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輸血をしないでする大手術目ざめよ! 1974 | 9月22日
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に対しては,非コロイド性の単純溶液,つまり乳酸ナトリウムリンゲル液を用いてこれを補った。その結果はきわめて満足すべきものである。
「その上,アレルギー,溶血反応,腎臓の機能閉止,肝炎など全血液輸血に伴う合併症を気にしなくてもよいのはうれしいことである」。
これらの医師たちは,手術前あるいは手術中に失われた血液に代わるものとしてどんな特別の“処方”を用いていますか。彼らはこう語ります。
「これらの患者を扱うわたしたち独自の手法は,血液に代わるものとしてただ乳酸ナトリウムリンゲル液のみを用いることである。それ以外に特別の処方はないが,継続的な失血に対しては,この溶液を失血量の三倍用いることがわたしたちの一般的なやり方である。……
「等張性の糖溶液や食塩水も広く用いられているが,“均衡化した”組成を持つ溶液のほうが勝っている。リンゲル液には,ナトリウムや塩化物のほかに,カリウムやカルシウムも含まれている。もっとも,このカルシウムやカリウムは“生理学的”濃度のものとして含められるのであり,この溶液そのものは,これらのイオンの欠損を補うことを意図してはいない。
「“改良された”リンゲル液は乳酸ナトリウムを含んでいる。従来のリンゲル液には多少の酸性化作用があった。乳酸ナトリウムリンゲルはこの酸性化作用を押え,そのゆえに,静脈投与の非コロイド性溶液として好まれる」。
また,悪性の疾患に伴う胃や腸のてき出など,大規模な腹腔手術も,今では輸血なしでなされる例が多くなっています。
考えさせる質問
こうした多くの成功例を考えるとき,ローエン,ベルセク両博士の次のことばは注目に価します。「多くの場合,医師や病院当局者は,輸血の問題にからんでエホバの証人に対する手術を拒んできた。予期される手術がどれほど大規模なものであっても,これらの人々に対する手術を拒否するのは不当である,とわたしたちは主張する」。
これらの医師たちは,他の所で手術を拒まれたのちセントバルナバ病院を訪ね,そこで輸血をせずに首尾よく手術を終えた証人たちの例を数かぎりなく提出します。世界の他の土地の熟達した外科医により輸血なしでなされた数々の成功例も両博士の結論を裏付けます。
したがって,輸血ができないかぎりエホバの証人に対する手術をしないという態度を今なお取りつづける医師は実際には自分の実情を明かしていることになります。そうした医師たちが誠実な意図をいだいていることは確かですが,人は今次の点を問わざるをえないでしょう。彼らが拒むのはなぜだろうか。尊敬される指導的な外科医が世界のほかの場所,あるいは同じ国や地方や同じ町においてさえ行なっている事がらに通じていないためだろうか。過去の訓練や熟練の結果閉鎖的な考え方に陥り,その分野における最新の歩みに合わせて進歩してゆくことをためらっているのだろうか。あるいはただ,自分の技術に自信を欠いているのだろうか。それとも,宗教的な偏見が妨げとなっているのではないだろうか。
現代の医学知識からする場合,いかなる医師にしても,輸血を望まない人に対してそれを強制することは正当化できません。
付加的な処置
輸血なしの手術のために現在用いられあるいは研究されている手法はこれがすべてではありません。その有効性が実証された別の方法は,患者の血液を,時間が許せば手術前に,そしてまた手術後にできるだけ増強させることです。鉄分,ビタミン類,アミノ酸類など,種々の栄養物を患者に与えます。こうして,たとえ手術中に失血しても,残りの血液が仕事を果たしてゆくことができます。また,栄養物は,失った血液を体自身が補充するのを助けます。実際の手術に伴ってこの付加的な手法を採用しているひとりの医師はこう述べました。「[こうした増強処置に答えて]患者は意外なほど速く回復する」。
別の処方を研究しているのは,米国,ノースウエスタン大学の医学部長ジェームズ・E・エケンホフ博士です。同博士が試みているのは,失血量を減らすため人為的に血圧を低下させることです。この手法は,神経外科や整形外科における,頭部や頸部など,身体上部末端の手術に有効であると言われます。
