるようになりました。しかし鳥の翼もわたしたちの想像どおり,それぞれの生きかたに適した,理想的な形をしています。たとえば,アホウドリとタカの生き方には大きな違いがありますが,彼らの翼は,それぞれの異なる要求を完全に満たすべくつくられています。実際のところ,鳥がその翼で成し得ることを行ない得る飛行機を見た人がいるでしょうか。
推力
では推進法についてはなにが言えますか。わかりやすくするために,プロペラ,もっと正確にいってエアスクリューを取りあげてみましょう。この推進法はどのように作用しますか。
その名が暗示するとおり,エアスクリューは空気中にねじこまれるように前進して機体をひっぱります。しかし固体のナットの中に金属のボルトがねじ込まれる場合と違い,空気はいわばスリップするために,固体のナットには生じないむだが継続的につくりだされます。
この種の損失をはっきり理解するには,大魚をつり糸でたぐり寄せるつり師のことを考えてみるとよいでしょう。もし彼の船が海底か,川床にしっかりといかりでつながれていれば,しなければならないのは,腕でつり糸をたぐることだけでしょう。しかし船がいかりでつながれていなければ,そして一定の位置を一寸でも動きたくなければ,魚の方向にひっぱられるのを防ぐに足る速度で船のエンジンを動かさねばなりません。したがって,エンジンが使用した動力はすべて,周囲が流動体であるゆえに,完全な損失となるでしょう。
しかし鳥の翼はどうですか。鳥の翼は,見事に調和のとれたはばたきと,滑空技術とのために,プロペラのこうむる損失をほとんど避けることができます。現代の航空機にとりいれられているジェット推進法も,鳥の翼の性能にはおよびません。
鳥の推進法であるはばたきと滑空は,ある意味でスケーターの動作にくらべることができます。ゆるやかな傾斜をすべり下る,そして坂の終わりに達する直前に,その傾斜と並行して走るもうひとつの傾斜の背に移ることができるスケーターを想像してください。からだに推力を与えるために足を両側に突き出すところがちがうだけで,ふつうのスケーティングにはこの原理が応用されます。鳥の場合は,翼を下に動かす動作で推進します。
機動性
鳥はほんとうにすばらしい,性能のよい飛行機です。発明の才がにじみ出ているかのようです。とりわけ翼は,なんとすばらしい道具でしょう。
あなたは2羽のカモメが,一片の食物をめがけて舞いおり,正面衝突しそうなところを見たことがありますか。しかしそれはいつもしそうなだけです。負けたほうが避ける動作を起こす際,激しい翼のはばたきのために,2羽の鳥がもつれあって飛んでいるように見えるからです。
あるいは,カラスが金網の垣にとまるところを見たことがありますか。失速して不安定になる恐れなどさらにありません。着陸態勢にはいるとき,目標よりも先に飛びすぎるのではないかと思えますが,それまで性能のよいプロペラの働きをしていた強力な翼の先端は向きを変えて速度を落とします。またなんという止まりかたでしょう。鉄線に向かって静かに舞いおりるときの,その制御ぶりはみごとなものです。しかしカラスはとても疑い深いので,止まろうともせず,失速の状態から,またゆっくりと翼をはばたかせて,のんきそうに鳴きながら飛び去ることもあります。いまやってのけたその驚くべき芸当など気にもとめません。
航空機設計者は一般に,多能性を得るにも,鳥のような着陸の仕方をするのに必要なむずかしい動作をなしとげるにも,動く翼,形を自由に調節できる翼に多くの利点があることを認めています。しかし,はばたく翼と,形を変える翼の研究で,人間の技術者がえたみじめな結果は,人間が鳥の高等飛行のまねごとをするまでにも,前途ほど遠いものがあることを物語るものです。
多能性や空気動力学上の性能の面からにせよ,また機動性の面からにせよ,鳥を考察すればするほど,この航空機の創造者が名匠であることをうかがい知ることができます。目に美しく,動作が静かで優美な飛ぶ生き物を見るとき,わたしたちは感動し,彼らの偉大な設計者にひきつけられる思いがします。
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おとなのためのベビー・フード目ざめよ! 1970 | 12月8日
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おとなのためのベビー・フード
マーケットでミルクを買うとき,あなたはおそらく,それが赤ちゃんの食物であるとは考えないでしょう。しかし実際にはそのとおりで,ミルクは赤ちゃんの食物です。にもかかわらずミルクはおとなの食物として人気を得,料理や種々の飲物に使われています。しかしこの赤ちゃんの食物は,ほんとうにおとなにもよいのでしょうか。
わたしたちに一番なじみの深いミルクは,なんといっても牛乳でしょう。しかしほかの動物のミルクを人々が使いなれている国もあります。たとえば地中海周辺の国々や,ノルウェー,スイス,ラテンアメリカ,およびアジアとアフリカの一部では,ヤギ乳に人気があります。北極地方の人々は,馬やトナカイの乳を用います。スペインやイタリアでは羊の乳が好まれます。インドとかフィリピンでは水牛のミルクがふつうに使われており,南米ではラマのミルクが使われます。
どんなミルクを使うにせよ,ミルクは危険です。なぜかというと,ミルクは病原菌に汚染しやすく,また病原菌の急速な繁殖にうってつけの培養基だからです。結核,波状熱,腸チフス,敗血性扁桃腺炎,しょう紅熱,ジフテリアなどの病気は,ミルクによって広がることもあるのです。
ミルクの保護
それで,もしミルクを使うとすれば,きれいなミルクだけを使うことがたいせつです。ミルクを買って帰ったならば,冷たい場所におかねばなりません。これは,バクテリアの急速な繁殖を防ぐのに必要です。汚れた容器に入れたり,ハイやほこりにさらすことは,好ましくない細菌を招くおそれがあるので禁物です。
ミルクの会社は,容器の消毒やミルクの
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