血の神聖さを擁護した母親
「現在5歳の私たちの子供は,先天性の心臓病でした。真理を学び始めるとすぐに手術の問題が起こり,輸血の問題に直面しました。子供が11か月目の時,心臓カテーテル検査のため入院し続いて手術を受ける予定でした。病名は心室中隔欠損症で,60%の血液が左心室から右心室に流れ込んでおり肺圧が高いためとのことでした。
「手術に際して医師に,宗教上の理由で輸血を避けたいと申し出ましたが,それは子供を殺すことと同じでどうしても11本の血液が必要とのことでしたので,手術は思いとどまりました。子供が2歳半のころに私は神への献身の象徴として水のバプテスマを受けました。3歳のころに,輸血なしの手術を施してくれる病院を捜す目的で他の病院に変わりましたがそこでも結果は同じでした。未信者の主人にも輸血を避けたいということを繰り返し話し,『血,医学および神の律法』の小冊子やその他血に関するものなら何でも読んでもらうよう努力しました。しかし輸血の話題になるとお互いに暗い気持ちでその日を送り,子供も私たちの会話から子供なりに不安を感じるようでした。
「子供が4歳のころ,あるクリスチャンの婦人から,神戸の中央市民病院でエホバの証人の子供が輸血なしで手術を受けられたと聞き,主人と共に病院に行きました。小児科の先生は,確かに小学生の子供を手術したこと,体重が15㌔あれば不可能ではないことを話してくださいました。ただし1歳の時の検査の結果では肺圧が高いので,手術をしても肺が止まる危険性があるとのことでした。そして,『輸血なしの手術では子供が2倍も3倍もの苦しみと戦わねばならない。なぜそんなに子供を苦しませてまで輸血をしてはいけないのか』と聞かれました。その時主人は,『子供を苦しめるのは親として耐えられないので,医師の提案通り2本だけ血を使ってもよいではないか。“神は愛”なら11本使うところを2本まで努力したことを許してくれるだろう』と言いました。
「病院の方では,両親の意見が一致しないなら手術はできないので,どちらかが妥協するよう勧められました。私は子供と共に,一番良い方法で導いてくださるようにエホバに祈りました。そして1か月後に,あくまで心臓カテーテルだけとのことで検査を受けましたが,やはり手術が必要とのことでした。私たちはクリスチャンの長老や仲間の奉仕者に励まされ,手術の日まで主人と毎日話し合いました。入院が決まったのは検査後五日目で,本当に急でした。その時には,エホバ神の愛によって主人の心も輸血を避ける方向に傾いていました。病名は左室右房交通症と変わり,右房が非常に肥大しており神経の通っている所に穴が開いているので,電池を体に入れて命を支えることになるかもしれないとのことでした。しかし幸いなことに肺高血圧はなくなっており,肺の方の心配はなくなりました。それから,これは手術をして分かったことですが,心臓に水がたまっておりほっておくなら心不全を起こしていたそうです。
「手術を行なうに際しての医師との話し合いの機会が入院したその日に予定され,輸血の問題について話し合いました。私はエホバに強められることを祈りながら,血を避ける理由や両親の血も血の成分も使えないこと,また命は神からのものであることを話しました。その点については医師も分かってくださり,『過去にも証言を聞いたことがあり,私自身,医学上の進歩もある程度神に依存していると思う』とのことでした。それで,『できる限りあなた方の意志にそうように最大の努力はしますが,人間のすることだから命を作れない故,医者の苦しい立場も理解してほしい』と言われました。そして,病院の方は裁判問題が起こることを心配して,医者の使命は命を救うことにあり自分自身の全身をそのことにささげなければならないということを何度も話されました。最後に未信者である主人と医師との話し合いになり,主人も良い立場を選び,血を使わないで手術をしてほしいと話してくれました。
「手術は,低体温法で3時間半ぐらいだったと思いますが,非常に短く,すべて順調にゆきました。手術後一週間くらいはさすがに苦しそうで,貧血状態もひどいようでしたが,前もって医師から聞いていたよりは軽いようでした。手術後,3,4人の医師から再三にわたって,エホバに誓って血は一滴も使っていませんと言われ,そのたびにエホバに感謝しました。
「エホバはわたしたちのように取るに足りない者にも憐れみをかけてくださり,主人と医師の心を開き子供を強めてくださいました。また私たちのために祈ってくださり,良い模範を示してくださった仲間のクリスチャンに心から感謝しています。子供は手術後25日目には退院し,元気に走り回るようになりました。エホバの示してくださった愛と憐れみに答えることはなかなかできませんが,私たちにできる方法で感謝を示したいと思います」。―寄稿