血液を使用しない別の手術法として凍結手術法と呼ばれるものがあります。これは失血量を減らすために極低温を用いるものです。この手法は,悪性患部の除去その他幾つかの場合に用いられてきました。この方法を研究してきた医師のひとりは,ニューヨーク,セントバルナバ病院のアービー・S・クーパー博士です。
ニューヨークの自然科学者ルイス・バラムスは別の方法を考案しました。彼が考案して新案特許を受けた手術用メスは,一秒間に三万回以上の高速度で震動します。その震動の幅はわずかに1インチの5,000分の1にすぎません。切断される血管はそのまま同時に焼灼され,まさつの熱でその口がふさがれてしまいます。これを用いると,切断した静脈や動脈の口を一つ一つしばる手間が省けると言われます。これは,これまで何年か多くの医師が用いてきた電気焼灼法より勝るものになるかもしれません。
フッ化炭素
まだ実験段階ながら興味深い新研究がもう一つあります。それは体の必要とする酸素の問題と取り組もうとするものです。普通,酸素の供給は赤血球によってなされます。赤血球は肺の中で酸素を取り入れ,酸素を含んだこの血液を心臓が体じゅうに送り出します。体の幾十億という細胞はこうして運ばれる酸素を吸収し,それによってそれぞれが持つ本来の機能を果たします。しかしながら,今日用いられている血漿増量剤は酸素を運ぶ力を持っていません。そのようなわけで,非常に大量の出血があった場合,酸素を運搬する体の能力はひどく損われることになります。
今日行なわれている実験は,酸素を運ぶ能力を持つフッ化炭素を用いるものです。これは有機化合物の一種ですが,その中の水素原子はすべてフッ素原子と置き換えられています。これまでのただ一つの欠陥は,この化合物が体組織内に蓄積し,その影響を予知しえないという点にありました。しかしながら,「サイエンス」誌は新たに工夫されたフッ化炭素について伝えています。それは,実験動物の体内から急速に除去される性質のものです。
しかし,科学者は慎重を期しています。こうした動物実験をそのまま人間に当てはめることはまだできないからです。また,このフッ化炭素が全血液の代用とはとうていなりえないことも認められています。血液の中には,酸素運搬能力を持つ赤血球のほかに幾百という化学物質その他の構成物が含まれています。そのようなわけで,こうした研究が実用化されるかどうかは今後に見るべき問題として残されています。
こうして,ここに取り上げた数々の努力,また他の多くの努力から,輸血を望まない患者の意向を尊重しようとして多くの良い働きのなされていることがわかります。すでに,優れた技術を持つ外科医たちは,血液を使用しないで手術をする方法を工夫し,非常に喜ばしい結果を得ています。この方向でさらに研究がなされるにつれ,いっそうの有益な結果を期待できることになるでしょう。
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高度の数学には優れた数学者が必要目ざめよ! 1974 | 9月22日
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高度の数学には優れた数学者が必要
● 複雑な数式が数学者の知能の働きなしにでき上がると考える人はいません。それが黒板上のチョークの分子の偶然の配列に帰せられるようなことはありません。では,この宇宙に見られる驚くべき数学的精密さについてはどうでしょうか。ケンブリッジ大学の数学教授P・ディラックは「科学アメリカ」誌の中で次のように述べました。
「物理学の基本的な法則が非常な美しさと力づよさを持つ数学的理論によって説明されるということは自然界の基本的な特徴の一つであるように思える。人がそれを理解するにはかなり高度の数学知識が必要である。……これは,神が非常に優れた数学者であるとして説明できるかもしれない。神は宇宙を造るにあたって非常に進んだ数学知識を用いられたのである」。
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